第29話 会議は踊る!?
「声優」と言うお仕事の存在を知らなかった女子高生が声優を目指して奮闘する、笑いあり涙ありの……いえ、ほとんど笑いだらけの楽しい青春ストーリーです。
声優の井上喜久子さんが実名で登場しますが、ご本人と所属事務所のアネモネさんには快く承諾をいただきました! ありがとうございます!!
第1話と第2話を井上さんに朗読していただきましたが、このたび第16話と17話も、朗読していただきました!
朗読を聞くには下のURLをコピペして飛んでください!
謎の対談も、聞いていただけると幸いです(笑)
https://x.gd/9kgir
更新情報はXで!「@dinagiga」「@seitsuku」
「じゃあ諏訪くん、議事録を元に、これまでのことを説明してね」
「はい、部長!」
姫奈の言葉に、英樹がすっと背筋を伸ばした。
「まず、最近で一番重要な出来事は、声優部を作りたいという四人が我がアニ研に入ってくれて、なんとか廃部の危機を脱したことです!」
「泥舟に乗ったドリフターズ」
そうボソリと言った結芽に、雫がぱっと明るい顔を向ける。
「結芽ちゃん、私ちゃんと覚えたよ! ドリフターズは8時に全員集合する人たち!」
凛がガクッとずっこけた。
「雫、そっちを覚えちゃったのかぁ」
「そっちって、どっち?」
「だからこの場合のドリフターズはさぁ――」
そんな凛の説明を遮るように、姫奈が英樹に言う。
「諏訪くん、そんなところまで遡らなくていいから、創造祭の話だけでいいの!」
「あ、分かりました。だとすると……」
英樹が、議事録をメモしているスマホの画面をスクロールさせた。
「声優部の活動として、創造祭のステージで朗読をすることに決定!」
「そう、そこからよ」
凛がニヤリとした笑顔を浮かべる。
「私たち、言葉でセッションするのだよ!」
「凛ちゃん、私ちゃんと覚えたよ! 私がボーカルなんだよね!」
肩をすくめる凛。
「雫、そっちを覚えちゃったのかぁ」
「じゃあ……キクラゲちゃんはリコーダー!」
「そっちでもないんだよなぁ」
そんな二人に、結芽がボソリと言う。
「まかせて、キクラゲはリコーダーを吹ける」
「エリンギも吹ける」
「シイタケも吹ける」
そんな三人組に、雫が不思議そうな顔を向けた。
「トカゲ三兄弟はそんなに老けてないよ?」
「その老けるじゃないっての!」
凛に続いて、結芽も突っ込む。
「三兄弟じゃない。キクラゲは長男、エリンギとシイタケは双子の弟」
かくかくとうなづく結麻と結花。
ふうっと、姫奈が大きなため息をついた。
「諏訪くん、無視していいから続きを」
「了解です!」
そう言って再びスマホに目を落とす。
「朗読する作品は“ハチドリのひとしずく”」
「それはちゃんと覚えてる!」
「雫が読みたいって言ったんでしょーが!」
「そうだよ」
あっけらかんとした笑顔を凛に向ける雫。
「だがそこに、大きな問題が立ちふさがった!」
英樹の声が突然大きくなった。
そんな彼に、凛が問いかける。
「その問題とは!?」
「“ハチドリのひとしずく”は、声優部の四人で朗読するには短すぎるのだ!」
見得を切るような英樹の大声に、雫が首をかしげた。
「でも、身近なのはいいことじゃないの?」
再び凛がガクッとずっこけた。
「その“みじか”じゃないっつーの!」
「じゃあどの“みじか”?」
「ショートよ、ショート!」
すかさず結芽がボソリとつぶやく。
「ショートケーキ」
雫がパッと笑顔になる。
「食べたーい!」
「そのショートじゃなくて!」
「でも凛ちゃん、ショートケーキはあるのに、どうしてロングケーキってないのかなぁ」
うーんと考え込む凛。
「いや、たぶんあるんじゃない? 長いケーキ」
その時バサッと、大きな本を開く音が部屋に響いた。
「ショートケーキのショートは、短いという意味ではありませんわ」
麗華が、いつも携えている巨大な事典、姫奈と秀樹はグリモワールと呼んでいるが、を開いたのだ。
「ショートは英語で、さくさくする、ぼろぼろ崩れると言う意味があり、ビスケットのような菓子が使われているから、という説と、製菓に用いられる油脂“ショートニング”が使われているから、という説などがある、だそうですわ」
「ふへ〜」
感心したのか雫と凛から、変な声が漏れた。
「諏訪くん!」
姫奈の声にビクッとする英樹。
「あ、はい! 進めます!」
うなづく姫奈。
「えーと、今伊勢さんが広げている事典に“ハチドリのひとしずく”の全文が載っていたのですが、とっても短かった、ということです。四人で朗読どころか、一人で読んでもあっという間に終わってしまう」
あ、そうだった。
一同、前回の会議を思い出していた。
「あちゃー、すっかり忘れてたぜ、ダンナ!」
「私もよ、奥様!」
凛が雫に視線を向ける。
「奥様?」
「だって、凛ちゃんが旦那って言うから」
二人の会話に触れず、麗華が姫奈に言う。
「部長、何か手があるとか言ってませんでしたっけ?」
結芽が右手でグーを突き上げる。
「その手じゃないって!」
凛の突っ込みを聞き、雫が姫奈に顔を向けた。
「じゃあどの手なんですか?」
その問いに、うふふと不敵な笑顔を浮かべる姫奈。
「この前の会議で伊勢さんが、脚色して長くするしかないって言ってたでしょ?」
「はい、言いましたわ」
「部長! 何か進展があったんですか!?」
英樹の問いに、姫奈がひとつ息を吐いた。
「その通りよ」
「部長、すごい!」
「ダンナ! もったいぶらずに早く教えてよ!」
姫奈が一同をゆっくりと見渡す。
「実はね、私の親友が文芸部にいるの。しかもその子、戯曲を書くのが得意なのよ」
「ぎきょく?」
雫の顔に、ハテナマークが浮かんだ。
すかさず麗華がパラパラとページをめくる。
「戯曲は、演劇等の台本や脚本の形式で書かれた文学作品のこと。脚本とは違い、文学作品としての芸術性や思想性を重視する傾向がある読み物といえる。一方台本や脚本は、実際に演劇等を上演するための設計図としての側面が強い……という定義ですわ」
「なるほど!」
凛がバッとソファーから立ち上がった。
「つまり、戯曲が書けるってことは、その人、朗読の台本も書けるってことだ!」
「その通りよ。しかも――」
「しかも?」
一同が姫奈に注目する。
「彼女に頼んだら、脚色してもっと長い台本にしてくれるって!」
いきなり問題解決である。
「そんな手があったのか!」
凛が姫奈に拍手を始めた。
英樹も立ち上がって拍手に参加する。
「それに、行動が早い!」
結芽が、拍手しながらつぶやく。
「部長は手が早い」
姫奈が苦笑する。
「それ、違った意味に聞こえるわよ」
確かに!
そう思い、爆笑する一同であった。
やっと、創造祭への道に光が見え始めた雫たち!
ですが、まだまだまとまりが見えませんよね。
このままで、一丸となって創造祭へと向かう放送部や演劇部に勝てるのか?
今後の展開にご期待ください!




