ぶつかりおじさんの過去
初投稿ですm(_ _)m ぜひ読んでやってください〜
感想お待ちしております✨
プロローグ
怒りなのか、嫌悪なのか、私にすらわからない。
ただ私が、こちらに歩いてくる太った女を、煩わしいと思っていることは確かだった。
あいつもどうせ“優しさ”というのを持っちゃいない。それは、私と違って。
私は女の方へ足を速める。その女は歩みが遅い。自分に甘えているから太るし、ちんたらした邪魔者になるのだ。邪魔者め、邪魔者め。
私は少し前かがみになって、肩に力を入れる。そして、思い切りぶつかった。
1、私が道を譲るようになった理由
幼少期からそうだった。
私は周りに迷惑をかけないように生きてきた。出来るだけ目立たないように、周りに溶け込むことだけを考えていた。
そのせいか、友達は確かに多くはなかった。孤独に近かった。でも迷惑をかけないことは、優しいことだ。正しいに決まっている。
それなのに、この世界は迷惑をかける奴が恵まれすぎている。周りと違う道を歩むことで、孤高ぶりたいケーワイ(空気が読めない奴)。休み時間中、廊下に屯して馬鹿みたいにはしゃいでいる奴ら。
私はそいつらより幸せな人生を送っている、そう信じることで生きてきた。
あれは中学二年のときだったか。廊下を歩いていたら、屯していた奴の肩にぶつかった。それは、たまたまぶつかったのではなかった。
彼らは私を嘲り笑うような視線を向けてきたのだ。
私はごめんと言って、早足でその場を去るだけだった。後ろから、彼らの笑い声がしていたのを覚えている。
それ以来、私は道を歩くことさえ恐ろしくなった。前から人が歩いて来るたびに、彼らの笑い声を思い出しては、息を飲んだ。
私はそういうときにぶつからないよう、周りから出来るだけ離れて歩くようになった。
2、私が“ぶつかりおじさん”になった理由
その日、私は疲れていた。
べつに仕事で特別大きなミスを犯したわけではなかった。まず大きな仕事を任されることはなく、ミスのしようがなかった。
ただ、起きて、出社し、仕事を終えれば、真っ暗な家に帰る。そんな単調な生活に限界を感じていたのだ。
このまま死んでいくのだろうか。人生の最後さえ、隣に誰もいてくれないのだろうか。
恋人がいたことはなかった。そしてこれから先もないだろう。
学生時代の少ない友人は、みんな結婚してしまった。そして、そのすべての結婚式に、私は行かなかった。お誘いの手紙は、ごみ箱に破り捨てた。
それから連絡はない。こうして、私は少ない友達さえも失った。
帰り道は真っ暗闇だった。ぽつぽつと街灯があるだけで、その明かりさえも薄暗かった。
ばちばちと音がするのは、その明かりに群がる蛾のせいだった。その蛾を見上げながら歩いていると、私は前から来る女に気が付かなかった。
肩がぶつかった。私は一瞬何が起こったかわからなかった。振り返ると、バランスを崩した人影がうっすら見えた。
私の脳内に、あの笑い声が響く。目の前に靄がかかる。喉から冷たい何かが這い上がってくる。意識が遠のいていく。
そんな私を現実に戻したのは、女の声だった。すいません、そう言って、去っていった。
私はしばらく立ち尽くした。
そして女の歩いて行った先の闇に、手を伸ばした。そして、呟いた。私だ、と。
あの女の姿は、昔の私を連想させた。学校の廊下で、笑い声を背に慌てて去っていった、私の姿。なんて弱い、邪魔な女だろう。
私は、幸せを信じていた弱く馬鹿馬鹿しい過去を恨んでいた。そしてこの日から、私は、昔の私のような弱い存在を恨むようになった。
次の日、見慣れてしまった最寄り駅は、いつものように混んでいた。その光景を見るだけで吐き気がした。
私は改札を通ろうとした、そのとき、前方に屯している女子高校生たちを見つけた。
改札の前で、尚且つ通勤ラッシュ時だというのに、こんなところで駄弁っている女子高校生たちを周りも迷惑な目で見ていた。
私は少し興奮した。そうだ、私は変わった。今日こそ、殻を破るときだ。
定期で改札を通った後、彼女らに向かって足を速めた。一番小柄な女に狙いを定める。少し前かがみになって、肩に力を入れた。
どすっという音とともに、その女が隣の女に倒れる。人混みのせいで彼女たちが何を言っているかはわからなかったが、何かこっちに向かって、酸素を求める魚の様に口をぱくぱくさせていた。それはなんとも滑稽だった。
何やら笑いが込み上がってきた。勝ったと思った。彼女らにも、昔の私にも。それは快感以外の何物でもなかった。
それからというもの、私は“優しさ”を持たない者に怒りをぶつけた。
馬鹿みたいにはしゃぐ小さな女ども。迷惑だ、邪魔だ。そうみんな思っているのだ。
私こそ正義の心を持つ“優しい”人間だと信じていた。
モノローグ
太った女はバランスを崩し、大げさにも転がるように倒れた。そして女は、痛い痛いと叫び始めた。うるさい、やっぱり馬鹿だと思った。
私は無視して歩き始めた。しかしあまりにもうるさいものだから、振り向いた。
そこで目に入ってきたのは、バックの後ろに括られたマタニティマークだった。
どうでしたでしょうか?
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