貴方の好みはアクリョウですか?
僕の名前は神無月 幽矢。突然だけど、
今、僕の目の前には悪霊がいる。
僕は悪霊のお祓いを仕事としてきた。
だから悪霊が目の前にいるのは珍しくは
ない。…だけども。
僕の家の中に入ってくるなり、じっと僕を
見つめてくる悪霊は生まれて初めて見た。
しかも入ってくるだけで、何も言わず
ただ佇まっているだけだ。
一応言っておくがこの霊は女性だ。
あと可愛い。胸もでかい。髪はロングの黒髪だ。顔はクールそうな凜とした顔。
危ない危ない。
僕の好みな女性タイプのストライクゾーン
すぎて、悪霊じゃなければ結婚を申し込んで
いたところだ。
兎に角、会話を進めない限り何の目的で
ここに来たのかわからない。
「あ、あのー…」
僕は呼びかけるが、ただ無表情でこちらを
見つめてきた。
「成仏されにきたんですか?」
すると、ようやく口を静かに開いた。
「………ちがう。そもそも、君は強制的に
成仏できる力は、ない」
「うぐっ」
この悪霊の言う通り、僕はこういうのを
仕事にしてると言っても、先代達のように
霊的な力はない。つまり、強制的な成仏は
行えないんだ。だから話し合いで解決する
しかなく、いつしかこう呼ばれていた。
『無力なお祓い者』ーーと。
この悪霊も僕の噂を知っていたようだ。
僕は無能だと知っていても、改めて
言われると少しイラッとくる。
僕は少しイラついた口調で喋った。
「じゃあ、何をしに来たの?」
「……私、強力な呪いにかかってる。だから、それを君の力で……解いてほしい。それで、私を成仏させて、ほしい」
そんなことか。強制的な成仏はできないと
しても、霊の怨念くらいなら
なんとか取り除ける。
「まぁ、それくらいなら…ところで、
どんな呪いにかかってるとか、わかる?」
呪いといっても、様々な種類がある。
例えばしょぼい呪いの例で言えば、
『パフェを食べないといけない呪い』とか
もある。
それらの呪いを解く方法は、その霊が
したい事をクリアする事。
僕は今まで様々な呪いを目にしてきた。
今回は一体どんな呪いだろうーーーー
「私を…一年以内に、幸せにして。じゃないと、地球の人全員…死ぬ」
ーーーーーーーえ?
一年以内に、この悪霊を、幸せにしないと、
地球の人、全員、死ぬ?
何をいっているんだこの悪霊。
勘違い(だと信じたい)先程の悪霊の
発言をもう一度確認する事にした。
「あ、あはは…………え?本当?」
「………うん」
「なにいぃぃぃぃぃぃぃ!!!???」
そうして僕の人生上、最も大変となるで
あろう一年が始まろうとしていた。