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第39話 Happy Holidays

挿絵(By みてみん)

「声優」と言うお仕事の存在を知らなかった女子高生が声優を目指して奮闘する、笑いあり涙ありの……いえ、ほとんど笑いだらけの楽しい青春ストーリーです。

声優の井上喜久子さんが実名で登場しますが、ご本人と所属事務所のアネモネさんには快く承諾をいただきました! ありがとうございます!!

第1話と第2話を井上さんに朗読していただきましたが、このたび第16話と17話も、朗読していただきました!

朗読を聞くには下のURLをコピペして飛んでください!

謎の対談も、聞いていただけると幸いです(笑)

https://x.gd/9kgir

更新情報はXで!「@dinagiga」「@seitsuku」

 今日の放課後も、雫たち声優部の面々はアニ研の部室に集まっていた。

 だがその室内は、いつもとは少し違った様相を呈している。折り紙を切って輪を作り、鎖のようにつなげた壁飾り。ドアには、生花をあしらったリース。そして部室の真ん中には、ツリーが立っている。

 そう、今日はクリスマスなのである。

「メリー・クリスマス!」

 そう叫んだ雫だったが、自分とは違った言葉が耳に入った。

「あれ? 凛ちゃん、今なんて言ったの?」

「メリー冬至! だよ!」

「とうじ?」

 首をかしげた雫に、結芽が視線を向ける。

「温泉に入ること」

「それは“お湯に治す”で湯治!」

「卒業生代表」

「それは送辞に答える答辞!」

「あの頃は、はっ」

「それは和田アキ子、じゃなくて当時!」

 そんな二人に、麗華がニッコリと笑顔を向けた。

「現在の暦で毎年12月22日前後、北半球で太陽の位置が一年で最も低くなって、日照時間が一番短くなる日のことです。逆に太陽の位置が一年で一番高くなる夏至と日照時間を比べると東京で約4時間40分、北海道の根室で約6時間30分もの差があると聞いたことがあります」

「ほえ〜」

 雫が感心の声を上げた。

 麗華は、例の巨大な本で調べなくても、声優部イチの物知りなのだ。

「麗華はすごい! 声優部のハカセくんと呼んであげよう!」

「いえ、結構です」

 凛の申し出を、丁寧に断る麗華。

「それで凛ちゃん、どうしてメリー冬至って言ったの?」

「うちのお父さんがそう言ってたのだよ! なぜかは知らないけどね!」

「知らないんかーい!」

 雫にそう突っ込まれた凛が、助けを求めるように麗華に顔を向けた。

 と同時に、麗華が例の巨大な事典をパラパラとめくり始める。

「そのお話、わたくしも聞いたことがありますわ……これですわね」

 その手がピタリと止まり、ページに目を落とす。

「一説によるとクリスマスは、太陽の復活を祝う古代ヨーロッパの祝祭と、キリストの誕生を祝うことが結びついたもの、だそうです」

「クリスマスって、キリストさんのお誕生日なんだよね?」

 首をかしげる雫。

「聖書をよく読むと分かるのですけど、イエス・キリストの誕生日はハッキリとは書かれていません。つまり、古代にクリスマスを決めた年の冬至が12月25日で、キリスト教徒以外の人もみんなでお祝いしましょう、ということで、キリストの降臨日を12月25日にしたと、何かの本で読んだことがあります。なので、クリスマスは冬至から生まれたと言ってもいいのかもしれませんね」

「だからメリー冬至なのかぁ」

 感心してうんうんとうなづく凛に雫が突っ込む。

「凛ちゃんが言ったんじゃない!」

 いつもとは逆である。

 次に雫は、姫奈と英樹のアニ研勢に目を向けた。

「部長と諏訪くんも、何か別のこと言いませんでした?」

 姫奈が大きくうなづく。

「ハッピー・ホリデーって言ったのよ」

「え? 部長もですか!?」

 英樹が驚いて姫奈に目をやった。

 雫が再び首をかしげる。

「どうして、ハッピー・ホリデーって?」

 結芽が制服の両襟を持って、ぐいっと引いた。

「それは法被!」

「ゆめっちです」

「それはねづっち!」

「私はね――」

 姫奈が、なぜか誇らしげに語る。

「大好きなアニメ『ユーリ!!! on ICE』に出てきたからよ」

「あ! グランプリファイナルの開催、ちょうどクリスマスの時期だっけ!?」

 凛の顔がパッと明るくなった。

「その通り! だから作中で、バルセロナの街とかでこの言葉が聞こえたの。だから私にとってメリー・クリスマスはハッピー・ホリデーなのよ!」

「さすがアニ研部長! で、すわっちは?」

 そう凛に振られた英樹は、少し恥ずかしそうに頭をかいた。

「ボク、『けいおん』が好きすぎて、配信の英語吹き替え版まで見たんだけど……」

「すわっちすげー! 英語分かるんだ!」

 いや、高校生なんだから少しは分かるでしょ、なんて顔で凛を見つめる姫奈。

「そうしたらさ、日本版の“メリー・クリスマス”って台詞が、“Happy Holidays!”に変わってたんだ。それでつい……」

「つい英語しゃべっちゃうんだ! すわっちすげー!」

「すげー!」

 雫と結芽も、それに同意した。

「だけどさ――」

 凛が姫奈と英樹に目を向ける。

「どうして“メリー・クリスマス”って台詞が、“Happy Holidays!”に変えられてたんだぁ?」

 再び麗華の出番である。

 彼女以外の全員が、麗華が手にしている巨大な本に注目した、

 パラパラ……ピタリ。

「12月周辺にキリスト教のクリスマスだけでなく、他の宗教や文化の重要な祝祭日が重なっているため、アメリカでは、多様な宗教や文化に配慮して“メリー・クリスマス”の代わりに "ハッピー・ホリデーズ"という挨拶を使うことがある、だそうです」

「なるほど〜」

 彼女の本はただの事典ではなく、すでに外付けの記憶媒体だよなぁ、そう思う英樹である。

 その時、姫奈がパンパンと大きく手を叩いた。

「はいはい、クリスマスのミニ知識はそれぐらいにして、そろそろ今日の本題、メインイベントに入りましょう!」

「そうだった!」

 凛が思わず大きな声を上げる。

「うん! 早く始めよう!」

 雫も笑顔になる。

「キクラゲも賛成だと言ってる」

 姫奈の口元がニヤリと上がった。

「アニ研恒例、クリスマスプレゼント交換会よ!」

 ひゃっほー! と、皆笑顔で歓声を上げた。

創造祭をひかえながらも、年末年始を楽しむ声優部の面々。

クリスマス、そしてお正月。

戦いの前の静けさ……?

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