表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢、追放回避のために領地改革を始めたら、共和国大統領に就任しました!  作者: ぱる子
第一部 第3章:恋と葛藤

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/314

第17話 互いに探る視線①

 翌朝、コレット公爵家の門前には王太子ロデリックとその護衛が列を成していた。前日の到着後は、簡単な挨拶と打ち合わせが行われただけで、いよいよこの日は実際の領地視察に出ることになったのだ。


 パルメリアは、ロデリックが自身の目でコレット領の実情を確かめると宣言したときから、どこか胸の奥がざわついていた。国の体制を象徴する王太子と、「改革」を掲げる自分――本来なら交わらないはずの二人が、今こうして同じ馬車に乗り込もうとしている。それを思うだけで、彼女は淡い緊張と不思議な高揚を感じずにはいられない。


 公爵家の馬車には、パルメリアとロデリック、そして必要最低限の護衛だけが乗り込む。使用人たちからすれば、王太子をもてなすにはもっと華やかな行列を組むべきではと提案もあったが、ロデリックの「最小限で十分だ」という要望を尊重した結果だった。


 馬車がゆっくりとコレット公爵邸を出発すると、庭先で見送る使用人や家臣たちは皆、一様に息を飲んで見守る。あまりの緊張感に場が張りつめているなか、パルメリアは窓越しに軽く手を振り、出迎えよりも穏やかに見送られつつ馬車を進ませた。


(王太子殿下がどんな反応を示すのか……慎重に対応しなければ)


 そう自らを律しながら、パルメリアは馬車のなかでロデリックの横顔を盗み見る。彼は外の景色に視線をやり、何やら考え込むような表情をしている。扉を閉めるときに一瞬だけこちらを振り向いた彼の瞳には、淡い興味とかすかな警戒が入り混じっていたようにも見えた。


 ゆっくりと動き始めた馬車の揺れに合わせ、ロデリックが低く落ち着いた声で話を切り出す。


「まずは主要な街道沿いから確認したいと思うが、用水路や排水路の整備状況も合わせて見たい。君は以前から輪作を導入していたとか」


 パルメリアはうなずき、視線を外に向ける。


「ええ。既存の農法だけでは厳しいと判断しましたので、一部の村から試験的に始めたんです。最初は反発もありましたが、今では成果が出ているところもありますわ」

「なるほどな。聞くところによると、荒れ果てていた村を短期間で蘇らせたとか……なかなかできるものではないと思うが」


 その言葉に冷ややかな皮肉や疑念が混ざっているかと思いきや、ロデリックの声には単純な興味が感じられる。パルメリアは「ここは素直に答えても問題ない」と判断し、できるだけ淡々と話す。


「複数の学者や騎士、家臣たちが協力してくれました。私一人の力ではありません。ただ、成果を出すまでの過程には苦労もありましたし、まだ課題も山積みです」

「課題、か。具体的には?」


 ロデリックの問いにパルメリアは一瞬考え込む。彼が自分の改革にこれほど積極的に興味を示す姿は意外だったが、ここで言葉を曖昧(あいまい)にしては信用を損ねるかもしれない。


「保守派が妨害することもありますし、財源の確保が追いつかない場面も多いです。学舎の建設や上下水道の整備にも興味はありますが、全てを一度に進めるのは難しい。どこかで優先順位をつけて進めるしかありませんわ」

「ふむ……思っていた以上に現実的な視野で改革を進めているようだ。話に聞く『強引な手腕』ばかりではないのだな」

「噂で殿下が抱いていた印象と違いましたか?」


 やや棘のある口調で切り返すと、ロデリックはほんのわずか唇をほころばせる。まるで「君らしい」とでも言わんばかりに、軽く肩をすくめて微笑みを浮かべた。


「そうだな。宮廷で流れる噂とはずいぶん違う。もっと傲慢で攻撃的な女かと思っていたが、どうやらそうでもないらしい」

「がっかりされましたか?」


 思わずパルメリアがそう問うと、ロデリックは「いいや、むしろ興味が増したよ」と静かに答える。その言葉にドキリと胸が弾むのを自覚しながらも、パルメリアは表情を変えずに窓の外に目を移した。

 馬車の中にはどこか張り詰めた空気が漂い、二人の短い会話の合間には、お互いが相手の反応を観察しているのが伝わってくる。


 やがて馬車は最初の目的地である村へ到着する。既に家臣たちが連絡を入れていたので、村長や農民たちが集まり、王太子の視察を迎え入れる準備をしていた。


 ロデリックが馬車を降りると、遠巻きに見守っていた村人たちが一斉に頭を下げ、パルメリアもまた淡々と簡単な挨拶を交わす。多くの人々にとっては、「王太子」と「公爵令嬢」が並んで歩くなんて、まるで夢のような光景だ。


 村長らしき老人が緊張気味に喉を鳴らしながら言葉を発する。


「こ、これは……王太子殿下にお越しいただけるとは大変恐れ多いことで。ありがとうございます。村の様子をじっくりご覧いただけると……うれしいです」


 ロデリックは落ち着いた態度で応じる。


「なるべくありのままの姿を見せてほしい。私が聞きたいのは、コレット領がどう変わったのか、その実情だ」


 村長が「は、はい……」とうろたえながら案内を始めると、パルメリアはあえて一歩下がり、殿下と村長のやり取りを見守った。しかし、ロデリックは時折ちらりと彼女を横目で見て、言葉少なに「この作物は何だ?」「どうしてこんな仕組みを?」と問いかける。


 パルメリアが説明を挟むたびに、ロデリックは黙ってうなずいたり、ときには「なるほど。理に適っているな」と短く感心を表す。村人たちも王太子が思ったより冷たい態度ではないと知ると、次第に畑や保管庫などを積極的に見せようと盛り上がっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ