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第六話 馬鹿に処方すべき薬

大変遅くなりました、地球編第六話です。



 山積みになったパンケーキが跡形も無くなった頃、三人は満腹…腹十二分目ほどまでパンケーキで詰まっていた。


「そろそろ行こうか。次のところに案内するよ。」


「うん。」


 アインはパンケーキとトッピングが盛り付けられていた皿を片付けに行った。



「次は図書館に連れて行こうよ。」


 フィンの言葉に、アインは顔をしかめた。


「図書館か...。俺は反対。あそこ、どうも好きになれないんだ。」


「そんなことを言っていないで、アインももう少し本を読むことを好きになるといいよ。テオは本、好き?」



「えっと......あの、ホンって、何?」


 テオの言葉に二人は一瞬固まった。


「本は、あれだよ。紙が何枚も重なってて、端っこでこう閉じられているやつ。文字で埋め尽くされていて、俺が嫌いなもの。」


「そうだね。文章がまとまったもののことを本というよ。紙だけじゃなくて電子板なんかでも読むことができるよね。テオはそういうの見たことない?」


「ない、と思う。」


「じゃあ、ぜひ本を読む喜びを味わってもらわないとね。テオがアインみたいな脳筋になるのは看過できないからね。」


「おい、脳筋とは酷い言い草だな。運動神経抜群と言え。」


「筋肉バカ。」


「この引きこもりめ!」


 口論を始めたアインとフィンに、横で見ていたテオは小動物のようにあわあわと二人をなだめようとした。ところが、罵り合いという名の議論は白熱していて、テオは途方に暮れてしまっていた。




「はあ、何してるの。そこの子が困ってるでしょ。」


 よく通る声が、混沌としたその場に響いた。それはテオにとって、曇天から差した一筋の光だった。


「なんでニーナがここにいるんだよ?!」


「騒いでいる二人がいるからですが。それより二人とも、この子が困ってたよ?」


「「.........。」」


 沈黙している二人組をよそに、ニーナはテオに話しかけた。


「君が新しく入った子だよね。私はニーナ。こいつらの腐れ縁。この二人と接点があるなら、これから私と会うことがあるだろうから、よろしく。」


「よ、よろしく...。」


 テオは子ネズミのようにペコリと頭を下げた。


「ニーナ、図書館に行くから、そろそろ勘弁してくれないかな。テオを案内している最中なんだよ。」


「へぇ。案内するのに二人で口論する必要があると。初めて知ったな。ところで二人とも、今まで学校の成績が私よりも良かったことあったっけ?」


「…成績と頭の良さは関係ないじゃないか。」


 絞りだしたようにフィンが反論した。


「そう。確かに一理あるよ。でも、そんなことを言うんだったら、まずは私の手を煩わせないで欲しいな。アインとフィン係なんてのに私がついてるのも、君たち二人のせいですからね。」


 ニーナは面倒だという素振りを隠そうともせず、三人を見据えた。


「いい?テオまで君たちの問題児グループに引き込まないでよ?これ以上の手間が増えるのはごめんだからね。あと、図書館には私が連れてく。ルトラント先生が二人とも呼んでたよ。これ以上トラブルを引き起こさないで。」


「わかったよ。じゃあ今日の案内はニーナに任せる。それでいいだろ。テオ、じゃあまた後で。フィン、行くぞ。」


 そう言い残して、アインはフィンを引きずって脱兎のごとくその場から逃げ出した。


「いろいろ待たせてごめん。図書館に案内するよ。」


 ニーナの一言には、日頃の疲労が感じられる雰囲気が漂っていた。




 高くとられた天窓が、静けさが染みた空間に眩しすぎる光を降り注がせていた。そこには幾百、幾千の書架が並び、暗い色合いの木製の本棚が沈黙を創り出していた。少しばかり宙に舞う埃が光を反射させて、まるで妖精の粉に包まれたような幻想的な風景を魅せていた。


「わぁ......。」


 テオは思わず歓声を上げた。その声は思いのほか響き、テオは顔を少し俯かせた。


「ようこそ、メーティス図書館へ。この書架に並べられているだけでも数百万冊の本があるんだ。閉架書庫とか、研究資料とかも含めたら、多分一億冊を超えるんじゃないかな。」


「本って、綺麗だね...。」


 テオは風景に見惚れて、ニーナの解説を碌に聞いていなかった。ほかのことに注目する余裕がないほど、その光景は初めて見る人にとって綺麗だった。



「必ずと言っていいほど、新入生はここの景色に魅入られるんだよねえ。さしずめ、妖精界、いや、神様の箱庭?地上の楽園ってとこかな。ニーナが連れてきた新入生君はここが気に入った?」


 デキる女性、といった風貌の人が、呆けているテオに話しかけた。


「ここ、すごいです。キラキラしてて、すごい。」


 片言で答えたテオに、女性は満足そうにうなずいた。


「私の自慢の図書館だからね。魔に魅入られた生徒は大歓迎だよ。この図書館全体には、本好きの生徒を魅了してやまない私オリジナルの魔法がかかっているんだ。ここの空気が気に入った君は、必ず私の同志になること間違いなしだよ。」


 クールに見えた人も、内面はどうかわからない。そんなことがうかがえたワンシーンだった。


「ミネルヴァ先生、その人をからかう癖は治した方がいいですよ。本好きの同志が増えたのがうれしいのはわかりますが、テオはまだ文字が読めないんです。」


 ニーナの気苦労は計り知れない。アインとフィンという突飛なことをしでかす二人組と、変わり者の図書館司書長のミネルヴァ先生。そういった面々にツッコミながら常識を教えようとする日常。その苦労はいつか報われるのだろうか。

相方の方はまだしあがっておらず、今年の夏から一年半ほど雨の魔法使いとしての活動を停止する予定です。隙間時間に書き溜めることができれば投稿も可能ですが、また長期間の休載が続くこと、ご迷惑をおかけしますが、ご了承ください。

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