家族ごっこ
とうとう、運命の一年後がやってきた。私は、筆頭魔法使いの屋敷で教育をされ、夜は偽の皇族である女帝リオネットと一緒に眠る、という生活をしていた。最初は家族から拒絶されたり、戦争があったり、と大変な感じだったけど、それも一か月もすれば、日常となった。
リオネットは、本当に優しい。私のことを考えてなのか、定期的に、私を家族の元に連れていく。もちろん、私が皇帝並の血筋の皇族であることを隠してだ。私は知らなかったが、リオネットは、ヒズムとそういう契約を結ばされているという。絶対に、私が皇族だと、誰にも話せないという。
もうすぐ、皇族全てが集まる食事会だ。食事会の仕切りはリオネットがするという。とても忙しくて、大変だというのに、これが最後だから、とリオネットは、私の家族の元に連れて行く。
「もう、やめてもいいんだよ」
もう、一年も経ったのだ。諦めもつく。
一年前までは、円満家族ではあった。だけど、今では、私はこの家族の汚点だ。私が皇族でない、と言われるようになってから、私の兄弟姉妹は影で色々と言われているという。
「もう、その子どもを連れて来ないでいただきたい。その子どもが今もいるというだけで、私たちの子どもたちは、悪く言われているのですよ!!」
私の家族は、酷い扱いをされ、リオネットの行為を迷惑がっていた。
「でも、まだ、レオンは皇族扱いです。正式な皇族の儀式はまだまだ先です。ヒズムから聞きました。皇族の発現は、個人差があるそうです。発現には、それなりの年齢でないといけない、と言います。もしかすると、レオンは発現が遅れているかもしれませんよ」
「だから、皇族の儀式は十歳以上となっているんです。レオンはも十歳近い。この年齢で皇族でないのなら、発現はしないでしょう」
「そうとは限らないではないですか!! 個人差もあって、十歳を超えて、発現するかもしれませんよ。もう少し、レオンを長い目で見守ってあげてください」
「無駄なことです。帰ってください」
リオネットは、色々と調べ、聞いて、どうにか私の家族を説得しようとしてくれた。だけど、拒絶はもう、鉄壁だ。もう、この家族は私を受け入れてくれない。
リオネットは、泣きそうな顔になる。私は、ついつい、膝で握りしめているリオネットの手を握る。
「もう、いいよ。リオネット、帰ろう。ほら、忙しいと言ってたじゃないか」
「お前は皇族でないんだ。リオネット様、と呼べ」
父上が、私の話し方に厳しい注意をしてくる。表向きでは、確かにそうだ。だけど、私はそこまで頭が良いわけではないので、その場その場で使い分けることが出来ない。
「まだ、皇族の儀式が終わっていないのです。これでいいんです」
リオネットは強い口調で、私を助けてくれる。だから、いまだに、私は、人前でも、リオネット、と呼んでしまうのだ。
父上も母上も、今の私は目ざわりだ。女帝リオネットの側で安穏としてるのも、我慢ならないのだろう。役に立たない者が、平然と城の中にのさばっているのも、自尊心から、許せないのもある。
「私も一応、まだ、皇族未満ということで、食事会には出席することとなっています。席順は、リオネットとカイサル、ヒズムが決めると聞いています。当日は、楽しみです」
「食事会では、近くにも、話しかけもしないでくれ!!」
「わかりました。近くにも行きませんし、話しかけません」
私はすっかり、素直ないい子になっていた。言われたのだ、そのまま受け入れ、当日は、そうすればいい。
食事会当日は、どうなるのか、私には想像がつかない。ただ、席順が、リオネットの隣り、ということを知っている私は、大変になる予感しかなかった。
私の家族の部屋を出ると、ぐずぐずと泣きながら歩くリオネット。
「家族なのに、どうしてぇ」
慰めの言葉は難しい。まだ、物事をよくわかっていなかった頃は、酷いことを言ってしまった。
「リオネットだって、捨て子じゃないか。血が繋がっていたって、捨てる親だっている」
そう言ってしまった。これは、私なりの慰めだったのだ。しかし、これは、リオネットを傷つけることとなってしまった。本当に、あの頃は、考えなしの、ダメな子どもだった。
今だって、子どもだ。だけど、あの頃よりも、経験を積み、学び、リオネットという女をよく見た。
「じゃあ、リオネットが私の家族になってよ」
軽い気持ちだった。ほら、姉弟でいいじゃないか、という感じだ。年齢差があるので、ちょっと夫婦になるには、私は年下過ぎる。だったら、姉弟で我慢しよう、そう考えた。
「わたくしは、家族とか、そういうものが、よくわかりません。家族が一緒のほうがいい、というのは、教会でそう学んだからです。ですが、レオンの家族を見ていると、決して、そうではない、と思い知らされます。わたくしとレオンは、家族ではなく、他人のほうが、きっと、良いのでしょう」
「でも、私は一年前までは、確かに家族と一緒に居て、幸せを感じていました。だったら、リオネットと家族になれば、幸せを感じれます。ほら、私の姉になってください」
「や、やだ、そういう話なのですか!? ごめんなさい。恥ずかしい想像をしてしまいました!!」
「………」
私は無言で笑うしかない。リオネット、私の申し出を結婚だと思い込んでいた。年齢差を考えようよ。それ以前に、私は子どもだ。いくら一年間、私の側で、妙な誘惑をしてくるヒズムがいるからって、私はそんなマセた子どもではないよ。
「もういいよ。私は勝手にヒズムもリオネットも、家族と思う。もう、一年も一緒なんだ」
「でも、わたくしは、その家族というものが」
「私が教えてやる。そんなに難しいことではない。ただ、一緒に過ごして、一緒に食事して、他愛無い話をするだけだ。姉と弟が一緒にお風呂、というのは、年齢的には、もう許されないな。同性だったら、許されるけどね」
「レオンとヒズムは、一緒にお風呂、入っていますね」
「洗い方が、まだ上手に出来ないんだよ。皇族だったから、使用人にやらせてたから」
皇族ではない、と人前で言われてしまったので、私には使用人はつかない。いや、ついているが、使用人は何もやってくれない。彼らは、皇族の使用人、という自尊心がある。その高い自尊心が、私を蔑んでいるのだ。
仕方がないので、私は出来るようになるしかない。いつも、ヒズムが側にいるわけではないので、教えてもらっている。
「でも、ヒズム、喜んでやっていますよね。最近は、レオン、出来ることが増えてきてしまって、ヒズムの手がいらなくなってしまったから、ヒズムったら、必死にレオンを手伝えること、探していますよ」
「………」
だけど、私自身は自覚がないのだが、能力は高いので、どんどんと吸収していってしまっている。
たった一年で、私は、ゼロから始めなおした皇族教育も、終わらせてしまった。最初は、無理だと泣きながらやっていたのだけど、二度目だからか、それとも、捨てられないように必死になっていたからか、頭が冴えて、どんどんと進んでいき、数年かけて終わらせる皇族教育は、気づいたら、終わってしまっていた。
そういう、よくわからない能力の開花をヒズムは大喜びしているのだが、その影では、実は、舌打ちなんかしてたんだな。きっと、まだまだ手がかかっているほうが、ヒズムの側から私が離れられないので、嬉しいんだ。
一年で、ヒズムの歪んだ感性を私はなんとなくわかるようになった。あんなに見た目は綺麗でかっこよくて、女子にモテモテだってのに、その内面は、私への執着の塊だ。
そんな会話をしていると、あっという間に、女帝の私室である。中に入れば、閑職である神官長にまだ居座っている皇族カイサルがいた。
「また、無駄なことをしているのか。諦めろ諦めろ」
「………」
カイサル、酷いな。リオネットが泣くようなこと、平気で言うんだから。
そして、リオネットが泣いてしまうと、カイサルは固まる。ほらみろ、泣いたリオネットは、皆、困るんだ。
元皇帝カイサルは、今はただの皇族に戻って、リオネットの後ろ盾となっている。血筋的にも実力的にも、最も皇帝に相応しい男、と呼ばれるカイサルは、私の目標である。
カイサルは、帝国の内側を蝕んでいた敵国と手を結ぶ貴族たちをあぶりだすため、両腕を犠牲にして、一度、皇位簒奪された。それも十年後に、リオネットを表向きの女帝にするため、代理の皇位簒奪をしたのだ。
カイサルは、本当にすごい男だ。両腕の義手は、魔法で動いている。魔法使いに一日に一度、魔法をかけてもらって、動かせるようになっているのだ。だけど、他の皇族の命令で魔法を解かれてしまうと、その義手は動かすことが出来ない。その欠点をなくすため、カイサルは片目をえぐり取り、妖精の目を装着した。妖精の目は、妖精憑きの力を与えてくれる魔道具だ。片目を犠牲にすれば、ただの人も妖精憑きになれるというが、欠点がある。妖精憑きの才能がなければ、廃人となってしまうのだ。カイサルは、才能があるかどうかもわからないというのに、妖精の目を装着し、十年かけて、魔法を使えるようになった。そして、魔法使いがいなくても、義手に魔法をかけて、動かせるようにしたのだ。
聞けば聞くほど、知れば知るほど、すごい人だ。かっこいいし、尊敬する。こんなすごい男になりたい、と子ども心に思ってしまう。
だけど、この男は、リオネットにだけは弱い。もう、目的を果たしたのだし、何より、孫までいるほどの年齢だ。老後の生活をしていてもいいはずなのに、リオネットのために、また、危ない世界に戻ってきたのだ。
だから、私はカイサルのことだけは、家族とは見れない。この男は、ある意味、私の敵だ。
カイサルは、気まずい、みたいに黙り込む。この男も、懲りないな。毎回、同じことして、リオネットを泣かせてる。
仕方がないので、私はリオネットの手を握って、見上げる。
「リオネット、食事会が終わったら、私の姉になってくれ。私は、いい弟になろう」
「はい!」
姉と弟としての距離を私は保つように、そこから近くならないようにする。私は待っていればいい。
そうすれば、姉であるリオネットが私を抱きしめてくれる。
「今日も、一緒に寝ましょう」
リオネットと私が一緒に寝るのは、偽の皇族であるリオネットを守るためだ。私には本物の皇族だから、ヒズムの妖精が守るためについている。私が側にいることで、リオネットもついでに守ってもらおう、というのだ。
「もうそろそろ、別々がいいと思う。私から、ヒズムに言って、ここに妖精を置いておきます」
しかし、さすがに、年齢的には、苦しい。いやいや、よくもまあ、一年も私は安眠していた。でも、もうそろそろ、安眠も出来なくなってくるだろうな。思春期だから。
「そうだ、もうそろそろ、レオンと一緒に寝るのはやめなさい」
カイサルも、それなりに感じることがあるようで、リオネットを説得してくれる。
「完全完璧はありません。ヒズムとレオンの二重であれば、さらにわたくしは安全です。さあ、明日も忙しいですから、寝ましょう」
ダメだ、リオネット、暗殺に対して、警戒心が強すぎる。それもこれも、シスター時代に、神官長であるカイサルの側仕えなんかして、暗殺の場に居合わせてばかりいたからだ。私やカイサルよりも、リオネットのほうが、暗殺に対する危険視がしっかりしているのだ。
「もう、カイサル、何を心配しているのですか。レオンはまだまだ子どもですよ。レオンも、妙に大人ぶらないでください。そういう所が、子どもなのですよ」
この女、ちょっと男に対して痛い目見たくせに、そういう警戒心が薄すぎだ!!
リオネットを死の道連れにしようとまでして溺愛した妖精憑きハズスが亡くなって一年が経った。リオネットは、短い逢瀬を一方的に受け止めたというのに、これっぽっちも傷ついたり、何か感じたりしていない。
最初は、心配で仕方がなかったが、リオネットは平気そうに笑っている。今も、笑っている。
でも、ハズスが生きていたら、こう言うだろう。気持ち悪い笑顔だ、と。
一年も見続ければわかる。リオネットの笑顔は、作り笑顔だ。最初は笑ってくれて、安心していた。だけど、それは、ただ単に処世術として笑っているだけだ、と今ではわかる。
ベッドに入ると、私はリオネットに背中を向けて、ちょっと離れる。なのに、リオネットは、私の背中から抱きしめて寝るのだ。
大人でも、女は柔らかい。そんな感触を背中に受けて、私は今日もどうにか眠った。
皇族教育が終われば、続いて、皇帝教育である。あと、剣術と体術もびしばしだ。もう、容赦がない。
一年前、家族に囲まれて、怠けるばかりだった私だったら、耐えられなかっただろう。もう、皇族教育だって、遅れてばかりだ。両親も、特に何も言わなかった。たぶん、両親もそうだったし、兄姉もそうなんだ。それが普通なんだ。
だけど、ヒズムによって教育を施されていると、私は気づいてしまう。皇族も自堕落だが、教育をする貴族も、自堕落なんだ。わざと、そういう皇族を量産しようとしている。真面目な皇族もいるので、そこは真面目に相手にするが、自堕落な皇族は矯正しないで、そのまま、さらに自堕落にさせようとしている。
それを身を持って知ってしまった私は、まずは教師の一族を処刑だな、なんて子どもなのに、考えてしまう。もう、皇帝教育、怖いよ。
その合間に、子どもだってのに、皇族の仕事が持ち込まれるのだ。一度、文句を言ってやったら、カイサルが「俺もやらされたな」なんて言ってきたので、黙るしかなかった。そうか、最強の妖精憑きハズスは、完璧な皇帝にしたてるために、容赦なかったんだな。
もう数日で、年に一度の皇族の食事会である。そのせいか、私に割り振られる仕事、多すぎだ。皇族、あんなに一杯いるのに、子どもにこんなに割り振るって、どんだけダメ皇族にいるわけ!?
仕事を持ってくるのは、筆頭魔法使いヒズムだ。私宛は、絶対にヒズムが持ってくる。他の者たちには任せない。
「あなたの両親も、もう少し、出来る人であれば良かったのですが」
それは、あれだ、ダメなんだな。私の両親はただ、偉そうにふんぞり返っているだけで、仕事なんて何一つ出来ないダメ皇族なんだな。
ヒズムがそう言うのは、わざとだ。そう言って、私から家族の執着をなくさせようとしている。まあ、もう、ないけどね。諦めていないのは、リオネットだけだ。そのリオネットも、とうとう、諦めたけど。
私の執務机に山積みにされる仕事をちらっと見ながら、私はヒズムを睨む。
「ヒズム、ちょっと座れ」
もう、ヒズムへの命令は慣れた。最初は、捨てられたくなくって縋っていた。それも良くない、なんてカイサルに言われ、教育され、今では、ヒズムに普通に命令出来てしまう。
座れと命令したら、ヒズム、そのまま床に座りやがった。
「座れ、と言ったら、椅子に座るもんでしょ!!」
「叱られるのですから、こうするべきでしょう」
これから、私がヒズムのことを叱ること、なんとなく、気づかれてしまっていた。そりゃそうだ。子どもの私は、顔にやら態度にやら、出てしまうのだ。
私は仕方がないので、いい年齢の大人を見下ろす。
「ヒズム、リオネットに余計なことを言うな」
「何のことですか?」
「リオネットに、家族になろう、と言ったら、結婚しよう、なんて、よくわからない変換をされてたぞ!! 誰かが余計なことを言ったから、こうなったんだよな」
「余計なことだなんて。私の皇帝が、リオネットのことを一人の女性として想っている、と世間話しただけですよ」
「世間話で話すことじゃないよ!!」
こいつ、世間話に随分と恥ずかしいこと言ってくれるな!! しかも、私のことだよ。そういうのは、ヒズム自身のことを言ってくれ。
もう、リオネットは、私の隠したようで隠しきれていない想いというか本音を知っているということだ。
一応、”姉”という当たり障りのない表現で誤魔化したが、リオネットは疑っているだろうな。
「だいたい、そういう気持ちは、大人まで持続するとは限らないだろう」
「だったら、リオネットのことを捨てればいいだけです。あなたは皇帝です。それをしても許されます」
「むちゃくちゃ、酷い男じゃないか!?」
「皇帝だから許されます」
皇帝って、そんな女遊びまで許されるって、どうなの!?
ヒズムもずれてる。笑顔でいうんだ。こんな酷いこと、平然と、笑顔でいうことじゃない。
確かに、ヒズムは床に座らせるしかない。こいつ、椅子になんか座らせちゃいけない。
「レオンには許されることです。いらなくなったら、リオネットを捨てていいんですよ」
「今も世話になっているというのに、捨てるわけがないだろう!?」
「リオネットは、覚悟を持った女です。ハズス様に自死まで訓練されて、いつだって、死を受け入れています。今は、あなたを守るために、女帝となりました。それも、あなたが皇帝となった時、リオネットは邪魔になります。リオネットは、色々と知りすぎています。身分を与えて、野に放つわけにはいけません。リオネットは、どちらにしても、殺すしかありません」
「っ!?」
何度も、その話はされていた。リオネット自身も納得していることだという。
だけど、私はリオネットを死なせたくない。
私の前では、相変わらず、作り笑いだ。評判のいい作り笑いに、私は安堵している。だけど、ハズスのことを思い出すと、普通の表情を見てみたいと、欲が出てしまう。
「どうにか出来ないのか。リオネットを寿命が尽きるまで生かせる方法は」
私にはわからないことだ。子どもだから、思いつかない。
「ありますよ」
だけど、大人であり、筆頭魔法使いであるヒズムは、リオネットを生かす方法を知っている。私は笑顔になってしまう。さすが、ヒズムだ!!
「レオンが城の奥深くで囲えばいいんです。外に出せない女です。だったら、出さなければいい」
「それは、いいことなのか?」
いい案だ、と一瞬、思ったのだけど、疑ってしまう。ヒズムは時々、悪戯をする。この案は、何か間違っているのかもしれない。
「リオネットは、どうせ、常に囲われ、閉じ込められて、自由ない生活をしていました。その生活の場が変わるだけですよ。同じです」
「そう、なのか?」
「むしろ、命の危険がなくて、義務感もなくて、楽になるでしょうね。リオネットは、常に何かしている女です。幼い頃から、カイサル様の側仕えと働いていました。皇族となっても、何かと仕事をしています。ずっと、働いている女です。あなたが皇帝となった暁には、リオネットを囲って、女の幸せを享受させればいい」
ヒズムの声は、人を惑わす。気を付けないと、私だって、ヒズムに操られてしまう。
だけど、ヒズムは私の絶対の幸せのために、そう惑わすのだ。大人だから、子どもである私が大きくなった時に、絶対的な幸せになるように、導いているのだろう。
皇族の仕事を見る。こんなもの、今の私には片手間だ。だけど、リオネットには、かなり大変な仕事だという。
私は、ヒズムをそのまま反省させるように座らせたまま、ぺらぺらと書類をめくる。それだけで、私の仕事は終わりだ。二つに分けて、決裁印を押して、不可を押して、終わらせる。
「ヒズムの言い分は理解した。しかし、私が大人となった時、今と状況は変わっている。私が皇帝となるためには、一度、戦争に立たねばならない。万が一のことがあった場合、リオネットを庇護出来ないだろう。リオネットのことは、私が戦場から戻った時に、もう一度、話し合おう」
「喜んで」
「終わったから、持ってってよ」
「リオネットが褒めていましたよ。レオンは大人よりも仕事が出来ると」
「そ、そうか」
やっぱり、私は子どもだ。リオネットをだしに使われると、簡単に喜んでしまう。
「じゃあ、もっとたくさん、さばけるようにならないとな。まだまだ、カイサルには負ける」
「あの方は元は皇帝ですからね。ハズス様の皇帝です。完璧です」
「じゃあ、私はカイサルに負けない皇帝にならないとな」
「あるがままでいいですよ。僕は、完璧な皇帝を求めていません」
「そうなの?」
カイサルのことを物凄くほめたたえているので、ヒズムは私を完璧な皇帝にしたいと思っていた。
「ハズス様のは異常です。よく考えてみてください。両腕を失ってまで、役目を果たすということは、狂気の沙汰です。僕はそんなこと、レオンにさせたくない。完璧でなくてもいい。ただの一皇族でもいいのです。レオン、あなたはあなたらしくすればいい」
「う、うん」
熱く見つめられながら言われてしまうと、私は赤くなってしまう。だって、ヒズム、かっこいいし、綺麗だし、何か、色っぽいものを感じる。
筆頭魔法使いの儀式を受けてから、ヒズムはちょっと感じが変わった。あの儀式、魔法使いを狂わせる何かがあるのかもしれない。
「もう、立っていいから。今後は、世間話でも、私のリオネットへの想いは語らないように」
「………」
「ちょっと、約束してよ!! だいたい、私の話で盛り上げるようなことしないでよ!!」
「リオネットは、レオンのことを色々と聞きたがっています。少しでも、リオネットがレオンに情を持つように、話しているだけですよ」
「もっと、違うこと話してよ!! 例えば、嫌いなものも食べられるようになったとか、そういう子どもすごいね話だよ」
「いつも残さず食べてもらえて、嬉しいですよ」
おう、話が違う方向へと曲がっていく。仕方がない。私が食べている食事は、ヒズムが作っているのだ。私が嫌いな野菜とかも容赦なく入れてくるんだよ、この男は!!
そして、残すと、リオネットに告げ口するの。世間話で、色々とやってくれるんだよ、この男は。
だから、私は諦めることにした。どんなにヒズム




