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悪役令嬢、追放回避のために領地改革を始めたら、共和国大統領に就任しました!  作者: ぱる子
第一部 第4章:暴かれる腐敗

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第26話 陰謀の舞台②

 ホールでは、すでに次のダンスタイムに入り、貴族たちが華やかに曲に合わせてステップを踏んでいる。笑い声や談笑が渦巻き、シャンパンのグラスが交わされる光景は、一見するとただの優雅な夜の宴だ。


 だが、パルメリアには別の光景が重なって見える。先ほど廊下の奥で見た不穏なやり取り、そしてベルモント派の輩たちが口にしていた言葉。まさしくこの舞踏会そのものが、陰謀の舞台となっていることを痛感する。


(こんなにも熱狂的に見える社交の場が、実は不正や野心の温床。……私が狙うのは、この腐った体制を暴き、打ち崩すこと。そのためには、今夜の場を最大限利用しなければ)


 パルメリアは涼やかな笑みを保ちつつ、深呼吸をする。先ほどの踊りで注目を集めたのは間違いなくメリットでもあるし、敵にとっては最大の警戒要因でもある。


 グラスを手にしたまま、パルメリアがホールをゆるやかに歩くと、あちこちから貴族たちの視線が集中する。その多くは「王太子と踊った令嬢」としての好奇の目だが、彼女は内心で思う。


(私が踊っている間、相手は確実に焦って動いたわ。そのタイミングで密談を行ったとなれば、何かつかめそう……)


 思案を続けるなか、一人の貴婦人が彼女に話しかける。


「まぁ、コレット家のご令嬢。先ほどは素敵なダンスで皆を魅了したそうですわね。王太子殿下とのお話など、聞かせてくださいませ?」


 甘ったるい声色に乗せられた会話の誘い。しかし、パルメリアはあくまで貴族の基本マナー通りに微笑み返す。


「お気遣いありがとうございます。殿下とのお話は、さほど特別なものではございません。……あまり騒がれると、私も少し困ってしまうのです」


 そう言いながらも、頭の中では先ほどの光景がぐるぐると回っている。ドアの向こうの書類と金のやり取り。あれだけでは不十分だが、既に相手が焦っていることは明白だ。


 パルメリアは闘志を燃やすように、グラスを置いて次の一手を考える。殿下や仲間たちの力を借りて、必ず決定的な証拠をつかむ――その決意が、胸の奥で静かに熱を帯びていた。


(まだ今夜は長い。踊りも続くし、貴族たちの動きも落ち着きはしない。……必ず、この場で次の勝機を見出してみせる)


 こうしてパルメリアは、ホールへ戻ったものの、ひそかに得た手がかりを心に刻み込み、相手をどう揺さぶるかを思案する。さっき目にした光景――あの焦りと苛立ちを見せるベルモント派の男たちの姿が頭を離れない。


(具体的な証拠がまだ足りない以上、今すぐ公にはできない。でも、彼らの焦りが本物なら、こちらにも突き付けるチャンスはあるわ)


 ホールに戻った彼女を見つけた王太子ロデリックが、貴族たちとの会話の合間に軽く視線を送ってくる。そのまなざしは「うまくいったか?」と問いかけているかのようにも感じられるが、パルメリアは静かに首を横に振り、小さく微笑んで返すだけに留めた。


 まだ完全な成功には程遠いが、相手が確実に動いているという手応えがある。それだけでも、十分な一歩と言っていいだろう。


 「舞踏会」という華麗な表舞台が、今まさに「陰謀の舞台」へと変貌しつつある。パルメリアはこの場を逃さず、必ずベルモント公爵派の不正を白日の下に晒す決断を新たにする。


 夜の帳はますます深く、ホールの熱気は絶頂に近い。次のダンス曲が始まり、貴族たちはまたペアを組み直して優雅にステップを刻む。


 パルメリアは一見すると、会場の隅で休息をとっている風に見えるが、その瞳には静かな炎が宿っている。廊下で見た光景こそ不正の一端を示唆するものの、決定的な証拠にはまだ欠ける。しかし、相手の焦りを感じ取ったことは大きな収穫だ。


(今夜はまだ終わらない。きっと、あの公爵派も追いつめられればさらに手を打ってくるはず。……私も、この舞台で待ち受けてみせる)


 パルメリアは背後で控えるガブリエルの存在を感じ取りながら、もう一度グラスを手に取り、軽く口を潤す。張り詰めたサスペンスの空気が、絢爛(けんらん)の舞踏会にかすかな陰りを落としていることに、彼女は気づいていた。


 だが、それを知る者はまだ多くはない。貴族たちはただ、王太子とコレット令嬢の組み合わせにささやき合い、豪華な宴を楽しんでいるだけだ。


(問題は、これから先。あの扉の奥にある「証拠」を完全に突き止めるのか、あるいはさらに深い謀略が待っているのか――)


 パルメリアは涼やかな微笑を崩さず、自分に言い聞かせる。


 この夜はまだ終わらない。ほんのひととき、舞踏曲が高らかに響くホールから離れただけで、あれだけの秘密を垣間見ることができた。ならば、さらに大胆な手段をとって相手の不正を暴き出す可能性もあるだろう。


 夕陽もとっくに沈み、外の世界は暗闇に包まれているが、この王宮の舞踏会はこれからが本番。いつ、何が起こってもおかしくない。パルメリアは濃密なサスペンスの予感を胸に、次の策を練り始める。


(ほんの一瞬、相手の弱みを見た。十分すぎる収穫だわ。さあ、もう一歩――あともう少しで、ベルモント公爵派の「秘密」を(えぐ)り出せるはず)


 こうして、舞踏会の華やぎの中でパルメリアは決意を新たにする。裏で行われる密談や不正の取引は、まだ完全に明らかになってはいない。だが、相手が焦るほど、こちらに勝機があると信じられる材料は揃ってきた。


 目の前のダンスフロアでは、また新たなペアが軽やかにステップを踏み始めている。パルメリアはその光景を眺めながら、「自分はこの陰謀の舞台を必ず制してみせる」と胸のうちで宣言する。


 夜はまだ更けていく。数多の明かりが彩るホールには、交わされる笑みと探る視線が渦巻き、まるで優雅な仮面舞踏会のような雰囲気さえ(かも)し出している。そんな中で、彼女は一瞬の気の緩みすら許さないまなざしを宿し、さらなる一手へ静かに歩みを進めたのだった。

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