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悪役令嬢、追放回避のために領地改革を始めたら、共和国大統領に就任しました!  作者: ぱる子
第一部 最7章:新時代の幕開け

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第50話 新時代の幕開け②

 翌朝。澄み切った青空の下、議事堂の前には大勢の市民が集まり、初の本格的な議会開会を見守っていた。パルメリアがエントランスに姿を見せると、割れんばかりの歓声が響く。


 自由を求める声は国中に広まり、各地から遠路はるばるやって来た人々が「自分の声を届けたい」と列を作っている。かつては特権階級しか通されなかった王宮の門が、今は誰にでも開かれているのだ。


 ロデリックはそんな市民の波の中を自然体で歩き、レイナーは外国からの使節団を案内していて、ユリウスは混乱を避けるため警備を監督している。ガブリエルはそのすぐ傍らで、不審者や余計なトラブルが起きないかと目を光らせていた。そしてクラリスは、渡された資料を熱心に読み込みながら、時折メモを取っている。


 パルメリアはそんな仲間たちを視界の端に捕らえながら、胸に込み上げる感慨を押し留められず、静かに微笑む。


(この国が変わる瞬間に、私は立ち会っている。私たちが築き上げたものは、まだ半ばにも届かない。それでも、疑いようのない新時代が、確かに始まっているのを感じるわ)


 そして、ふと思う。「前の世界」にいた頃の自分は、ただ日常に追われ、限界まで働き疲れ果てた会社員だった。その日常が嫌で嫌で仕方なくはなかったのに、今や異世界で革命を起こし、大統領として国を導いている。人生の皮肉というか、不思議な巡り合わせだ――と、思わず苦笑してしまう。


 だが、もうあのころのように「追放」や「破滅エンド」を恐れる必要はない。自分の意志で行動し、自分の力で仲間を得て、この国を変えてきたのだから。彼女はもう、「あのゲームの悪役令嬢」ではなく、「革命を成し遂げた主人公の一人」なのだ。


 議事堂の大扉が開き、新しい議会が開催される。あちらこちらで議員や代表者が声を上げ、各々の地域が抱える課題や改革案を次々と提示する。その全てを彼女は受け止め、精査し、国全体の利益を考えながら決断を下す立場にある。


 多忙な日々はさらに続いていく。まだまだ多くの困難や試練が待ち受けていることは、誰の目にも明らかだった。けれど、首都の空気は絶望よりも希望をはらみ、人々はもう長き沈黙の時代には戻りたくないと願っている。


 そしてパルメリア自身も、国と恋のはざまで揺れながらも、「愛と大義を両立できる」と信じ始めている。かつてはゲームの結末を恐れ、命を繋ぐだけで精一杯だったが、今は自分の力と仲間の支えを糧に、未来を創る側へと変貌した。


 子どもたちが笑い合い、街に色彩が戻り始め、自由な言葉が飛び交う――それが当たり前の社会を実現するため、彼女はまだ走り続けるだろう。決して一人ではなく、四人の視線を感じながら、そして国中の人々と手を携えて……。


(もし「前の世界」の私に言えることがあるなら――「事故に遭っても、転生しても、あなたは自分の力で未来を変えられる」と伝えたいわね。こんなにも大きな幸福と責任を同時に抱えているなんて、想像できないだろうけど……)


 そんなことを思いながら、パルメリアは視線を上げる。そこには雲ひとつない青空が広がり、乾いた風が心地よく頬を撫でていく。


 国中で革命の名残が少しずつ霧散し、人々がそれぞれの仕事や暮らしを取り戻している。決して全てが平穏ではない。争いや不安は残っている。けれど、その先には明るい希望が確かに灯り始めていた。


「さあ、私たちの旅はまだ続く。ここで終わるわけにはいかないもの」


 そう心の中で宣言し、パルメリアは笑みを浮かべて議事堂の扉を開く。


 彼女の未来、そして共和国の未来は、まだ途上にある。しかし、国民が主人公となり、それぞれが声を上げて歩み続ける限り、この新国家は必ずや成長を続けるだろう。


 それは王国が築き上げた「過去」の支配構造を乗り越え、「自分たちの意志で道を切り拓く」という革命の真髄を示すものだった。


 心の中には、レイナー、ユリウス、クラリス、ガブリエル、そしてロデリック――多くの仲間の面影がある。彼らが示す様々な愛や敬意、友情を、パルメリアは決して忘れない。近い将来、どんな形で答えを出すにせよ、今はまだ国を安定させることが優先だ。それでも、この国の再建が一段落したときには、自分自身の幸せと向き合える日が来るかもしれないと、ほんの少しだけ思うようにもなっていた。


 かつて「傲慢な令嬢」と呼ばれ、破滅を避けるためにもがいていた時代が嘘のように遠い。今、彼女は「愛と大義」を両立する道のりを、自らの手で切り拓いているのだ。


 そうした幾重の思いが絡み合うなか、パルメリアは大統領としての責務を胸に刻み、「新時代の幕開け」を迎えるための準備を続けている。国中の人々は既に十分な熱気を帯び、社会の構造が変わり始めているのを誰もが感じる。そこにあるのは確かな希望――そして、これから先に続く未来への期待に満ちた高揚感だ。


 彼女は微笑み、瞳を閉じて呼吸を落ち着かせる。夢見がちだったあの頃とは違う。今こそ「パルメリア・コレット」として、この世界を変え、自分の人生を存分に生き抜くのだ。


 もはや破滅エンドを恐れる必要などない。自らの意志で動き、仲間たちと手を取り合い、愛と改革を両立させる――それこそが、真の勝利の先にある物語だと。


 そして、彼女は軽やかに足を踏み出す。

 その姿を見つめる多くの眼差しは、国を動かす新たな力を感じ取り、「まだ先に続く物語」を確信する。

 ここで大団円を迎えたとしても、なお先には無数の道が広がっている――それが「革命のその先」であり、「新時代の幕開け」に他ならないのだ。


「こんな世界だって、変えられる。私はもう、振り返らない。――パルメリア・コレットとして、この先へ進むわ……!」


 頬をかすめる優しい風が、晴れ渡る空から降り注ぐ光をいっそうまばゆく映し出す。

 そして、その輝きの下で――共和国の歴史が、今、静かに、そして力強く幕を開けようとしていた。

 誰もが未来を自らの手で切り拓き、共に支え合う新時代を夢見ている。

 彼女はもう振り返らない。理想を掲げて歩み出すその背中が、この国の未来を照らす光となるから――


(第一部 完)

(第二部へ続く)

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