第2話『いざ初練習――ええっ、まさか監督も⁉ 妖怪たちとの新人練習』
初練習風景です。ハチャメチャです。大丈夫かな。
翌日朝、二軍寮裏のグラウンドで、初めての全員集合。
座敷童、河童、雪女に大入道、小天狗その他……ユニフォーム姿の全員が揃うと、異様な圧迫感がある。
「おう、新人どもも揃ったな」
前に立つ迫力ある長身がニヤッと笑う。
「真田来たばかりだから初めてだよな。天狗山二軍監督だ」
と座敷がささやく。
「天狗山さんな、カラス天狗なんだぞ」
(… はぁ⁉ )
天狗の天狗山さん、ってまんまだけどさ、もうどうリアクションしていいか分からなくなった。チームメイトが妖怪だらけだって戸惑ってたのに、まさかの、監督も⁉ こんな妖怪だらけで、一体どんな練習が始まるんだよ? 俺、ついて行けるのかな…
「まずは基礎練習だ! キャッチボールから」
天狗山二軍監督の声に、ああ、練習メニューは普通みたいだ、とホッとするのもつかの間
「おう! 行くぞぉ!! 」
と皿田が水を撒きながら投げるボールが滑って思わぬ方向に飛ぶ。組んだ相手じゃなく俺の方。思わず
「うわっ! 」
と叫んでしまう。
座敷が軽やかに走り回りながら、俺の背中にちょんと手を置く。
「大丈夫だ、いつものごどだがらすぐ慣れるべ」
あれ?キャッチボールから、って指示じゃなかったっけ? 座敷なんで走り回ってるんだ⁇
監督はといえば、そんな座敷に注意するでもなく、難しい顔で、なんか手元のノートらしいものをじっと眺めている。
でも、まぁ、まだ春浅くて冷たい空気の中だけど、とりあえずのキャッチボールが形になってくると、ほっとする。俺、野球好きなんだよなぁ… と思うともなしに考えるいつものルーティン。チームメイトは妖怪だけど、いや、その、監督も妖怪だと知ったところだけどさ、ここは「牧戸Believers」だ。憧れてた地元のプロ野球チームだ。俺は人間でみんなは妖怪だけどさ、でも野球が好きで、それだけは同じなんだよな、うん。と、自分に言い聞かせてはいたんだけれど。
守備練習に移ると、またもや違う驚きの波状攻撃だ。雪屋の外野守備では、ひんやりでは済まない冷風が強く吹きすぎてボールが空中で止まる。
「寒っ!もうそろそろ春なのに真冬みてぇ~ 」
大入道キャッチャーは壁のようで、なぜかバッターの俺の打球まで全部ブロックされる。
「ええ~!? 大入道さん、前に飛ぶ打球まではブロックしなくていいんですよ~www」
──笑いながら、でも心の奥で焦る。
指示そっちのけ、やたらめったら自由。そして真面目に練習に取り組んでるのに思わぬことばかり… いや、たしかにさすがは妖怪、みんな身体能力はすごいものがあるんだけどさ~
(こんな妖怪チームで、本当にまともに試合できるようになるんだろうか……? )
少し不安を覚えて見回した俺の視界に入った天狗山監督は、どこか上の空で、まだ手元のノートらしきものをじっと眺めているのだった。
to be continued
次回は、妖怪チームメイト視点行こうかな、と思います。誰にしようかな。




