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皇族姫  作者: 春香秋灯
賢者の皇族姫-外伝 懺悔-
163/353

騎士アルロ

 ラインハルト様を衆目の面前に出してみれば、とんでもないものが釣れた。

 なんと、サツキの夫アルロである。サツキを殺したラインハルト様に復讐するために、襲撃しに来たのだ。

 私は楽しみだった。ほら、賢者テラスよりも強い魔法使いだと聞いていた。テラスより上なのだ。それなりに楽しめると思っていた。

 ところが、私がラインハルト様の前に出ると、アルロは真っ青な顔をして絶望した。そういえば、片目が妖精の目という魔道具だ。あれは、妖精憑きの力を与える魔道具だ。元は、力の弱い妖精憑きのための道具である。あれで、妖精憑きの力を増幅するのだ。

 アルロはただの人だ。ただの人に妖精の目を装着させるのは危険なことだ。才能がなければ、廃人となる。アルロは才能があったため、使いこなせているのだろう。

 だけど、それが良くなかった。アルロ、一面の妖精をどうにか支配しようとしたのだろう。だけど、無駄なことだ。何故ならば、さらに格上の妖精が私の元にいる。

 テラスは持っている最高の妖精までもアルロに盗られてしまったのだろう。だが、ただの人には、せいぜい、一体が限界である。私は、それをかなりの数、持っているのだ。

「お前、随分と力があるな。今の魔法使いで、私の最強の妖精を見れる者はもういない」

 笑って言ってやると、アルロは膝をついて、絶望した。アルロには、一体が限界なのだ。

 一体、支配したって、こちらは複数体です。すぐに盗り返してやった。

 こうして、サツキの夫アルロを捕縛したのだ。





 色々と因縁のある男だ。わざわざ、ラインハルト様まで見に行くのだ。

「ラインハルト様、この男を見に来るなんて。そんな時間がありましたら、私の相手をしてください」

 もう、寿命もそうないのだ。残った寿命を私のために使ってもらいたい。

 それを聞いたラインハルト様は嬉しそうに笑う。誤魔化されませんよ。

「さっさとお戻りください。この男との話は、私がさっさと終わらせます」

「どうせ、処刑するのだろう」

「当然です。ラインハルト様を二度に渡って殺そうとしたのですよ。本来、一度でも、この男を八つ裂きにするべきです」

 私が生まれる前の話であるが、暗殺未遂を私は許していない。せっかく、目の前にいるのだから、処刑どころか、八つ裂きにしてやりたい。

 アルロは、恨みのあるラインハルト様が近くにいるので、鉄格子をつかんで、しかし、手を伸ばしたりしない。わかっているのだ。そこから手を出せば、私の妖精がアルロの腕を切り裂く。アルロの妖精の目は、それが見えている。

「随分と久しぶりだな。サツキが言ってたぞ。捨てられたって」

「っ!?」

 サツキの恨み事をラインハルト様を通して言われて、アルロは泣きそうな顔になる。

「だいたい、どうして、サツキを手放した? 見ていればわかる。サツキはお前の側にいたほうが、幸せだっただろう」

「だが、いつか、俺はサツキを守り通せなくなる。だから、もっとも安全だという城の奥に行かせたんだ」

「ハーレムだぞ。俺と閨事することとなっても良かったのか?」

 アルロだけでなく、私までラインハルト様を睨んでしまう。未遂だが、その過去を口にされると、私も腹が立つ。

 ラインハルト様は、私に対して気まずいという顔をする。もっと、言葉を選んでほしいです。イラっとするのですよ、ハーレムの話は。

「俺は、ただ、運よく、サツキを手に入れられただけだ。本来は、貴族で、俺とは全く違う世界の女だ。なのに、俺のせいで、サツキは家を追い出された。俺が、サツキの側に行ったばかりに」

「それも、サツキに利用されただけだろう。聞いた。サツキは、アルロを利用して、婚約破棄を狙ったんだ」

「だがっ」

「それが、たまたまアルロだっただけだ。当時、サツキに想いを募らせた者はそれなりにいたという。いずれ、サツキはそういう男を利用して、婚約破棄をしただろう」

「随分とご存知ですね。サツキとそういう話をしたのですか!?」

「もう、お前は口を挟むな!!」

「まだ、私に話していないことがありますね。ここで洗いざらい話してください」

 ハーレムで、サツキから、復讐関係をラインハルト様は聞いているようだ。私の知らないことですね。

 私は長くなりそうなので、椅子を二つ持ち込んだ。一つは、ラインハルト様、もう一つは私が座った。

「このような結果になって、あなたはどう思っていますか?」

「どのことだ?」

「サツキのことです。結局、サツキはラインハルト様の手によって殺されました。どうですか?」

「後悔した!!」

 そりゃそうだ。だが、そんな短い言葉を聞きたいんじゃない。

「どこまでの後悔ですか? サツキの婚約破棄のきっかけとなった、乗馬での帰宅ですか? サツキを保護しても、そのまま軟禁したことですか? サツキとの間に子を作ったことですか? サツキをラインハルト様のハーレムに送ったことですか?」

 後悔するとしたら、これくらいの区切りである。

 ラインハルト様だけでなく、アルロも驚いて、私を見てくる。ここまで、わかりやすく区切って質問されるとは、思ってもいなかったのだろう。

「私のラインハルト様の時間はそうありません。さっさと答えなさい」

 少しでも、私はラインハルト様の残った時間を側に過ごしたいのだ。ここで、アルロに無駄に時間を使いたくない。

「ずっとだ。俺は、サツキを貴族に戻してやりたかった」

「ですが、サツキはそれを望んでいなかったのですよね」

「ああ。貴族は最悪だ、と言っていた。嘘かもしれないが、そう言われて、俺は喜んだ」

「あなたは、単純ですね。そこは、テラスに似たところがあります。なるほど、本気で好きだったわけだ」

「どうして、そこでテラスが出てくる?」

「テラスも、サツキのことを愛していたからですよ」

「っ!?」

 心底、驚くアルロ。

 アルロとテラスは、それなりの仲だろう。何せ、テラスにとって、アルロは屈辱を与えてくれた男である。何かにつけて、突っかかっただろう。だから、アルロもテラスとはよく接していたはずだ。

 アルロは瞳を揺らした。

「だったら、テラスに渡せばよかった。あいつなら、サツキの願いを全て、叶えられた」

「サツキの願いとは、何ですか?」

「復讐だ」

「本当に?」

「そうだ。俺がサツキを保護した時、そう言っていた。テラスはこの国で二番目に偉いヤツだ。テラスなら、サツキの望む通りの復讐をしてやれただろう」

 信じて疑わない目だ。アルロは、心底、それこそがサツキの望みだと思っている。

 だが、それを聞いて、私は笑ってしまう。

「あははははは、なんだ、それ。そんなもの、女が望むわけないだろう!!」

「ハガル?」

「お前もまた、テラスと同じだ。経験値が足りないな」

「どういうことだ!?」

 ちょっと揺さぶってやれば、アルロは激昂する。

 話で聞いたアルロは、冷静沈着で、感情一つないような男だ。敵国でそういうふうに教育を受けたのだ。

 なのに、目の前にいるアルロは、感情に振り回されまくりだ。敵国は、この感情の抑制を教えなかったのだろう。

 アルロは感情がなかったわけではない。衝動を知らなかったのだ。何をやっても衝動が動かなかった。それも、サツキと出会って、衝動が動き、感情が動いたのだ。

「お前にとっても、サツキは初恋だったわけだ」

「初恋? なんだ、それは」

「初めて異性を好きになることを初恋というんだ。これまで、女に、サツキのような感情を抱いたことはあるか?」

「ないな」

「その割には、閨事の経験が高いな」

 この男は、女相手でも、男相手でも閨事が出来るように、訓練を受けている。ああいうものは、衝動あってのものだ。

「あれは、作業だ」

「相手に何か感じるものだろう」

「何度か、苦しい状態でやらされれば、勝手に出来るようになる」

「………なるほど」

 生存本能を呼び覚ましたわけだ。死が迫ると、人は子孫を残そうと衝動が動くという。そうやって、アルロは学んだのだろう。そして、作業化した。

「確かに、お前は処刑するべき男だな」

 テラスが処刑を訴えた理由がよくわかる。この男は、色々な意味で危険だ。

 命じられるままに動くという。しかも、人格まで作ったとか。こんなの、よくもまあ敵国は作ったものだ。たまたま、偶然の産物としても、出来るものではない。

 そのために、多くの命を犠牲にしたのだ。敵国は、帝国を野蛮だと言っているが、どっちが野蛮だか。

 ラインハルト様も、アルロの背景を想像して、ぞっとしたのだろう。こういうものを偶然とはいえ、作られたのだ。当時は特に危険を感じなかったのは、テラスが負けたからだろう。テラスが負けたから訴えている、と周囲も思ったはずだ。

 改めて、この男を目の前にして、きちんと話してみれば、アルロの異様さに気づかされる。

「まあ、私の前では無力ですけどね」

「化け物が」

「そうです、私は千年に一人、必ず生まれる化け物です。神が与えた天災ですよ。いくらお前が人並外れた力を持っていても、天災には敵いませんよ」

 笑って言ってやると、アルロは少し怯えた。そんな、怖がらなくていいのに。

「心配いりません。私には、皇族という立派な首輪があります。皇族には絶対服従の契約ですよ。皇族が待てと命じていますから、まだ、あなたを八つ裂きにはしません」

「よし、が出たら?」

「これからのお話次第ですよ。楽な処刑か、苦しい八つ裂きか」

「野蛮だな」

「いえいえ、帝国全体は野蛮ではありません。私が、野蛮なんですよ」

「………」

 悪名は全て、私のものです。帝国にはなに一つ、悪名なんて与えません。そうやって、悪名からも私は帝国を守ります。

 アルロはもう、全てを諦めたような顔をした。

「お前には、絶対に勝てないな」

「いいですか、私のような存在には勝ってはいけません。上手にご機嫌をとるのですよ。それが、皇帝の役目です。ねえ、ラインハルト様」

「ああ」

 私がちょっと声をかければ、ラインハルト様は椅子から立ち、座っている私を後ろから抱きしめてくれる。

「ハーレムで女を抱いていたというのに、今は男を抱いてるのか!?」

「私もラインハルト様も女好きですよ」

「その顔でか」

「この顔で、随分と多くの暗部を篭絡してきました。地下で飼っていたのですが、全て、ラインハルト様に殺されてしまいました。そして、その女たちがいた場所が、今あがたないる牢ですよ」

「っ!?」

 アルロは気持ち悪さを感じたのだろう。まさか、私が女を飼っていた場所にいれられるなんて、誰も思ってもいない。私も、こんなことになるなんて、思ってもいなかった。

「もう、女は十分遊びましたから、必要ありません。言っておきますが、男にはこれっぽっちも衝動が動きませんからね。ラインハルト様は特別ですから」

「その男がいいなら、ハーレムなんか必要なかっただろう!?」

「ハーレムがあったのは、私がラインハルト様に出会う前ですよ。ラインハルト様は、私に出会ったために、ハーレムを解体したのです。だから、恨むなら、私です」

 そう、ハーレムの解体は、私のせいだ。ラインハルト様は私と出会ったがために、ハーレムを解体し、中にいた女たちを殺したのだ。

 逆に言えば、私に出会いさえしなければ、今もハーレムがあっただろう。サツキも生きていた。

 アルロは、もう一度、復讐心を燃え上がらせようとした。目の前の私を睨み、そして、私が持つ妖精をどうにか盗ろうとしたのだ。

 しかし、結果は同じだ。所詮、ちょっとした魔法使いの才能がある程度だ。化け物である私には敵わない。

 だけど、アルロは諦めていない。何かを口から吐き出した。だけど、それは一瞬で消滅する。

「そんな、それは、妖精の力が及ばない鉱物だと」

 敵国にいた頃に歯にでも仕込まれたのだろう。

「テラスでも防げたでしょうね。私相手には、ただの石粒ですよ。しかし、そこまで仕込まれているとは、身体検査をもっと細かくしないといけませんね。勉強になりました」

「くそっ!!」

「それで、いつまで、ラインハルト様の暗殺の命令を受け続けるのですか?」

「復讐だ!!」

「それだけではないでしょう。あなたが敵国から最後に受けた指令が、ラインハルト様の暗殺です。それは結局、失敗しました。ですが、その命令は解除されていませんね」

「そうだが、そんなこと」

「あなたは、命令で動く人です。それは、逆にいうと、命令がないと動けないのでしょう。まだ、命令遂行中なのではないですか?」

「もう、あいつらの命令なんてきかない!!」

 アルロは嫌悪感を持って叫んだ。

 アルロが捕虜となってからの記録が残っている。テラスがつけていた。捕虜となって、軍神コクーンに保護されて、騎士として教育されて、騎士になって、そういう事細かな記録が残っていた。

「では、ラインハルト様への復讐は、あなたの意思ですか?」

「………」

「サツキを殺された復讐なんですよね?」

「………」

 復讐心は、そうそう、長く続くものではない。よほどの強い想いと経験がないと、続けられないのだ。

「サツキが死んで、随分と経ちました。私とラインハルト様が出会ったのは五歳の頃ですよ。あれから十年は経っています。あなたは当初、それなりの復讐を果たしたでしょう。あなたを騙した貴族を殺し、皇帝の使者も殺しました。なのに、まだ、皇帝を殺そうとしました。それは、復讐心だけですか? 私が調べたところ、あなたは復讐を続けるほどの不幸を受けていません。サツキは死にましたが、あれは、あなた自身のせいでもあります。普通は、そう思うものです」

「そ、それは」

「近くで誑かされたから?」

「っ!?」

 真っ青になるアルロ。それには答えたくないのだろう。だけど、私は近くで囁いていた人を知っている。

 この場には、ラインハルト様がいる。私一人であれば、誤魔化してあげられました。ですが、ラインハルト様がいるのです。この襲撃の主犯を出さなければいけない。

 ラインハルト様は私を後ろから抱きしめたまま、剣呑な顔を見せる。もうすぐ寿命だが、この人は皇帝だ。皇帝として、きちんと解決しなければならないのだ。

「アルロ、もう一度聞きます。あなたは、敵国の命令を遂行していたのですよね? そのために、サツキの死を利用しただけですよね」

「………ああ、そうだ。俺はまだ、命令を遂行している」

「この襲撃に参加したあなたの子どもたちも、貧民たちも、巻き込まれたのですよね」

「そうだ!!」

「そうですよね。あなたは、作られた兵器です。なかなか、そこから抜け出せないのですよね」

「………そうだ。俺は、皇帝ラインハルトを暗殺し、そのまま自殺する命令を受けている」

「わかりました」

 私がそういうと、ラインハルト様は私から離れてくれた。見上げれば、なんともいえない表情をしている。納得はしていないな。

「ラインハルト様、サツキを殺したのは事実ですよ」

「しかし」

「テラスも言っていたことです。彼は処刑されるべき人です。敵国も、随分な兵器を置き土産してくれました。まさか、貧民街をも支配して、内部から帝国を潰そうとするなんて、恐ろしいものですね。ですが、もう、敵国は存在しません。残るは、アルロのみです。全ては、彼一人を処刑すればすむことですよ。これで、敵国の兵器はなくなります」

「参加した貧民どもは」

「必要悪ですよ。辺境ほど遠ければ、それなりに私も手を下しましたが、今回は近すぎます。迂闊に呪いを発動させると、城にまで飛び火するかもしれません。どうせ、貴族を見せしめに呪いを発動させました。貧民はいいでしょう。何せ、貧民に呪いをかけると、どこに行くか予想出来ませんよ。ほら、どこかの貴族の隠し子だ、なんてことになったら、大変です」

「妖精の呪いの刑にしなくていいだろう」

「今回のは、筆頭魔法使いとしての、初めての見せしめです。あの刑罰は、私の権威を上げるために必要なことです。ここぞという時に使うからこそ、見せしめとなるのです。貧民には、帝国に逆らえない契約だけしてしまいましょう。あとは放流して、必要悪として生きていてもらえばいいですよ」

「………わかった」

 やっと、ラインハルト様が了承してくれた。私は笑顔を向けると、ラインハルト様が上からかるく口づけを落としてきた。

「もう、私がやってられるのは、これで最後だぞ」

「ありがとうございます」

 これが、私とラインハルト様が関わる最後の刑罰だ。ラインハルト様は、やっと城へと戻っていってくれた。

 私はラインハルト様が完全に離れて行ったことを妖精を使って確認した。

「あなたは、サツキのこと、愛していましたか?」

 改めて、私はアルロの気持ちを確認した。

「わからん。ただ、サツキは特別だ。そして、サツキとの間に生まれた子どもたちも、サツキに関わる貴族も全て、特別だ」

「あなたは、サツキを通して、色々と手に入れたのですね。それほど、サツキという女性は素晴らしい人でしたか?」

「ああ、いい女だ」

「なのに、どうして、手放したのですか? 普通は独り占めするでしょう」

「サツキの幸せは俺の所にはない。俺はいつまでも、支配者ではいられない。自信がなかったんだ。だから、より強い所に送った」

「それが、ラインハルト様のハーレムですか。ですが、あなたは考えが浅いですね。あのハーレムは一度入ったら出られない場所です。あなたを騙した貴族は、それを知っていたのでしょう。ラインハルト様は、女好きではありますが、皇帝です。身辺整理はしっかりなさるのですよ。しかも、ラインハルト様ご自身で。貴族の中では、有名な話なんです。ラインハルト様に取り入るために、貴族はわざわざ貧民や平民から養女をとって、それをラインハルト様に差し出すこともあったそうです。そういうのには、ラインハルト様も手を出さなかったそうですが」

「最低だな」

「知っています」

 ラインハルト様は、その過去を話したがらなかった。だけど、そんなこと、ちょっと調べればわかるのだ。知っていて、だからこそ、あえて、ラインハルト様の口から聞きたかった。

 懺悔のようにラインハルト様が言っているところで、私は、許してあげたかった。

 私はまだ、ラインハルト様から、過去の悪行を聞いていない。

「話は戻しましょう。そういうことは、サツキもご存知ですよ。貴族ですから。だから、あなたと別れた時には、死の覚悟をしていたでしょう」

「そんなっ」

「ですが、死を恐れていませんでしたね。もし、恐れていたのなら、ハーレムでは暴れるなら、命乞いをしたでしょう。そういう話を聞いていません。ですから、こう考えました。サツキは、死ぬつもりだった、と」

「どうして?」

「サツキは、私から見ても、とても可哀想な子です。長年の虐待、血族も、母親の友人知人も見捨てたと聞いています。そんな世界で、生きていたいなんて思いません。サツキは常に、いつ、死のうか、と考えていたのでしょう。たまたま、その死に場所が、ハーレムだっただけです。サツキにとって、死は解放だっただけですよ」

「そんなわけ、そんなわけない!!」

「これは、私の想像です。実際は、サツキ自身しかわかりませんよ。私なら、そうだな、と思うわけです。でも、全て否定出来ますか?」

「………」

 記録を洗い出せば、サツキの体は相当、傷だらけだった。虐待の記録は新聞として残っていたが、その後、サツキを裏で支えた侯爵マイツナイトが、体の傷の記録をテラスに提出したのだ。それを私も見せてもらった。サツキと出会った頃からずっと、それは、サツキが貴族の学校に行く前まで、その記録はとられ続けていた。

 あんなにまでなっていて、生きていたくないだろう。復讐だって、本当は、どうだってよくなっていただろう。

 アルロも、復讐なんてどうだってよくなっていた。ただ、言われるままに復讐したにすぎない。きっと、同じことがサツキ自身にもあったのだろう。

 この懺悔は、まだ、終わらない。

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