第3話『真田野球教室――座敷童の遊撃手 座敷孝士 視点 』
今回は 座敷童遊撃手の座敷孝士 視点でお送りします。
大成が入ってきて、毎日とても面白くなった。おらはもともと座敷童だからずっと人間とは近しく暮らしていたけど、だからって、人間とあまり話すことなんてなかったからさ。おらのいる家の人たちは高校野球もプロ野球も好きだったから、おらもこっそり一緒に見たりしているうちに野球が好きになって、でも、正直プロ野球ってのに入って実際試合する側になるとはあんまり思ってなかったんだ。正直、寮の他の連中だって似たり寄ったりさ。
でも、大成は違う。子どもの頃から野球が好きで、ずっと野球していて、いつかプロ野球の選手になりたい、って思ってたんだって。
子どもの頃からだよ、凄ぇよな。そして、高校じゃ、夏になると全国放送になるあの甲子園大会さ行ってベスト8まで行ったんだ。どんなに凄いことだかっていうと、甲子園さは、県大会で優勝しねぇば行かれない。それは他の県でも同じなんだべ。優勝チームばかりが集まるでっけぇ大会だよ。そこで勝ち進んだんだから。それはおら家の人たちの騒ぎっぷり、喜びっぷりを見ればわがったよ。祭りより大盛り上がりだったんだもの。
名前ばりプロになったって、分からねぇことは多いよ。昨日も練習終わった後、
「座敷さぁ、監督から『キャッチボールから』って言われたときは、皆と一緒にキャッチボールした方がいいと思うよ。組んだ相手も手持無沙汰になっちゃうしさ」
って大成に言われた。たしかにキャッチボールの時は最初に二人組になって始めるものな。相手が余るっての考えてなかった。教えてもらってありがたかったよ。テレビじゃ試合は見ても練習ってあまり見ないし、大成は自分が分かってるからって
「何やってんだよ、フツーはこうだろ!」
って頭ごなしに言わずにちゃんと話してくれるから。何だか嬉しくなってワクワクするんだ。一緒に練習がんばれば、おらも一軍さ上がって行ってテレビさ映れるようになるんだべがな。
そうだ、大成、『野球教室』やればいいんだよ。たぶん、連係プレーの基本だのは、この二軍の中だば誰よりも大成の方が詳しいんでねぇがな。よし、おら、生徒第一号になるべ。そして桜木とか滑河さも声かげでみるべ。鉄壁の内野陣、きっとカッコいいぞぉ。
んだって実際のところ、天狗山監督だって、前の二軍監督がいぎなり辞めでそごさ着いだばりで、まだやっと野球ルール覚えだぐらいのどごなんでねぇがな。練習メニューは一軍の松木監督やコーチだぢから「あんちょこ」貰ってそれと睨めっこしてるみたいだがら、あまり世話かげで重しになってはならねぇべしさ。
意気込んで部屋を出たら皿田に
「なぁに ニヤついてんだよ」
って、いぎなり頭ぐりぐりと撫でられで軽口きかれだけども、それくらいでおらの胸さ灯った火は消えねぇ。おら、腕を磨いて、きっと一軍さ行って。テレビさ映って見せるんだがら。
to be continued
今回、衝撃(笑撃? )の事実判明。
一応プロ野球チームのはずなのに 牧戸Believers っていったいどうなってるんだろう。
前途多難っぽいですよねぇ。




