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皇族姫  作者: 春香秋灯
男装の皇族姫-外伝 辺境の伝統-
287/353

いなくなったアーサー

 貴族の学校の入学試験を受ける年のことだった。俺の勉強も、貴族の学校の最終学年の教科書まで進んだ。

「それなりの貴族の子は、ここら辺までは予習してるという話だよ」

「アーサー、詳しいな」

「男爵家から派遣されてる家庭教師から聞いた」

 アーサーの母の生家が男爵なのだけど、特殊だという話だ。教育は、高位貴族並だという。それをアーサーは、母親の生家の方針で受けさせられているという話だ。

 この頃には、アーサーの口から、内部事情も聞いていた。俺が貴族の学校の試験を受けるからだ。

「腹違いの兄が、ケインと同い年なんです。きっと、学校で会うかもしれませんね。時々でいいから、学校での様子を教えてください」

「アーサー、本当に、その兄に、子爵位を譲るのか?」

「父上は、本当は、平民を妻に迎えたかったという話です。その平民も、子爵夫人になりたいそうです。母上も私も、爵位には興味がありません。だったら、男爵家の借金を返済して、父上たちの望み通りにしてあげたほうが、丸く収まります」

「アーサーは、どうするんだ?」

「母上と一緒に、領地を出ます。母上は、旅商人になると言ってました。私も帝国中を母上とキロンと三人で回ります!!」

 生涯で、領地を出る人なんで、そんなにいない。貴族のほとんどだって、十年に一度あるという、帝国主催の舞踏会に参加する時に領地を出るくらいだ。

 だけど、アーサーらしいな、と思った。何でも目を輝かせて行動するアーサーは、領地に収まるような存在ではない。

 それに、今もアーサーのそばにべったりくっついている妖精憑きキロンが一緒だから、アーサーは安全だろう。かなり強いと言われる妖精憑きキロンは、今では、神殿にいる神官たち、シスターたちは遠くから見るほど恐れられている。

 キロンは、アーサーに近づく妖精憑きを全て排除した。魔法は使わないが、暴力で、アーサーに近づく妖精憑きを排除したのだ。

 そして、今更ながら、アーサーは妖精憑きに好かれていることに気づいた。神殿にいる神官たち、シスターたちは妖精憑きだ。アーサーは、よく、神官たちシスターたちに囲まれ、可愛がられていた。最初、アーサーの人柄かと思って見ていた。俺から見ても、アーサーはいい奴だ。

 だけど、それだけではない、と今は思う。アーサーは、妖精憑きに好かれやすいんだ。だから、アーサーを独り占めするキロンは、神官たち、シスターたちに恨まれていた。

 色々と噂はある。神官たち、シスターたちは、遠まわしに、妖精憑きキロンに嫌がらせをしているという。どういうことがあるのか、わからないが、アーサーの笑顔を曇らせることだろう。時々、アーサーはキロンを見て、悩んでいた。その悩みの内容までは、俺には教えてくれなかった。

 だけど、家族のことを俺に話してくれたことは嬉しい。俺が二歳年上で、アーサーの義兄と同い年だったからだけど、それでも、頼られたことは、嬉しかった。

「けど、貴族の学校は卒業しろよ。せっかく、こんなに勉強が出来るんだから」

「その時は、飛び級しようかな。さっさと卒業しよう」

「アーサーなら、出来る」

「そうなると、私とケインが同級生になって、それから、私が先輩になっちゃいますね」

「同級生、いいな」

 二歳差で、アーサーと肩を並べられないことは残念に思っていた。それが、アーサーが飛び級することで、俺とアーサーが同学年となって、普通に話せるのだ。

 想像するだけで、楽しくなった。

「じゃあ、楽しみにしてる」

「その前に、ケインは、上位クラスになることですよ。あとは、復習だけですね。入学試験は、一般教養です。貴族の学校の最終学年まで勉強を進めてしまいましたから、逆に、間違えてしまうでしょうね」

「これからは、入学試験に集中するよ」

「こういう時は、誰かに教えるといいですよ。例えば」

 アーサーはニヤニヤ笑いながら、俺の幼馴染みメリーに視線を向ける。言いたいことはわかる。だけど、いざとなると、俺は動けない。

「メリーも、貴族の学校の入学試験、受けるの?」

 アーサーは大声で、わざわざメリーに話しかけた。もう、俺とメリーのことは、この場にいる奴らは知っている。だから、全員がニヤニヤと笑って、俺とメリーを見る。

「えっと、私、は、平民になるのだけど、皆、行ったほうがいい、というから」

 メリーは顔を真っ赤にして、消え入りそうな小さな声で答えた。可愛いな。

「じゃあさ、ケインに教えてもらおうよ。ケインも、復習になるから」

「そ、そうなの?」

「ほら、ケイン、今日から、メリーの先生だ」

 アーサーは俺をメリーの元へと引っ張っていく。メリーの近くに座っていた子どもたちは、気を利かせて、席を開けた。

「ケイン、いい成績の報告、待ってるよ」

 アーサーは俺の肩を叩いて、別の席へと向かっていった。

 それが、元気なアーサーと話した、最後だった。









 アーサーの母親が急死した。急死といっても、何かあるだろう、と匂わせることはあった。一年前から、アーサーは、神殿の付き添いは妖精憑きキロンのみで来ていたからだ。

 アーサーの母親は病気だったのだろう、と皆、思ってはいたが、口には出さなかった。それに、アーサー自身は、いつもと変わらない。子どもの俺たちでは頼りないだろうし、教皇フーリードが気にかけているのは、見てわかることだから、俺たちは黙っていた。

 アーサーの母親が亡くなってから、アーサーは神殿には来なくなった。母親が亡くなったのだ。父親は、とてもアーサーを神殿に連れて来る甲斐性はない。

 その間に、神殿もどんどんと様変わりしていった。これまでは、神殿の広間で子どもたちに読み書きを教えていた。だが、それでは、子どもたちも集中出来ないし、祈りに来た信徒の邪魔にもなった。

 学びと祈りの場を分けようと、学校を作ったのだ。実は、平民たちが通うような学校は、辺境だけなかった。それを教皇フーリードの主導の元、作られたのだ。

 読み書き計算まで出来ることは、辺境では重要だ。だが、金を必要とする学校に通える者は平民でも限られている。それを奉仕作業としたのだ。アーサーと同じだ。教師役を年長者がなり、子どもたちが学ぶのだ。

 アーサーのお陰で、人に教える、ということを学んだ俺たちは、同じように、教師役を育てた。そして、俺は無事、貴族の学校の入学試験に合格し、見事、上位クラスが決まった。

 学校の準備は、兄姉に教えられて、すぐだ。だいたいは、お古のお古である。最低限、必要なものは、帝国から支給されるので、準備には時間がかからなかった。

 それよりも、アーサーに報告したかった。だから、時間を許せば、神殿に行った。だが、アーサーは母親が亡くなってからずっと、神殿に来ていなかった。

「フーリード、様、その、アーサーが来たら、この手紙を渡してください」

 俺は、思い切って、教皇フーリードに頼んだ。実は、フーリードと話したのは、これが初めてのことだ。フーリードは、実は、とても身分が高い人だ。だから、簡単に話しかけてはいけない、と両親からきつく教えられていた。

 フーリードは、最初、驚いて、それから、俺が差し出す手紙を受け取った。

「アーサーが来ましたら、渡します。貴族の学校の入学、おめでとう」

 誰にでも平等で、一人一人見ている余裕がなさそうなフーリードは、俺のことも見てくれていた。

 俺は、深く頭を下げて、神殿を出た。それから、俺は、学校の休みの時だけ、神殿に入り浸り、アーサーを待った。








 学校に通えば、ついつい、アーサーの義兄を探してしまった。アーサーがあんなに優秀だから、てっきり、上位クラスにいるものと思っていた。

 アーサーから、義兄リブロと名前は聞いていた。だから、貼りだされる入学試験の成績を見た。帝国は容赦がない。成績を公開して、競わせるのだ。

「う、嘘だろ」

 アーサーと同じ教育を受けているというのに、アーサーの義兄リブロは、下位クラスだ。しかも、実物は、とても、好感を持てるような男ではない。

「あなたが、アーサーの義兄だとか」

 わざわざ、辺境の三大貴族である伯爵令嬢フローラが、アーサーの義兄リブロに話しかける。入学式当日だけに、そのやり取りは目立った。

 伯爵令嬢フローラは、今年の新入生の首席だ。鉄の令嬢と呼ばれるほど、文武両道の完璧な女と聞いている。

 アーサーの義兄と呼ばれて、リブロは不機嫌になった。

「俺はリブロだ。アーサーは、俺の出来の悪い弟だ」

 俺は、絶句した。アーサーを悪くいうリブロに、俺は軽蔑しか持てない。

 アーサーは、義兄のことも義妹のことも、悪くはいわない。ただ、日陰者にしてしまって、可哀想だ、と言っていた。

 亡くなったアーサーの母親は、日陰者となったアーサーの義兄と義妹には、貴族として、やれることをした。片親が平民とはいえ、片親は貴族である以上、帝国では、貴族の子として扱わないといけない。そう、法律で決まっているのだ。

 片親が平民だと、だいたいの貴族は、酷く扱う。だが、アーサーの母は、きちんと、衣食住を世話したという。

 教育だって、アーサーと同じことをしたと聞いている。

 なのに、アーサーは、俺に貴族の学校の最終学年まで教えるほど優秀だというのに、アーサーの義兄リブロは、一年生で、すでに、下位クラスだ。下位クラスなど、家が貧しくて、教育を受けられなかった貴族の子が所属するクラスだ。

 アーサーとリブロの出来は、雲泥の差。なのに、その場にアーサーがいないから、とリブロはアーサーを下げ落とした。

 伯爵令嬢フローラは、笑顔のままである。わざわざ、アーサーの、と言ったのだから、フローラは、アーサーのことを知っているのだろう。

 知っているなら、リブロが嘘をついていることはわかるはずだ。だが、フローラは笑顔を保ったままだ。

「そう、あなた、リブロというの。同じ、辺境の三大貴族よ。恥ずかしくない行動を心がけましょうね」

「そうだな、アーサーに言っておくよ。しっかりとしろってな」

「では、これから、頑張りましょうね」

 最低限のことを言って、フローラはその場を去っていく。フローラは、三大貴族の一つ、伯爵家の血族だけあって、すでに、取り巻きがついていた。フローラが去っていくと、数人の生徒が付き従っていく。

 フローラは、一年生といえど、辺境の貴族の学校では女王だ。皆、頭を下げた。それを見て、リブロはにやりと笑った。

「俺も、三大貴族か!! 聞いたか、俺は、あの女並に偉いんだぞ!!!」

「すげぇな、リブロ」

「そうだったのね、知らなかったわ」

 早速、リブロにすり寄る、下位クラスの奴ら。バカか、三大貴族の子爵家は、偉くない、影で笑われるような存在だ。それをリブロは知らない。

 だいたいの貴族の令嬢子息は、三大貴族の一つ子爵家の裏の意味を知っている。おだてて、だけど、影では嘲笑われるのが、子爵家だ。

 それを知らないリブロは、すっかり偉くなった気になる。

 俺は、アーサーに、この裏事情を話していない。話せなかった。アーサーも、知らずにおだてられ、リブロみたいに勘違いするのだろうか。

「ケイン、フローラ様がお呼びよ」

 これまで、俺とは面識もない伯爵令嬢フローラから呼び出された。







 入学式当日で、まさか、呼び出されるとは思ってもいなかった。俺は、両親に許可をとって、生徒会室に行った。

 生徒会室には、フローラと数人の取り巻きがいた。フローラは、まだ一年生だというのに、生徒会長が座るだろう席に座っていた。

「男爵家次男のケインですね。あなたは、辺境の食糧庫を領地とする子爵家のアーサーと知り合いだと聞いています」

 俺とアーサーのこと、神殿に通っている奴らが話したのだろう。もしくは、その中に、伯爵家の派閥の子がいたのかもしれない。どちらにしても、伯爵家に逆らえる者はいない。

 工業の伯爵と呼ばれる伯爵家は、物作りを統括している。伯爵家を通さずに作った商品を流通させられないのだ。万が一、伯爵家に隠れて、外部に商品を販売した場合、それを手伝った者も含めて、葬り去られる。昨日の友が今日の敵になるのだ。それほど、伯爵家の支配網は根強い。

 知らないうちに、俺とアーサーが見張られていたのだろう。俺は、大人しく、膝をついて、頭をさげた。

「はい、幼い頃からの友です」

「アーサーと最後に会ったのは、いつ?」

「昨年の、アーサーの母が亡くなる少し前です」

「それから、一度も会ってない?」

「俺とアーサーは、神殿で遊ぶ仲です。それ以外では会うことはありません」

「お互いの家を行き来はしたことがないのかしら」

「俺の家には、アーサーが遊びに来たことはありますが、逆はありません。あの領地は、外の者を嫌います。アーサーも、それを拒んでいるようでしたから、あえて言いませんでした」

「そうなの。では、領地に偵察は、行かせられないわね」

 フローラは、俺とアーサーとの仲を使って、アーサーの様子を探ろうと考えていた。

 フローラとアーサーとの関係はわからない。アーサーから、何も聞いていない。アーサーが隠しているわけではない。ただ、話すまでの事ではなかったのだろう。

 もしくは、話してはいけない、ときつく口止めされていたのかもしれない。

 アーサーは、そこの分別はしっかりしている。余計なことを言わないのは、俺たちのためだろう。知らないほうがいい事もあるのだ。

 俺は、フローラから接触されたので、次会った時にアーサーから聞けばいいか、程度に考えていた。アーサーとフローラの関係、どうだって良かった。

 それよりも、アーサーの今の状況だ。アーサーは、週に一度、必ず、神殿にやってきた。それが、アーサーの母親が亡くなって、ぴたりと止んだ。

 そして、アーサーの義兄リブロのあの態度は、不安になった。アーサーは、領地で、無事に過ごしているだろうか。

「ねえ、あなた、成績を落として、リブロの監視をしてくれないかしら」

「それは、命令ですか?」

「聞いているわ。あなた、初恋の子と結婚するために、上位クラスを目指したんですってね。そのために、アーサーが勉強を見てくれたと。その結婚、わたくしが出来るようにしてあげます」

「俺じゃなくても」

「わたくしの手駒では、成績を落とさせるわけにはいかないのよ。あなたは男爵家の次男。成績を落としても、問題のない立場よね」

「………一年、かけさせて、ください。クラスが違っても、アーサーの義兄とは仲良く出来ます」

「そうね、急に成績を下げるのは、おかしいものね。じゃあ、お願いね」

 それで、俺は解放された。

 生徒会室をゆっくりと出る。それからしばらくゆっくりと歩いて、それなりにフローラたちから離れたと判断したら、俺は駆けだした。

 外に出れば、両親が待っていた。不安そうに、俺を見ていた。

「フローラ様から密命を受けた」

「どうして」

「アーサーだ。フローラ様は、アーサーのことを調べてる。なあ、親父、アーサーのこと、どうにか調べられないか? すぐ隣りの領地だろう。その伝手、ないのか?」

 俺は親父につかみかかった。たった一日で、俺はアーサーのことが心配になった。アーサー、もしかしたら、酷いことになっているかもしれない。そんな気がした。

「いや、あそこはよそ者を嫌う。昔は、食糧の運搬は辺境の者が行っていたが、今は、子爵家の借金を清算した男爵家が行っているんだ」

 隣りの領地だから、親父はそれなりに事情を知っていた。知っていないと、後々、大変なことになるからだ。

「じゃあ、あの男に近づくしかないか」

 俺は、軽蔑しているアーサーの義兄リブロに直接、現状を聞き出すしかないと悟った。

 だが、それだけではない。辺境の三大貴族である伯爵家が、何も知らないはずがないのだ。だから、俺は、フローラに知っていること全てを話させようと考えた。使えるものは、何でも使ってやる。それしかないのだ。

 とても目出度い一日だというのに、俺はすっかり、気分が落ち込んだ。







 すぐに、入学式の次の日には動き出した。リブロと知り合いになるのなんて簡単だ。昼休みに、ちょっとぶつかってやればいい。

「悪い!! 混んでて、つい」

「俺は三大貴族の一人、子爵の子だぞ!!」

「そうなのか!! ここで会えるなんて、思ってもいなかった」

「そうだろう」

「お詫びに、昼食を驕らせてくれ。貧乏男爵だから、そんな高いものはご馳走出来ないけどな」

「仕方ないな、それと同じやつでいいぞ」

「ああ」

 ほら、簡単だ。リブロは、ちょっとおだてれば、すーぐに俺を取り巻きの一人みたいに見てきた。

 これで、リブロとはそれなりに会話して、教室に戻って、俺はすぐに伯爵令嬢フローラに報告だ。

「フローラ様、リブロと接触しました」

「昨日の今日で、もう」

 こんなに早く行動するとは、さすがの鉄の令嬢フローラも、驚いてくれた。その顔を見て、フローラの中の俺の価値が上がったことを確信した。

 だが、俺は、フローラの中の俺の価値なんかどうだっていい。

「フローラ様は、アーサーと、どういう関係ですか?」

 重要なのは、そこだ。ただ、フローラに使われるだけでいたくない。俺が、フローラを利用して、アーサーの現状を調べるんだ。

 フローラの周囲が殺気だった。フローラに対して無礼な態度なのもある。フローラに取り入っているようにも見えるだろう。また、自らの立場が盗られる、と思ったのかもしれない。

「アーサーは、俺のために勉強を教えてくれた。アーサーには、恩がある。アーサーのために、協力してほしい」

 そして、俺は、フローラと対等となろうとした。

 命じられたって、俺は従わない。俺は、アーサーのためにするんだ。だから、フローラの立場を利用する。

 しばらく、黙って考えこんだフローラは、俺をまた、生徒会室に連れて行った。この時は、何故か、フローラの側近は生徒会室の外に追い出された。

 フローラは、俺と二人っきりになることは、ある意味、令嬢として致命的だ。だが、フローラは俺をまっすぐ見て、頭を下げた。

「どうか、協力してちょうだい。わたくしも、アーサーを助けたいの!!」

 そして、フローラは、アーサーと文通関係になること、アーサーの母が亡くなってから送られてきたアーサーからの返信の字が別人になっていること、辺境の三大貴族である侯爵と伯爵はフローラから異変を訴えられながらも傍観を決め込んでいること、フローラにつけられた側近はフローラの監視役を担っていること、そういうこと全て、俺に話した。

 生徒会室は、特殊な魔法がかかっていて、生徒会室の中でのやり取りは、外から見えないし、聞こえないという。だから、フローラは、生徒会室から、側近を追い出したのだ。

 だが、こんなことをしていれば、俺とフローラが協力関係にある、と伯爵と侯爵に伝わるだろう。すでに、学校で、俺を使って、リブロの内偵にしたことは、監視役の側近を通して、報告されているはずだ。

 だが、俺は、それすらも利用すればいい、と思った。どうせ、底辺の男爵だ。落ちるといったって、せいぜい、平民だ。それでも、アーサーは、俺との関係を続けるだろう。

 身分程度で切れるような、そんな、貧弱な関係ではない。

 それに、メリーは、平民となった俺でもいいと言ってくれた。それが、一番だ。

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