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第43話 そうぞうする力

挿絵(By みてみん)

「声優」と言うお仕事の存在を知らなかった女子高生が声優を目指して奮闘する、笑いあり涙ありの……いえ、ほとんど笑いだらけの楽しい青春ストーリーです。

声優の井上喜久子さんが実名で登場しますが、ご本人と所属事務所のアネモネさんには快く承諾をいただきました! ありがとうございます!!

第1話と第2話を井上さんに朗読していただきましたが、このたび第16話と17話も、朗読していただきました!

朗読を聞くには下のURLをコピペして飛んでください!

謎の対談も、聞いていただけると幸いです(笑)

https://x.gd/9kgir

更新情報はXで!「@dinagiga」「@seitsuku」

『声優の心得五カ条、第二条は、そうぞうする心を持とう!』

 スマホから流れる井上喜久子の言葉に、結芽が反応する。

「ボク、ゴセいもん」

「だから、五箇条の御誓文じゃないっつーの!」

 凛が肩をすくめた。

 アニ研の部室では、ラジオノむさしのが制作した『声優入門』のレッスンが続いていた。

「そうぞうって、どんな意味だろ?」

 首をかしげる雫に、麗華が微笑みかける。

「そうですわね、“そうぞう”って、同じ発音でも色んな意味がありますわ」

 結芽が凛に視線を向ける。

「悟空、天竺へ向かいますよ」

「誰が猿やねん! って、それは西遊記の三蔵法師! “さんぞう”じゃなくて“そうぞう”! 結芽、飛ばしすぎだっちゅーの!」

「凛、私達に内緒で、一人でお寿司食べに行ってた」

「それは捏造! あれからタダ券もらってないから行ってないってば!」

「やられたらやり返す、倍返しだ」

「それは倍増!」

「アル・カポネのお酒」

「密造!」

「粗製」

「乱造!」

 そんな二人の会話に割って入るかのように、井上の言葉が続いた。

『そうぞう、と言葉で聞くと分かりにくいのですが、この“そうぞうする心を持とう!”の“そうぞう”には2つの意味が込められています。まず一つ目は、演技をするために色んなことを推理し考える「想像力」を磨こう!……と言うこと』

「こしこし」

 結芽が何かを手に持つ仕草をする。

「何してるの?」

 首をかしげた雫に、結芽がニヤリと右の口角を上げた。

「メガネを磨いてる」

「あんた、メガネかけてないでしょーが!」

 凛の突っ込みを無視して、結芽はエアメガネを磨き続ける。

「こしこし」

『そしてもうひとつは、新しい物を作り出す「創造力」を持とう!……と言うこと。声優にとって、この2つの「そうぞうする力」は、どちらも同じぐらい大切なんです。

 簡単に説明しましょう。演技に例えると分かりやすいと思います。

 あなたが演じることになったキャラクターの気持ちや、その場面の意味を予想し推理する「想像力」が鋭ければ、その演技はどうなるのか? 他の誰にも真似できない新しい演技を「創造」することができるかもしれませんよね? そんな風に、この二つの「そうぞう力」は密接な関係にあると言えるのです。ぜひあなたも、二つの「そうぞう力」を磨いて欲しいと思います!』

「こしこし」

「だから、磨かないの!」

「でも、井上さんが磨けって」

「うきーっ!」

 冬の透明な日差しが、部室の窓から斜めに差し込んでいる。

 今は静かな季節なのに、この部室は毎日にぎやかだよなぁ。

 凛と結芽のやりとりを観ていて、英樹はぼんやりとそう考えていた。

「諏訪くん、何ぼーっとしてるの?」

 姫奈の問いかけに、ハッとする英樹。

「いえ、なんか平和でいいなぁって思って」

 姫奈がフッと笑顔になる。

「そうね。廃部寸前だった頃が、まるで嘘みたいよね」

 二人にとっても『声優入門』はとても興味深いコンテンツだ。だが、アニ研内声優部の四人とは違い、声優を目指しているわけではない彼らには他人事でもある。その内容よりも、つい凛や結芽のオモシロ会話に惹かれてしまうのだ。

『さて、第一条、第二条の所でもお話しましたが、声優に必要なこと、声優にとって大切な事はとてもたくさんあります。例えば、声のパワー、感情表現、などの技術、テクニック。でも私は、もっともっと大切なことがあると思うのです。いったい何だと思いますか?』

「はい淡島くん! 何だと思いますか!?」

「へっ!?」

 いきなり凛に指をさされ、あわあわしてしまう雫。

「えーと……きっこさんが“私が思う”って言ってるから……電車を乗り間違えないこと!」

「正解!」

 そんな会話に突っ込もうとして、姫奈が腰を浮かした。

「部長! 待ってください!」

「諏訪くん、止めないで!」

「いえ、冷静に考えてみてください! アフレコスタジオに行く時、電車を間違ったら遅刻してしまうかもしれません!」

「だから!?」

「なので、ある意味正解かも」

 納得できない、そんな表情のまま、姫奈はとりあえず浮いた腰を降ろした。

『最近私が思うのは、演技者として一番大切なものは、人格や人柄なんじゃないか? と。くだけて言うと、ちゃんと他人のことを考えられる人でありたい! 世間には、色んなタイプのお仕事があります。技術こそが最も重要視される仕事もあるでしょう。もちろん、声優にとっても演技力などの技術も大切です。でも「作品」を作るのは「人」なんです。「人」と「人」とのつながりこそが、「人」の心に響く作品を作る原点なのではないか、そう思うようになりました。いい作品には「心」がある。作品にそんな「心」を吹き込むのは、演技者の人格や人柄なんだと、そう思うようになったんです。というわけで、私からあなたに伝えたい声優の心得五カ条の第三条は「いい人になろう!」です!』

 その場の全員が顔を見合わせ、うなづきあう。

「今の話、めっちゃ納得だよね!」

 凛が雫に視線を向けた。

「うん、きっこさん、とってもいい人だった」

 結芽が何かを思い出すように、中空を見つめて言う。

「お寿司、ごちそうしてくれた」

 皆の脳裏に、回転寿司店で出会った井上のことが蘇る。

 雫がポツリと言う。

「またお寿司食べたいな」

「分かった!」

 凛が立ち上がって元気にそう叫んだ。

「またお父さんから、お寿司のタダ券もらってくるぜ!」

 笑顔あふれる中、雫たちの声優レッスンは続いていく。

声優レッスン編、まだ続きます(笑)

楽しんでいただけるとうれしいです!

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