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陽と影の探偵部  作者: 知己
浮気かもしれない事件
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1

ミンミンと蝉が忙しなく鳴いてる真夏。


外は忌々しいほど晴れ晴れしていて太陽がハッキリと顔を出している。


太陽とはだいぶ距離があるのに直に当てられてると思ってしまうくらい暑い。

そんな中、この俺、影山かげやま玲音れおんは両腕いっぱいに色とりどりの封筒を抱え、校舎にある外廊下を歩いていた。

暑さのせいで汗が頬につたるが拭えないのが気持ち悪く、自然と足取りが早くなってくる。


外廊下を渡りきり隣の棟に移ると1番手前にある教室の半開きになった扉を行儀悪く足でこじ開けた。


「陽向さん。また今日もこれだけあなた宛てにって」

俺が抱えてた封筒を中央に向かい合わせでくっつけて置かれている2つの茶色い木の机の上にバサッと雑に乗せた。

上手く乗らなかった封筒がバラバラと机から零れ落ち俺はせっせと拾い上げる。


「陽向さん本当にモテますね。これ全部ラブレターですよ。たぶん」

落ちた封筒を見る限りだとピンクやら白やらハートやらと恋情を連想させるような色合いばかり。


それにしても、さっきから返事がないな。


俺は手に持ってる封筒を机の上に捨て、話しかけてる人の方へと向かう。


その人は窓際の席で出入口に背を向けパイプ椅子にもたれかかっている。

ある程度傍までよると心地よさそうな寝息が聞こえてきた。


顔を覗き込むとコクコクと赤ぺこのように首を上下させながら寝ている。

明るい茶髪に長いまつ毛、目鼻顔立ちは異常なくらい完璧に整っている美形。

あの封筒の山はこの人のために送られたものだが、この顔を見ると納得するものがある。


「起きてください。もうすぐで依頼人が来ますよ」


俺が優しく揺らすと彼は一度コクッと首を動かし目を開いた。

寝ぼけているのか目が座っていてまだ上の空と言ったところだろうか。

しばらくボーッとするとくわっと猫のような欠伸をし、腕をめいいっぱい真上に伸ばし勢いよく立ち上がった。


「あー、よく寝た!」

「あなた宛ての手紙は全て机の上に置きました。それと、もうすぐで依頼人が来ます」

「おう! さすが助手! 真面目だな!」

ニッと笑顔を浮かべ親指を立てた。


助手……まぁ、確かに俺は助手の立場であるかもしれないが、助手になったつもりはさらさらない。勝手にさせられたものだ。


ここは探偵部。

自称名探偵こと、高校3年の東雲しののめ陽向ひなたと俺、高校1年の影山玲音の2人のみが所属してる部活だ。

ちなみに、陽向さんは自称名探偵だがみんなからは『顔だけの迷探偵』と呼ばれてる。

この部活に顧問はいず、陽向さんの勢いで作り上げたものらしい。

俺は前から推理小説が好きだったから興味本位で春に入ったものの探偵の仕事よりも陽向さんの恋愛事情に巻き込まれる方が多くて探偵らしい仕事を全くしてない。

今日はやっときた久しぶりの依頼。こうみえて俺も結構気合が入ってる。


「それにしても、この大量の封筒、いつもどうしてるんですか?」

暇を持て余した俺が聞くと陽向さんは「あー」と呟き大量の封筒の1枚を手に取った。

「これ、全部読んでるよ」

「はい?」

思わず封筒と陽向さんを交互に見ると陽向さんはさも当然と言いたげな顔で窓の近くにある、ぺっちゃんこで何も入ってなさそうな肩掛け鞄を持ってきた。

そして、折らないように取れるだけ取り、鞄の中に詰め込み出した。


「だって、折角僕に書いてくれたんだ。読まないと失礼だろ?」

変なところで真面目というかお人好しというか、これがこの人の好かれるところだと思うのだが、さすがにこの量を読むのは薄い小説1冊くらいはあるかもしれない。ざっと見た感じ封筒は30枚はある。それに1枚の封筒に何枚も紙が入ってると考えたら見た目よりももっと多いだろう。


「まぁ……そうかもしれないけど……」

納得するようなしないような、そんなはっきりしない気持ちで言葉を濁すと陽向さんは封筒を詰め終わり鞄をまた窓際に置いた。


トントン。


丁度陽向さんが鞄を置いた時に教室の扉がノックされゆっくり開かれた。

開かれた扉からまるでお化け屋敷にでも入るかのようなおどおどとした男子生徒が顔を覗かせている。

ここに来るってことは依頼人かな?


「どうぞお入りください」

依頼人の方に近づき開ききってない扉を開くと依頼人はビクッと大きく肩を揺らした。


「す、すいません。すいません」

急かされてると思ったのだろうか。依頼人は早足で中に入った。そして、机の前に立つと目線を落とし、もにょもにょと指を遊ばせている。


「あーあ。玲音がお客様をいじめた〜! いーけないんだー! いけないんだ!」

「はぁ!? えぇ」

陽向さんはからかうように言ってきて、依頼人は、

「いえ! 違うんです! 僕が人見知りなだけで」

と、手を横に振った。


「ほら!」

「冗談冗談。ところで、君が安藤あんどうひかるくん、かな? 高校2年の」

安藤さんは陽向さんの言葉にコクッと頷く。俺は、中央の机の下に収まってる椅子を引いて座るように促した。

陽向さんは向かい合うように前の席につき俺はさっき陽向さんが座ってた椅子を2人の近くまで持ってきてそこに腰をかける。


「助手君。お茶を用意してくれたまえ」

久しぶりの依頼でテンションが上がってるのかいつもとは違う変な口調でふてぶてしく告げてくる。


「お茶なんて用意してないですよ」

「なら、買ってきてくれたまえ」

「はぁ!?」

「レッツゴー!」

手を叩いて急かされ、俺は窓際にある鞄の側面についてるポケットから長財布を抜き取り小走りで自販機へと向かった。

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