第20話 声優部って何をするの?
「声優」と言うお仕事の存在を知らなかった女子高生が声優を目指して奮闘する、笑いあり涙ありの……いえ、ほとんど笑いだらけの楽しい青春ストーリーです。
声優の井上喜久子さんが実名で登場しますが、ご本人と所属事務所のアネモネさんには快く承諾をいただきました! ありがとうございます!!
第1話と第2話を井上さんに朗読していただきましたが、このたび第16話と17話も、朗読していただきました!
朗読を聞くには下のURLをコピペして飛んでください!
謎の対談も、聞いていただけると幸いです(笑)
https://x.gd/9kgir
更新情報はXで!「@dinagiga」「@seitsuku」
「それで、声優部って何をすればいいんでしょう?」
首をかしげながらそう言った雫に、一同は悲鳴のような声をあげた。
「ええーっ!?」
凛が雫の両肩をガシッと掴む。
「雫! 何したらいいかも考えないで、声優部を作りたいって言ってたの!?」
だが、そんな二人に目を向けながら、麗華も少し首をかしげた。
「雫さんの言うことも分かりますわ」
今度は麗華の両肩をガシッと掴む凛。
「どう分かるって言うのよ!?」
「ひと言で声優部と言っても、その目的によって活動内容が変わると思うんです」
「目的?」
そう言うと凛も、首をかしげた。
一方、結芽はうんうんとうなづいている。
「結芽ちゃんには分かるの?」
その問いに、結芽が凛に顔を向けた。
「どのテキかによって、けっこう違う」
「どのテキ?」
「トンテキか、ビフテキか」
「そのテキじゃなーい!」
そう突っ込んだ凛に、結芽がボソリと言う。
「じゃあ、ライバル」
「へ?」
「宿敵」
「そのテキでもなーい! 目的よ、モ・ク・テ・キ! 何ていうか、実現したい最終的なもの、目指すゴールのこと!」
「オウンゴール」
「してないわ!」
だが、そんな凛と結芽の大騒ぎは、アニ研顧問の久慈川静香の耳には入っていなかった。彼女の頭は、より大きな問題解決のためにフル稼働していたのだ。
部活の中に部活を作る?
そんな規定は校則には無かったように思われる。
ではどうする?
そう思考する静香の脳裏に突然、この武蔵原高校に着任したての頃に聞いた、先輩教師の言葉が蘇った。
「部活なんて、生徒たちの自由にやらせてあげた方がいいと思うんですよ」
静香より三年先輩の社会科教師、山岸の言葉だ。
「先輩から聞いた話なんですが、ずっと前に、SF小説を研究する部活を作りたいって生徒たちがいたらしいんです。それが職員会議の議題になったんですが、反対意見が多かったみたいなんです。SFなんて不真面目だ、とかなんとか」
その時山岸は、肩をすくめながら話していた。
「アニ研があるんだからSF研があってもいいじゃないかって意見もあったらしいんですが、なかなか認められなかったとか」
「それで、どうなったんですか?」
「同じ小説なんだから、文芸部の中で活動すればいいんじゃないか? と、ある先生が言ってくれたらしくて、丸く収まったそうです。文芸部の部誌にSF小説を書くことで」
これだ!
静香は、頭の中がスッキリと晴れたように感じていた。
文芸部の中でSFを扱っていいのなら、アニ研の中で声優にまつわる活動をして悪いはずがない。静香は大きくうなづくと、雫たちに声をかけた。
「みんな聞いて」
騒がしかった雫たちが、静香に注目する。
「アニ研の中に声優部を作っても大丈夫! 私が許可します!」
その言葉に、ポカーンとする一同。
「えっと」
英樹が苦笑しながら言う。
「ごめんなさい先生、それよりも今、もっと根本的な問題が持ち上がってまして……」
「根本的?」
そう言って眉をひそめた静香から、視線を雫に戻す麗華。
「わたくしは、人が行動する時に一番大切なのは、その目的だと思うんです」
結芽が小声でつぶやく。
「カクテキ」
「まだ言うか!」
と、凛も小声で突っ込んだ。
「雫さんが声優部を作りたいのは、声優を研究するためでしょうか? 推しとして愛でるため? それとも……」
「それとも?」
「声優になるため?」
雫の顔が、パッと明るくなる。
「それだーっ!」
あまりの声の大きさに、小声でボケとツッコミを繰り返していた凛と結芽がビクッとして雫を振り返った。
「私ね、井上喜久子さんみたいに、誰かを感動させられる朗読をやりたいの……だから、声優になりたい!」
ニッコリと優しい微笑みを浮かべる麗華。
「その目的、わたくしも賛成です。皆さんはいかがでしょう?」
「賛成! 私も声優になりたいっ!」
両手を上げて賛同する凛。
結芽も、小さく手を挙げている。
「うん、それがいい。キクラゲもそう言ってる」
「あなたたちはどうなの?」
静香の問いに、アニ研部長の姫奈がキリッとした表情で言った。
「私たちはアニ研として、アニメに関する知識を使って彼女たちをサポートしたいと思います。ね、諏訪くん」
「あ、もちろんでしゅ」
しゃべらなければイケメンの英樹が、盛大に噛んだ。
爆笑する一同。
「よし!」
凛が自信たっぷりな声で言う。
「声優部設立の目的は、みんなで声優になることに決定!」
雫も声を上げる。
「決定!」
だが、麗華が再び冷静な視線を皆に向けた。
「目的は決まりました。では、次に目標を設定しましょう」
また雫が首をかしげる。
「目的と目標って、どう違うの?」
「選挙」
「それは投票!」
「被害」
「それは風評!」
静香は心の中で、また始まったと苦笑していた。
「簡単に言うと、目的は、最終的に実現したい到達点です。一方目標は、その目的を達成するための具体的な行動のことです」
その麗華の言葉に、凛がハッとする。
「そっか! つまり目的は声優になることで、目標はそのために何をするかだ!」
「当たらずといえども遠からず、と言ったところですね。分かりやすく言えば、声優部の普段の活動は、具体的に何をするのか、ということです」
うーんと、頭を抱えてしまう一同。
発声練習?
朗読の練習?
アニ研にはアニメのDVDがたくさんあるから、音を消してアフレコ練習!
それらを日々やるのが声優部?
なかなか正解が見つからない。
例えば、運動部なら個人のタイムを縮めることを当面の目標にする、チームの地区大会優勝、野球部なら甲子園大会への出場など、分かりやすい目標がすぐに思いつく。
だが、そもそも文化部は何を目標に活動しているのだろうか?
「美術部は、美術コンクールとかの入賞かな?」
雫がそう言うと、英樹が思い出したように顔を上げた。
「文芸部は、部誌作ってコミケで売ってるらしいです!」
英樹の言葉に、姫奈の顔も明るくなる。
「それいいわね! でも、アニ研の目標ならそうかもしれないけど、声優部じゃないわよね……」
「そっかぁ……でも、他の文化部だって、目標とか無いところあるんじゃないですか?」
さっきの大はしゃぎから、急転直下沈黙に包まれてしまう。
そんな雫たちを見かねて、静香が助け舟を出した。
「大抵の文化部は、文化祭で作品を展示したり、成果を発表したりしてるわね」
「文化祭?」
雫が凛に、不思議そうな視線を向ける。
「雫、知らないの? この学校の文化祭、有名なんだよ! 創造祭って言って、生徒の保護者だけじゃなくて、テレビとかラジオが取材に来たりするのだ!」
静香が笑顔を雫たちに向けた。
「あなたたちの声優部も、創造祭で何か発表すればいいんじゃないかしら?」
雫たちが訪ねた放送部は、毎年創造祭に合わせて短編映画を製作、上映しているという。演劇部は、もちろんステージでの演劇だ。
「じゃあ……朗読、かな?」
自信なさげにそう言った雫に、凛が満面の笑顔を向けた。
「それだよ雫! 私たちもステージで、バンドみたいに言葉でセッションするんだよ!」
「それ、どういう意味?」
首をかしげる雫に、凛が言い放った。
「分からん!」
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