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皇族姫  作者: 春香秋灯
契約紋の皇族姫-契約紋-
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妖精が支配する森

 残るは、キオンとの蟠りだ。アタシは知らないことが多い。同じただの人の仲間たちに会って、妖精憑きの小国の裏の面を教えられた。

 アタシはただ、あるがまま、表面を見ていた。アタシだけ、恵まれていたのだ。その事実を知って、アタシはキオンの見方を変えた。キオンは王族の妖精憑きだ。アタシの知らない所で、ただの人を見下していたのだろうか。

 そうでないと思いたい。幼い頃から、キオンとは仲良く………していない。ふと、気づく。アタシ、母ナーシャが生きていた頃は、キオン、アタシに酷かった。

 皇帝イーシャの私室で考え事していると、気を利かせて、皇族エウトがお茶と美味しそうなお菓子を出してくれる。

「このお菓子、アイシャールが作ってるって聞いた」

「全て、伯父上のためだ。僕たちも、アンタも、ついでだ」

「それでも、いいね」

 アイシャールは、この部屋にいる人全てに恵みを与える。きっと、この部屋にあるもの全てがイーシャのものなんだ。

 妖精憑きの小国で暮らしていると、アイシャールの行動は理解できる。妖精憑きは、気に入ったものを囲うのだ。

 母ナーシャは、父に囲われていた。家から出ることも大変だった。家事だって全て、父が行った。あれでは、母は何も出来なくなる。

 そして、気づいてしまう。アタシも囲われていたんだ。何も出来ないんじゃない。全て、妖精憑きたちが先にやってしまっていたんだ。たまにやれば、失敗してしまう。

「もう、やらなくていいのよ」

 そう笑顔で言われる。受け止め方によっては、がっかりさせたような気になる。だから、申し訳なくて、出来ることを探す。

 その中で、武器を持つことは、妖精憑きたちは嫌った。武器なんて野蛮だ、なんて口にされたことがある。

 武器を取り上げられようとした時、父が間に入ってくれた。父だけは、違ったような気がする。アタシが出来ることを増やしたい、と頑張っているのを応援してくれた。そして、アタシは狩りに出られるほどには武器を扱う腕をあげたのだ。

 妖精に支配された森には、何かある。ただの人であるアタシでもわかる。人も、妖精憑きも、全てを拒絶するような森。妖精たちは、そこに入る異物を全て拒絶するように悪戯をしていた。

 そういえば、キオンも幼い頃、森に入っていったのだ。力を見せつけるためにだ。その時、アタシも道連れだ。本当に、酷い子どもだったな、キオン。

 子どもなんだから、そういうことをしてしまう。大人たちがどんなに禁忌だ、と強く注意したって、子どもは自らが特別だと思っている。キオンは、力の強い妖精憑きだと、周りからちやほやされていた。それもあって、キオンは森に入ることも大したことはない、と思っていた。

 キオンやアタシだけではない。妖精憑きの子どもたちは皆、キオンなら大丈夫だ、と森に入っていったのだ。

 アタシはあっという間にはぐれた。子どもだから、皆、待ってくれない。アタシなんて、ただの足手まとい、ただの人、どうでもいい存在だから、わざと、はぐれるようなことをしたのだ。後で聞いたら、そう言われた。

 そして、アタシは森を昼から夜までさ迷い歩くこととなる。昼は、ちょっと悪戯されていたのだろう。同じ所をぐるぐると回っていた。

 母は、ただの人だけでなく、外からやってきた人だ。妖精憑きの小国は、外部の人を入れない。妖精憑きを両親にしても、まれに、ただの人が生まれるという。だけど、ただの人に生まれ育っても、血筋が妖精憑きの一族だから、外に出されることなく、小国の中で生き続けるしかないという。

 母は、父と結婚する前までは、この国を出るものと考えていた。母だけは、外の人なのだ。血筋も別だ。色々とあったのだろう。閉じ込められる理由もないので、母はがむしゃらに勉強した。そして、それも無駄になって、父と結婚して、家に閉じ込められていた。そんな母から、外で生きていくための知識をアタシは伝授された。

「森に入ることがあったら、覚えておきなさい」

 本当は、王族でなければ読めないような書物も呼んでいた母。だから、森のことはよく知っていた。


 森で迷ったら、枝を折って印をつけなさい。

 同じ所に戻るようなら、動いてはいけない。

 夜になったら、絶対に動いてはいけない。

 朝になったら、出られるようになっているから、動きなさい。


 アタシは、母に教えられたことをそのまま実践した。枝を折って、いくつかの分かれ道を進んだ。そして、元に戻らされていることに気づいた。これは、妖精が悪戯している。無駄に動いても、疲れるだけだ。だから、アタシは大人しく、そこで座り込む。

 大人しくしていると、雨が降り出した。喉が乾いたな、と思っていたところだったので、助かった。でも、全身がびしょ濡れた。

 雨はすぐに止んで、暑い日差しで、服はあっという間に乾いた。そして、夕闇に包まれた。その時になって、アタシはお腹が空いたことに気づいた。

「おい、こんな所に子どもがいるぞ!!」

 たまたま、狩りに出ていた人たちに出会った。

「おい、森に入ってはいけない、と言われてるだろう」

「妖精憑きの子どもたちに無理矢理、連れてこられたの。途中ではぐれて」

「まさか、他にも子どもがいるのか!?」

「ダメ、動いちゃ!!」

 探しに行こうとする大人たちをアタシは止めた。アタシは言葉足りないけど、母に教えられたことをそのまま伝えた。

「そんな話、俺たちは知らない。隠していたのか」

 怒りさえ滲ませる大人たち。この時、彼らが何故、怒っているのか、アタシは知らなかった。

「ここで、朝まで動いちゃダメ。大変なことになるって、母さんが言っていた」

「しかし、妖精憑きの子どもが」

「妖精憑きだから、大丈夫だよ。だって、そう言ってたもん!!」

 妖精憑きは万能だ。そう教えられ、そう体験すらさせられる。アタシは彼ら妖精憑きの子どもたちの玩具だった。助けに行く必要なんてないのだ。

 見捨てたわけではに。子どもいえども、妖精憑きである。むしろ、ただの人であるアタシや、この大人たちのほうが危ないのだ。

 アタシに言われたから、というだけではないだろう。ただの人である大人たちは話し合って、そのまま、その場で火をおこし、食事をとって、朝を待つことにした。

「あの妖精憑きと人の間に生まれた子どもか。本当にいたんだな」

「アタシも、ただの人の大人に会ったの初めて!!」

 妖精憑きでない者同士だからだろう。すぐに仲良くなった。色々と話して、そうして、夜、うとうととしてきた頃、何かが落ちる音が少し離れた所でした。

 大人たちはアタシを守るようにして身構えた。もしかしたら、大きな獣かも、と警戒していた。

 遠くで、大きな何かがあった。それは一体、何かわからない。火を持っていけば、獣は怖がって逃げるはずだ。そうして、火のついた木を持って近づいた。

「子どもだ!!」

 それは、森に入った妖精憑きの子どもたちだ。酷い姿となって、子どもたちは、無造作に積み上げられていた。その一番下に、いつも偉ぶっている妖精憑きキオンが下敷きとなっていた。

 朝になると、ただの人である大人たちは、泣いて震える妖精憑きの子どもたちを持って、森を出た。

 昨日の昼間は、あんなに迷ったというのに、翌日の朝には、あっけなく、森を脱出できた。

 それからだろう。キオンはアタシに意地悪はしなくなった。他の妖精憑きがアタシに意地悪すると、キオンは真っ先にやってきて、助けてくれるようになった。

 アタシは、それから、小国を歩くと、ただの人の大人を探すようになった。見つけると、話しかけ、色々と教えてもらった。母から与えられたのは所詮知識だ。実際は違う。だから、お互い、知識を交換した。

「お陰で、あの時は生き延びられた」

 何故か、ただの人の大人たちは、アタシにそういう。どういう意味なのか、アタシは今もわからない。





 アタシは、改めて、キオンの前に立っている。キオンは、随分と落ち着いていた。アタシのことを気まずい、みたいな顔して、見ないようにしていた。

 アタシはもう、牢に入らない。キオンが暴れたら怖いからだ。だって、今のキオンは枷がされていない。アイシャールがいうには、キオンは力の強い妖精憑きだという。どんなことになるかわからない。

 座る所がないので、アタシが立ちっぱなしでいるのは心苦しいと感じたのか、アイシャールは机と椅子のセットを持ってきてくれた。そこに、アタシ、アイシャール、皇族エウトが座る。

「ねえ、教えてほしいの。どうして、ただの人は、妖精が支配する森で狩りをさせられるの? 別に、狩りなんかしなくても、外の小国から、恵んでもらっていたりしたよね」

 思い返せば、色々とおかしい。森に狩りをしなくても、妖精憑きの小国を特別視する小国から色々と恵んでもらっていた。

 実際、そういう話が出ていた。捕虜となった人たちは、辺境の小国の関係を詳しく、帝国に教えてくれた。辺境の小国は、他の場所とは違って、特殊な集まりだ。

 海、山、中央は、それぞれの役割を持って独立していた。ところが、辺境の小国は違う。門前に、妖精殺しの小国を立て、それより、小国が点在し、最奥の、妖精が支配する森に妖精憑きの小国が守られるようにあるのだ。

 帝国から一番離れた所に、妖精憑きの小国がある。その前に、壁がいくつもあるのだ。

 今回の戦争、妖精殺しの小国が帝国側についたことで、おかしくなった。これまでは、妖精殺しの小国が盾となっていたのだ。あの国は、妖精を封じる技術を持っているだけでなく、戦力まで持っているという。あの国の後ろに広がる小国が手を合わせても、妖精殺しの小国には勝てない。それほどの武力を保持していた。

 その事実をアタシは皇族エウトから教えられた。アタシが教えて、と言えば、エウトは全て、話してくれたのだ。だから、毎日、アタシは聞きたいことを思いついたらメモした。

 そして、妖精憑きの小国の捕虜たちから話を聞いて、疑問を持ったのだ。

 キオンは黙り込んだ。同じ狩りに出た仲間だ。キオンの気まぐれだろう、と妖精憑きたちは笑っていた。

 でも、気まぐれで行くような場所ではない。キオンは、あの妖精に支配された森で、恐ろしい目にあったのだ。森に近づくことも毛嫌いするほど、キオンは、あの森を恐れていた。なのに、アタシが狩りに参加すると決まった途端、恐怖に震えながらもついてきたのだ。


「キオンが教えてくれないのなら、あの、ただの人たちに聞いてくる。子どもの頃のあなたを助けてくれた人もいる」

「話す」

 他人から知らされるよりは、とキオンは考えたのだろう。

「あの森は、処刑場だ」

 その事実は、慈悲とか、そんなものがなかった。



 妖精憑きの小国は妖精憑きが生まれる一族が支配する国だ。だから、必ず妖精憑きが生まれる。だけど、何故か、神の悪戯か、それとも、罰か、一族同士で子を為しても、ただの人が生まれることがある。

 最初は、無為に育てたのだ。普通に婚姻もさせた。ところが、ただの人との間に生まれるのは、ただの人なのだ。

 その事実を知った一族たちは恐れた。このままでいくと、妖精憑きが生まれなくなる。

 王族は考えた。慈悲の生き物だ、と言われる妖精憑きである。今更、ただの人を排除するような真似は教えに反する。

 そして、考えたのは、ただの人となった者たちを妖精が支配する森へと狩りと称して出すことだ。

 教えを捻じ曲げ、妖精の力では狩りは出来ないから、と言って、ただの人を森へと追いやった。ただの人は、足手まといだ。慈悲を受け、申し訳ない、という気持ちが大きかった。だから、大人しく森へと狩りに出た。

 ただの人は、どんどんと減っていった。全ての人が生きて帰れなかったのだ。それはそうだ。妖精憑きでさえ、あの森を恐れる。妖精に支配される森は、妖精のための領地である。そこに侵入したのだ。相手が妖精憑きであろうとも許してくれない。

 そうして、妖精に支配される森で、どんどんとただの人が死んでいった。

 そこから、この行為は続いた。ただの人がそれなりに増えると、狩りと称して、森に出される。そして、どんどんとただの人を減らしていったのだ。



 真実を知れば、笑うしかない。これ、エウトがいう通りだ。

 皇族エウトは、捕虜たちからの証言だけで、この答えを導き出した。エウト、本当に頭のいい子なんだ。お陰で、アタシは無駄に叫んだり、つかみかかったり、なんてしなくてすんだ。

 アタシがただ笑うだけで、何も言わないから、キオンは身構えていただけに、拍子抜けする。

「聞いてみれば、本当に詰まらないな」

 答え合わせをして、皇族エウトは心底、そう思っているのだろう。呆れるしかない。

「妖精憑きは慈悲の存在だ、なんて、思い上がりですよ。妖精憑きだって、妖精がいなければ、ただの人です。欲望は人並ですよ」

 アイシャールは静かに笑っていう。いつもの笑顔だ。真実を知っても、アイシャールには他人事だ。それよりも、妖精憑きという存在を下げて見た。

 キオンは恥ずかしくなったのだろう。俯くばかりだ。捕虜となって、妖精を封じる牢屋に入れられて、孤立無援だ。小国では、仲間がいっぱいいた。だけど、ここでは、仲間のはずの筆頭魔法使いアイシャールは、キオンの敵なのだ。ただの人ばかりに囲まれ、いつものように、妖精の力で支配することすら封じられてしまっている。

「仕方がありませんね。所詮、妖精憑きが生まれる一族なだけです。あなた方の役割は、ただ、万が一の時のために、血筋で妖精憑きを生み出すだけですもの」

「そんなことない!! 俺たち一族は、神より使われた妖精を持って生まれる、選ばれた存在だ」

「あなたは盤上のゲームをしたことがありますか?」

「?あるが、それがどうした」

 突然、話が変わるので、キオンは首を傾げる。

 アイシャールはいつもの道具を使って、ぽんと盤上の遊び道具を出す。いくつかの意味のある駒を並べた。

「いいですか、帝国の皇帝は、王様の役割をしています。それこそ、神より与えられた役割というものです。ただ、ふんぞりかえっているわけではありませんよ。その皇帝の下にいるのは、神から与えられた一族たちです。まず、道具の一族、戦争の一族、妖精殺しの一族、そして、妖精憑きの一族です」

 駒に一族をあてはめて、中心に出していく。

「これらの一族を支配するのが皇族です」

「小国をバカにするのか!? 皆、小さい国といえども、国王だぞ!!」

「実際、そうなのですよ。知らないのは、そういうものが都合悪くなった先祖が消したからです。帝国には、あなたがた小国たちがわざと燃やした情報はしっかり残っています。それは、文献だけでなく、口伝でも伝えられています。筆頭魔法使いは、口伝で全てを伝える役割を担っています。わたくしは、皇帝ですら知らない真実を全て知っています」

「それこそ、捻じ曲げた真実だろう!!」

「どうして? わたくしは帝国最強の妖精憑きです。契約紋で縛られてはいますが、これだって、外す方法があるのですよ。帝国なんて、簡単に滅ぼせます。言ってはなんですが、小国全てをあの義体で蹂躙だって出来るのですよ」

「それでも、我が小国は不可能だ」

 キオンはアイシャールの自信を嘲笑う。妖精憑きの小国は、不可侵だ。いくらアイシャールでも、不可能だと思われた。

 アイシャールは、机に木札を出す。それを見たキオンは表情を強張らせる。アタシだって、それを見て、背筋が冷たくなった。

「通行手形です。もう、他の小国の皆さんは必要ないから、と渡してくださいました。これさえあれば、妖精憑きの小国など、簡単に蹂躙出来ます」

「あそこは、妖精憑きの一族だ。一丸となれば」

「まず、前提が間違っています。帝国の妖精憑きは、わたくし一人ではありません。帝国では、儀式によって、生まれたばかり子から選別をしました。わたくしも、そうして帝国に捕獲された妖精憑きです。赤ん坊の、抵抗力のない頃に、帝国への絶対服従の契約をされます。そして、最強の妖精憑きは、契約紋により、皇族に絶対服従させられます。わたくしは、ただ、最強なだけではありません。帝国中の妖精憑き全てから、妖精を奪い、無力化出来るのです。あなたがたが妖精憑きの力を持って抵抗するのでしたら、わたくしは、同じ妖精憑きである魔法使い全てを連れて、蹂躙するだけですよ」

「小国全ての国民は妖精憑きだ」

「あなたがたの一族の欠点が一つだけあります。そのこと、気づいていないでしょう」

「欠点? 妖精に頼りすぎて、体を鍛えていないことだろう。そこは、身体強化でどうにかなる」

 唯一の欠点も、妖精憑きは妖精の力で克服している。実際、喧嘩とかになると、ただの人はどうやっても勝てないのだ。

 だけど、それを聞いたエウトでさえ、呆れたようにキオンを見返してしまう。

「お前たちは、本当に驕りの塊だな。だから、ここに来て、見捨てられるんだ」

「どういう意味だ!?」

「どうして、戦争が決まった時、妖精殺しの小国が帝国についたと思う?」

「それは、戦争で負けるとわかっていたからだろう。そこは、仕方のないことだ。ただの人なんだから」

「驕りが過ぎるな。お前たち妖精憑きの小国に嫌気がさしたんだ。今回の戦争の責任者は僕だ。僕はそれぞれの小国に真実を伝えた。そして、どの小国も、妖精憑きの小国に怒りしかなかった」

「どうして? 俺たちが何をした?」

「お前は、王族といえども、部外者なんだろうな。まだ、子どもだから、知らないんだろう。小国同士の話は、後で、場を設けよう」

「話せよ!!」

「話が逸れたな。まずは、お前たち妖精憑きの一族と、帝国にいる妖精憑きの違いだ」

 エウトは話を元に戻した。

 キオンはまだ、納得いかないけど、答えが知りたかったから、大人しく座りなおす。

「ずっと、小国にいるので、すっかり、それが普通となってしまったのですね。あなたがた妖精憑きの一族の寿命は、ただの人と代わりません。それに対して、わたくしのように、ただの人から生まれた妖精憑きは、寿命が長いです。普通の妖精憑きでも、百年は軽く生きますよ。帝国にいる魔法使いたちは、皆、長命です。お陰で、それなりの数が揃っているのですよ。あなたがた小国程度の妖精憑きが帝国の支配下にいます」

「そんな、まさかっ」

「ここに連れてこられて、全てを封じられてしまったから、わからないのですよね。城にもそれなりのことがされています。それも、城の外に出れば、その存在をあなたでもわかるでしょう。戦争、いいですよ。ぜひ、やりましょう。妖精憑きの一族を奴隷に堕としてやります!!」

 嫣然と微笑んで言い切るアイシャール。色々と、溜まっているのかもしれない。怖いこと言われた。

「アイシャール、父さんとリウがいる国なんだけど」

「もちろん、あなたの家族は除外ですよ。大事に、大切に、ここまでエスコートします。そこは、ご心配なく」

 そういうことを言いたいんじゃない。妖精憑きの小国との戦争をやめてほしいのよ!!

「ふふふ、冗談ですよ。そんな、リーシャ様が悲しむようなこと、わたくしはいたしません。ちょっと、痛い目にあわせるだけですよ」

「お、お手やわら、に」

 そういうしかない。

 アイシャールの宣言に、キオンは真っ青になった。まさか、この場で戦争にまで発展するとは、思ってもいなかった。

「でも、その前に、あなたは捕虜らしく、首輪をつけないといけませんね。それからでないと、ここから出せません」

「キオン、ここから出られるの!?」

 てっきり、このまま、地下牢に閉じ込められたままかと思っていた。自由になると聞いて、アタシは単純に喜ぶ。

「もちろん。他の捕虜の方も自由にしますからね。今後のことも、しっかり話し合いました。戦争に出たくて出たわけではないのです。罪は全て、国王にあります」

 だけど、単純に話は終わらない。これから、小国の国王たちは、戦争の責任をとらされるのだ。

 キオンは、今後のことを考えているようだった。キオンはそれなりの教育を受けている。アタシが想像出来ないようなことを考えているのだろう。だけど、解決出来ないようで、悔しそうに顔を歪める。

「ねえ、キオン、どうして、アタシと一緒に狩りに来てくれたの? キオンは、あの森、物凄く怖がっていたじゃない」

 今更ながら、その疑問を口にする。最初は、本当に怖がっていた。だけど、震えて、怯えながらも、妖精が支配する森に入ったのだ。

「お前は、母親と同じ顔して、これっぽっちも似てないな。お前の母親は、恐ろしい女だ。あの女、俺に言ったんだ。またリーシャに悪いことをするようなら、死よりも恐ろしい目にあわせてやる、と」

「母さんが、そんなこと、いうなんて」

「俺たちがガキの頃、あの森に入ったのは、お前の母親に言われたからだ」

「そうなの!?」

「そして、俺たち妖精憑きはひどい目にあった。そして、戻った俺に言ったんだ。リーシャを守れ、と。リーシャを傷つけるようなことがあったら、もっと怖い目にあわせる、と。死んだ後も、その言葉はずっと俺を支配していた。だから、森についていった。お前に何かあったら、俺は、きっと、とんでもない目にあうことになる」

「なんだ、だから、アタシに結婚の申し込みをしたんだね。母さんが怖いから」

「違う!!」

「もういいよ。それを聞いて、すっきりした。そんな、母さんのこと気にして、アタシを守らなくていいんだよ。お互い、もう大きいんだから」

 母さんの裏の顔はショックだけど、結婚の話は解決出来て、安堵した。母さん、いつも笑って、優しい感じなんだけど、怒らせると怖いんだ。

「キオン、結婚はお断り。アタシは、アタシを好きだという人と結婚する」

 これで、やっと、アタシの心は軽くなった。

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