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悪役令嬢、追放回避のために領地改革を始めたら、共和国大統領に就任しました!  作者: ぱる子
第一部 第3章:恋と葛藤

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第20話 危険な共闘①

 王太子ロデリックの視察による波紋や、レイナーとの切ないやりとりなど、多くの出来事がパルメリアの胸を揺らしていた時期。そんな彼女のもとに、一通の手紙が届いた。差出人はユリウス・ヴァレス――都市部を中心に活動し、瞬く間に支持を集めている「革命派」のリーダーとして知られる青年の名だった。


 まさか自分の領地を訪れたいという申し出が来るなど思いもしなかったパルメリアは、一瞬戸惑ったが、彼が「改革について話がしたい」と記していたことで「彼の狙いを確かめる好機かもしれない」と判断し、接触を受け入れることにした。


 曇り空が広がる午後――。コレット公爵家の別邸に、黒髪の青年が馬を駆けて現れた。黒いマントを(ひるがえ)し、いかにも洗練されていない無骨な雰囲気を(まと)う。彼こそがユリウス・ヴァレス。革新的な思想を掲げ、民衆を先導する存在だと噂されている人物だ。


 パルメリアは別邸の応接室でユリウスを迎え入れると、わずかに敬意を払う仕草をしながらも警戒をにじませていた。改革派の急先鋒である自分に、さらに「革命」を掲げる青年が接近してくるのは穏やかな話ではない。


 窓越しに灰色の雲が立ち込める空を見上げつつ、パルメリアは自分の考えをまとめる。もしユリウスが革命を加速させるためにコレット領を利用しようとしているなら、安易に手を組むのは危険。だが、一方で国の腐敗を根絶やしにしたいという気持ちは同じかもしれない――複雑な思いが胸をよぎる。


「初めまして。パルメリア・コレット様、お会いできて光栄です」


 ユリウスが静かに一礼をする。偽りのない情熱をその瞳に宿しつつも、貴族にはない粗野な雰囲気が際立つ。彼女は椅子に腰を下ろし、応接室のテーブルを挟んで相手を見据えた。


「革新的な思想を掲げる『革命派』のリーダー――ユリウス・ヴァレス。噂は聞いているわ。あなたたちが、武力で貴族社会を打倒しようとしているという話もね。いったい何をしに私のところへ?」


 やや挑むような声色に、ユリウスは微苦笑を浮かべる。


「なるほど、その反応は想定内だ。コレット公爵領の改革が急速に進んでいると聞けば、我々が注目するのは当然だろう? もし可能なら、君と共闘したいと考えているんだ」


 その言葉に、パルメリアは唇を引き結ぶ。ユリウスの言う「共闘」がどのようなものか、まだイメージがつかめない。武力行使も辞さない革命派のやり方と、自分の目指す穏健な改革がどう噛み合うのか。そもそも、彼の背後にはどんな勢力がついているのか――知りたいことは山ほどあった。


 テーブル越しに彼を見据えながら、パルメリアは改めて問いかける。


「あなたたち革命派は、体制そのものを打ち壊したいのでしょう? たとえ血を流すことになっても、国を変えたい――そう聞いているわ。私も腐敗を放置したくはないけれど、だからといって無謀な戦いに乗るつもりはない」


 ユリウスはその言葉を受け、軽く瞳を伏せる。しかし、すぐに強い光を宿した視線をパルメリアに戻した。


「血を流さずに変革が叶うなら、もちろんその方がいい。だが、この国の腐敗は根深い。王室や貴族の支配を黙認するだけでは、いつか限界が来る。声を上げなければ、誰も苦しみから救われないんだ」


 部屋の空気が張り詰めるように静まり、互いの思いがぶつかる。パルメリアは理知的な冷静さを崩さず、しかし内心では彼の熱量に圧倒されそうな自分を感じていた。腐敗に対する彼の(いきどお)りは本物だし、共感できる部分もある。だが、やり方を誤れば、無辜(むこ)の民が犠牲になる危険があるのも事実だ。


(ゲームではヒロインたちが革命派と協力して体制を変えたルートがあったはず。……でも、ここでは私自身がコレット領を守るために動いている。どう折り合いをつけるか慎重に考えなきゃ)


 彼女は深呼吸し、ユリウスに視線を戻す。


「革命そのものを否定するつもりはないの。腐敗を放置できない気持ちは、私も同じだから。でも、あまりに急激な変化は多くの血を生む可能性が高いわ。それを私は望んでいない。貴族社会を正すためには、積み重ねた制度や慣習を一度に破壊するのではなく、抜本的な改革を段階的に進める方法だってあると思うの」


 ユリウスはその言葉に、わずかに唇を引き結んだ。彼の表情には「穏健策で本当に変えられるのか?」という疑念が浮かんでいるように見えるが、一方でパルメリアの視線には嘘偽りのない真剣さがあると感じている。


 激しい対立ではなく、互いの正義を探り合う静かな火花が散る時間――二人の違いを埋めるすべはまだ見えないが、不思議な共通点も感じられた。


 ユリウスは手元の手袋を外し、指を組みながら語り始める。


「俺たち革命派は、民衆の力を信じている。君の改革が成功しつつあるのは、コレット領の人々を本気で動かしたからだろう? 俺たちも同じだ。民衆が団結し、声を上げれば、王国は必ず変わる。……問題は、その声を踏みにじる貴族や王室の連中だ」


 彼の言葉には熱がこもっているが、同時に荒削りな危うさも感じる。パルメリアはその姿を見つめつつ、意を決したように口を開いた。


「民衆の力を侮るつもりはないわ。でも、貴族社会や王室を一気に倒すのは、あまりにリスクが大きすぎる。あなたは、その後の秩序や人々の生活をどう考えているの? ただ壊すだけでは、さらに混乱を招く可能性だってある」


 ユリウスはさっと目線を上げ、少し険しい表情で言葉を返す。


「そこは……正直、まだ全てを示せる段階ではない。だが、腐敗に抵抗しないまま苦しむ民を放置していいのか? 君だって領地を守るために動いているだろうが、王国全体には同じように救いを求める人が山ほどいる」


 その言葉にパルメリアは胸が痛む。確かに、コレット領だけでなく、多くの地域で農民や職人が苦しんでいる事実を知っている。周辺領地の一部からは彼女に助けを求める手紙も届き始めており、見過ごすわけにはいかない。


 けれど、だからと言って急激な「革命」に踏み出すのは、真に人々を救う道なのかどうか――彼女にはまだ答えを出せずにいた。


 ユリウスは立ち上がり、窓辺に歩み寄る。外は曇り空で、光が差さない薄暗い午後の風景が広がっていた。パルメリアはその背中を警戒心とともに見つめる。


 やがて彼は振り返り、力強い視線をまっすぐパルメリアに向ける。


「一気に変えるのは、危険だとわかってる。だが、腐敗を根絶しなければいずれ人々は限界に達する。そのとき、無秩序な暴動に走らせないためにも、俺たち革命派が先導し、君のような改革者が協力すれば、正しい方向へ導ける可能性があるんじゃないかと思うんだ」


 危険な共闘――それは武力も含む可能性を示唆しながら、国を動かす変革を目指すという誘いでもある。パルメリアは静かに息を呑みながら、その申し出がもたらす未来を想像しようとする。


 もし革命派と手を組めば、腐敗を強いる保守派に対して圧倒的な民衆の力を得られるかもしれない。それが、王太子ロデリックや保守派との対立を一気に深める結果にもなり得る――メリットも大きいが、リスクも計り知れない。

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