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第44話 アクセントを意識する

挿絵(By みてみん)

「声優」と言うお仕事の存在を知らなかった女子高生が声優を目指して奮闘する、笑いあり涙ありの……いえ、ほとんど笑いだらけの楽しい青春ストーリーです。

声優の井上喜久子さんが実名で登場しますが、ご本人と所属事務所のアネモネさんには快く承諾をいただきました! ありがとうございます!!

第1話と第2話を井上さんに朗読していただきましたが、このたび第16話と17話も、朗読していただきました!

朗読を聞くには下のURLをコピペして飛んでください!

謎の対談も、聞いていただけると幸いです(笑)

https://x.gd/9kgir

更新情報はXで!「@dinagiga」「@seitsuku」

『私が思う、声優の心構えのお話ができたので、そろそろ実際に声優に必要な技術について、知ってもらおうと思います。実践編、というわけです』

 スマホから聞こえた井上のその言葉に、部室の全員が息を呑んだ。

 同時に、雫があわてて、カバンから何かを取り出す。

 ノートと三色ボールペンだ。

「メモしないと、私すぐに忘れちゃうから」

 そんな雫に、凛が笑顔を向ける。

「じゃあ記録は雫に任せた! 後で私にも見せてね!」

「激しく同意、略してハゲドウ」

 そう言った結芽に、凛が素早く突っ込んだ。

「古っ!」

 そんな凛をじっと見つめ、結芽が言う。

「凛には言われたくない」

「確かに」

 麗華がニッコリと笑顔になった。

「うん分かった! 凛ちゃんよりも字は上手いと思うから、私に任せて!」

 自分の胸あたりを、軽く握った拳でトンと叩く雫。

 その動作にもツッコミを入れる凛。

「雫の今の動き、それもなんか古いじゃん!」

「凛ちゃんには言われたくないなぁ」

 ドッと全員が笑いに包まれる。

「じゃあいくよ? 続きを再生、ポチッとな!」

 元気な凛の声に、全員の目が彼女のスマホに集中する。

『あなたは、アクセントに注意して、おしゃべりしたことはありますか?』

「アクセント?」

 雫が首をかしげる。

「挿しっぱなしじゃダメなやつ」

「それはコンセント!」

「降水確率」

「パーセント!」

 結芽と凛は相変わらずである。

『日本語で、正しく意味を伝えるには、アクセントが重要な役割を果たしています。アクセントは、簡単に言うと単語を読み上げる時の音の高さ、高低のことです』

 雫が恐る恐る言う。

「えっと、イントネーション、っていうやつかな?」

『今、イントネーションのことだと思ったあなた!』

「私だ!」

「雫すごい! 録音のきっこさんと会話してるじゃん!」

『ブッブー! は・ず・れ!』

「はずれだけど」

 苦笑する雫と凛。

『単語の発音の高低がアクセントで、イントネーションは文章になった時に、話し手の気持ちの状態で抑揚になって表れることを言います』

 雫が必死にメモを取る。

「よく分かんないけど、アクセントは単語のこと……と」

『アクセントはひとつの単語内における音の高さの変化です。例えば「橋」の「は」は低く「し」は高く発音しますが、「箸」の「は」は高く、「し」は低く発音します。平仮名で書くと同じなのに、アクセントの違いによって、単語の意味が変わる事があるんです』

 顔を見合わせる雫と凛。

「ホントだ。意識したことなかったけど、音の高い低い……アクセントで、言葉の意味が変わるんだ」

「英語の授業だと発音のこと、めっちゃ言われるけど、日本語だとこれ、無意識でやってるよなぁ」

 麗華もうなづいている。

「そうですわね。いつも自然にやっていることですが、しっかりと言葉で説明してもらえると、分かりやすいですわね」

『日本語のアクセントには大きく分けると4つの種類があります。順にやってみましょう。まずは「平板型」と呼ばれる、平板で特にアクセントがないもの。読みを平仮名にした時に、ひと文字目が低く、ふた文字目以降が高くなって、そのまま最後まで下がらない。例えば、鳥、桜、友達』

「鳥」

「桜」

「友達」

 雫、凛、結芽が順に復唱した。

 雫の目が丸くなる。

「ホントにそうだ、きっこさんの言う通りだよ凛ちゃん!」

「うん、意識しながら言うと、よく分かるね」

 うんうんと激しく首を縦に上下させている結芽。

『二つ目は、頭高型あたまだかがた。単語の最初だけが高いタイプです。ひと文字目が「高」く、ふた文字目以降がすべて「低」くなる。例えば、箸、命、雨、縁日』

 雫のメモが早くなる。

『三つ目は、中高型なかだかがた。途中で上がって、途中で下がるタイプです。ひと文字目が「低」く、ふた文字目から「高」くなって、最後にまた「低」くなる。玉子、湖、タマネギ』

 再び皆が顔を見合わせる。

 ホントだ! そんな気持ちで。

『最後、四つ目は尾高型おだかがた。「平板型」と同じで、ひと文字目が低く、ふた文字目以降が高くなりますが、単語の後に「が」などの助詞が付いた場合、その助詞が低くなるタイプです。花、山など、花が、山が、になります』

「花が咲いた! 山が綺麗だ!」

 雫がそう復唱すると、凛が感心したようにうなづいた。

「マジだ、“が”が低くなってるじゃん」

『それでは、いくつかの例文を読んでみますので、どの単語がどのアクセントになっているのかを、意識して聞いてみてください。

 伊賀の栗は意外にイガが大きい。

 友人の死を悲しみ、詩を読んだ。

 部屋の隅に積んである炭。

 損害の大小にかかわらず代償が支払われます。

 他家の丈の高い竹を切る。

 とんでもなく高い値がついたので音を上げた。

 箸を持って橋の端を渡る。

 お寺の本堂の近くにある本道。

 味方の見方が間違っていた。

 宵に宵酒を飲んですっかり酔いが回ってしまった。

 どうですか? アクセントの違いで意味が変わるのが分かりましたか? どの言葉や言い回しが、どんなアクセントなのか? 日常生活の中で、それを意識してしっかりと覚えることが大切なんです』

「凛ちゃん、声優になるって、思ったより大変なのかも」

 さっきまでワイワイと賑やかだった部室が、いつの間にかシンと静まり返っていた。

アクセントはとても難しいですよね。

特に、出身地によって違ったりしますから。

私も大阪出身なので、東京ではアクセントに苦労した一人です。

でも、関西人にとって一番大変なのは「無声音」の克服かもww

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