お送りした方には高校生まで人生をやり直していただきます。
「あなたの恨みつらみをお送りください。ご紹介した方で特に面白かった方に人生やり直し棒をお送りいたします。」
お昼のラジオにしては思い切った番組だなと思いつつ、毎週欠かさず聴くようになっていた。
このラジオ番組に出会ったのは僕がこの世の中がウィルスが蔓延した直後、務めていた会社が倒産した頃だった。
倒産した直後は、再就職のために転職活動をしていたが頑張るつもりだったが、
2週間くらいしてその意欲がなくなり、現在はコンビニでフリーターをしている。
シフトはまちまちだが、夕方から深夜に入ることが多いため、お昼ごろから始まるこのラジオ番組が目覚まし代わりに聴くことになっていた。
そんな堕落した生活をしている間に、9月くらいにこの番組が終了することなると出演者のアナウンサーがお知らせしていた。
それであれば、この人生やり直し棒という物がどういったものであるか気になってしまい、この恨みつらみのネタを送った。
「続いての方は、ラジオネーム<夜勤アルバイトしまくり太郎>さんからです。」
やばい、読まれた。このというかラジオネームのあまりのセンスのなさに、自分でも寒気がしきた。
「私は、倒産した会社の社長を恨んでいます。社員は全員薄給で昼飯もコンビニ弁当も買えずお弁当やカップラーメンを食べる生活をしているのに、
社長は高級外車を乗り回し、しまいにはその社長のバカ息子を若干22歳なのに専務に飛び級させました。
しかも、例のウィルスを口実に会社を計画倒産させ、
自分たちだけでまた別の会社を立ち上げようとしています。資本がある人だけが裕福になる世の中っておかしくないですか?」
「ただの愚痴だなこれ」と聴き取りやすいアナウンサー読み上げられるラジオからの声を耳に独り言ちる僕。
読み上げた後、「面白くないただの愚痴をお送りいただきありがとうございます。」と感想を言われてしまう。
まあ他のリスナーも含めてそう思ってるよなと思いつつ、
「でも、恨みつらみが強そうなので、人生やり直し棒を送ります。これで人生やり直してください。」とノベルティを送られる対象になった。
その翌日すぐに放送局からノベルティが届いた。魔法少女にでもなれそうなピンク色の棒だった。
僕が欲しかったのってこれか…なんて思いつつ、テーブルの手の届くところに置ていた。
この番組の最終回、番組は今まで通りの進行で時間が進んでいく。
番組が終わりかけようとした時間。アナウンサーがおかしなことを言いだす。
「では、人生やり直し棒をお送りいただいた皆さまに、この棒の効力を発動します。」
「なに言っているんだこの人」と思ったその時、テーブルに置いていた、人生やり直し棒が光っている。
「お送りしたリスナーの方には、高校生時代から記憶を改ざんした状態でやり直していただきます。
では、皆さま私はそのリセットした後の世界でお待ちしていますので、数時間後お会いしましょう。さようなら。」
人生やり直し棒が部屋全体を包み込むように光り、僕は気を失った。