第2話 岩食モグラ
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ドルミンは罠にかかった岩食モグラを一瞥した。罠はドルミンの腕ほどの太さの筒状の作りになっており、中に返しがついていてモグラが反転できないようになっていた。行き止まりに餌を仕掛けてモグラの通り道に埋めてかかるのを待つというわけだ。行き止まりは蓋がついていてかかったモグラを取り出せるようになっていた。
岩食モグラはその名の通り歯が硬く、罠にかかった後もしぶとく噛みついて鉄製の罠程度なら数度でダメになってしまう。そこで通常は毒餌を使うのだが、ドルミンは毒餌で肉をダメにしたくないのでわざわざミスリルのインゴッドを購入し、工房を借りてモグラ用の罠を自作していた。鉄に比べて匂いが少ないのか、ミスリルの魔力で餌の鮮度が保たれるのか、ドルミン手製の罠には他の罠に比べて岩食モグラが良くかかる様であった。
ドルミンは罠の蓋を外し生け捕りにしたモグラを手際よく捌いていく。しかし今日は酒に酔っていたのか包丁でモグラの腸を傷つけてしまった。中の糞が肉にかかって臭いが移ってしまった。ドルミンは舌打ちをし、包丁を洗おうとすると切っ先がごくごく僅かに欠けているのが見えた。
「どこどこまでも腹の立つ腐れ害獣め、せめて美味しくいただいてやろうというのにそれさえもさせねぇとはな。おまけに俺の大事な財産を傷物にしやがるときた。まさに腐れ害獣でございだ。しかし手入れの行き届いた俺の包丁が欠けるとはどんな腹をしていやがるんだ?掻っ捌いて観てやろうじゃねぇか」
ドルミンは少し興味を覚えて岩食モグラの腸を丁寧に取り出した。すると腸に沿って筋が絡みついており、ドルミンがランプと虫眼鏡でじっとその筋を観察すると、その筋はランプの光を反射してところどころ鈍色や青白く輝いた。ドルミンが筋を腸から引き剥がし、ナイフを当てると青白く反射する部分でナイフが欠けてしまった。
「ふーむ、この筋はひょっとして金属なのか?鈍色は磁石につくところを見ると鉄か?とすると、もしやと思うがこの青白い部分はミスリルか?どうもこいつは運が向いてきたみたいだぞ。どんな腕利きの職人だろうとミスリルを糸に加工できるなんて話は聞いたことがねぇ。まだ鉄だの余計な混ざりモンがあるみてぇだが、この筋からミスリル糸を作れりゃ一財産築けるかもしれねぇ。いや、寄り合い株、国一番の職人の名声もあるかもしれんぞ。ふふ、腐れ害獣と思っていたがとんだ福の神だったってわけだ。考えを改めなきゃいかんな」
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