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皇族姫  作者: 春香秋灯
男装の皇族姫-辺境の三大貴族-
232/353

聖者への審判

 きっと、色々と割愛されていると思う。だけど、あまりの事に、私はしばらく、声も出なかった。そして、色々と頭の中を整理出来た。

「やっていいとは言ったけど、まさか、大勢の前でやっちゃうなんて、すごいね」

「それだけ!?」

 侯爵令嬢シリアは、私の反応に、ドン引きした。もっと、違う反応を想像したのだろう。

「フローラの気が済んだのなら、別に、気にしない。ちょっと、私の計画を修正しないといけないけど」

「計画って、どんなのよ。まさか、今回みたいなこと、考えているの?」

「ここまで優しくはないなー。どうせ、人って、変わらないし」

「………」

 侯爵令嬢シリアは、私から距離をとった。

「ここまでされたら、もう、あの男も大人しくなるだろう」

「まだ、半分は残っているから、子孫が残せるけど」

 伯爵令嬢フローラは、リブロに完全な去勢をしなかった。一応、半分だけにしたのだ。

 フローラの怒りは深い。私宛の手紙を盗み、私のふりして返事を書いていたのだ。そのことに気づいていながら、フローラは何も出来なかった事に怒りを持っていた。その元凶である義兄リブロのことが許せない。

「フローラもすごいね。三年も、笑顔で義兄上とお付き合いしてたなんて」

「クラスは別だから、授業でも接点がないわ。何より、男と女では、必須授業が違う。ちょっと我慢するだけよ」

「わたくしは無理よ!! あの女、わたくしに何て言ったと思う? お姉様と呼んで、なんて言ってきたのよ!!! 片親が平民の分際で、何様よ」

 義兄リブロも、義妹エリザも、やらかしてたな。きっと、辺境の三大貴族の一つという肩書に、勘違いしたんだな。

「キロン、義兄上とエリザはどうしていますか?」

 私が起きたのはついさっきである。あの二人が今、どうしているのか、気になった。

「リブロは、今、別邸で寝込んでる。医者に診せたが、下半身が変な病気になっているという話だ。片足に障害が出るかもな」

「えーと、すぐ手当したの?」

「暴れたから、出来なかったのよねー」

 フローラが答えた。そうか、それは仕方がないなー。

「エリザはどうしてますか?」

 エリザは一応、五体満足である。怪我はしていない。

「部屋から出てこないな。髪を切り刻まれたからなー。見たが、無様だったぞ」

「綺麗に剃ってあげたかったのですが、彼女も暴れて」

 髪は女の命、という言葉がある。でも、髪なんて、伸びるのだから、別に、気にしなくていいのに。ヘリオスの兄なんか、丸刈りにして、女性に大人気だという話だ。いっそのこと、エリザも丸刈りにしちゃえばいいのに。

 私が起きているからだろう。フローラは、私に二通の書類を突きつけた。

「妖精憑きのお気に入りに悪さをした場合は、学校側としては、それなりに罰を与えることとなっているの。今回のことで、悪質と判断し、彼らは退学処分となった。彼らの所業は、帝国中の貴族の学校で情報共有されることとなったから、彼らはどの貴族の学校でも、受け入れない」

「勿体ないことをして」

 義兄リブロと義妹エリザは、本当に愚かだ。ただ、大人しくしていれば、貴族の学校を卒業出来たのだ。それだけで、貴族になれる資格を得られる。それだけで、将来の出発地点は平民より上なのだ。優遇だってされる。ほら、貴族の学校を卒業したのだから、貴族と縁があるというものだ。どこに行ったって、喜ばれるだろう。

「亡くなった母は、義兄が生まれたばかりの頃に、引き取る話を義母にしたそうです。だけど、母のことを泥棒、よそ者、と罵って、義兄を手放しませんでした。それどころか、子爵夫人の座をよこせとまで言ったそうです。結局、母は義兄の祖父を通して支援しました。義妹が生まれた時も同じです。むしろ、子どもを一人しか産んでいない母のことを女ではない、と罵りました。それでも、母は義妹のことも支援したのです」

 善意ではない。貴族としての矜持である。愛情とか、そういうものは、これっぽっちもない。後で、何もしてもらえなかった、と恨み事を言われないように、支援しただけだ。

「それなのに、義母上は、義兄と義妹に、母と私を悪く言いました。恨み事を言い続け、貴族の子なんだから、平民の仕事なんかやるな、と言い続け、実家では、義母の兄弟姉妹を顎で使っていたそうです」

 こうして、出来たのが、あの思い上がりで、全ての悪事を私のせいにする、義兄リブロと義妹エリザである。もう、あの二人は手遅れなのだ。何をしたって、救いようがない。

 私は話題の方向を変えた。

「フローラ、神の恵みという果物を収穫したこと、覚えていますか?」

「もちろん、覚えている!! あれは美味しかったなー」

「えー、食べたことがあるの!?」

 名前だけは有名な果物である。侯爵令嬢シリアといえども、神の恵みという果物は食べられない。

 ほら、心の持ちようで、果物は変化するのだ。だから、流通が不可能である。

「私が収穫した神の恵みを切り分けて、領地民たちに分け与えましたよね。あの時、たまたま、義母に見つかってしまったのです。ほとんど、奪うように持って行ってしまいました」

「本当に、最低だな」

「この話には続きがあります。あの果物を父、義母、義兄、義妹で食べたのです。ところが、彼らの口に入った途端、全て、腐ってしまいました。それで、腐ったものを渡したんだ、と持っていた者たちに言いがかりして、返したのです。そして、それをまた、領地民たちに配ったのですが、彼らが食べたら、瑞々しい、美味しい果物だったそうです」

「え、どういうこと?」

「神の恵みは、収穫者が切り分けると、その状態が固定化するはず。なのに、父、義母、義兄、義妹にだけは、変化した。神は、見ているんだなー、と思いました」

 本当に、あの時の出来事は、不思議だった。

 だけど、この出来事が、彼らの性根を私に教えていたのだろう。それでも、私は仲の良い家族になれる、と信じたのだ。ほら、知らない人たちだから。結果は、散々だけど。

「大昔、子爵家では、跡継ぎを決める時、神の恵みに決めさせた、なんてことがあったそうです」

 心根を測る、というよりも、領地に認められていることを測ったのだろう。

「いい果実を収穫できる人を跡継ぎにしてみたのですが、心根が良過ぎて、騙されて、大変なことになったそうです。それからは、人柄だけでなく、能力を見るようになりました。あの果実の判断に頼り過ぎてはいけない、という教訓となりました。おしまい」

「深いな」

「神頼みで決めてたの!? とんでもないわね!!」

 今では考えられない方法だ。実際に果実を食べたことがある伯爵令嬢フローラは、よい教訓と受け止めるが、食べたことがない侯爵令嬢シリアは、理解出来ない話だった。

「人間のやることですから、穴があります。義兄上も、エリザも、大人しくしていないでしょう。きっと、とんでもないことをしてくれますよ」

「あそこまでやってやったのに」

「あの人たちは、全てのこと、亡くなった母、私のせいなんです。悪い事が起これば全て、人のせい。自分たちは悪くないと思っています。過去、私にした所業も、当然なんです」

 母が亡くなってから、たった一年、一年も、彼らは、やりたい放題した。当然の権利だと、今も思っている。

「後で届けるが、リブロとエリザが気前よく配っていた物は全て、こちらに返す」

「たかが子爵家だってのに、何をやってんだか」

 勝手に買って、勝手に配ってって、何様になったつもりなんだ。義兄リブロと義妹エリザの金使いの荒さは、そういうことだったのだ。

 これからは、少しは無駄がなくなると思いたい。








 生徒会主催の舞踏会までには、どうにか、体調は整った。学校に行けば、誰も何も言わない。ほら、友達いないから。場の空気も変わっていない。

 生徒集会の場で、我が家の恥部というか、汚点というか、色々と暴露されたと聞いている。具体的な内容は知らない。

 ただ、もう、私の悪評が語られることはなかった。そういうこととなったのだろう。辺境の繋がりはすごいね。だから、情報を操作出来るのだろう。

 本来であれば、帝国に報告されるべき、我が家が妖精憑きのお気に入りにした所業。これを止めたのは、侯爵と伯爵だろう。

 だけど、それだけではないけどね。

 私は、舞踏会前日に、随分と心配かけた、辺境の教皇フーリード様の元に足を運んだ。いつもの神殿に、フーリード様はいて、私が顔を見せると、笑顔で抱きしめてくれた。

「まだ、痩せていますね」

「もっと、お肉を食べられるように頑張ります」

「そうですよ。そんなに細いと、今すぐにも、死んでしまいそうです。妖精憑きのお気に入りなんですから、長生きしなさい」

「えー、フーリード様は、長生きしてほしい、と言ってくれないのですか?」

「当然のことです!! アーサーだけではありません。帝国中の人々、全てが平穏に、長く生きられるように、神と妖精、聖域に祈っています」

「もし、私がフーリード様の子でしたら、どうでしたか?」

「それは、言いません」

 かもしかだ。実際に、私がフーリード様の子であればわかることである。そうでないのだから、その答えは存在しない。

「ですが、今、わかっている答えはあります」

「何がですか?」

「フーリード様は、私のことなんて、どうだっていい」

「そんなことっ」

「体調を崩したので、暇なんです。色々と、調べました」

「アーサー、私は、教皇となってから、全てを平等に、心がけています。いくら、あなたの母マイアを愛していたからといって、それが、あなたの存在に影響を与えることはありません」

「言い方を変えます。母ではなく、私が死ねばいいのに、と考えたことはありますか?」

「どちらも大事です。どちらが死んでも、悲しいです」

「模範解答ですね」

「アーサー、どうして、そんなことをいうのですか」

「言ったじゃないですか。私があなたの子だったら、何が何でも守ると。矛盾しています」

「いつ………」

「ちょっとした会話の隙間です」

 油断したのだろう。フーリード様は、私が皇族だと発覚した時、ぽろりと言ってしまったのだ。

 母のことを愛していることまで、私に暴露した。よほど、フーリード様は、心が乱れたのだろう。

「私は、それまで、フーリード様は、平等に見ているから、私を助けられなかった、と思っていました。ですが、母への思いを吐露された時、矛盾を感じたのです。だから、皇族の権力を使って、調べました」

 私の側には、いつも、妖精憑きキロンがいる。キロンは、何も持っていないように見えて、実は色々と持っているのだ。私が手を出せば、話の流れから、何が必要か、すぐに悟って、出してくれた。

 それは、妖精憑きのお気に入りである私の定期報告である。私の存在は野放しに出来ないので、帝国は、監視をつけ、報告させていたのだ。その監視役が、辺境の教皇フーリード様だ。

「この報告書、別に、フーリード様でなくても良かったんです。だけど、わざわざ、フーリード様ご自身が動きました」

「あなたはマイアの子です。ここには、私情が入っています」

「正直ですね。さて、辺境の現状は、ご存知ですよね。辺境は王都から遠すぎて、辺境から指示を仰いでも、答えがくるのは一年後ということは、よくある話だと、フーリード様は言っていました」

「そうです」

 辺境の三大貴族が許されたのは、この帝国の内情からだ。他は比較的、はやく王都から指示は下りてくるが、辺境は、海、山、中央都市を介さないといけないため、時間がかかるのだ。辺境から報告をあげると、三つの都市を通る。ここで、色々とあって、後回しにされる。そして、やっと王都に到達すれば、ここでも後回しだ。ほら、運ぶ者は辺境の使者ではない。辺境は、それぞれの都市の者たちに代行をお願いするのだ。そのせいで、辺境は催促が出来ない。だから、処理が後回しにされて、気づいたら、一年後に到達することは、普通なのだ。

 さすがに、皇族の権力と、筆頭魔法使いティーレットを使ったので、私が望む書類は、即日で届いた。皇族の権力、最高だ!!

「こうして見ると、私の報告書って、月に一枚書いて提出です。ですが、緊急のことは、神殿を通して、王都に直接報告するので、こういう報告書は、緊急性がない。だから、一年分をまとめて提出しています」

 まず、辺境から出される日付が手書きで記入されている。それが、丁度一年分、同じ日付になっている。

「そして、中央都市では、なんと、また、半年ほど放置です」

 中央都市が受け取った日付が半年後になっている。お役所仕事というが、これは酷いな。

「そして、王都に到達すると、さらに承認は半年後。つまり、王都に集まる私の情報は、一年から二年遅れのものです」

 王都も酷いな。これを女帝レオナ様も見ているだろう。今頃、役人どもと貴族どもが、説教されているだろうな。

「こうして、辺境では、辺境の三大貴族の権力が大きくなってしまいました。その権力と、この杜撰な仕事を利用して、私がたった一年、一年も受けた虐待を隠したのです。そのために使われたのが、義兄リブロが私のふりをして書いた、伯爵令嬢フローラへの手紙です」

 お願いしたら、フローラがその手紙を渡してくれたのだ。もう、いらないと言ってたなー。この手紙の役割は、もう終わったのだろう。

 私は手紙を日付順に並べて、辺境の教皇フーリード様が書いた私の報告書と照らし合わせた。

「誰も、私のことなんか、興味がない。この一年間だけ、母親を亡くした私は、父、義母、義兄、義妹と仲良く過ごしていることになっている。そして、私が保護された後から、緩やかに不和を匂わせていっています。そして、真実に切り替えられました。二年もかけて、外部の誰が見ても、疑問に感じないように、見事な情報操作です。素晴らしい!!」

「す、すまなかった」

 とうとう、辺境の教皇フーリード様は、地べたに座り込み、ひれ伏すように頭を下げた。全身を震わせて、何を恐れているのやら。

 私だけ、椅子に座った。まだ、完全に体調が戻ったわけではない。突っ立っているのは、疲れるのだ。

「別に、責めているわけではありません。妖精憑きも人なんだな、と思い知りました。フーリード様、正直に答えてください。私のこと、どう思っていますか?」

「大事に思っている!! 本当だ!!!」

「母が亡くなってから一年間、私が神殿に行っていないというのに、何も感じなかったのですか?」

「あの領地民の者たちは、それが普通なんだ。だから」

「私の様子を見に行かなかったのですか? 母親を亡くしたばかりの子どもです。心配ではありませんでしたか?」

「アーサーだけ特別扱いするわけにはいかないんだよ!!」

 気持ち悪い顔を見せるフーリード様。あー、この顔だけは、見たくなかったな。

 媚びる様な、そんな顔だ。義妹エリザが、媚びる時、こんな顔をしていた。同じような顔に私は動いた。

 容赦なく、フーリード様の頭を踏みつけた。

「な、何をっ」

「妖精憑きのお気に入りは大事な監視対象です。私情ではありませんよ。帝国でのお役目です。監視を緩めてはいけないでしょう」

「そ、それはっ」

「別に、あなたがやらなくったっていいんです。もう、母も亡くなったのだから、別に誰かにやらせれば良かったでしょう。どうして、その役目を神官やシスターに命じなかったのですか?」

「………」

 声も出ないフーリード様。私が踏みつけているというのに、もう、叱ったりしない。すっかり立場が逆転した。

 私は再び、椅子に座る。もう、フーリード様は顔をあげない。

「ほら、言い訳してください。いくらだって、論破してあげます。さあ、どうぞ!!!」

「私は、マイアの死で落ち込まないために、ただ、そのためだけにぃ」

「知っています。周囲が心配するほど、寝食を削って、献身していたと。その時から、辺境での信仰心が高くなりましたよね。母が生きている頃は、神殿は、正直、ただの観光物の一つでした。ですが、母が亡くなって一年後、神殿は見違えるほど、辺境の人たちの憩いの場になっていました。神官たち、シスターたちは、信徒たちの声を傾け、真摯に受け止め、一緒に祈ってと、私は驚かされました。フーリード様の改革のお陰です」

「だから、忘れてしまっていたんだ、アーサーのことを。いや、思い出すこともあった。私よりも強い妖精憑きキロンが側にいるのだから大丈夫、と思ったんだ。そうだろう!! キロンは、私よりも強い妖精憑きだ!!」

 顔をあげたフーリード様は、キロンをきっと睨んだ。

「どうして、お前は、一年も、アーサーを囲ったんだ!! お前が力を使えば、すぐにアーサーは助かった!!!」

「そうしたら、俺はアーサーから引き離される。そう言ったのは、お前だろう、フーリード」

「っ!?」

「私も、そこのところは、講習を受けて知っています」

 妖精憑きのお気に入りとなってすぐ、私は注意事項をしつこいくらい教えられた。それは、キロンもだ。

「妖精憑きの力を悪用すると、私たちは引き離されてしまいます。私がキロンに命じて、人を傷つけることは、絶対にやってはいけないことでした。キロンもまた、感情が上手に制御出来ていませんでしたから、人を魔法で傷つけてはいけない、ときつく、フーリード様が言ったと聞いています」

 妖精憑きのお気に入りはいろいろと優遇を与えられる。その見返りに、妖精憑きのお気に入りは、妖精憑きを悪用してはいけない、と厳しく注意されるのだ。

 もし、それを行った場合、私とキロンは引き離されてしまうのだ。

 出来ないかに見える。だけど、帝国は出来るのだ。そういう手段や方法を帝国は握っている。

「もし、父たちが、私たちが魔法を悪用した、と言ったら、どうなりますか? 当時は、領地民たちも敵でした。大人数で、それを訴えられてしまったら、私とキロンだけでは、勝てないんです。そして、私はキロンという最後の縋りを失うこととなります。私が、キロンを説得したんです。キロンを引き離されてしまったら、もう、私は一人です。そんな孤独、耐えられない」

 私は自然と泣いていた。思い出してしまった。

「もう、どうして涙なんか」

「アーサー、ほら、目が腫れちゃう」

「幸い、こういう、私自身を癒す魔法は使うことは許されました。だから、たった一年、一年も、私は無傷だったんです」

 キロンの魔法が、私を癒してくれる。だけど、涙は止まらないんだな。どんどんと溢れてくる。

「お土産があります。ぜひ、受け取ってください」

 キロンは、どこにでもある箱を取り出して、ひれ伏したままのフーリード様の前に置いた。

「私が回復したことで、妖精たちがお祝いで、神の恵みを授けてくれました。私が収穫しました。それが、今の私です。全て、食べてください」

 神の恵みは、収穫者の心のありようで変化する。

 母が亡くなる前の私は、心根のいい収穫者であった。世間知らずな子どもだっただけだ。私が収穫した神の恵みは、瑞々しく、美味しいものだった。

 不思議なことに、母が亡くなってからずっと、神の恵みは、見られなくなった。

 つまり、これは、母が亡くなってから初めて、私が収穫した神の恵みだ。

「絶対に、全て、食べてくださいね」

 私はその場を立ち去った。

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