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Sociometry

作者: 木塚文美

Sociometry=計量社会学





何故、私は出遭ったのか。



何故、私から離れていくのか。



何故、私は求めるのか。



判らない 分からない 解らない。



でも何故、知りたいと思うのかはわかる。



この心が疼くから。



私の内にある綺麗な声が疼くから。








そんなとき、私はひとつの結論に辿りついた。



複雑に絡み縺れたこの糸は



きっと



『彼女』という存在なくして



解けるものではないのだということを。




















「きっと…あれだ。アレに似ている」


口元を大きく開かせ、人差し指を立てながら彼は言う。


「何?」


「三角関係」


「サンカクカンケイ?」


首元を大きく捻る僕に、彼はそのまま大きな眼をこちらに見開きながら言った。


「政治家が争うのもそうだろ、ただ自分が〝国民〟の支持を得るために、自分なりのモラルを掲げては他党と争う。これも三角関係」


「はぁ」


「いじめだってそう。ただ自分がクラスで認められる存在になりたいがゆえに、他者を蹴落としてでも上に上がったような感覚を味わおうとする。その他の事例にも言えることだね」


そう言って彼は顎に指をかけ、小さく笑う。


その小さなソシオメトリストを横目で見つめながら僕は、この小道を茜色に照らす、夕焼け空を感じていた。

ただ、暖かな、暖かな陽の光を。

 










僕は中学時代、いじめを受けていた。しかもこの丁度隣にいる、小さなソシオメトリストに。



これでも中学時代はとても大きな図体を持っていた彼はクラスでも人目置かれ、周囲から常に恐れられていた存在だった。


そんな彼に不運にも目をつけられてしまった僕。靴を隠されたり、休み時間に校庭に連れ出されては滅多打ちにされたり、心無い言葉を一杯浴びせかけられたり。時には屋上に連れ出して「ここから落ちろ」と言われたことも。


そんな彼がこのように僕の隣で今笑っていられるのは…、彼を突き動かしたのはきっと〝彼女〟のおかげなのかもしれない。





『〝彼女〟って誰? 名前なんて言うの?』


そう、僕は尋ねたことがある。しかし彼は決まってただ『分からない』と言う。姿、形も見えない、ただ無なる存在なのだと。しかし、彼は続けてこう言った。


『俺に〝夢〟を与えたのも、それを叶えるための〝ソシオメトリー〟を与えたのも彼女なんだ』と。



〝他人の夢が自分の夢?〟



僕はさっぱり意味が分からないながらも、そう感じた。なんて淋しい人生だな、と。けれど彼の瞳は以前とはとても似つかず輝いていた。




そして、今日もこの瞳はしっかりと僕の隣で茜色の光を反射し輝いている。中学を卒業して別れてから大学生になって何年ぶりかに再会したときにも、真っ先にその瞳が眼に映った。


その鮮やかなそれを日々眺めていると、時々決まって、無性に汚してやりたくて、汚してやりたくて仕方がなくなる。この薄汚れた感情は何処から沸いて出てくるのだろう。


そう、この今現在も。あの赤々と光る瞳をどす黒いペンキで塗りつぶしてやりたい。





「あれ、顔色悪いけど、大丈夫か?」


すると急に彼が僕の顔を覗き込んできた。彼の大きな顔が僕の目の前で大きく映る。突如呼吸ができなくなった。彼の瞳に映る僕の姿はまるで、こんな薄汚れた僕でさえも輝いて見えるようで…。怖くなって眼を伏せた。小さく身体が震える。


「ちょ、大丈夫かお前」


肩に手が触れる。ふと僕はビクついて我に還り、


「あ、いや、大丈夫」


小さく答えながら、その手を払った。


「俺の寮で何か食べてくか? 一人暮らしも大変だろ」


「い、いやいやノーセンキュー」


彼の突然の言葉に僕は驚き両手で手を振った。


「そこ、遠慮するなって。明らか顔色悪いし、全然食べてないだろお前」


「同居の人にも悪いし、いいから」


「ああ、タケは今日実家帰っていないよ」


ニヒヒと彼は笑う。僕はもう断る口実が見つからず、しぶしぶ彼に手を引かれ、彼の寮に向かった。




「フブキっておせっかいやきだよな」


手を引かれながら後ろでそっと呟いてみる。


「そう? まぁ、時々度を越えて迷惑にもなったりしてな」


「昔もそうだったっけ」


この問いに彼は小さく押し黙ってから、


「さぁな」


と、小さく答えた。


「…疲れない?」


「は?」


「だから、疲れないかって」


強い口調で問う僕の方へそっとふり向く彼。〝今日まじで変だぞ、お前〟と、小さく呟きながらも、うーんと少し考える振りをするような仕草をして、そっとこう答えた。


「疲れるな。けど、これがなりたい自分なんだって思うとちょっと楽になるんだ」





  ――。


ああ…。なんだこいつ。その言葉を放つ唇ごと両の手で持って引きちぎってやりたい――。僕の脳裏で激しく鼓動を増す黒い声。僕の眼はこつこつと薄黒く染め上げられていくようだった。


彼のピンと伸びた背を見つめながら。





「おじゃましまーす」


自分の寮にも関わらず、彼はそう言ってドアを開けた。


「…おじゃましまんもす」


僕もボソッと呟き、中に入る。


「あはっ。言うねー」


彼の言葉に小さく赤面しながらも、そっとそっぽを向き、靴を脱ぐ。


「テレビないのが申し訳ないんだけど、そこの部屋で適当にネットでもしといて。簡単に料理作っとくわ」


背中をぽんと押して、彼はキッチンへと駆けていく。その姿を横目で眺めながら、ゆっくりと身を起こし、その部屋へと向かった。






そして、しばらくの間、何もせずに、この暗い、埃色した部屋を眺めていた。


その部屋の窓は、すっかり日が沈みきった黒い世界を映し出している。


今の僕はこんな色をした部屋でさえ愛おしく思える。ただ平凡な誰もいないこの部屋。美しい、美しいこの部屋。この疲れきった心を無言で、埃の篭った空気の中で癒してくれる。


ふと、知らずに座っていた、薄水色のベッドに目が移る。ここは彼の部屋なのだろうか。薄汚れたベッドを知らずに眺めているうちに、ふと自分の脳裏で、ある映像がフラッシュバックする。


あのいたいけな声、体、迸る汗と涙。しばらく忘れていたものが再び僕の前に現れ、頭を締め付ける。




チャラ~ン。


僕は気を紛らわすためパソコンの電気を灯した。マウスに手をかけてネット上を走る。


そして、偶然見つけたある掲示板に、ただ、


『氏ねしねしねしね死ね氏ね氏ね死ね市ね』


そう書き込んで、窓を閉じた。


――ほら、僕は大丈夫、だってアイツは死んだんだ。





「お待た~」


すると突然、今までの雰囲気と似つかない声が宙を舞い、彼がウエイトレスみたく両の手に料理を持って部屋に入ってきた。


「ちょ、電気もつけないで…目悪くなるっての」


料理を机に置いて部屋の明かりをつける彼。ぴんぴんと音を立てて灯る明かり。白い光が辺りを充満し慌てて目を閉じる。なかなか慣れないその光に、僕はしばらくの間、目を開けていることができなかった。

 




ずるずるっ


歪な音がしてそっと目を開けると、目の前で彼が僕を眺めながら麺を口にくわえている。


「何?」


「何って、スパゲティ」


早く食べな、と言わんばかりにフォークを僕の前に無言で突き出す。僕はそれを静かに手に取った。


少し辛くて少し甘いトマトの味が口の中でとろけだす。二日ぶりの食べ物の味に少し酔いしれながら、ただ必死に食べ物をむさぼった。


三分も経たぬうちに完食してしまった僕の身体は、まだ何かを求めているようだ。そっと彼のスパゲティに目が移る。


「何? 欲しいの?」


彼は小さく笑って、食べている口を止め、皿をそのまま僕の前に差し出した。僕はそれを何も言わずフォークをつけ食べた。


「おいしかったみたいで良かったわ」


食べる僕を目の前に、彼はそう言って頬杖をついた。再び僕の前に現れるその瞳。僕は思わず下を向き必死に食べた。


――もう、やめてくれその目。


これ以上その目で見つめられると僕は、







「僕は…」


「ん?」


知らずにでていたその声に僕はふとため息をついた。フォークを置いて、自分の不揃いの髪の毛をわしゃわしゃと撫でる。


「何?」


彼は僕を見ないで小さく横に視線を下げ、尋ねる。彼のその視線がとてもありがたい。


「僕は、多分あの日…、フブキに屋上から『落ちろ』と言われたあの日に、地の底に落とされてたんだ」


彼は視線を崩さず僕の話を静かに聴いている。


「そして、今もまだ地の底で助けてって叫んで、神様に祈っているのかもしれない」


僕がそう話し終えてから、しばらくの間、空白の時間があった。僕はその間、下を向いていると、彼はふと何を思ったのか立ち上がりベッドに座る。そして一言こう言った。



「それは、良かった」





――良かった、


ああ、彼の目が暖かい、彼の唇が優しい。そしてそれ故に憎らしくてたまらない。


―――タマラナイ。



「僕さフブキのこと――」


胸の中で何かが音を立てて崩れていく。


「好きになっちゃったみたいなんだ」



――ああ、なに言ってるんだろ僕。


「だからさ、ずっと今夜は一緒にいてよ」


気づいたら僕はベッドに座り、彼の身体を静かに抱いていた。小さく微笑を浮かべて。


「ねぇ」


満たしきれていない僕の身体はついに彼までもむさぼろうとしているようだった。ただ、全てを噛み砕いて、唾液で溶かして身体の中へと…。


だんだんと僕の爪や歯がきりきりと鋭くなっていくのが分かった。


「あの時みたいに僕に死ねと言えよ! 殴り倒して僕を殺せよ!」


そう言って彼をそのままベッドへ押し倒す。その彼の肩をぎりぎりと掴み、唾を吐きながら叫んだ。


「そうしたら、僕は楽になれるのに…!」


その目の前のきれいな瞳と唇に僕は吸い寄せられたかのように近づいていく。するとその彼の唇がゆっくりと言葉をつむぎ始めた。


「俺のソシオメトリーにそのような言葉は載ってない」


そう言って彼は笑う。


「何だよ、それ」


「俺の辞書、って言ったら分かるかな」


「あ、あんたの辞書なんかで俺の気持ちが分かるわけ――」


「わかるね」


彼の透き通った声が僕の声を打ち消す。


「だって俺の辞書はお前の辞書だから。お前にもあるはずなんだよ、俺と同じ夢が」


「夢…」


唇が震える。なんだか聞きたくない言葉が返ってきそうで、問いながらも、僕は耳を塞ぎたくて、塞ぎたくて仕方がなかった。

彼の肩を掴む手がギリギリと震える。







「幸せになるっていう夢」


腕の中で彼はそう言って静かに笑う。そう、幸せそうに。


「死んだら何にもなれやしない。わかるか」


急に僕の瞼から一滴の涙が零れ落ち、彼の瞼にそっと落ちる。いや、待て、ここで僕は泣けるのか?泣いてしまうのか?


「辛かったよな。淋しかったよな」


僕の涙を瞼に受けて、彼までも泣いているように見える。


乱れに乱れきった糸がひとつ、解けたような気がして…。


だから、泣いているのだろうか。




あふれ出していく涙を常に払いのける指のひとつひとつが暖かくて愛おしくて仕方がなかった。


「何気に俺もな、お前と同じように辛くて淋しかったりしたんだぜ。一通り暴言を吐いて、殴ったあとに残されるものは何もなかった。何も」


彼はそう言って腕を下ろし、目をつぶる。


「暴言を吐いているときや殴っているときはとても気持ちが良かったんだ。快感でね。けれどそれは食べて満たしているかのような快感。食べ終わったとき、ふと淋しくなるんだ。何をやっていたんだろうって。それはもう、時間が立つと昨夜何を食べたのかも分からなくなるかのように。だから俺は、もう一度お前を呼び出して殴って暴言吐いて…その繰り返し」


自分の瞼にも残る雫も彼は指で払いのけて、そっと目を開ける。部屋の明かりに負けず劣らぬその瞳はいまだ知れぬ紅蓮の光を放ちこちらを見つめていた。


「お前が俺としようとしていることもそうだ。俺を汚してお前に何が残る。経った一瞬の身体の満たしのためだけに、お前は人生を棒に振るうようになるんだ。中毒者のように」


ニッと不気味な笑顔を浮かべて、彼は僕の腕を払いのけ起き上がる。そしてそのままベッドの壁に寄りかかり足を伸ばして座る。


「それじゃぁ、どうしたらいいって顔をしてるな」


ただ呆然と座りつくしている僕にそう声をかける彼。僕はふと小さくうなずく。


「当たり前のような疑問だよな。おれもこの疑問には悩んで悩んだね。っていうか恐らくこの先の答えはどんなお偉いさんもたどり着いていない難題だ」


ちいさく濁った笑みを浮かべながら、その小さなソシオメトリストは天井を見上げる。


「人が欲望を持つのもそう、なんだかんだ言って人は結局、何かの支えなくして生きていくことはできないものなんだよ。そんな現実にぶつかったとき、ふと思ったんだ」


「何?」


僕は久しぶりに声を発すると彼はゆっくりと顔をこちらに向けていった。


「〝絶対〟という存在があったらいいなって」


「…」


「そう思わない?」


「思うけど、そんな非現実的な話し――」


「あるさ」






そう言って彼は今自分が座っているベッドを指差した。


「このベッドは絶対的な存在意義を持ってる。人を休ませるために作られた道具。この部屋の電気だってそう、人の道を照らすための道具。この空や水だって人のためにあるって思ったらその通りだと思うだろ」


「確かに…」


「ただ、人だけが何も明確な存在価値を持っていない。だから人は悩み、生きる意味を問うんだ」


ああ、あのいつもの癖だ。びしっと指を立てて、顔を少し上げて。かっこいいやつ―。


「何ていうか、十分すぎる答えだな」


僕は小さく笑って、ただそう答えた。


「だろ? けど人間だけ存在価値を持たないっておかしいと思わないか? この世界の形あるものすべて存在価値があるってのに」


そうだな。そうなんだけど、なんていうか、ホントこいつといると、


―――疲れるんだよな。


考えてる本人の方がよっぽど疲れてるはずなんだけどね。ちょっと前とか知恵熱出してぶっ倒れたんだっけ―。


 パシっ


「いてぇ」


僕はその考える額に軽くビンタをした。


「ちょっと、頭を冷やせ。また前みたいにぶっ倒れるぞ。ソシオメトリスト」


「はぁい」


彼はそう言って宙を仰いだ。その瞳は虚ろながら、あの小さな輝きを放っている。なぜか僕はもうその瞳が怖いとは思わなくなっていた。ただ、今、彼はその視線の先で何を見ているのだろう、と。




「俺さ、何でこんなに考えるようになったと思う?」


五分くらい経っただろうか。ふと彼が呟く。


「さぁ。高校で社会学専攻してから?」


「そうかもしれない。あ、いやその前から考えるようになってたんだ。だから社会学専攻してさ―」


時計の針がカチカチと部屋中をこだましている。針は既に夜中の三時半を回っていた。


ソシオメトリストって時間も食うんだな。




「ああ、やっぱりお前のせいなのかも」


「僕のせいかよ」


「うん。自由気ままな純粋なお前が、あの日の俺にはすごくキラキラ輝いて見えてね。だからいじめたくなって。その葛藤が俺を考えさせる頭にさせたんだろうな」


あ、さっきまでの僕と同じだ。じゃあ、僕もいずれはこいつみたいなソシオメトリストになってしまうのだろうか?そいつはごめんだ。…いや、もうなっているのかもだけど。


「そう考えると憧れとか、夢とかっていい言葉だよな」


「は?」


「ほら、そうやって人は憧れを持つんだよ。それが嫉妬に変わったらそれで終わりなんだけど、それを目標に掲げて求めようとしたら、ひとつ自分が生きる意味ができる」


「…」






僕はしばし声を出すことができなくなっていた。最もというか正論というか、


「そのとき人はよく嫉妬心に負けちゃうんだよな。自分の憧れに素直になってていいのにね」


なんでこんな簡単に彼は答えを導き出すのだろう。それが疑問で、疑問で仕方がない。


僕は少し顔を上げてこんなことを言ってみる。


「でもやっぱり難しいよ。知らずに嫉妬心に負けてしまうことだってある」


「いいんだよ。それはそれで。その先には必ず壁が待ってるから、その時に方向転換すればいいだけのこと」


「方向転換…」


簡単にそう言ってるけど、それが難しいんだ、フブキ。


「その仕方、教えてよ」


「え?」


「方向転換の仕方。人は落ちるとこまで落ちるとね、もう自分の憧れなんて霞んで見えなくなっちゃうんだ。それよりも大きな大きな壁が眼の視界すべてにたたずんでてね。…道しるべも何にもない」


ナニモナイ。


小さく下を向いて、終始曇った声で話し終えた僕をよそに、彼は小さく背伸びをして起き上がり、ベッドから降りる。


「鼓動の限界を決めて何ができるのさ」


「え…」


「それでも、進もうとするお前の気持ちは嘘じゃないんだろ」


そっと後ろを振り返り、小さく笑う彼にそっと僕の背元にある窓から光が差し込む。


「目を閉じてその気持ちに問いかければいい。〝彼女〟はきっと答えをくれる」


朝日を反射したその彼の瞳はまるで、その胸の赤々と燃える紅蓮をそのまま映し出しているかのようだった。






「にしても、驚いたなー」


朝日を身体全体で受けながら家に帰る帰り道。なんだかいつものこの小道が――、


「ん?」


「お前にそうゆう趣味あったなんて」


――とても清清しく感じる。


「ああ! もうそれは…忘れろ! 仕方なかったというか、切羽詰ってた、というか…」


「分かってる」


僕のこの清清しくお日様に暖められた髪の毛を、彼はそっと右手でくしゃくしゃにする。


「お前も早く〝彼女〟と出逢いな」



――『憧れや夢は人と出逢って初めて成される。出逢うその意味こそ、人間の生きる意味そのもの』――



「――あのさ」


そして、僕の一歩前を歩いていく彼に、ふと後ろから声をかけた。


「そのお前の言う〝彼女〟ってさ、結局なんなの」


「ん―。まぁ、その名の通り恋人のことさ」


「え」


「それでいて、母でもあって、先生でもあって、友達という肩書きもある」


イミガワカラナイ。


「そして、目には見えないけれど、永遠に、絶対的に愛してくれるもの」


分からないけれど、なんだかニンゲンにとって、必要不可欠の存在のような気がする。


そして、なんだか夢幻のような…、




「華奢で、可愛くて」


肌に絶えず吹き当たる風雪のような、


「愛おしくてたまらない」

 

着かず離れず、ある一定の距離を保って回る宇宙のような、そんな存在――なのかな。






「きっと…あれだ。アレに似ている」


口元を大きく開かせ、人差し指を立てながら彼は言う。


「何?」


「今、ここでお前に、タケがどんな顔をしているのか描いてみろって言われても描けないけど、どんな性格でどんな人なのかって聞かれたら答えられる」


そう言って彼は顎に指をかけ、小さく笑う。




その偉大なソシオメトリストを横目で見つめながら僕は、この小道を茜色に照らす、朝焼けの空を感じていた。


ただ、暖かな、暖かな陽の光を。




















image→「Sociometry」

[作詞:KOTOKO 作曲・編曲:C.G mix]


*収録:KOTOKO 11th Single『BLAZE』


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