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【完結】大天使たち、日本昔話に異世界転生する。〜初恋成就作戦を決行するポンコツ地獄の王に振り回されています〜  作者: 久茉莉himari


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【11】花露姫、禁断の小屋に怒り爆発。〜匠大天使、真面目ブーメランを食らう〜

それから三日間――異世界の森には、カブトムシの羽音と、ルシアンのノミの音が響き続けた。


だが――

ロクシーが、この異世界“日本昔話”の木こりたちの伐採時間に合わせて動かしていたため、アンジュにルシアンの“奇行”は伝わっていない。


それにロクシーの命令で、ルチアーノは三十分おきに水晶玉でルシアンの様子を観察し、日誌に記録することになっていたのだ。


ルシアンの「どんぐりの木を裂く儀式」が終わった夜。

ロクシーはイレイナの館と化した長者の離れで、ポーランドのウォッカ「スピリタス」(アルコール度数98%)をジンジャーエールで割りながら、ブツブツ言っていた。


「どんぐりの木から樹液を取る。

そして没薬を作りたい。

丸っきりズレてるけど、ルシアンならそう考えても仕方ない。

だけどさあ……」


ロクシーの据わった目がギラリと光り、正座しているルチアーノが、そのままピョンと跳ねる。


「そ・れ・を!」


数秒の沈黙。

ルチアーノの喉がゴクリと鳴る。


「恩寵で作り上げた、ジッパー付きポリ袋に保存するのはどうなの!?

そこで恩寵を使うなら、樹液も恩寵で採取しろっ!!」


ルチアーノは冷蔵庫から素早く氷とジンジャーエールを持って来る。


「ロ、ロクシー先生……!

あれは……ルシアン的に、清弥になり切った修業……では、ないかな〜……なーんて!」


ガンッ。


ロクシーがグラスをテーブルに音を立てて置く。


「……だったら!

樹液を貯める桶とかもさあ……自分で作るべきでしょ!?

違う!?」


「そ、その通りでありますッ!」


再び正座したルチアーノが即答する。


すると、イレイナがホホホと笑った。


「もう、ルシアンのことは忘れましょ!

長者に企画書を渡せたし❤️

しかも最高の場面でよ?

何と長者から私を招いたんだから!

長者は感動してたわ……!

絶対にサイン……じゃなくて、押印するわ……!!」


「イレイナ!!」


ロクシーが叫ぶ。


「じゃあ次は、この異世界からハリウッドに帰る方法を考えることに専念してよ!?

仏像と厨子が出来上がろうと、帰る方法が分かれば、即帰るからね!」


イレイナはピンクのドンペリをシャンパンフルートに注ぎながら、「ハイハイ」と答える。


ロクシーは小さく息を吐き、グラスの氷を見つめた。

――この異世界……誰が先に壊れるか、勝負かも。


「……つか、ハンコ文化ってまだ生きてたんだ……」


ロクシーは遠い目をして呟いた。





ルチアーノの朝は早い。


5時半起床。

さっと洗面。魔術で作り出した、元の世界でも愛飲している富士山から湧き出るミネラルウォーターをコップ一杯。

壁に飾ってある純白のふんどしに一礼。

そして三十分のヨガタイム。

軽くシャワーで汗を流し、一息ついたところで、高タンパク・低カロリーの野菜とフルーツ中心の朝食。


そこで大体6時。

水晶玉でルシアンの小屋周りを観察し、日誌に記録――。


だが、その日は違っていた。


水晶玉を覗くと、アンジュがたった一人で、ルシアンの小屋の周りをウロウロしているのが見えた。


長者の腹心の部下『富松』に転生したルチアーノには、その重大さが分かる。


花露姫ともなれば侍女は数百人余り。

常に侍女頭が花露姫に仕え、花露姫が決して一人になることはない。


「……アンジュちゃん……!?

どうやって侍女の壁を突破して来たんだ!?」


眉を寄せ、真剣に観察。

だが、次の瞬間――


「……あーーーッ!!」


ルチアーノが水晶玉を抱きしめる。


「尊い!!

アンジュちゃんは高貴な花露姫ゆえ、ルシアンに自由に会えない!

だから会いに来たんだ……!!

恋のパワー❤️❤️❤️」


だが次の瞬間、気付く。

あのルシアンの小屋には、外部から人が入れないよう、扉に特殊な仕掛けがあることを。


そして今は、ルシアンが大天使の本気を出して恩寵で小屋を守っている。

地球最強魔女イレイナですら、中を見ることは不可能。


つまり――アンジュが扉に手を触れた途端、弾かれるか、扉の罠に掛かってしまう!


「……ロクシー先生から勝手な行動は固く禁じられているが……

アンジュちゃんの安全が最優先!

俺様は行きます!ロクシー先生!

先生の教えと共に……!リリカルーーー!!」


そう叫ぶと、ルチアーノはルシアンの小屋へと飛んだ。





アンジュは――覗けそうで覗けないルシアンの小屋を、イライラしながら見回っていた。


だが、大天使ガブリエルとして、自分から訪ねるのはプライドが許さない。


――ルシアンめ!

私がここに来るのにどんなに頑張ったと思う!?

床板を外して……地面を這って来たんだぞ!!

たわわな身体が、まあ邪魔なこと!

早く気づかんか!!

お前は真面目を発揮する場面が、いつも間違ってるんだよ!!


アンジュの怒りが頂点に達した、その時だった。


「アンジュちゃーん!アンジュちゃーん!」というルチアーノの叫び声が聞こえた。

どうやら川の方角。


アンジュがクリスタルのピンヒールに足を取られながらも、何とか川に近づくと……。


……そこにいたのは――純白のふんどし一丁で、水を被るルチアーノだった。

高速で。何度も、何度も。


――何をしているの???


アンジュがポカンとルチアーノを見ていると、ルチアーノが嬉しそうに川から上がって来る。


「良かった〜!

アンジュちゃんを呼ぶベストな方法は、これしか無いと思って……!」


キラッと微笑むルチアーノ。


アンジュが無言でルチアーノの姿を上から下まで見ていると、パッとルシアンが現れた。


「アンジュさま……!ここで、何を!?」


跪くルシアンの頭を――ピンヒールで思いきり踏み抜きたくなる衝動を、ギリギリで抑え込むアンジュ。


――ルチアーノのふんどし姿を私に見せたいの!?

お前は!!

もっと早く気付く瞬間があっただろ!!!


「……仏像の製作の進捗状況は?」


厳かに問うアンジュに、無表情なルシアンの顔に、僅かに影が差す。


「……それが……!未熟な私をお許し下さい!

私は"清弥"の天賦の才を再現できぬ、愚か者……!

神の儀式は未だ遂行されておりません……!!」


だからーーー!!

一言で良いだろうが!

「まだ完成に至りません」で良いのッ!!

お前はこの異世界の清弥に、どんな感情を抱いているの!?

この世の終わりみたいな顔をするな!鬱陶しい!


「……では、私に見せよ。私の導きを与えよう」


ルシアンの大天使の翼が出現し、神々しく煌めく。

そして自然と開く、ルシアンの小屋の扉。


「……なんと!

アンジュさま、自らお導き下さるとは!

私の感謝の祈りを捧げます……!!」


………。


しばしの、間。


い・ら・な・い!!


アンジュは心で叫ぶと、開かれた小屋の扉へと歩き出した。





アンジュは叫ばなかった。


だが――

今までに無い。そう、大天使ガブリエルとして持ってはならぬ最高の“怒り”で満ちていた。


天井から、無駄に美しく揺れる――無数の木の皮のカーテン。


そして……

何かのドロッとした液体に漬けられた、ジッパー付きポリ袋に入れられた仏像……。

その上には重しなのか、ストーンヘンジの親戚級の巨石が乗せられていた。


ふんどし一丁のルチアーノの悲鳴も、アンジュの耳を素通りするだけ――。


ここまで……イミフ!?

"清弥"って……ここまで意味不明な仏像作りの天才なの!?


いや――違う!

これは……絶対に……あのクソ真面目大天使ルシアンの解釈違い!!


大体、分かるでしょ!?

仏像に“重し”を乗せる匠なんて存在しない!

どの世界でも……!!


すると、ルシアンの感激に満ちた声が響いた。


「アンジュさま……!

アンジュさまの、そのようにご感動するお姿……!

初めて拝見いたしました……!

大天使ルシアン……感激の極み……!

この身は震えております……!」


――勝手に震えてろよ!!


アンジュが美しい額に青筋を立てていると、ルチアーノがわっと泣き出した。


「アンジュちゃんにルシアンの想いが刺さってるーーー!!

……これってもう恋が始まってる!?

ルシアン……!!良かったな……!

恋をしても賢くいるなんて、不可能なんだよな!!分かる〜❤️❤️❤️」


片手で薔薇の花びらを撒き、片手でクラッカーを鳴らす器用なルチアーノを見る、殺気立ったアンジュの視線――は、誰にも届かない。


フランシス・ベーコンの名言をパクるな!

………あーどうしよう……

何から説明したらいいの……?

まず、仏像から???


だが私は、今は完全に人間の器の身にいる。

もし、あのポリ袋のジッパーを開けて……悪臭がしたら……!

いやっ!絶対するッ!耐えられん……!!


そして――アンジュは決断した。


「ルチアーノよ。

そなたはこの異世界では、長者の腹心の部下富松。

長者に伝えよ!

この私、花露姫は、明日の朝一番に仏像と厨子が欲しいとな!」


ルチアーノが「ハハッ……!仰せの通りに!」と答えると同時に深くお辞儀をし、純白のふんどし一丁で去って行く。


ルシアンは――絶望に満ちた目でアンジュを見上げていた。


「アンジュさま……!

私は"清弥として、明朝までに"

“清弥”としての完璧な仏像と厨子を造り上げることは叶いません!」


――うるさいッ……!!

お前の解釈違いの清弥理論は聞きたくないの!!


これで……お前の奇行からも解放される……。

私って本当に優秀♪

神の第一のしもべと言ったら、大天使ガブリエル〜♪


そして「姫様じゃ!」「姫様が見つかった……!」「誰ぞ!長者さまに伝えよー!」と叫ぶ侍女たちに囲まれ、アンジュは去って行った。


――だが、この時の誰も知らなかった。

森に満ちていたのは、神々しき光ではなく――

静かに広がり始めた“異変”の気配だった。

ここまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

明日も17時更新です☆


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自作のキービジュアルやキャラクターカード貼ってます♪


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