第22話 ここに一人で暮らしてるの!?
「声優」と言うお仕事の存在を知らなかった女子高生が声優を目指して奮闘する、笑いあり涙ありの……いえ、ほとんど笑いだらけの楽しい青春ストーリーです。
声優の井上喜久子さんが実名で登場しますが、ご本人と所属事務所のアネモネさんには快く承諾をいただきました! ありがとうございます!!
第1話と第2話を井上さんに朗読していただきましたが、このたび第16話と17話も、朗読していただきました!
朗読を聞くには下のURLをコピペして飛んでください!
謎の対談も、聞いていただけると幸いです(笑)
https://x.gd/9kgir
更新情報はXで!「@dinagiga」「@seitsuku」
「広〜い!」
麗華の家に到着すると、雫と凛が目を丸くしてそう叫んだ。
玄関を入ると短い廊下を進んですぐに、14畳ほどもある広々としたリビングダイニング。その横に、やはり広いキッチンスペース。麗華の話では、この他に四畳半と六畳の部屋があると言う。
「麗華、ここに一人で暮らしてるの!?」
問い詰めるような勢いで迫る凛に、麗華がニッコリと笑顔を向ける。
「そうです」
吉祥寺駅から徒歩で約15分、周りの建物から頭一つ抜き出るような高さのマンションがそびえ立っている。
ハーフムーン吉祥寺。
一階と二階が飲食店やコンビニなどの店舗になっている、いわゆる下駄履きマンションである。麗華の部屋は14階建ての14階だ。おかげでベランダからは、遠くまで広々とした景色が見渡せる。
雫がしみじみとした声で言う。
「いいなぁ、私もこんなお部屋で一人暮らし、してみたいなぁ」
「それは無理だね」
凛が少し意地悪そうにニヤリと笑った。
「どうして?」
「雫、寂しがり屋だから、一人暮らしなんてできないに違いない!」
「そんなことないもん!……多分」
「麗華」
結芽が、いつもの静かな口調のまま麗華に言う。
「なんですか?」
「ここ、億ション?」
結芽の言葉に、あわてて凛が口を挟んだ。
「結芽! その質問、リアルすぎ! プライベートに立ち入りすぎ!」
「でも気になる。キクラゲもそう言ってる」
だが、麗華は特に気にもしていないようにあっさりと答えた。
「賃貸ですので、実際の価格は存じ上げておりませんわ」
「じゃあ――」
結芽がまだ食い下がる。
「家賃はいくら?」
麗華は再びニッコリと笑う。
「ご想像におまかせします」
凛と結芽が、名探偵よろしく推理モードに突入した。
「結芽、実際いくらぐらいだと思う?」
「ズバリ、25万円」
「たっか! せいぜい15万ぐらいじゃない!?」
「いや、この立地でそれは有り得ない。それに、」
「それに?」
「2LDKはもっと高いはず」
凛がハッとする。
「そうか! この広いLDKとあと部屋が二つ! 確かに2LDKだ!」
「しかも14階」
「タワーマンションだー! タワマン!」
「民族大移動」
「それはゲルマン!」
「バカ殿様」
「クワマン!」
楽しそうな二人に、麗華の声が冷静に突っ込んだ。
「タワーマンションは20階建て以上、もしくは高さ60m以上の場合を言います。ここは14階建てなので、タワマンではなく高層マンションと呼ぶべきでしょう」
「へぇー」
雫が感心したような声をあげる。
「でも、高層マンション14階の2LDKって、やっばりすげー!」
凛はまだワクワクが止まらないようだ。
「そう、だから25万はすると思う」
「まさにファミリータイプじゃん! ファミリーいないのに!」
そう言ってからハッとして、あわてて両手で自分の口を塞ぐ凛。
「凛ちゃん!」
雫から厳しい声が飛んだ。
だが麗華は、いつもの上品な笑顔をくずさない。
「うふふ、確かにそうですわね」
「ごめん、麗華! 私がプライベートに土足で踏み込んじゃった!」
「大丈夫です。そのことは、いずれ皆さんにお話する時が来るでしょう」
結芽がボソリと言う。
「特別天然記念物」
「それは鳥のトキ! 麗華が言ったのは時間の時!」
その時、アニ研部長の姫奈が両手をパンパンと叩いた。
「はいはい、無駄話はそれくらいにして、そろそろ会議を始めましょう!」
英樹も苦笑しながら言う。
「せっかく伊勢さんが部屋を貸してくれたんだし、ちゃんとやろうよ」
そうだった。
完全下校時間を過ぎて放課後の学校を追い出された雫たちは、会議をするためにここへやって来たのだ。
両手で口を抑えていた凛が、その手を上に突き上げて言う。
「よし! 会議を始めます! 議題は、創造祭への参加について!」
創造祭は、雫たちが通っている都立武蔵原高校の学園祭、文化祭の名前だ。生徒たちの創造する力を尊ぶ、という意味が込められて名付けられた。
アニ研内で、雫たち声優部がどんな活動をするのかを考えた時に、創造祭に参加しよう、ということになったのである。
武蔵原高校でも名門と呼ばれる放送部は、毎年創造祭でオリジナルの短編映画を上映している。
歴史ある演劇部は、もちろんステージでの演劇発表だ。
では、声優部なら何をすればいいのか?
「だ・か・ら! バンドみたいに、言葉でセッションすればいいんだよ!」
「凛ちゃん、またセッションって。それって具体的にどうすることだっけ?」
雫が首をかしげる。
だが麗華は、ゆっくりとうなづいた。
「言葉でのセッション。つまり、声でセッションするということですから、朗読のことだと結論が出ています」
「そー! それそれ!」
「じゃあそう言ってよ!」
雫が呆れ顔になる。
「コブラ」
また結芽のボソリとした声が聞こえた。
「それは猛毒!」
「君たちにはまだ早い」
一瞬の沈黙に包まれた後、凛が結芽に聞く。
「それ何?」
「目の毒」
「分かるかーい!」
再び姫奈が、両手をパンパンと叩いた。
「じゃあ、アニ研内声優部として創造祭に朗読で参加するなら、どんな作品を読めばいいのかしら?」
そうだ、それこそ今日決めなくてはならない議題なのであった。
雫の手がそっと上がる。
「私……」
「はい、雫くん」
凛に指名され、雫が立ち上がった。
ぐっとその目に力を込め、意を決したように皆に言い放つ。
「私、“ハチドリのひとしずく”を読みたい!」
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