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【完結】大天使たち、日本昔話に異世界転生する。〜初恋成就作戦を決行するポンコツ地獄の王に振り回されています〜  作者: 久茉莉himari


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10/15

【10】ズッ友、純白のふんどしで悟る――耳男、奇跡の再生!

その頃、


ルシアンはエクソシストに挑む神父の如く、無心にノミをふるっていた。


あの後、森から小屋に戻ると、長者の護衛達に小屋を囲まれ、「3秒以内に出てこなくば火を放つ!」と言われた。


ルシアンは静かに扉を開け、外に出た。


例えどんな仕打ちを受けようとも……。

耳男として燃やされることすら神の試練!

“耳男”ならば受け入れる! 私は耳男としてこの異世界で神の新たなる儀式に挑むのだ……!

その一心で。


だが、ルシアンの小屋の中を覗いた護衛達は「ギャーーー!!」「ぎょえええ!」「オーマイガッ!」と悲鳴を上げて、呆気なく去ってしまった。


そう。


無数の蛇の皮が風鈴のように揺れ、ザラザラと音を立てていた光景に、度肝を抜かれたのだ。


ルシアンは何をそんなに驚くのか分からなかったが、耳男としての誇りに満ちていた。


きっと…あの悲鳴は感動の叫び…! 心が震えた証!

私が作りかけた仏像に感銘を受けたのだ…!

私は耳男として、完璧に近くなって来ている…!


――いや、護衛達は感銘どころかトラウマになっていたのだが。


「神よ…! あなたの尊きご意思、この大天使ルシアン、必ずやり遂げて見せます!」


ルシアンはそうして祈りの姿勢を取ると、柄on柄のスーツが暗闇に溶けるまで――四時間近く、まばたきすらせず――神に祈りを捧げていたのだった。





一方、ガブリエルは長者の敷地の奥深くにある雅な建物の中で、炎に手をかざさせられていた。


何か…仏教を唱えている者どもがいて、何やら木を焚べているが……

炎は天井まで舞い上がり、ドラム缶のような太鼓が鳴り響く…!

私は大天使…!!

意味が全く分からん!

それも、これも!!


ガブリエルがピンクの唇をキッと噛む。


あのルシアンのせい!!

あいつは本当に何がしたいの!?

あいつの自分焼きバーベキューの行為の後、せっかくの楽しいお散歩は地獄と化した……


侍女の殆どは倒れ…私は勇敢なる一部の侍女に着物を頭から被せられ……

陸に上がった魚のように身動きも取れず、この建物に連れて来られ、

護摩祈祷なるともが始まった……


そして護衛達は二度と戻らなかった――

いつまで!? この炎に手を向けてれば良いのだ!?

手がこんがりチキンになってしまう…!!


帝も三度ひっくり返るお菓子を食べるはずが、出されたのは水一杯!


………ん?

ハッ…!!

つ・ま・り!

これぞ“夜長姫”としての新たなる試練!?

試練、キターーー!!

私は夜長姫として、この炎すら抱擁しよう…!!

神よ…! ご覧ですか!?

私は今、あなたの聖なる儀式に正面から立ち向かっています! そう! 大天使ガブリエルとして!!


ガブリエルは炎に向かって聖なる祈りを捧げる。

こんがりチキンの味を想像しながら。





翌朝、コンコンというノックの音。


ルチアーノは、転生した長者の第一の部下『アナマロ』の部屋を改造したダブルベッドの上から、「は〜い」と答えた。


昨日の爆走を思い出すと、魂が布団に沈むようで……起きる気にもなれない……。


すると、「私、ロクシー! ルチアーノ、入って良い?」と明るい声がした。


ルチアーノがガハッとベッドから起き上がり、扉を開ける。


そこには笑顔のロクシーが立っていて、「朝ごはん一緒に食べない?」と言いながら、カフェの紙袋をちょっと上げて見せた。


リビングのテーブルにさっさと座るロクシー。


そのテーブルには、ゴヤの『我が子を食らうサトゥルヌス』が忠実に彫られている。


………。


ロクシーは見ないふりをして、心の中で即罵倒する。

………センス以前の問題! こんなテーブルがリビングにあって、くつろげるか!


そんな思いを飲み込み、ロクシーは食事を始めた。

だが、ロクシーが食事を終えても、ルチアーノはロクシーが持って来た食事に手を付けようとせずにいる。


「ルチアーノ、食べれば? 何してんの?」とロクシーが問うと、突然、号泣オペラの幕が開いたかのように叫んだ。


「……俺様ッ! 感動しております!

ロクシー先生がまさか……この不祥俺様に朝食をわざわざ……!!」


ロクシーがやさしく微笑む。


「……ルチアーノ、私、脚本を読み返してて気付いたんだよね。

あんたは芸術家!

だから、リアルな恋愛をリリカルな感性で包み過ぎちゃう!

だから、これからは完全な共同製作しない?

私がリアルな女子の気持ちを教えてあげる!」


「……ロ、ロクシー先生…!!」


ルチアーノの顔が、トイレで輝くLED電球100ワットのように、無駄に輝く。


「だから、約束して?

昨日の板みたいなことをする時は、私には隠さない。

必ず相談してくれるかな?」


「ハイッ! ロクシー先生!」


「それとね……あんたのリリカルな感性が一番発揮されるのは――香水。

あんたのリリカルな感性を、“瓶に閉じ込める”の!」


「……ロクシー先生……!! 俺様をそこまで理解して下さる……!! 天才ですね!!」


「いいのよ。私達は今日から初恋成就作戦のチーム!

私がリーダー、あんたは参謀!

まず、これを用意して!」


そこには――


香水作成器具一式。

バイオハザード用防護服、三着。(ロクシーサイズ)

酸素ボンベ、一ダース。

ペンライト二本。


……そして、ルチアーノは息を整えて、最後の一行を見つめた。


純白のふんどし一丁。





その二時間後――


ルシアンが仏像造りに勤しんでいると、ルチアーノの「ルシアン〜! ルシアン〜!」という叫び声が耳に届いた。


ルシアンは一瞬で状況を把握する。


ルチアーノは、ルシアンが水を被り続けていた川で、ルシアン同様、水を被り続けている。


いつもの黒スーツ姿ではなく、純白のふんどし一丁で。 朝日を反射して神々しく輝く純白のふんどしが、水面にオーラを放っていた。


だが、それは“耳男”には無縁の光景。


そうルシアンは切り捨て、再び仏像造りを開始する。


だが、ルチアーノの叫びが百回を越え、「ルシアーーーン!! ズッ友が溺れてる気持ち、届いていますかーーー!?」になったところで、ルシアンは川のほとりに大天使の恩寵を使い、瞬間移動した。


「……ルチアーノ、静かにしてくれ」


そう無表情で言うルシアンに、ルチアーノがパッと笑顔になる。


そして叫んだ。


「お……俺様達はズッ友……!! ズッ友として、同じ苦難を分かち合う……! 俺様はやり切るーーー!」


「何を?」


そうルシアンが冷静に疑問を口にすると、スッと隣にロクシーが立ち、厳かに言った。


「……ルシアン。 大天使として分からない? あれは慈愛の心……! 苦難をズッ友と分かち合いたいという、ルチアーノの尊い意志、その行動! 正に聖なる犠牲よ!」


ルシアンがガクッとその場に崩れ落ちる。


「……おお! 私としたことが……! 地獄の王、悪魔のルチアーノすら聖なる犠牲を払っていることに気づかぬとは……! 正に大天使として失格……! 神に許しを請わねば……!」


すると、ロクシーがそっとルシアンの柄on柄のスーツの肩に手を置いた。


「でも、ルシアンは今は耳男としての使命を果たす時だよね? 一秒も無駄に出来ない。 だから、私がルチアーノの気持ちを伝えるわ……。 ルチアーノはね、あんたが耳男として、この異世界で成功して欲しい、その一心で水浴びという修行をしている。 つまり……耳を復活させて!」


「……耳? 耳をなぜ? 私が切り落とされたのは耳の外側……。 聴力に問題は無い……!」


だが、そう言うルシアンの声は微かに震えていた。


「ルシアン……。 夜長姫に転生したアンジュちゃんは、きっと“耳男”の仏像と厨子を待ってるよ……。 でも、耳男という人間に転生したルシアンの両耳が無い姿に、きっと胸を痛めてる……! 女の子って、例え何か無理な男でも、大怪我をした男には胸を痛めるものなの……! ルシアンはアンジュちゃんが心を痛めても良いの?」


ルシアンがパッと立ち上がり、ロクシーを正面から見据える。


その顔には覚悟が満ちていた。


「私はアンジュ様に1ピコメートルの傷もつけたくは無い!」


それは神すら沈黙する、聖なる宣誓。 そしてルシアンの言葉と共に周囲は眩い光で包まれ、図らずも大天使の翼が出現し、荘厳な恩寵で神々しく光り輝く。


そして、瞬時に“耳男”として完璧な両耳が再生された。


ロクシーが感動に溢れた瞳でルシアンを見つめながら、片手でペンライトをオンにし、素早く切り替え、レッドを輝かす。


それを見て、ルチアーノは棒のようになった腕を下げ、桶を川へと放つ。


ペンラのレッド――それはロクシーからの「耳男の耳、再生完了」の合図。


疲れ切っていた。


身体は冷え切っていた。


だが、『ネオ☆恋愛成就作戦』第1弾が完了した喜びで、ルチアーノの胸ははち切れそうだった。


――そして、ズッ友の朝は、今日も異世界で静かに燃えていた

ここまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

明日も17時更新です☆


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自作のキービジュアルやキャラクターカード貼ってます♪


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