敬語が気になってました
短めです。
学園の技術実習は戦闘訓練と防御訓練だ。
鬼エルフに脅されてるから真面目にやってますよ。
真面目にはやっているけど、本気でやったら殺しちゃうからかなり手を抜いてる。
仕方ないと思う。
だって、殺しちゃうから。
「ミロードさん!今日こそは、王子殿下とアークライト様に馴れ馴れしくするのをあらためなさい!さもなくば、私がここで成敗して差し上げますわ!」
公爵令嬢。
面倒臭い。
「私だって近寄りたくないです!」
「何ですって!恐れ多い事を!恥を知りなさい!」
彼女の手から炎の玉が出たのが見えて私は笑ってしまった。
あんなんじゃ火傷すら出来ない。
私は簡単な防御魔法で水の壁を作ってそれをかわした。
イライラして顔が真っ赤な彼女。
私は苦笑いを浮かべた。
「あ、あの、小鳥さん」
そこに話しかけてきたのは、いい子の零士君だった。
「零士君?どうしたの?」
「俺と、手合わせしてもらえないでしょうか?」
えっ………面倒。
「いや、あの、零士君」
「本気出して良いのでお願いします」
何とも面倒臭い事になった。
この授業は学年でおこなうから人の目が多い。
「小鳥さん」
「零士君、私は目立ちたくないんだよ」
「………無理じゃないでしょうか?」
「無理とか言うなよ~………じゃあ、私が勝ったら敬語止める?」
「………」
「友達に敬語使われると距離感じちゃうからさ!」
「解りました。でも、俺が勝ったら今まで通りで」
私たちはお互いに笑い合ってから戦闘場に向かった。
「本気でお願いします」
「………いいよ」
審判はルッカ先生がやってくれる事になった。
「かまえ………はじめ!」
零士君が剣を抜いたのを見て、私も手首に仕込んでいた短剣を出した。
「ストーップ!こ、ミロードさん、その武器は?」
「父のお手製の武器です」
「許可は?」
「勿論とってます!試作品よりも威力は10分の1なので大丈夫です」
「………小鳥ちゃん!くれぐれも殺さないように!」
最後にルッカ先生から小声でそう言われた。
解ってるのに……
仕切り直して私と零士君のバトルがはじまった。
零士君の繰り出す攻撃を軽いステップでかわし、相手の出方を見た。
零士君は冷静に次の攻撃を模索しているのが解る。
私は零士君に笑顔を向けると走った。
足に魔法をかけ、速度とジャンプ力を上げて人並み外れた動きをする私に零士君は目を見開いた。
まあ、敵が気付いた時には背後に回れるので私の好きな魔法である。
勿論零士君も一緒で、背後から首筋に短剣を突き付けると固まってしまった。
「零士君敬語禁止ね」
私が背後から耳元で囁くと零士君の背中がびくっと跳ねた。
「は、はい」
〝はい〟は、敬語じゃないのか?
「こ、ミロードさんの勝ち!」
ルッカ先生が一拍遅れて叫んだ。
遅いよ。
私は零士君から離れた。
零士君は耳まで真っ赤で、よっぽど悔しかったみたいだ。
悪いことをしちゃったが、今日から零士君が私に敬語を使わなくなったのは嬉しいからその時はよしとしようって思ってやり過ごしたのは言うまでもない。
あれ?また公爵令嬢無視しちゃった
( ;´・ω・`)