餌付け
今日も、妖精を使い、遠くからだが、サツキを見守りつつ、公務をこなしていた。その合間に、騎士団の訓練に参加する。
「テラス様、今日も来ましたか」
「コクーン、今日もよろしくお願いします」
騎士団の指南役であるコクーンに頭を下げる。
コクーンは、本来は領地持ちの伯爵であるので、今は領地で、領地運営している立場だ。そこを頼み込んで、ここ数年、騎士団に来てもらっていた。
普段から、こう、強そうな感じはしない。しかし、戦争となると、とんでもない力を発揮する。しかも、神の加護を持っているため、何かあると、感じ取ることがあるという。コクーンは、神の加護からか、戦争中、皇帝ラインハルト様の暗殺を防いだ。私の妖精ですら防げなかった暗殺をただの将軍だったコクーンが防いだのだ。その実力と運に、私はコクーンのことを軍神と呼んだ。最初は、私だけだったが、いつの間にか、帝国中に軍神コクーンと名が知れ渡ってしまった。
コクーンは、戦争バカの一族、と言われるが、きちんと騎士としての高潔な志を持っていた。それが、時には災いとなることがある。
騎士団の訓練の中に、一人、随分と可愛がられている男がいた。
「アルロ、テラス様が来たぞ」
「はい、師匠」
騎士たちに笑って話していたアルロは、きちんと断りをいれてから、私の元にやってくる。
「この通り、アルロは悪事は働いていない」
「はい、師匠に言われた通り、帝国の敵となるようなことはしていません!!」
コクーンの言葉に、好青年みたいな顔で頷くアルロ。
「テラス様、そんな疑うだなんて、元は貧民だからですか?」
「こいつ、本当に何も知らないですよ」
「でも、我々がきちんと教育していますから、大丈夫です」
「ご心配なく!!」
アルロのことを援護する騎士たち。悪いヤツらではないんだ。アルロと同期で、一緒に訓練を受け、過ごすうちに、情が沸いたのだろう。
だか、この男はとんでもない化け物なんだ。
一見、普通の男だ。軍神コクーンに認められたたった一人の弟子というだけあって、その腕前は素晴らしい。
だが、この男は元は敵国の暗部だ。
私がまだ筆頭魔法使いを名乗っていた頃のことだ。戦争に立った私は、三回目のことだから、驕りがあったのだろう。皇帝ラインハルト様の寝所の侵入を許してしまったのだ。
妖精はいたんだ。しかし、それはアルロが隠し持つ力によって封じられ、今まさにラインハルト様は暗殺されよう時を、当時、一将軍であったコクーンが防ぎ、アルロを捕縛したのだ。これにより、戦争は一気に魔法使いを前線投入することで、すぐに終わることとなった。そして、私はこの一回の失態で、筆頭魔法使いを引退し、賢者となったのだ。
騎士たちに可愛がられて、随分と好青年な顔で笑うアルロだが、片目は妖精の目という魔道具だ。見た目はただの目に見える。しかし、妖精を使役する時、その目は色を変えるのだ。アルロは、その妖精の目で妖精を盗ったり、妖精同士で戦わせたりして、私の目を欺き、皇帝の寝所に侵入したのだ。
この事実を知るのは、皇帝ラインハルト様、私、あとは戦争に出た将軍たちだ。アルロのあまりの実力に、私としては処刑を進言した。私の妖精をも惑わせる力だ。しかも、頭もよく、腕っぷしもある。こんな化け物、生かしておくわけにはいかなかった。
それなのに、コクーンは、アルロのことを憐れに思い、褒美としてアルロの身柄を望んだのだ。皇帝は、コクーンの元であれば、と甘い考えで、アルロを引き渡してしまった。
それからは、アルロは立場を貧民と偽って、コクーンの元で騎士となったのだ。
アルロは、元は敵国の暗部。意思はない。ただ、命令通りに動く人形だ。食べるのも、飲むのも、排泄も、全て命令がないと出来ない。それをコクーンは時間をかけて出来るようにさせた。それでも、自我はないという。
今、好青年となっているが、これは、演じているだけだ。アルロには自我がない。ただ、命令を受け、その通りに動くだけ。今は、騎士団の一員となれ、と命じられ、他の騎士たちに受け入れられやすいように演じているだけだ。個なんてない。
今も、アルロを処刑したい。この男は危険だ。こんなのに、忠誠心なんてないのだ。敵国は、言われるままに動く人形を作ったが、そこに忠誠心は与えなかった。だから、簡単に裏切る。
私が色々なものをこめてアルロを見ていると、コクーンは苦笑した。
「もうそろそろ、皇族の護衛をやらせてみたいのですが」
「城には入れません」
こんな危険物、城に入れたら、どうなるかわかったものではない。
「あー、わかっています。ですから、貴族の学校に通っている皇族の護衛につけよう、と。外向きであればいいでしょう」
貴族の学校に通っている皇族というと、一人しかいない。皇族ルイ様だ。表向きは世間知らずな皇族だが、実は皇族の暗部の役割を担っている。
皇族間も色々とある。全てはバカみたいに教育を受けるわけではない。皇族ルイ様は、生まれながらに皇族と発現がはっきりしていたので、そういう教育を施されたのだ。皇帝になるには、血の濃さは足りないが、暗い方向の英才教育を施された。今は、皇族ルイ様を使って貴族の揺さぶりをすると同時に、ルイ様の実力を見ているのだ。
そういう裏事情は、皇帝と一部の皇族、私が知るだけである。騎士たちは知らない話だ。だから、ちょうどいい、と思ったのだろう。
「一人ではないでしょうし、いいでしょう」
ついでに、アルロの実力を測ってやろう、そう、軽い気持ちで承諾した。
「すごいな、アルロ!!」
「貴族令嬢に手を出すなよ!!」
「そんな、しませんよ!! 俺はほら、貧民出から、貴族令嬢のほうがイヤがるでしょう。身の程はわかっています」
「見た目はいい男なんだから、気をつけろよ」
「そんなことないって」
いやいや、謙遜も過ぎるぞ。アルロ、捕縛された時は、かなりの綺麗な男だった。まだ子どものような年頃の見た目だったが、美少年ぶりに、ラインハルト様が妙な興味を抱いたものだ。
しかも、アルロ、かなり際どい訓練も受けていた。男を抱くことも、抱かれることも、普通に出来ると言っていた。その知識をラインハルト様に披露して、実践しよう、なんて言い出した時は、私がアルロとラインハルト様を殴った。
成長して、好青年となったアルロは、黙って笑いかければ、だいたいの女は惑わされるだろう。知らぬはアルロ自身のみだ。
「時々、アルロには妙な気持ちになるんだよな」
「え、貞操の危機!?」
お前、もう貞操もくそもないだろう!!! 心の底で、アルロにつっこんでやった。
私の日課は、サツキに出会ってから変わった。朝、昼、夜は決まった時間、私は城を出て、サツキの元に行った。
サツキは屋敷に閉じ込められて、当主の仕事をやらされていた。それも、片手間に終わらされると、私室にひっこんで、日がな、外を眺めたり、屋敷を抜け出しては、近くの森で実りを収穫して、食事をしていたのだ。
サツキは、食事すら、満足に与えられていなかった。
私がいつもの時間に行けば、サツキは笑顔で部屋にいれてくれる。
「もう、ここまでしなくてもいいのに」
「まずは、体の健康を取り戻しましょう。消化の良い食べ物ですよ」
「うわ、どろどろだわ」
酷い食生活をしているので、まずは、内側から改善するしかなかった。
私がサツキの体のことを考えて作った料理を平らげると、適当な棚から、瓶を出して、机に置いた。
「また、とんでもないゲテモノ」
蜂の子を素揚げしたものだ。
「毒持ってる蜂の巣を見つけたのですよ。その巣を煙で蜂を追い出して、蜂の子を手に入れました。栄養満点なんですよ!!」
私はサツキの手から瓶を取り上げる。
「毒を持っている蜂って、危ないではないですか!? また、無茶をして!!」
私は、本当に困っていた。サツキ自身に妖精がつけられないだけではない。なんと、屋敷周辺にまで、妖精が近寄れない何かをサツキにされたのだ。だから、私は定期的に足を運ぶしかなった。
私はいつもの通り、サツキの腕や足を見ては、傷が増えていないかどうか、確かめる。
「火傷が出来てる!! あのクソども、よくも私のサツキに火傷を」
「消してはいけませんよ。また、確認された時に、変に思われてしまいますから」
にっこりと笑顔で命じられる。サツキの体についた傷だって、綺麗に治してやりたい。だけど、サツキはそれを拒絶した。
「傷がなくなると、妙に勘ぐられてしまうではないですか」
そう言われてしまうと、私は引き下がるしかない。私にとって、サツキは絶対なのだ。
「はやく、あの下種どもを根絶やしにしてやりたい。そうしたら、あなたは自由です。お望みであれば、新しい身分と住む場所だって用意します。働かなくても、全て、私がやりますから」
「テラスは、女をダメにする男ですね。そんな綺麗な顔で言われてしまうと、女はすぐに夢中になってしまいますよ」
「だったら」
「わたくしは、復讐がありますから、拒否します」
「そんな」
会う度にサツキのことが好きになる。それは、皇族だから、だけではない。最初は、皇族がきっかけだ。
サツキは素晴らしい女性だ。人を上手に惑わせる知恵がある。酷い扱いをされても、自らを磨くことを怠らない。皇帝をも感嘆とさせた礼儀だって、毎日、きちんと磨いているのだ。
それに比べて、サツキの父、義母、義妹は自堕落だ。当主の仕事をサツキに全て押し付けながら、サツキを蔑み、呼び出しては、何がしら言いがかりをつけて、暴力をふるったりする。
サツキも黙っていない。サツキは口が悪い。その口の悪さで、どんどんと家族の怒りを煽っては、笑っているのだ。
そうして、内にある復讐心を育てていた。
「テラス、見てください。貴族の学校の合格証書ですよ」
「おめでとうございます。首席合格です」
「テラスのお陰で、試験を受けられました。本当にありがとうございます」
サツキは心底、私に感謝している。それが、とても嬉しい。
サツキは試験を受けるための手段を失っていた。まず、試験の申し込みすら出来なかったのだ。それを出す手段を父親に封じられていた。だから、私がやったのだ。そして、試験会場に行く手段もないサツキを私が運んだ。服も、私が準備したものを着せた。あの日は、私の幸福の一日だった。サツキの身を私が作ったもので飾り、足となり、わずかながら、筆頭魔法使いの屋敷でサツキは食事をとってくれた。
本来ならば、合格証書は取り上げられていただろう。そこを私が偽装して、届けさせた。当主の仕事をさせられているサツキは、紛れ込んだ郵便物の中で、合格証書を手に入れたのだ。
「でも、これからが大変ね。首席合格だと、新入生挨拶だわ」
「楽しみにしています」
「簡単にはいきませんのよ。ここは、わたくしの持ち物を全て横取りする家族と使用人で溢れているのですから」
「その案内も、私が偽装いたしましょう」
「いりません。使者が出されるでしょう。ぜひ、そのままやってきてもらってください。面白いことになりますよ。入学式は、よい始まりになります。楽しみです」
サツキは何を考えているのか、私にはわからない。楽しそうに笑っているだけだ。
このままでは、サツキの輝かしいと言える、新入生代表挨拶が家族によって潰されてしまうだろう。それは目に見えた。
だが、サツキは新入生挨拶をするためにどうすればいいか、家族のことをよくわかっていたのだ。
一日三回のサツキとの交流は楽しい。それは、皇帝ラインハルト様にもわかってしまうことだ。
「最近は、随分と機嫌がいいな。私が女を連れ込んでも、叱ったりしないし」
「今、夢中になっている女性がいます」
下手に隠すのは良くない。だから、私は話していい部分だけを話した。
「あれか、舞踏会にいた貴族の女か」
妙な所で勘がいい男だ。そういうものを私に働かせるとは。私は瞬間、ラインハルト様を睨み下ろす。
「いや、絶対に手を出さない! しかし、いいのか? あれは酷い家だぞ。お前がそこまで入れ込んでいるのだから、いっそのこと、部屋に囲ったらどうだ」
ラインハルト様でさえ、そう思ってしまうほど、サツキの周りは酷いものだった。
サツキは家族にひどい目にあわされているだけではない。使用人たちも、サツキを蔑み、蔑ろにし、サツキの持ち物を壊したり盗んだりしていた。そのせいで、サツキの部屋は最低限のものしかない。
サツキが身にまとっている服だって、亡くなった母親が残した古い服を繕いなおしたりして使っているという。
使用人は誰もわかっていない。なんと、サツキの乳母でさえ、サツキを見捨てたのだ。なのに、サツキはしっかりと使用人たちの給金を支払っている。
そう、あの家は、サツキによって保っているのだ。サツキの父、義母、義妹は何もしていない。ただ、偉ぶって、散財しているだけだ。当主として仕事をしているのはサツキだ。それすらわからず、サツキを蔑ろにしているのだ。
サツキがいなくなったら、あの家は崩壊する。
私としては、さっさとサツキを連れ去りたい。だが、サツキには妖精がつかない。サツキは、私の知らない何かを持っている。だから、力づくで、筆頭魔法使いの屋敷にある秘密の部屋に閉じ込めることは出来ない。あの部屋すら、サツキは無力化するかもしれない。
サツキの正体を私は探った。しかし、何も出てこなかった。ただの伯爵令嬢だ。もっと過去に遡れば出てくるかもしれないが、帝国の書物は途中、焚書してしまっている。だから、それ以前のものがない。サツキの家を知るには、その焚書した書物が必要なんだろう。
私が黙り込むものだから、ラインハルト様もサツキの身の上を重く見たのだろう。
「いっそのこと、私が愛妾として迎えてやろうか。皇帝は、それが許される」
「手を出さないと言われても、その肩書を彼女に与えられるのは、私にとって屈辱です!!」
「ごめんなさい!!」
私の怒りの形相に、間違ったことを言ってしまったことにラインハルト様も気づいた。本当に、わかっているのか? やっていいことと悪いことがあるって。
「サツキは、そんな安い女性ではありません。あなたが普段、相手にしている女と一緒にしないでいただきたい」
「すみません」
「サツキは神が与えた私の一番星です。本当は、あなたにも見せたくないというのに、調べられて、腹が立つ」
「ごめんなさい」
「さっさと他の女のところに行ってください。後始末はいつも通りしておきます」
「ありがとうございます!!」
ここぞとばかり下手に出てくるラインハルト様。こういう、上手に空気を読み、人を操作するから、私もこの男のことは憎めないのだ。また、いいように使われるのだな。
私はラインハルト様の執務室を出て、皇族の生活区に入り、私に与えられた部屋に入った。そこには、いつぞや、素っ裸でラインハルト様の私室から放り出された皇族の女がいた。
「ラインハルト様から聞きました。妊娠したそうですね」
「そうです!! この子は、ラインハルトの子どもです」
「証明出来ますか?」
「あの日、わたくしとラインハルトがベッドにいたのをテラスだって見たではないですか!?」
「あれ一回きりですね」
「もっとありました」
堂々と言ってくれるな。そんな回数をあの男はこなしていたのか。知ってたけど。
皇帝の私事なんて、ないに等しい。全て、私に筒抜けだ。隠し事だって不可能だ。わざわざ、そうするのは、皇帝の身を守るためだ。
あの最低な皇帝がどこの女に手をつけたのか、全て、私は知っている。妖精という形で記録まで残しているのだ。本当に、この記録ごと、焼き捨ててやりたい!!
しかし、最近の私は機嫌がいい。サツキを見つけて、それなりに、皇帝ラインハルト様を理解は出来た。サツキは最高の女性だ。囲って、優しくして、身も心も私に依存させてやりたい。
そういう楽しみの合間に、掃除である。
「妻子持ちの皇族とも関係を持っていましたよね」
「そ、そんなことは、ないです」
「姉妹で同じ趣味か」
相手まで知られている。私を甘く見ないように。普段は監視していないが、妖精は見ているのだ。妖精の記憶をちょっと覗いてやれば、この女の過去なんて簡単だ。
この女、姉の夫を誘惑して、浮気させたのだ。だが、夫のほうはやはり姉を愛している、と別れた。その後、あの最低な男ラインハルト様がちょっと悪戯で手を出したのだ。
どちらも皇族である。生まれる子は皇族だろう。しかし、父親不明はなかなか大変だ。
皇族間でも、足の引っ張りあいは激しい。ちょっと欠点が見えると、昨日までは友だったというのに、今日は敵となるのだ。
父親のわからない子どもの出産は、皇族の女にとっては致命的だ。
回数的には、ラインハルト様の可能性が高い。しかし、月齢が微妙だ。姉の夫かもしれない。
姉妹で骨肉の争いをするか、皇帝の子としての栄光ある出産をするか。
「ラインハルトの子として産みたいの」
「そう、ラインハルト様にお願いして、私が来ました。これ、どういうことかわかりますか?」
「断るというの!?」
「いえ、身に覚えがない、という話ですよ」
「はぁ!? あれだけわたくしの体を弄んで、覚えがないって、無責任じゃない!!」
怒るのはごもっともだ。皇族の女はそれなりの回数を皇帝と関係を持った。日記で逐一つけていたら、それだけで、いい証拠だろう。
しかし、これには、残念なお知らせがあるのだ。
「ラインハルト様はこれまで、さんざん、女性と関係を結びましたが、妊娠の話は全て偽証でした。どうしてか、わかりますか?」
「権力に物を言わせたからでしょ」
「ラインハルト様は、子を作れません」
「………は?」
思ってもいない事実を語られ、皇族の女は呆然となる。
「そんなの、聞いたことがない。隠してたの!?」
「いえ、隠していません。言っていないだけです。別に、公言するようなことではないでしょう」
「でも、子どもが」
「ラインハルト様の子ではありません。それも、話していないだけです。わざわざ、公言するようなことでもありません」
「い、言ってやる!!」
「どうぞ、言ってください。そして、その腹の子は姉の夫の子だと言ってください」
「っ!?」
そう、この女がラインハルト様が子が出来ない体と公言するということは、妊娠した子の父親は姉の夫ということになる。
どちらでもいいのだ。父親のわからない子でも、姉の夫の子でも、私もラインハルト様も困らない。公言してもらっても、痛くも痒くもないのだ。
笑ってしまう。安い女だ。サツキがいかに素晴らしい女か、再認識させられる。
皇族の女は縋るように私を見上げる。私はただ、笑ってやるだけだ。
「ど、どうか、ラインハルトの子、として、産ませてくださ、い」
皇族の女は、汚れた床にひれ伏し、私に頼んだ。
私は別にそれでいいのだ。しかし、ラインハルト様が怒っている。この皇族の女は、私に対して、たった一度だが、酷い態度をとったのだ。そのことをラインハルト様はどうしても許せなかった。
あの男は、妖精憑きのご機嫌をとるのが上手だ。
「いいですよ、私がラインハルト様を説得してあげましょう。今後は、態度に気を付けるように」
「ありがとうございます」
皇族の女は、屈辱に震えながらも、私が部屋から出るまで、顔をあげなかった。




