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【完結】大天使たち、日本昔話に異世界転生する。〜初恋成就作戦を決行するポンコツ地獄の王に振り回されています〜  作者: 久茉莉himari


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【8】勝負ランジェリーより恐ろしいのは、ロクシーのダメ出しだった。

小屋の扉が「コンコン」と叩かれた。透視してみると、扉の前に立っていたのはルチアーノとロクシー。


安心したルシアンは扉を開けた――その瞬間。


二人が同時に「ギャーーー!!」と叫ぶ。


ルシアンは無言で指を弾くと、恩寵の風が巻き起こり、二人はズザァッと床を滑って小屋の中へ吸い込まれた。


「何か、用か? 私は忙しい」


無表情のルシアンに、ルチアーノが必死に笑顔を作る。


「……そっ! そうだよな!

ルシアンは完璧な“耳男”になり切って、初恋のアプローチに励んでるだもんな〜! 尊い!

で、でも……質問しても良いか?」


「ああ」


「……こ、この〜……天井からぶら下がってる……カーテンのような……いや、違う……へ、蛇の皮は何ですか〜? ……なーんて!」


小屋の天井からは、何十枚もの蛇の皮がぶら下がり、湿った風にカサカサと揺れている。

異様な圧迫感の中で、ルシアンが神々しい笑みを浮かべ、宣言した。


「これこそが耳男が耳男たるゆえん!

彼は仏像造りの天才……!

心の揺れを抑えるためなら、冷水を何百回でも被り、蛇を生きたまま裂き、その血を飲み干し、皮を吊るす!正に神の試練……!

これは“恐れ”ではない、“悟り”だ」


すると、ロクシーが頬を染めて言った。


「まあ、“無理男”にありがちだから仕方ないけど……!

つまりアンジュちゃんの“無理男”でいたくないんだよね!?

せめて異世界にいる一瞬で良いから、アンジュちゃんと両想いになって、心を通わせたいんだよね……!

だから無茶な修業じみたことをしちゃう!

“無理男”にありがちな斜め上の発想と理論武装だけど……

でも、ルシアンは大天使だから飛躍しちゃうんだよね!


せめて異世界にいる一瞬で良いから、アンジュちゃんと両想いになって、心を通わせたいんだよね……!

ごめんね! 隠し撮りした動画は、私が上手くアンジュちゃんに言い訳しといてあげるから!」


ルチアーノが瞳を潤ませてロクシーを見る。


「ロクシー……!! お前、ただの守銭奴のハッカーじゃなかったんだな……!!

俺様と同じリリカルな感性を持っていたとは……!」


ロクシーがジロリとルチアーノを睨む。


「あんたのリリカルな感性とかと一緒にしないでくれる!?

……でも、分かるよ!

大天使と全米No.1ランジェリーモデルとの初恋……最高にロマンチック!」


「だろ!? だろ!? じゃあ協力してくれるか!?」


ロクシーがパチンとウィンクする。


「する、する! まあ契約金次第だけど!

この異世界でしか実らない恋を成就させるわ!

イレイナもあとちょっとで落ちるよ!」


「やったーーー❤️❤️❤️ リリカル万歳〜!!」


ルチアーノが色とりどりの薔薇の花びらと盛大な紙吹雪を小屋全体に散らす。

その嵐に揺さぶられて、蛇の皮まで祝福のリズムでカサカサと鳴った。


しかし――ルシアンはただひたすらに、材木にノミを振るい続けていた。

その横顔は大天使の威厳に満ちていた。

だが背後の蛇皮は――狂気そのものの祭壇を形作っていた。





陽光が差し込み、豪奢な長者の邸宅にある離れは、既にイレイナの魔力に侵食され、異様な静けさと煌びやかな幻影に包まれていた。

外から見ればただの離れだが、畳の一間を越えた先には――異界めいた空間が広がり、魔術と現代の機器が同居している。


その中央、異様にスタイリッシュな長机の上で、ロクシーとルチアーノがパソコンに向かっていた。


まず、ロクシーがルチアーノに要求したのは、この長者の邸宅がある敷地全体の見取り図。

ルチアーノは昨夜ルシアンの小屋を後にすると、水晶玉を創り出し、魔力で正確な見取り図を描き出し、それを和紙に清書して提出していた。


ロクシーはそれを元にパソコンで3Dの見取り図を組み立て、長者の習慣を入力し、イレイナが長者に企画書を渡すベストな動線を導き出す。

同時進行で、ルチアーノの『初恋成就作戦NO.3』の脚本を練り直していた。



-


「だ・か・ら!

あんたの脚本だと、何で毎回ルシアンが庭に現れて、アンジュちゃんは御簾から登場すんの!?

ワンパターン!

テレビ離れしてる世代だよ!?アンジュちゃんは!

もっと、サクッと劇的に場面転換!

SNSの縦長動画を意識して!」


「ハイッ!ロクシー先生!」


ロクシーの指摘を、正座して和紙に毛筆体で書き込むルチアーノ。


「最初の15〜20秒が勝負!離脱させない工夫!」


「ハイッ!ロクシー先生!

俺様の脚本の最も足りないところはどこでしょう!?」


「BGM!

何も喋らくても良いけど、これだけは必須!」


「………BGM!!なるほどです!

長者にはお抱えの雅楽奏者がおります!」


「じゃあ曲は詰めてこ?」


「ハイッ!」


無駄に達筆なルチアーノの筆が走る。


「次!足りないとこじゃ無くて要らないところね!

まず、血なまぐさいのは禁止!」


「ハイッ!

……で、でずが〜…それではドラマチックな演出が弱くなるのでは…?」


コースターをルチアーノに投げつけるロクシー。


「そんなの要らないの!もっと頭を捻る!

今の子はそこら辺は匂わせで良い!

耳を切り落とす騎士とか…あんた発想が300年くらいズレてるのよ、おじさん!!

実際アンジュちゃんは倒れたでしょーが!」


「ハイッ!猛省しております!」


「よろしい!では演出を根本的に見直す!

……そうだなあ…。お姫様だから動かない、を壊すのはどう!?」


「なるほどです、ロクシー先生!そのプロットをお聞かせ下さいッ!」


「つまり…あんたの脚本だと、ルシアンしか動いて無い!

だから…逆に、逆にね、ルシアンを動かさない!

ルシアンに恋するアンジュちゃんを突然ぶつけて、純粋な恋の驚きを見せるのよ!」


「なるほどです、ロクシー先生!

では、如何なる場所がベストでしょうか?

時間帯などは、やはり夕暮れ時などですか!?」


ロクシーが手裏剣の如く、コースターをルチアーノに連射する。


「…痛っ!痛いってロクシー…!!…じゃなくて先生!」


「古くさいんだよ!夕暮れ時?ありがち!

そうね…真っ昼間とかどう!?」


「……ロクシー先生!天才ですか!?」


その時、感動の涙を浮かべるルチアーノとパソコンを叩くロクシーの間に、フワッとショッキングピンクの紐のような固まりが落ちた。


ロクシーが「……何これ…?」と掴むと、イレイナが勝ち誇ったようにホホホと笑った。


「これは古の魔女が王を篭絡するために編んだとされる伝説の布――

私が現代魔術で再現してやったのよ!

勝負ランジェリー!

ロクシーの新たな脚本にハマるように仕立てておいたの!

どう?あのアンジュがこれを身にまとってルシアンの前に現れたら……

あんたの言う"ルシアンに恋するアンジュちゃんを突然ぶつけて、純粋な恋の驚きを見せる"場面は完璧でしょ?」


ロクシーが今度はイレイナに向かって手裏剣手法でコースターを投げる。


イレイナに当たる前に粉砕されるが、イレイナは怒りで眉を吊り上げた。


「何が不満なのよ!?せっかくボーナスに作ってあげたのに!

口で言いなさい!口で!」


「あのね……」


ロクシーがやけくそ気味にカフェオレを流し込むと、ドンと音を立ててテーブルにマグカップを置く。


飛び上げるルチアーノ。


「こんな紐しかないランジェリーなんて、今どきストリッパーでも着てないし!

もう!イレイナには頼みが合ったら私から言うから、ちょっと黙ってて!!」


すると、なぜかルチアーノが「ハイッ!」と答えた。





ガブリエルは少し遅めの朝の入浴を終えて、爽快な気分で窓辺から庭を眺めていた。


それは――朝、一番に届いたロクシーからのメールのお陰だ。


メールには

『異世界のせいか、動画の一部っていうか全体がリピートされちゃってたみたい!

確認せずに送ってごめんね!

ルシアンは普通に水浴びして、蛇のところはルチアーノの演出にルシアンが付き合ってただけだから!ルチアーノが退屈しちゃってて…。

でも今は異世界転生してるから、ルチアーノと言えども戦力なの!だからルシアンが付き合ってくれただけ!またメールするね!』

とあったからだ。


ガブリエルは柚子入りの白湯を口にすると、思い返す。


――つまり、あの棒読みセリフも処刑場事件も、退屈を持て余したルチアーノの遊びにルシアンが付き合ったということか!

断れば良いものを……真面目が過ぎるんだよ、お前は!

だが、ロクシーの言うことは正しい。ルチアーノと言えども、今は仲間割れしている場合では無い!


だがな〜……

ルシアンは良いよ!?大天使として"耳男"という過酷な役割をやり切るという神の使命を見つけ、実行しているのだから……!

でも……私は何をすれば良いのだ!?

夜長姫になり切っても、大切にされるだけだぞ……!


「神よ……私は何をすればよろしいのでしょうか!?

この身を夜長姫とされたのも、きっと新たなるご試練……!」


ガブリエルの眉間に皺が寄り添うになった時――侍女頭が言った。


「姫様、お散歩などいかがでしょう?

雅楽の者も揃えております。

雅な都の調べに乗せ、散策など遊ばせば、ご気分も晴れるかと。

さらに――京より呼び寄せました菓子職人が、帝すら驚くと噂される新作の和菓子をご用意しております」


お!この世界のウォーキングというやつだな♪

しかも雅楽!?本物聞いたこと無いんだよなー!

しかも……帝も驚く和菓子!?

……そう、あれだ……これは神の新たな儀式!

私は"夜長姫"であらねばならぬ…!!

神の試練だしな…!

ならば、ゆかねば!!


「良し、参ろう!」


そう言うと、ガブリエルはたわわな身体を揺らし、ウキウキと立ち上がった。

ここまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

明日も17時更新です☆


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自作のキービジュアルやキャラクターカード貼ってます♪


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