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第26話 駅近の一戸建て

挿絵(By みてみん)

「声優」と言うお仕事の存在を知らなかった女子高生が声優を目指して奮闘する、笑いあり涙ありの……いえ、ほとんど笑いだらけの楽しい青春ストーリーです。

声優の井上喜久子さんが実名で登場しますが、ご本人と所属事務所のアネモネさんには快く承諾をいただきました! ありがとうございます!!

第1話と第2話を井上さんに朗読していただきましたが、このたび第16話と17話も、朗読していただきました!

朗読を聞くには下のURLをコピペして飛んでください!

謎の対談も、聞いていただけると幸いです(笑)

https://x.gd/9kgir

更新情報はXで!「@dinagiga」「@seitsuku」

「ここ」

 結芽が指差したのは、まだ新築と言える白壁の一戸建て住宅だ。

 凛が驚きの声を上げる。

「すげー! 結芽んち一戸建てじゃん!」

 玄関横にカーポートはあるが、車は停まっていない。その奥には、あまり広くはないが庭もあるようだ。

 おもむろに結芽がインターホンのボタンを押す。

 するとピンポーンと、軽やかな音が鳴った。

 そんな結芽に、雫が首をかしげる。

「結芽ちゃん、自分の家なのにインターホン鳴らすの?」

「うん。鍵出すの、面倒」

「どんだけ面倒くさがりやねーん!」

 凛が結芽に、右手の甲で、漫才師のような突っ込みを入れた。

 今日の、アニ研声優部放課後会議は、結芽の自宅で開こうということになったのである。

『はい』

 家人の声だ。なぜか雫たちには、結芽の声とソックリに聞こえた。

「帰宅した」

 結芽がそう言うと、彼女と同じ声が告げる。

『合言葉は?』

「ビー」

 ガチャリと鳴って、門扉のロックが解除された。

 凛が小声で麗華に聞く。

「ビーって何?」

「詳しくは分かりませんが、昔とても人気のあったラジオ番組での挨拶、だったと記憶しています」

 結芽が門扉を開き、皆を招き入れる。

「さぁ、みんな入るが良い」

「どこのお殿様だよ!」

 結芽の自宅は、ひと言で言うと“豪華”だった。

 豪邸とは言えないが、プレハブや量産タイプには見られない特徴がいくつもある。

 広々としたリビングはフローリングで天井は高く、二階の屋根まで吹き抜けになっている。そのままフロアが繋がっているダイニングキッチンはカウンター式で、システムキッチンには海外ドラマでよく見るビルトイン型の食洗機が一体化していた。そして結芽の話では、このLDK以外に部屋が四つもあると言う。

 凛がはしゃいだように言う。

「吉祥寺駅から徒歩13分! こんな物件めったに無い! ねぇ結芽、これって持ち家? それとも賃貸?」

「持ち家」

「だったら……たぶん一億は超えるよね!?」

 そう言って麗華を見る凛。

「そうですわね。もっといくかもしれませんわ」

「二人とも!」

 雫がたしなめるように、はしゃいでいる凛の肩を抑えた。

「そんな話したら失礼よ!」

 そう言われて凛が振り返ると、そこに結芽とよく似た大人の女性が立っていた。

「いらっしゃい! 結芽がお友達を連れて来るなんて珍しいから、とっても嬉しいわ。しかもこんなに大勢」

 今日はアニ研全員、総勢六人で会議なのだ。

「私のママ」

 あわてて居住まいを正す凛。

「お、おじゃまします!」

 その隣で、姫奈がしっかりと頭を下げた。

「アニ研部長の会津です。今日はお部屋を使わせていただいて、ありがとうございます!」

「大丈夫。今日はお父さんの帰りも遅いから、このリビングを使ってね」

 結芽に似ているのに、彼女の母とは思えない早口だ。しかも明るくて元気である。

「みんな、ママに自己紹介」

 結芽の言葉に、皆スッと背筋を伸ばす。

「アニ研平部員の、諏訪です!」

「あだ名はシュワッチ」

「すわっちだよ!」

 結芽のボケに、凛の突っ込みが入った。

「淡島雫です」

「高千穂凛で〜す!」

「伊勢麗華と申します」

 凛がぐっと胸を張る。

「私たちは、アニ研に間借りしてる声優部です!」

「結芽から聞いてるわ。泥舟に乗ったんですって?」

 結芽の母はそう言って、うふふと楽しそうに笑った。

「結芽! お母さんになんちゅーこと言ってんのよ!?」

「だいじょうぶ。私、軽いから沈まない」

「そういうことじゃないっつーの!」

 再び小さく笑う結芽ママ。

「さあ、座ってて。学校からここまで歩いてきて、きっと喉かわいてるわよね? 何か飲む?」

「いえ、お構いなく!」

 姫奈のその返事を聞き終わる前に、結芽ママはキッチンへ向かい、お茶の準備を始めた。

 ガラスのローテーブルを囲むように置かれた、ブラウンのソファーセットにそれぞれ座る雫たち。

 雫が結芽に小声で言う。

「結芽ちゃん、泥舟は姫奈先輩たちに失礼だよ」

「じゃあ泥縄」

「それも失礼!」

 そんな会話に、姫奈と英樹が顔を見合わせて苦笑した。

「部長、言い得て妙、かもしれませんね」

「そうね。声優部のみんなが来てくれなかったら、間違いなく泥舟は沈んでいたわ」

「それに、新入部員募集とか、まさに泥縄でしたから」

 そう言ってアニ研の二人は、まだ何か言い合っている結芽と雫に目を向け、ホッと安堵の息を漏らした。

 その時凛が、悲鳴とも驚きともつかない、突拍子もない声を上げた。

「うひゃあ!」

「凛ちゃん、どうしたの!?」

「あれ!」

 凛が指差す先に視線を向ける一同。

「ええっ!?」

「どういうことですの?」

 そこには、二階へと続く階段があった。

 そこから、ひょいと顔を出している少女が二人。

「結芽があと二人いるーっ!」

 左右それぞれで結んだ短めのツインテール。

 その少女たちは、どう見ても結芽とソックリだったのだ。

 しかも部屋着の胸ポケットから、キクラゲそっくりのぬいぐるみが覗いている。

「諏訪くん、私たちは超常現象に巻き込まれているのかしら!?」

「幻を見ているのかも!?」

 アニ研の二人も困惑顔だ。

「分かった!」

 突然パッと明るい表情になる凛。

「結芽って、三つ子だったんだ!」

「ええーっ!」

 驚きの声をあげた雫たちであった。

凛「結芽って、三つ子だったんだ!」

まさに衝撃の事実!

いや、事実?

そのあたりは次回のお楽しみです!

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