森へ
「ヨシッ行くか」
林に入りまっすぐ進む。
走って林を抜ける。
「この時間帯には普通に居るのか」
昨日見かけなかったニワトリが地面をつついて歩いてる。
だが無視して先を進む。
「……」
30分ほど走ったかな。
リアルなら息切れとか足が思うように動かなくなってくるけど、健脚に10振ってるから、まだ全然大丈夫だ。
流石、ゲーム。
林と森の境目に辿り着く。
昨日は引き返したが、今日はそのまま進む。
このゲームでは新しいフィールドエリアに進むためにボスを倒す必要はない。
行こうと思えばドンドン先に進む事ができる。
森を進む。
森の中は林より木の間隔が狭い。
俺の身長より少し大きいぐらいの木も所々生えている。
先に敵に見つからないように音に神経を注ぐ。
「ブフッ」
何の音だ。
音の方へと静かに足を向ける。
イノシシか。
体長150センチぐらいある。
茶色い毛に覆われ、20センチぐらいの立派な牙がある。
鞘から訓練用短鉄剣を・・・・・・忘れてた。
イベントリから訓練用短鉄剣を取り出し背にくくり、鞘から訓練用短鉄剣を抜く。
隠れて隙を伺う。
ビックリボアは木の根元に鼻をこすりつけている。
行くか。
イノシシに向かって、走り出す。
[ ビックリボア ]・・・ビックリていう見た目じゃないけどな。
イノシシとピントが合うと鑑定の効果で名前が表示される。
ビックリボアの首に訓練用短鉄剣を突き刺す。
「ピビャァーーーーー」
「おぉ」
ビックリボア甲高い叫びが森に響く。
「どんな叫びだよ!」
ビックリボアの叫びが収まる。
ウサギの様に一撃とはいかなかったが首元に突き刺すことができた。
訓練用短鉄剣を首元から抜いて距離を取る。
ビックリボアはさっきまで叫び声を上げたとは思えないほど静かにこっちを見ている。
「効いてないのか」
「ブモッ」
ビックリボアが突進してくる。
「なんっ、予備動作とかないのかよ」
横に跳んで避ける。
「ねぇ、効いてないの?」
ビックリボアは傷を気にする様子がない。
「浅かったのかな」
ビックリボアがまた突進してきた。
それを躱しながら様子を見る。
「一撃でも食らったらやばいよな」
避けるのは問題ない。
ただ、どのタイミングで攻撃を加えるか。
でかくて怖いんだよな。
「よっと」
何回か避けて観察してると、ビックリボアは進行方向を変えるときに一度立ち止まる。
こういうところはイノシシっぽいな。
ここが狙い所だな。
「ヨシッ」
タイミングを見計らい距離を詰める。
訓練用短鉄剣を右後ろ足に振り下ろす。
「ブモッ」
「どうだ」
ビックリボアは足を引きずっていた
「効いたな。やっぱり首元のは浅かったみたいだな」
「ブモーーーーーー」
怒ったみたいだ。
でも、その足では、もう走れまい。
「ブモッ」
ビックリボアは突進してきた。
「マジかっ」
避けるタイミングは遅れたが、怪我の影響かさっきよりも足が遅い。
「焦らせるなよ」
足を止めるタイミングを狙い攻撃を仕掛ける。
「ブゥゥモッ」 ドシ
「何とかなったな、防御とHPが多かったのかな」
訓練用短鉄剣を鞘に納める。
イベントリから解体ナイフを出してビックリボアに突き刺す。
ウィンドウが現われて、オートを選ぶ。
すごいスピードで解体し、素材を手に入れる。
「何かな」
イベントリを確認すると、ビックリボアの毛皮が入ってる。
ビックリボアの毛皮を出してみる。
大きさは両手広げた位かな。
結構大きい毛皮一枚、毛が固い。
マニュアルでやればこれ以上の毛皮が取れるはずだから大分損してることになる。
けど、これはしょうがないな。
いくらになるかな。
高いといいな。
「ヨシッ行くか」
森の散策を再開する。
森の中には色んな形状の植物が生えている。
鑑定を使いながら、必要そうなものを採取していく。
鑑定には素材の品質ランクが表示されている。
これを使えば採取の仕方を探って高品質の素材が手にできる。
仕方と言っても解体ナイフで切るか引っこ抜くぐらいしか試してないけど・・・。
「グギャ」
「グギャギャ」
「グギャッギャギャグギャ」
「ッグギャ」
人ではないな。
話してるように聞こえるけど・・・。
これが人の会話だったら、独特過ぎる。
モンスターだな。
木の陰に隠れながら声のする方へと近付く。
定番だな……鑑定。
[ ゴブリンキッズ ]・・・子供か、身長は俺よりデカい90~100センチぐらいかな。
緑の皮膚で顔はみんな違うけど、共通点は額に生えてる角と鷲鼻、それと耳が尖ってる。
三体居て、素手の奴が一体と木のこん棒を持ったのが二体いる。
腰には葉っぱを編んだ物を巻いている。
ゴブリンキッズ達は話しながら森を進む。
まだ、こっちには気づいていない。
まずはこん棒持ちだな。
後ろから静かに近づいて首に訓練用短鉄剣を振り抜く。
「グギャーー」
首の半分以上を断ち切ることができた。
斬られたゴブリンキッズはそのまま倒れる。
「グギャ」
「グギャグギャ」
「遅いよ」
残りのゴブリンキッズが気づいて騒ぐが遅い。
近くにいた素手のゴブリンキッズに斬りかかる。
「グギャ」
素手ゴブリンキッズは、肩から胴に掛けて大きな傷を作り膝をつく。
「よし、ラスト」
残りのゴブリンキッズに視線を向けると、こん棒を上に持ち上げ襲い掛かってきていた。
「当たらん」
軽く躱し、すれ違いざまに脇腹を斬る。
「ギャ」
「ギャギャ」
「ギャ」
「浅いか」
振り向くとゴブリンキッズが2体立っていた。
「生きてたか」
素手ゴブリンキッズはまだ生きていた。
倒れたゴブリンからこん棒を奪って、こん棒を構えている。
イノシシの時もだけど、思いっきり切ってるんだけどな。
ここにも腕力とか関わってくるのかな、さっさとLv上がんないかな。
「グギャ」
「グギャギャ」
「集中しないとな」
「グギャ」
二体のゴブリンキッズは斬られたことで警戒してるのか、構えたまま動かない。
このまま突っ込んでいいものか。
スピードは勝ってるけど、二体同時に相手する余裕はないしな。
こういう時はどうすればいいのかな。
一か八か突っ込むか・・・・・でもな。
キッズとはいえ一撃のダメージ量が分からないからな。
もし一撃で落ちたら嫌だしな。
「ん~」
挑発とか定番だしやってみるか。
「やーい、ビビりいつまでそうしてる」
「ギャ」
「グギャ」
「グギャギャ」
何言ってるかわかんないが怒ったっぽいな。
・・・単純。
「グギャー」
「グギャー」
あっ同時に来るのか。
傷の深い素手だったゴブリンキッズの方が走るのが遅い。
これならイケるな。
突っ込んで足を狙う。
「ぎゃ」
「ぎゃ」
「ぎゃぎゃ」
足を斬りつけられた2体のゴブリンキッズは手で足を押さえて転がっている。
蛇には不意打ち食らったからな。
「卑怯と思うなよ」
少し大きめの石を拾い。
投げる。
「ソっリャ」「グ」
「セイ」 「ギャ」
あんま効いてないかな。
なんか虐めてる気分だな。
「介錯致す・・・おとなしくしろ」
「ギャ」「グ」「グギャ」
ゴブリンキッズは近づけさせない様に、こん棒を振りまわす。
「ですよね~。
おとなしくはしないよね・・・・・・すまん」
再度、石を投げる。
「や」「ぎゃ」
「投」「ぐぎゃ」
あっ顔に当たった。
脇腹を斬った方のゴブリンキッズがこん棒を落とした。
今だな。
斬る。
「ギャー」
もう一匹だけだし、勢いで斬りかかる。
「ギャ」
こっちは傷が広かったからな。
抵抗が弱くて楽だった。
戦利品はこん棒と何かな。
解体ナイフをゴブリンキッズに突きつける。
ウィンドウが現われ、選択肢の中からオートを選択する。
何かな何かな。
確認すると、ゴブリンキッズの右脇腹の骨と小さな角。
何に使う、売れんのか、これ。
一マス使ってんじゃん。
捨てるか。
いやっ、マスが埋まってからにしよ。