呪いの支配者01
ちょくちょく、妖精男爵には魔法具などと借りたり貰ったしていた。それだけでなく、下僕のサウスが、男爵邸で働く使用人から、色々と融通してもらってもいた。
そうしていると、気づくのだ。守りが急に強くなっているということに。突然のことに、私は驚いた。別に、俺もサウスも拒絶されることはない。迷うことなく、男爵領に入れる。
時々、妖精の悪戯で、入れないという話は聞く。そういうことも過去にはあったが、今回のは違う。肌で感じるものがあるのだ。
そうして、俺とサウスが無事、領地に入ってしばらくは、特に問題がないように見えた。領民も、もう俺のことは覚えてくれている。また来た、みたいに遠巻きに眺めている。領民だって知っている。俺が妖精憑きリリィに狂っていることを。
亡くなって随分経つが、俺の執着は深い。今更、次へ行くつもりもない。ただ、思い出に触れようと、足を伸ばして、ついでに、仕事をしているだけだ。
そうして、男爵邸の前に到着すると、一人の子どもがいた。どこにでもいるような子どもだが、身なりが平民ではない。しかし、男爵の子どもで、ここまで幼い子はいないと記憶している。
突然、サウスが前にでて、子どもの前にひれ伏した。
子どもは驚くでもなく、普通にサウスを見下ろしている。
「ああ、呪い持ちか。それは仕方がない。ほら、立っていいから」
「はい」
子どもに言われるままに、サウスは立つ。子どもはそれから、呆然と立ち尽くす俺を見る。
「お客様ですね。案内します」
「いや、いい。サウスがやる。そうだろう」
「ご命令ですか?」
サウスは子どもに聞く。子どもはサウスの左腕をじっと見る。
「では、お願いします。えーと、名前を教えていただいていいでしょうか」
「リスキス公爵の血縁シャデランだ」
「大変失礼しました、リスキス公爵家の方でしたか」
「いや、いい」
どこか、纏う空気に感じるものがあった。
サウスは子どもの命令に従って、俺を案内した。その間に、正気に戻った。
「しまった、呪いに飲まれてしまいました」
「その割には、まともだったな」
途中、足を止めて、サウスの様子を見る。
サウスは妖精の呪いを受けているため、色々と問題行動を起こす。ともかく、サウスは、悪事を働くし、悪事を唆すし、と迷惑極まりない事をする。俗にいう妖精の悪戯だ。妖精の悪意がそのまま出てきてしまうのだ。そうならないために、サウスは常に忙しくさせていた。悪事を働く暇がなくなれば、何も出来なくなるという。
この男、物凄く優秀なのだ。色々とやられているのだが、全てこなしてしまうのだ。そこも、呪いが原因だという。妖精の呪いだから、妖精のような何かがサウス自身に働いているという。
ところが、呪いの飲まれたというのに、子どもには随分と服従していた。悪意なんてこれっぽっちも働かない。
何も悪いことは起きていなさそうなので、私はそのまま、妖精男爵の書斎に案内してもらう。
約束といっても、あってないようなものだ。それでも、妖精男爵は笑顔で迎えいれてくれる。
「久しぶりだね。今日も、本を持っていくのかな? それとも、魔法具を見ていくのかな?」
「いえ、今日は近くを寄っただけです」
「そうなの? わざわざありがとう」
そう話していると、先ほどの子どもが茶と菓子を持ってきた。
途端、サウスが動いて、子どもから茶と菓子を取り上げる。
「いけません、あなたがこのようなことをしては」
「私の仕事を取り上げてはいけない。返しなさい」
「いけません!!」
「わかりました。お客様にお出しして、部屋から出ていってください」
「かしこまりました」
俺と妖精男爵は、サウスの行動を呆然と見た。サウスは子どもに言われるままにして、部屋を出ていく。
本来ならば、子どもも出て行かなければならないというのに、サウスが廊下にいるので、出るに出られないのだろう。
「シャデラン、紹介しよう。今度、僕の養子となった、アランだ」
「また、随分な名前ですね………養子!? 男爵には、立派な長男がいますよね!!」
名前もそうだが、養子という事実に、俺は驚いた。
養子なんて、子どもがいない貴族か慈善活動を見せつけるために貴族商人がやるようなものだ。妖精男爵には立派な跡取りもいるし、子どもはいっぱいだ。わざわざ、養子をとる理由はない。
「ロベルトの子どもなんだが、頼まれたんだよ。男爵領から決して出せないようにしてくれ、と」
「何か、あるのですか?」
サウスの様子から、ただの子どもではないことは確かだ。サウスを一目見て、呪い持ちだと見破ってもいる。
「それが、よくわからないんだ。ロベルトと同じような存在なんだ。妖精の子孫たちは全て、アランに従っている。邸宅の魔法も、アランが何もしなくても発動する」
「妖精憑きですか?」
「それは違う、とエリカが言っていました」
妖精男爵に隠された妖精憑きエリカはかなり力のある妖精憑きだという。彼女がいうのなら、そうなのだろう。
普通の子どもにしか見えないが、まだ幼いからかもしれない。
「お前、いくつだ?」
「五歳、もうすぐ六歳になります」
「ポーに近いな」
「ポーをご存知なのですか!?」
男爵領にいるというのに、ポーのことを知っている。名前も曰くがあるし、何より、妖精憑きエリカと隠された男ロベルトの間に生まれた子だ。普通ではない。
「こういってはなんですが、随分と歳をいってからの子どもですね」
ロベルトはかなりの年齢である。こういう小さい子がいること自体、驚きだ。
「エリカは特別ですからね」
「妖精憑きは、やはり、普通とは違うのか」
アランはただ、笑顔で話を聞いているだけだ。余計な口を挟まない。普通だったら、ポーのことを聞きたがるだろうに。そこをあえて口にしないアランは、普通でない感じがした。
しばらく、男爵と雑談して、辞去することとなった。長かっただろうに、アランは微動だにせず、立っていた。俺が出るというのに、案内をするついでとばかりに、部屋を出た。
そして、待っているサウスに直面する。アラン、見るからにイヤそうな顔をする。
「ねえ、これ、どうにかしてよ。私はいらないから」
「どうしてこうなったのか、俺もわからないんだが」
「あれだ、腕の呪いのせいか。うーん、とってあげるのは簡単なんだけど」
アランがサウスの左腕に手を伸ばす。途端、サウスは反射的にだろう、避けた。
「本人が呪いを手放そうとしない。こういうのは、どうしようもないな。さっさと領地から出ていってもらおう」
面倒事と悟ったアランは、サウスを排除する方向に進めようとする。子どものくせに、随分と冷静だな。
「はい、二人とも、手を握って」
言われるままに、俺とサウスはアランの手を握る。瞬間、景色が変わる。
気づいたら、俺が持つ邸宅に戻されていた。魔道具で、転移されたんだ。とんでもない子どもだな!?
離れたからだろう。サウスは正気に戻って、頭を抱えた。
「もう、男爵領には行きたくありません。あれには、絶対に勝てません」
「わかったわかった。別の使いを出そう」
少し、あの子どもに興味が湧いた。
しばらくして、俺一人で男爵領に入ってみれば、やはり、防御が強い感じがした。それでも、俺は排除されず、普通に入れた。
約束などしていないので、誰かが待っている、ということはない。
俺が来たことで、気を利かせた使用人が声をかけてくる。
「何か御用ですか?」
「最近、男爵が養子にしたという、アランに会いたいのだが、大丈夫だろうか」
「若でしたら、地下にいます。聞いてきます」
すでに、アランは主扱いだ。しかも、地下にいるって、あんな子どもが行くような場所ではないだろう。
普通ではない感じはしていたが、ますます、普通からかけ離れてきた。
そうして、しばらくすれば、屋敷の中の一室に案内される。そこで待っていれば、アランがやってきた。
「何か御用ですか?」
不思議そうに見返してくるアラン。
「少し、興味が湧いた。迷惑か?」
「ポーはあなたのことを知りませんでした。どういう関係ですか?」
了承などなく、アランは早速、俺に質問してきた。
「俺はリスキス公爵の血縁というだけで、独立しているからだろう」
「なるほど、そういうことですか。ポーにあなたのことを話して大丈夫ですか?」
「話してほしくないな」
「それは、あれですね、二人だけの秘密ですね」
「使い方が間違っている。それは、異性同士で使うものだ」
「………確かに。うーん、あなたと話すことは、とても勉強になります。今後も、興味を持って、来てもらいたいです」
「なんだそれは」
おかしな感じだ。アランは、俺から何かを吸収しようとしている。その何かがわからない。
王族であるポーのことを知っている事実もおかしい。身分的には、ポーとアランでは差がありすぎる。
だけど、ポーま妖精憑きであり、魔法使いの弟子だ。アランは、ポーが師事している魔法使いに関係あることは確かだが、表沙汰にされていない。もし、その繋がりならば、ポーとアランが知り合いなのは納得できる。
「今日は、あの呪い持ちはいないのですね」
「置いてきた。もう二度と、お前に会いたくないそうだ」
「私も会いたくないな。あんな呪いべったりつけて、手放さないおかしな男。変な趣味ですね」
「子どものくせに、言い方が酷いな。間違っていないが」
「お、正解だ。よしよし、この調子で、色々と教えてください」
「何を教えるんだ? 俺は貴様とただ、話しているだけだ」
「私の知識が正しいかどうかです。何分、古い情報ですし、偏りもあります。間違っているかもしれません」
「一体、誰に教えてもらったんだ、その話し方という、所作といい」
子どもなのに、完璧だ。話し方はしっかりしているし、礼儀作法も間違っていない。むしろ、欠点が見えない。
「私はちょっと、普通ではありません。どこまで話していいのかわからないので、次回までには、確認してみます」
「いっそのこと、全て話せ。でないと、一方的に利用されて、気分が悪い」
「そうですよね。こういうことは見返りが必要ですよね。じゃあ、一つ、見返りです。私は、妖精憑きリリィによって作られた人です」
大変な見返りだった。
空気が違うはずだ。普通でない子どもだ。その事実に、俺はついつい、男爵領にお邪魔してしまう。どうせ、何かのついでには近くを通るのだから、問題ない。
アランは、頻繁にあちこち出歩いているというのに、俺が行くと、必ず邸宅にいた。どこかで来る様子でも見ているのかもしれない。
「今日もポーが生意気でした。何も出来ないくせに、本当に手がかかる」
「子どもなんて、皆、そういうものだ」
「まずい、私はそうでないから、大変なことになる。どうやって、手のかかる子どもになればいいですか?」
「ポーを真似てみればいいだろう」
「えー、ポーみたいなのはイヤだな。私は、あそこまで愚かにはなれません」
「王族相手に、随分な言い方だな」
「私には、そういうのは関係ありません。私は妖精憑きリリィが作った人ですから。人の理に外れています」
「そういう言い方はやめろ。普通じゃない」
「難しい」
話していてわかる。子どもではないのだ。見た目は子どもだが、物凄く知識を埋め込まれたような子どもだ。
子どもなんて、男爵領にいっぱいいる。そういうのを真似すればいいのに、そういうことを思いつかない。
だから、一度、言ってやったんだ。
「昔は、ああしてたんです。だけど、父上がやめなさい、と叱るようになりました」
「あれか、服が汚れるとかか」
外を見れば、アランと同じ年頃の子どもたちは、物凄く服を汚して遊んでいる。貴族は、こういう事を嫌うな。
「いえ、真似事だからです。私の意思でやっていないので、やめなさい、と叱られました」
「真似をして、どうだったんだ? 楽しかったか? 詰まらなかったか?」
「その時は、そういう感情を持っていなかったので、わかりません。ただ、真似をしなきゃ、と思ってやっていただけです」
「どうして、真似をしていたんだ?」
「どうすればいいか、わからなかったからです。真似をしていれば、正解でした。だけど、今はいけない、と言われます」
「ポーを相手にしている時は、きちんと意思を持っているようだな。ポーの話をする時だけ、意見が出る」
「本当だ!? 気づきませんでした」
一つ一つ、アランはポーを相手にして学び、俺と話して復習していた。
そういう日々が随分と続いたある日、アランは驚くことを聞いてきた。
「シャデラン、女性とお付き合いするには、どうすればいいですか?」
まだ、齢十歳くらいの子どもが、とんでもない質問をしてきた。
そういうこともあるにはある。男女なんて、突然だ。アランもそういうことに興味を示すようになったのだろう。
が、過去歴を思い返すと、良い話がない。何せ、リリィ一筋だ。かといって、大人の俺が何も言えないというのは恥ずかしい。
「そういえば、シャデランはリリィ一筋でしたね」
「誰に聞いた!?」
「皆です、皆」
物凄い笑顔でいうアラン。皆ということは、あれだ、領内にいる人全てから聞いたということだ。
隠すことでもないので、俺はそれ以上、責めることはしない。事実は事実だ。なので、普通に座った。
「リリィを好きになって、どうでしたか? ぜひ、教えてください!!」
「特筆することはないが。ただ、一目惚れしただけだ」
「それから?」
「婚約を申し込んで断られた。ダンと結婚するという。だから、ダンと決闘した」
「負けたんですよね」
「………」
笑顔で古傷を抉ってきた。子どもは容赦ないな。
「今でも、リリィのことを愛していますか?」
「愛してる」
「でも、リリィは別の人と結婚して、子どもまでいたんですよね」
「まあな。しかし、諦めきれないだけだ。それほど、リリィはいい女だった」
「もっといい女はいませんでしたか?」
「いただろうな。だが、リリィしか見えなかった」
「勿体ないことをしていますね。後悔したでしょう」
「これがな、後悔していない。やれることをやったんだ。まだ、やり足りなかったんじゃないか、と考えることがある」
「やり足りないことか。じゃあ、私はやれることをやらないと。何をすればいいですか?」
「まあ待て。それは、相手がいるということだな。そこから話せ」
そうして、アランの初恋の話を聞くこととなった。
「あまり、大事にされていない感じでした。本当は、そこで連れて帰れれば良かったのですが、ポーに止められました。相手は帝国の皇族だから、絶対にムリだと」
「それは無理だな。帝国の皇族は一生、城だ。血筋が怪しくなった時だけ、外に出される。その子は皇族と認められているのなら、一生、城だな」
「あんなに、大事にされていないのに、納得がいかない」
「それで、お前は順序よく、進めるのか? まずは、婚約の申込だ。貴族では、そこからだ。そして、相手の心を射止めたいのなら、文通と贈り物だな」
「そうか、文通に贈り物か。それは知らなかった」
「相手は皇族だ。妖精男爵といえども、身分は低い。文通はなかなか難しいだろう。そこで、ポーに隠れ蓑になってもらえ。それが一番、確実だ」
「さすがシャデラン!! 頭がいいですね。やってみます!!!」
珍しく、年相応の顔を見せた。その皇族のことは、本気で好きなのだろう。見ていて、応援したくなる。
そうして、アランは俺の提案通りに、事を進めていった。婚約の打診もしたという。婚約は無理だろうな、ほら、アランは男爵の子だ。
だけど、文通は成功していた。アランは、返事を貰うと、わざわざ、俺に見せに来た。
「見てください、返事です!! ほら」
「………そうだな」
正直に言おう。毎回、決まったような文句が並んでいる。これは、もう、相手には脈がないやつだ。
だけど、アランは返事があることを喜んでいる。内容が決まりきっていても、気にしていない。
「もっと近かったら、話したり出来るのに。手紙では伝えられないこともいっぱいだ」
「そうなのか?」
「そりゃ、あなたは悪い妖精に命を狙われています、なんて書けませんよ」
「………」
「あれ、話していませんでしたか?」
「どういうことだ!?」
いつもアランと世間話をしている程度で、実は、アラン自身のことはよく知らなかった。リリィが作り出した人、というだけで十分だったからだ。
ところが、アランは何か別のものを見ていた。それが今、わずかだが、見えてきた。
「貴様は一体、何者だ!?」
俺は妖精殺しの剣を抜き放って、アランの首に突き付ける。
アランは剣先をただ、じっと見つめるだけだ。怯えもしない。
「私は、妖精憑きリリィに作られた人です。妖精憑きリリィが祈ったのです。妖精憑きが生まれますように、と。そこに、母上の願いが重なりました。母上は、父上のような人に生まれてほしい、と願いました。結果、私は、妖精憑きリリィが支配する全ての妖精を操れる、もう一人の男爵として生まれました。私には、悪い妖精を支配して、死んで、神の身許に連れて行く、という宿命があります」
声も出ない。まるで疑問も何もなく、ただ、与えられたままの役目を普通に受け止めている。
「死ぬのか?」
「ええ、死なないと、神の身許に行けないじゃないですか」
「死ぬんだぞ!?」
「私は元々、生まれても死ぬ赤ん坊でした。そこに、神に使命を与えられて、ただ、生き続けているだけです。どうせ、生まれてすぐ死んでいたんです。それは少し、先になっただけです」
「………今すぐ、殺してやろう」
「いけません。まだ、悪い妖精全てを支配していません。殺すなら、悪い妖精を全て支配してからにしてください」
「死ぬのが怖いだろう!!」
「死は、怖いのですか? どうしてですか? 私はただ、役目を果たすためには、死が必要なだけです。それは、過程です」
「全て、なくなるんだぞ。お前の全てが、この世から、なくなるんだ!!」
「でも、シャデランは私のことを覚えてくれるでしょう。ポーだってそうだ。父上も、母上だって、覚えていてくれる。そう学びました」
「誰にだ?」
「最初に支配した妖精が持っていた人の寿命の記憶です。彼は、死ぬ運命を受け入れて、人の記憶に残る生き方を選んでいました。私も、そうしています」
「………」
やっと、アランが普通ではない、という事実を気づく。気づいていたが、それに確証が持てなかったのだ。
何せ、話し方がしっかりしている。普通に会話していると、引き込まれる。なにより、話していて、楽しいと感じるのだ。
それは、物凄い技術だ。人を惹き込むものを持っている。それを普通に使いこなしているのだ。
気づいたら、随分と深みにはまっていた。数年も、アランと会話だけだが、過ごしていたのだ。そして、互いに名前まで呼び合うようになっていた。
「シャデラン、もう、来なくていいですよ。随分と、無理をさせてしまいました。あなたにはあなたの時間があります。もう、私のことは忘れてください」
そして、アランは簡単に俺を切り捨てた。これ以上、一緒にいても、俺が何か感じて離れていくのに気づいたのだろう。
「俺に、お前のことを、忘れろ、と」
「辛いこと、苦しいこと、そういうものは忘れたほうがいい。私のことを覚えていたって、何一つ、いいことなんてない。それは事実です。だって、私はあなたに何も与えられない。貰ってばかりだ。ありがとうございます」
「待て!! 俺から、何を貰ったんだ? 何もあげていない」
「いつも、話を聞いてくれるじゃないですか。それに、ラキスのことの相談にも乗ってくれました。ポーの話も聞いてくれました。ほら、あなたの知識と、貴重な時間をいただいています」
「そうか、そういうことか」
アランには、何かあるのだろう。得体の知れない存在ではある。だけど、アランは常に、普通を求めている。
「相手がよくない。俺では、普通を得られないぞ」
「普通の人は、私の近くに来てくれません。シャデランは、まあまあ、普通寄りですよ」
「わかった。じゃあ、またくる」
「気にしなくていいのに」
「来たいんだ」
「そうですか」
アランは、年相応の笑顔を見せた。




