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皇族姫  作者: 春香秋灯
賢者の皇族姫-侯爵と悪女-
151/353

鉄拳制裁

 噂話を集めれば、どうやら、サツキに横恋慕している貧民出の騎士アルロが、サツキを見つけて、そのまま連れ去ったという。

 サツキの交友関係は学校のみである。調べてみるも、学校の在学期間が短いため、そこまで複雑ではなかった。

「この中で、一番、厄介なのが、伯爵家次男マクルスです」

「皇族でなくて?」

 アッシャーが集めた情報を元に精査していると、貴族の学校の天才と呼ばれたマクルスを随分と危険視された。

 次男だし、何より、伯爵家だ。そこまで警戒する必要はないような気がする。

「あの伯爵家は、妖精憑きを飼っています。特殊な方法を当主が持っていまして、その方法で、妖精憑きを洗脳するのです」

「次男が? じゃあ、長男はもっとすごいんだろうね」

「長男は、侯爵家でいうエクルドですよ。次男こそ、真の当主です。彼が、随分とサツキさんに執着しているようです」

 貴族の学校でも、アッシャーの息がかかっている子息令嬢がいる。そこから、証言を得ているのだろう。

「あれだけ綺麗な子だ。頭もいいから、わかる男にはわかるんだろう」

「賢者に見染められている子ですよ。そんな笑い話になりません」

「賢者だからと、サツキを幸せに出来るとは限らない。もしかすると、サツキを連れ去った騎士が、サツキを最も幸せにするかもな」

「賢者を敵に回して、無事ではいられませんよ」

「そこなんだよな」

 疑問が残る。賢者はサツキを見染めたというのに、囲わなかった。

 魔法使いハサンは、姪である男爵令嬢ササラを養女にして囲っている。送り迎えもして、外出もさせていないという。

「どうして、賢者は、サツキを囲わなかった?」

 賢者テラス様は今もサツキの要求のような手紙を受け取って、せっせと動いている。

 サツキは騎士に連れ去らわれてしばらくして、私の元に指示書を送ってきた。賢者テラス様への手紙まであった。その手紙の発送方法まで書かれたそれを私はその通りにしてやった。

 サツキは何を考えているのやら。帝国では、悲劇の令嬢と呼ばれるようになったサツキを題材にして、小説やら戯曲、演劇が発表されたのだ。新聞を賑わせているサツキを題材にしているので、もう、大人気だ。小説は売れ、戯曲と演劇は毎日、満員御礼である。

 こんなこと、そこら辺の貴族が出来るはずがない。明らかに、賢者テラス様の仕業だ。

 文字が読めない平民でも伝わるように、サツキの悲劇を戯曲や演劇にして、さらに伯爵家の悪行を帝国中に広めるとは、恐ろしいな。賢者テラス様を味方にしたから出来たことだ。

 容赦ないサツキの攻撃は続く。サツキの亡き母カサンドラの毒殺が訴えられたのだ。そして、毒を売ったという貧民が名乗り出てきた。売った先はサツキの義母カーサだ。この事で、さらに大騒ぎとなった。

 新聞は、次から次へと情報を発信していく。義母カーサが犯罪者となって処刑され、とどんどんと悪行が表沙汰とされていくので、喜んでいる。他人の悪行は見ていて楽しいのだ。

 そうやって、遊んでいると、どこからか、横やりのような情報提供があった。伯爵家次男マクルスだ。マクルスは怒りにまかせて、サツキが受けた虐待を表沙汰にしたのだ。

 サツキが亡くなったことが表沙汰にされてすぐのことだ。マクルスは、本当にサツキに好意を持っていたのだろうな。だが、余計なことをしてくれた。

 サツキはこれまで、悲劇の令嬢ではあったが、その身に受けた仕打ちを隠し通していた。サツキは、憐れまれるのを嫌った。

 だが、マクルスの奴は、サツキの気持ちなんて考えず、暴露した。お陰で、我が家の醜聞も出てきた。

 ほら、サインの不正使用だ。サツキの名前を使って勝手に買い物したのだ。本当に、あのことは、最後まで我が家の首を絞めてくれたな。

 表沙汰にされたので、我が家の商売も終わった。残ったのは、皇室御用達の茶である。サツキ、最後まですごいな。

 私がやったわけではない。が、私の両親と、廃嫡したエクルドがやったことだ。きちんと金も返したが、それを新聞で訴えるのは、ちょっとまずい。

「きちんと、記事を出しましょう!!」

「情報操作している、ということが表沙汰となるからダメだ」

 アッシャーを止めた。我が家の醜聞で、言い訳のような記事を帝国中に出せば、何か働いた、と考える者もいる。だったら、この醜聞もそのままだ。ついでに、私の幼女趣味が再燃した。そこは、笑い話だな。

「さて、もうそろそろ、離縁だな」

「どうして!?」

「これ以上、君に迷惑をかけるわけにはいかない。子どもを連れて、家に帰りなさい。離縁の手続きは私からしておく」

「ご一緒します!!」

「貴族でなくなるんだぞ」

 アッシャーはただ、私への好意で一緒になっただけだ。残念ながら、私はアッシャーへの好意はない。そういうもの、どこかに忘れたんだな。

 だからといって、アッシャーを道連れにするほど、私は酷い男ではない。アッシャーを助けるために離縁だ。情報網は惜しいが、ここまでだ。

「いえ、ご一緒します。爵位を返上するのでしたら、我が家に行きましょう。爵位、また買えばいいのです」

 さすが金で爵位を買った男爵家。いうことが豪胆だ。それが出来るのだろう。

「私に付き合わせて、利用されて、君は気の毒だね」

「サツキさんのためです。彼女は、本当に優しい人です。だから、はやく連れ戻しましょう」

 アッシャーはサツキの捜索に力を入れていた。アッシャーは、サツキがどうして侯爵邸から出て行ったのか、知っているようだった。





 爵位返上のついでに、私はお土産を持参した。

 私がお土産持参で城に行けば、皇帝ラインハルト様と賢者テラス様が直々に顔を見せてくれた。

「我が家が随分と帝国をお騒がせしてしまい、申し訳ございませんでした。お詫びとして、こちらを持ってきました」

 私は家臣に命じて、お土産を賢者テラス様の前に転がしてやった。

 両手両足を拘束し、口までしっかりと塞いだ両親だ。芋虫のように暴れているのが笑える。

 これを見た皇帝陛下はドン引きである。実の両親を差し出したのだ。そりゃ、驚くだろう。

「サツキからは色々と聞いています。さて、私の妹のような子の恋人として、テラス様は合格点がとれますか? 私はサツキから兄と慕われています。兄として、厳しく採点しますよ」

 相手が賢者テラス様といえども、私は容赦しない。

 私とサツキの関係をテラス様は知らない。私の口から吐き出されて、初めて、テラス様は知ったのだ。そして、気づいた。情報の伝達が異常に速い理由を。いくらサツキが新聞社に暴露したにしても、たかが小娘一人のために、記事なんか書かない。

 私とサツキが良好の関係であるとは、誰も思っていない。一時期はそうだ。それも、私は社交でサツキのことを口にしない。何より、幼女趣味と言われながら、男爵令嬢であるアッシャーと婚約結婚し、子だって設けているのだ。私はサツキが復讐を決めてから、社交の場では沈黙した。声が大きいと、サツキの計画が崩れるからだ。

 そして、サツキの計画通り、サツキの父、義母、義妹、婚約者、婚約者の両親が、声高にサツキの悪評を広めた。それも私は肯定も否定もしない。そうして、サツキと私の関係が薄れたように見せていた。

 テラス様は、長い年月を使って隠した私とサツキの関係に気づかなかった。何せ、テラス様はサツキに出会っても短い。失踪したサツキのことを深く知るには、情報を集めるしかないのだ。

 私がサツキと仲が良い、というところに、幼女趣味が加わったのだ。むしろ、テラス様としては、私を危険視したのだろう。

 私は転がっている両親の頭を踏みつけて笑う。

「本当に、お前たちは最後まで、愚かだったな。私に内緒で、平民に落としたエクルドを支援したな。お陰で、あのバカはまだ生きてる。しかも、繋がりがあると、テラス様がお怒りだ」

「なるほど、親が勝手にやったことですか。あなたは、何もやっていない」

「いえ、そうなるように仕向けました。でないと、我が家の爵位返上が出来ないではないですか」

 両親にあえて金を使えるようにしたのは、エクルドに支援をさせるためだ。どうせ、エクルドが泣きついてくるから、父か母が、自由に使える金を渡すだろう。それを知った賢者テラス様は激怒して、我が家に何かやってくるだろう。

「こうすれば、あなたが会ってくれます」

 こうして、賢者テラス様を私は誘き出した。

 賢者テラス様は私の近くに来た。やっと、側まで来た。私はこの瞬間を待っていた。私はテラス様の胸倉をつかむなり、殴った。

 賢者を殴る行為に、皇帝ラインハルト様が立ち上がった。

「何をっ!?」

「煩い!! サツキを囲いもせず、なにが賢者だ!! お前はもっと権力を使うべきだったんだ。そうすれば、彼女は今も、この城のどこかで囲われていただろう」

 怒りしかない。この男は、サツキに言われるままに操られただけだ。もっと本能に従っていれば、サツキは今も守られていただろう。

 まさか、私に殴られるなんて思ってもいなかった賢者テラス様は呆然となった。この男は、きっと、失敗はそれほどしたことがないのだろう。力のある妖精憑きは、才能がある。天才だ。だから、間違いが少ない。

「不敬罪でいいですよ。どうせ、爵位も返上しましたし、我が家の醜聞は帝国中が知っている。処刑してください」

 家臣たちは私から距離をとって、私がどうなるのか見守った。ここで処刑されるのなら、そこまでだったんだ。家臣たちも、私の覚悟を知っていて、ここまで付き合ってくれた。

 賢者テラス様は、私の前にひれ伏した。

「すまなかった」

「テラス!?」

「私の驕りが、サツキを不幸にした。次、サツキを見つけたら、必ず、囲おう」

 皇帝が止めるも、テラス様は謝った。

「私が妹のように可愛がっていた子です。優しい子なんです。皆が悪女というが、本当は、とても心の優しい子なんだ」

 私は隠れるようにいる魔法使いハサンを見た。賢者テラス様の側には、常にハサンが潜んでいた。今もそうだ。

「魔法使いハサン、あなたのことも、サツキから聞いています。あなたは、サツキからササラを養女にするように命じられましたね」

 賢者テラス様は、ハサンのことも知らなかったのだろう。驚いたように顔をあげた。

 ハサンは私とサツキの関係を初めて知ったのだ。それに驚いているも、重く頷いた。

「元々は、サツキはあなたの養女になる計画でした。最初に聞いた計画は、そうでした。しかし、男爵令嬢ササラと出会って、サツキは、その座を譲ったんです」

「譲った? どういうことですか!?」

「言葉、そのままです。サツキは何事も自らを後回しにします。何もかも、譲るのです。サツキだって不幸だ。しかし、男爵令嬢ササラも不幸だから、助かる道を譲ったんです」

 ハサンは、初めて、サツキの意図を知った。

「いや、最初からそういう計画だと」

「私がサツキから聞いた計画では、魔法使いハサンの養女にはサツキがなることとなっていました。そうすることで、魔法使いの後ろ盾を使って、家族の、婚約者の醜聞を表沙汰にすることとなっていました」

 すでに、そこから、計画は変わっていたのだ。

 私は、家臣から、才女カサンドラが書いた復讐譚の原稿を受け取って、それを賢者テラス様に渡した。

「それが、サツキの復讐の元ですよ。悲劇の令嬢を元にした小説では、魔法使いが出ていませんね。サツキはきっと、魔法使いを出してほしかったでしょう。そして、小説の中では、魔法使いの恋人で終わりたかったと考えていたでしょう。今更ですけどね」

 テラス様は原稿を抱きしめる。

「サツキは、何もかも譲ってしまいます。私の婚約者になる機会も、私の妻に譲りました。私の妻は、元は、サツキの復讐に利用するための関係でした。それをサツキは、わざと喜んで、妻を持ち上げて、私のことを兄と呼び、助かる機会を捨てたんです。

 サツキが伯爵家を追い出された時、我が家が一度、保護しました。その時、運悪く、赤ん坊をサツキが見てしまいました。サツキは、赤ん坊から両親である私とアッシャーを奪わないために、家から一人、出て行ってしまいました。

 私もまた、愚か者です。サツキの優しさに気づかず、表面をそのまま受け止め、それに甘えてしまったんです」

 私は離縁を申し出た時、アッシャーから聞いた。アッシャーは別に、サツキに何も言っていない。だけど、アッシャーはサツキの気持ちを察したのだ。だから、アッシャーは必死にサツキを助けようとしたし、探したのだ。

 言いたいことは言った。すっきりした。

「爵位返上はなしにしよう」

 皇帝ラインハルト様がこれまでの失礼な言動を許して、言ってくれた。だけど、私はそれを断った。

「今、その時ではありません。サツキ、どこかで生きてるのでしょう。時々、私が教えた連絡方法で手紙が届きます。ただ、その手紙を運んだ者は、サツキではありません。後を付けても、撒かれてしまいます。だから、もう、私はサツキを探しません。サツキもいい年頃です。兄がいつまでも囲うのはおかしいです。ですが、サツキが頼ってきたら、兄として助けます」

 爵位も、邸宅も領地も返上した。もう、私に出来ることは、家臣たちとまたやり直すことである。

 私は家臣たちに、さらに荷物を運ばせた。

「もう、邸宅も明け渡しました。が、サツキの物だけは、帝国で預かってください」

 私がサツキに、と作らせた服や貴金属だ。

「買い取りましょう」

「私がサツキのために作って、贈ったんです。あの子は、持っているもの全て盗られてしまいました。最初は、服も装身具も家に持って帰らせたんです。ですが、全てをあの義妹が奪いました。それからずっと、我が家で預かっていただけです。贈ったんです。サツキの物です。どうするか、サツキに決めさせてください」

 金で解決するような代物ではない。賢者テラスの申し出を私は断った。

 家臣は、とても恨むように私を見ているが、無視だ。ここで金を受け取ったら、ケチがつく。

 私は呆然としている魔法使いハサンを睨み上げた。

「私はお前のことを一生、許さない。毒殺されたカサンドラの復讐のために、サツキを利用したんだ。サツキはそのことを知っていて、復讐をしたんだ。お前がサツキの意思など無視して、さっさと囲っていれば、サツキはあんなに傷つかなかった。言い訳なんかするな。お前は一生かけて、サツキに関わる何かのために償うんだ。サツキは最後まで、当主であろうとしていた」

 魔法使いハサンは泣きそうな顔で頷いた。

 本当に、魔法使いはどいつもこいつも、自尊心が高すぎて、魔法でどうにかしようとする。だから、失敗するんだ。

 賢者テラス様も、魔法使いハサンも、だから、サツキにいいように操られたんだ。サツキを甘く見過ぎだ。

 こうして、私は両親を生贄にして、無事、城を脱出した。






 私は結局、アッシャーの男爵家を引き継ぐこととなった。アッシャーの父親に、随分と気に入られたのだ。まあいっか、と軽い気持ちで引き受けたのだが、男爵家、かなり後ろ暗い繋がりを持っていた。私はそんな、日向を歩いている一族だったんだけどなぁ。

 結局、貴族に居座ったので、貴族の学校での友達とも普通に付き合っている。サツキが残した茶は、相変わらず私の手元にあり、皇室御用達のままである。あれだけで、十二分に男爵家としてやっていけるな。

 そうやって、のんびりと過ごしている間も、帝国は移り変わっていた。あの侯爵夫人アーネットも、サツキ関係の醜聞で脱落した。どうなったのか、私は知らない。

 そうして、サツキに関わった者たちをどんどんと始末していきながら、平和に過ごしていた。サツキからの便りもないし、きっと元気にしているだろう、と思っていた。

 そんなある日、私は城に呼び出された。行ってみれば、賢者テラス様に出迎えられた。

 私とテラス様が二人っきりになる。何があるかなー、なんて見ていれば、テラス様、いきなりひれ伏したのだ。

「すまない。サツキを死なせてしまった」

「見つけたんですね」

「囲ったが、失敗した」

「それでは、仕方がありませんね」

「怒らないのか?」

「どうして、サツキはハーレムに行ったと思いますか?」

「アルロが騙された、と」

「そうです。あの男、最後の最後でサツキを手放しました。だから、殴ってやりました」

 男爵家の後ろ暗い繋がりで、私はサツキの居場所を知っていた。サツキは幸せに暮らしているようだったので、そのまま放置したのだ。なのに、サツキの夫アルロは、貴族に騙されて、サツキを手放してしまったのだ。それを知った私は、アルロを殴ってやった。相手が誰だろうと、私は容赦しない。今も鍛えている。娘がとんでもない恋人を連れて来た時のためにだ。

 賢者テラス様は驚いた顔をする。私はそこまでするとは、思ってもいなかったのだろう。確かに口では、サツキを手ばしたようなことを言ったな。

「サツキの選んだ人生です。もう、私が口出す資格はありません。ですが、不幸になったら、兄として出ます。というわけで、テラス様、一発、殴られてください」

 私は賢者テラス様の胸倉を掴むなり、殴った。テラス様、あっけなく吹っ飛んで倒れた。

「私がせっかっく、自殺しないように、頑張って、思いとどませたというのに、自殺させただろう!!」

「そ、そうだ」

「あの子は私と出会った頃からずっと、死にたがっていた。だから、ずっと気を付けていたんだ。だが、ハーレムは目が届かない。だから、私でも防ぎようがなかった。この、役立たずめ!!」

 私は賢者相手に吐き捨てた。本当に妖精憑きはその自尊心で失敗してくれる。

 サツキを見つけてからずっと、私は監視をつけていたのだ。サツキはまた自殺しようとする。彼女は、生きることに絶望していた。

 幸福の内は、どうにか思いとどまっていた。子どももいたから、そんなこと、考えることもなかった。やらなければならない、使命感もあるからだ。

 ところが、ハーレムに入って、その使命感から解放されてしまった。テラス様はサツキを手中におさめて安心している。それだけで満足したんだろう、この男。

「サツキと閨事一つしなかっただろう」

「そうだ」

「その自尊心が、サツキを傷つけたんだ。さっさと私を呼べばよかったんだ。私は待っていた。その結果が、これだ」

「すまない」

「何が賢者だ。あんな小娘一人、幸せに出来ないで、帝国の安寧だと? ふざけるな!!」

 言われたい放題だな、賢者。私は容赦がないんだ。だから、謝っても、私は賢者テラス様のことは一生、許さない。

 私はさっさと部屋を出て行けば、外では気まずそうな顔をしている皇帝ラインハルト様がいた。

「私が、サツキを殺した」

 私は本当に容赦がないのだ。それを聞いて、皇帝を殴った。

 人目があった。すぐに衛兵とかが来たが、ラインハルト様が止めてくれた。

「処刑したいなら処刑しろ。いいか、私はお前たちのことを一生許さない。爵位なんて戻さなくていい。今のままで十分だ。サツキは細やかな幸せを欲しがっただけだ」

「いや、爵位は戻す。これは、別の話だ。今、そなたが手放した邸宅が、大変なこととなっている」

 どうやら、別の面倒事が起こっているようだった。

「行ってから決めます」

 即答はしない。面倒事なら、お断りだ。

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