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バッドふぁんたじー  作者: アカイソラ
1/1

第一話 暇はは唐突に終わる

 突然で申し訳ないが、ちょっと『この世』という物に対して、グチを吐いてもよいだろうか?

 うんうん、なになに…、「規模のでかいナイーブは止めろ!(笑)」だって?

 いやなんと言われようと私はグチるぞ、だっていいじゃん、どうせ誰にも聞こえない、知る余地もない所で喋ってるんだしさ…。

 まあつまり、心の中って事。

「おい坂里ー、ちゃんとノート取ってんだろうなー?」

 そう言って私を現実に戻したのが、黒板の前に立つ先生だった。

「クフッ」

「おいしっかりしろよー」

「どーせ、また妄想でしょ?」

 周りが占めたように笑い出す。

「取ってまーす。」

 イライラしたから返事は馬鹿みたいに長めに返した。

 別にいいじゃん…。

 暇だ……。そう心の中で呟くのは何度目だろう。ふと時計を見ると、長い針は二十分を指していた。

 あと十分、あと十分で帰れる。

 この暇で暇で仕方ない十分を、私はまた妄想の中で過ごすことにした。

 で、さっきの続きだけど、

 正直、坂里 零はこの世の不条理に呆れを感じていた。

 どんなに辛くとも、悲しくとも、退屈であれど、人には生まれ持って成し遂げなければいけない義務と言う物がある。 …と、思う。

 それは本能に近いものと言えるかもしれない。ゆえに、それを実行しなかったり、放棄した場合、生まれる者は何だろうと。

 零は思う、そこに生まれるのは『嫌悪感』であると。

 でも…、もし、その義務が例え努力しても成し遂げれなかったら…?その義務の意味を理解出来なかったら…?

 そんな人はある意味、この世の被害者である。

 あーあ、暇だ…。あと三分が長い。

 ふと時計を見ると時間が過ぎていた。零は一瞬にして、深い妄想から現実へとチャンネルを戻すと。小さなあくびを漏らした。

「よーし、この問題解けたら授業終わりなー」

 先生は黒板にチョークで式を書くと、教材をしまい出した。

 よし、ちゃちゃっと終わらして家でパソコンしますか!

 と、シャーペンを取りノートに触れようとすると、放送のチャイムが鳴りだした。

 ピーンポーンパーンポーン

「ん?なんだ終わりかけに…、おーい、静かに聞けよー」

 それは…、不自然な放送だった。

「聞こえてますかー、皆さん?」

 人間ではない、動画などでよく聞く、機械で構成された音声だ。

 最初はよく分からなくて、放送室で誰かが喋っていて、何かの機械の誤作動でこのような音声になってしまったのだと思っていた。

「突然で申し訳ないけど、この世界、賭け事に使わせて貰うね!」

 賭け事…?って、『麻雀』とか、『カジノ』とかの事、だったはず、その賭け事に使うのが、この世界?

 意味が分からなかった。

「何?この放送、マジ受ける(笑)」

 生徒がざわめき出すと、先生は顔をしかめ放送室へ向かうと言い、教室を飛び出していった。

 生徒のざわめきが止まる事は無かった、あの放送がまた始まるまでは。

「そんじゃー、話すすめるけど、プレイヤーの方々には魔法石を配布してあるはずだから、ポケットとか調べてみてねー。」

 反射的に制服の胸ポケットを探ってみると、狭いポケットのそこで、硬い突起物の様なものに指が触れた。

「…!」

 ゆっくりと取り出してみると、半透明の見たことも無いダイヤ型の石が輝いていた。こんな物、持っていたはずが無いのに、一体どこから…?

 ふと辺りを見回すと、クラスの数人が同等の物を手に持っているのが見えた。

 そして、私が一番嫌悪する人物が、机の下に潜り込み手探りで何かを探している。予想は付いていたが、やはり探し物は……

「あった!」

 その手にあったのは、例の魔法石だった。

 「足立 里桜』、女子のリーダーシップで、私に目を付けるいじめっ子である。

 成績が良いわけでは無いが、女の子らしくかわいい見た目のためか、クラスの人気者だ。

 里桜はすっと立ち上がると、そこに駆け寄って来たのが、よく彼女に引っ付いている数人の女子だった。

「里桜、里桜!何それー?」

「えー、いいなぁー」

「里桜すごーい、何で?何で?」

 その内、災厄な事に彼女と目が合った。

「何?こっち見ないでよ、あ、羨ましいなら見せてあげようか?」

 だが、零の手元にある物を見ると、あざ笑うような表情は消え失せ、嫌悪の表情を浮かべた。

「何であんたが同じ奴持ってんの…!」

 それを合図に、クラスの大半が里桜の目線の先、零を凝視する。

「何…、持ってちゃ悪い?それに、あんたなんて名前じゃないし…。」

「はぁ?」

 それを打ち切るように、放送が流れ始めた。

「はいはーい!そろそろ皆、魔法石、発見出来たかな?んじゃ、これから大事な話をするから、しっかり聞くようにねー、まずは、その魔法石をクリック!」

 言われるがまま石を押すと、石が浮かび上がりプレートが現れた。

 一瞬何が起きたのか分からず、後先考えずやったことに軽く後悔したが、そこにはメニューバーの様なものが浮かび上がっていた。

 他の生徒も何が起こっているのか理解していないようで、ひたすら浮かび上がったメニューバーをまじまじと見つめるばかりだった。

「よーし、うまく表示されたよね?じゃあ、プレイヤーは一番上の『パイプ美術館ホール』をタップしてねー、それ以外のモブは触らない事、」

 だが、それを無視するように触れようとする取り巻きの女の姿が、零の目に止まった。

「ちょ、待っ」

 止めようと、言葉に出す。

 だが、それは一瞬にして置き始めた。

「…え、あぇ?」

 里桜の余裕面が青ざめる。

「…?どうしたんですか里桜さ…ぁ、ぐぁは、は…はぁ、こ…れぇ…?」

 女の顔にヒビが入り、顔の穴という穴から止めどなく血が噴き出る。スカートの間からも血が流れると、自由を利かなくなった体が膝からガクンと倒れ込む。

 次の瞬間、女はガラスの割れるような音と共に砕け散った。

 それも…、血の一滴も残さず。

「え、え⁉」

「何っ、何これ⁉」

「……。」

 教室の中が共鳴するほど困惑する中、私はただ、そこに佇んでいることしか出来なかった、いや、動けたはずだった、でも、止めようと声に出した時…。

 あの子を止めたら、私に何か良いことが起こるの?止めなかったら、一体何が起こるんだろうな、と、囁かれた気がした。

 いや、それは私が真に思っていることを、もう一人の私が言ってくれたということなのかもしれない。

 そして私は実際、この状況でうろたえる事は無かった、それどころか、自分がここに居ないような気さえしている。

 まるで、テレビを通して見ているような感覚だ。

 おそらく、放送で言うモブは、魔法石を配布されたプレイヤー以外の事を指しているのだろう。

つまり、私は触っても大丈夫…、な、はず。

「ちょっと、誰か…、あっ、あんた触ってみてよぉ!」

 私の思考を邪魔するように、取り乱した里桜が震えた声で脅してくる。

 言われなくてもそうするつもりだ。

「あれぇー、なかなかプレイヤー来ないなー、不参加とかは、は無しだよー?」

 放送に急かされ、零は迷う事無く、指定されたメニューバーをタップした。

 意識がかすみ、体が不思議な感覚に見舞われるのが分かった…。



「……。」

 いつの間にか、全く知らない場所で佇んでいた。

 白い大理石の床に、壁にかけられた壮大な絵の数々、中央には、下まで続くガラスで囲われた大きなホールが見えた。どうやらメニューバーに書かれていたように、美術館の中らしい。

 すると、次々に周りにプレイヤーと思しき人が現れ、やがて身動きがしづらいほどの人で埋め尽くされた。

「はいはーい、集まったかな?混乱してるかもだけど、まずは話を聞いてねー?」

声が途切れると同時に、ホールに巨大な魔法石が現れると、その周りにスクリーンが投影される、画面にはよく知るゲームのロゴが標示されていた。

 『ライディーンズ』それは日本最大…、いや、世界最大オンラインゲームであり、5年前に実装されてから、今なおその人気を誇る異世界ファンタジーゲームである。

 マップの中で行けないところなどは無く、それはもはや、パソコンの中に聳え立つもう一つの世界と言っても、過言では無いほどの高度なクオリィティーだ。

「プレイヤーになる条件は、このゲームのプレイヤーである事だよ、っていうのはね、今回の世界観は、このゲームマルパクリして作ったから、プレイヤーもね?やってる人の方がいいかなーって思ってね!」

 つまり、たまたまゲームのプレイヤーだったから、巻き込まれた、という事か?

「あ、ちなみに、作ったルールを破ったら、その時点で即デスですので、ヨロシク!はーい!ここで質問ターイム!」

 しかし、しばらくは静寂が続いた。何が起こっているのか分からないが故、目の前の得体の知れない物に、何を問えば良いのか分からなかったのだ。

「なぁ、デスって、死ぬってことでいいんだよな…?」

 人込みの中から男性が声を上げると、しばらく間を置き、再び何処からか声が響く。

「そうだよー。」

 その一言を合図に、周りは混乱を言葉にしたように質問し始めた。

「ここは何処なの⁉」

「何をするつもりなんだ!警察呼ぶぞぉ!」

「しっかり説明しろー!」

 すると、その数々の質問をあざ笑うように、話し出した。

「あれあれー?こんなに質問してくれるなんて、意外と皆、ノリノリ? …うんうん、いーよいーね、ふふっ、せっかくのゲームなんだから、楽しまないと、だよね?」

 ゲーム、と聞いて、やはり何かをさせられる事は何となく察することが出来た、でも問題は次だ。

「でも、ゲームにも説明書は付き物、ちゃーんと説明してあげるから、安心して?」

 そう、私たちがプレイヤーと呼ばれる意味、そして、これから何が始まるのか、私たちはまだ知らない。

 それだけではない、これは、どう考えても異常な事だ、今、手に持っているこのクリスタルは?現在の技術の物とは思えない。

 外は?全てのプレイヤーはおそらくここに集められている。警察は動かないのか?

まさか、ここに居るプレイヤー以外、殺されているのか…?

分からないことだらけだった。

「これから君たちには、永遠…、ん?なんか違うなぁ、そうだなー、『死ねない呪い』を掛けてあげます!」

 これは…、

「でも、悪いお知らせ!」

 暇で仕方がない、『悲劇』と言う名のこの世界に起きた…、

「皆にはこれから、この世界を賭けて、もう一つの世界…」

 夢のような…、

「ライディーンズの世界と、殺し合ってもらいます!」

 私の、バッドふぁんたじーである。


 久しぶりに、空だけが綺麗なこの世界で、私は高揚していた……。


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