【2】異世界転生したら、耳男だった件
――木の匂い、粗末な土壁。
目を開けた瞬間、私は見知らぬ小屋の中にいた。
ルシアンは状況を即座に把握する。
「……ここは日本の昔話の世界。そう、『夜長姫』という物語か!」
西洋の大天使であるはずの彼が、なぜか古き日本に立っている。
だが、迷いはない。
私は一瞬で理解する。
私は夜長姫という人間に仕える職人であること。
若いながらも師の骨法を全て会得し、更に独自の工夫も編み出した程の天才匠であること。
青笠と小釜というライバルがいること。
そして醜い巨大な耳を持ち、他人から蔑まれ、本名では無く『耳男』と呼ばれていること。
そしてその巨大な耳こそ、最大の心の弱点であること。
そして、確信する。
これは正しく神の新たな試練!
恐れ多くも神は私に聖なる務めを果たせと仰せられている…!
大天使ルシアンとして…!
ルシアンは静かに拳を握りしめると、決意を込めて宣言した。
「耳男ならば――まずは耳からだ!」
次の瞬間、恩寵が閃光を放ち、彼のこめかみから異様に大きな耳が生え出た。
形はねじれ、耳たぶは垂れ下がり、毛穴や皺まで細かく再現された――
そう、耳男本来の「醜い耳男の耳」を、恩寵で完璧に造り上げたのだ。
「これぞ……完璧な耳男の耳……!」
ルシアンが誇らしげに頷いた次の瞬間、背後からルチアーノの声が響いた。
「ルシアン!
スゲー耳だな!
で・も!俺様には分かる!
その耳がなければ、この世界で役を果たせないんだろ!?」
ルチアーノはしげしげとルシアンの耳を見つめている。
ルシアンは悟っていた。
ルチアーノは『アナマロ』という長者の一番の部下に転生したことを。
しかし、ルチアーノは地獄の王としての能力は失っていない。
なぜ、そんな役割を受け入れているのかは不明だが。
ルシアンの視線を感じ取ったルチアーノが、ウキウキと語り出す。
「実は!
なんとアンジュちゃんが夜長姫に転生しちゃってるんだよー!
つまり、お姫様としがない職人の恋……!!
リリカルな感性の俺様は閃いた!
俺様がアナマロになれば、動きやすいってな!
ルシアン!
今度こそ、初恋成就させてやるからなー❤️」
――意味が分からない。
……これで良いのか……???
大天使ガブリエルの頭の中は、ハテナマークでいっぱいだった。
確かに私は器の衣を着ている!
それは聖なる衣!
でもなあ……この日本の昔話の世界で、真っ白なコートにクリスタルピンヒール、そして真っ赤なランジェリー姿でも――
古風な衣に身を包んでいる侍女達は、全く驚かない!
これって正解!?
しかも、私の器の"アンジュ"は金髪碧眼、その上ランジェリーモデルとして完璧なボディを持っているというのに……誰も眉一つ動かさず、穏やかな微笑みを浮かべて私の世話に明け暮れている……!
ん……?
ハッ……!!
つまり、これは神の尊き御業!
神の御心の深さに、この私、大天使ガブリエルは聖なる祈りを捧げよう……!
そう心を燃やし、ガブリエルが跪いた時、御簾の向こうから侍女の静かな声がした。
「夜長姫さま。
職人どもが集まっております。
長者さまが、ご一緒するようにと」
ガブリエルがすっくと立ちあがる。
夜長姫に転生したからには、神に恥じぬ働きをしてみせる!
そう決意したガブリエルは「分かった!ゆこう!」と高らかに宣言した
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