第1話 鉱夫ドルミン
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穴小人のドルミンとボシデンがドワドガルザン山の官営鉱山で灰輝銀の鉱石を掘っていると昼食の時間になった。2人は班の連中から少し離れた場所で弁当を広げた。
「随分と旨そうな弁当じゃのう、ドルミン。なんじゃいそりゃあ?」
「堅焼きパンに具材を挟んだものよ。中身は燻製した山羊のチーズと肉、腸詰、川魚、干した赤茄子。ほぐした川魚の身を油漬けにしてゆでた卵と和えた自作のソースもあるぞ。付け合わせは玉葱と人参の酢漬け。デザートは蜂蜜に漬けた干し林檎と蜜桃じゃ。本当は岩食モグラのローストも作りたかったんじゃが間に合わんかったわい。あの腐れ害獣野郎、儂の庭を荒らしやがって罠を足りんくらい出やがる。しかし今に見ていろ、根絶やしにしてやる。」
「一人もんなのによう作るのう。手先が器用なんじゃな。こんな鉱山で穴なんぞを掘っておらんで職人ギルドに入れば良かったんじゃないか?実入りも違うじゃろう?」
「天涯孤独で寄り合い株に手が届かなかったのよ。下働きから出世しようにも儂は愛想が良くない。職人の稼ぎが腕次第といっても多少は愛想が必要になるからな。小物を家で作って小遣い稼ぎをするのが精々よ。」
「まぁまぁ。それはともかくよ、隣のドワーフに燻製魚のパン挟みと蜜桃を譲る気はないかな?汝の隣人を愛せよじゃ」
「自分で作るんじゃな、ボシデン。儂は施しをするのもされるのも嫌いじゃよ。酒でもありゃあ別だがね。」
ドルミンが仕事を終えて家に帰ると蒸留酒の入った酒瓶のふたを開け中身をグラスに注ぎチビチビ舐めながら独り言ちた。
「寄り合い株か……食うに困ってはいないがこんなその日暮らしをいつまでも続けてはいられんぞ。落盤事故でもおこりゃあお陀仏だ。身寄りもねぇしなぁ。しかし手が届かねぇ。なにか身を立てる絵図面を描かなきゃあならんが、そうそう冴えた考えも浮かばねぇ。
おっと明日の弁当の仕込みをしなくちゃなんねぇ。あの腐れ害獣野郎の生き血を抜いて皮を剥ぎ、じっくり火焙りにしてやりゃあ儂の落ち込んだ気持ちも小ったぁ紛れるってもんだ。」
ドルミンは酒瓶を片手に岩食モグラを捕えてあった罠へ向かった。
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