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東雲さんは囮です

日刊ランキング1位ありがとうございます!

全て皆様のお陰です。

 母に連れられて魔物の討伐に参加させられた。

 どうやら、魔物の数が多いらしい。


「小鳥、暇でしょ!バイト代出すからまざんなよ!」


 バイトなんてレベルの危険度じゃないのだが………

 バイト代は欲しい。

 高等科の人間のバイト代なんて比にならないぐらいのバイト代が出るのは明白だ。

 なら、まざらない手はない。

 討伐に選ばれたのは狩人という役職の人の大半。

 私に討伐の仕方をレクチャーしてくれていた人も何人かまざっている。


「小鳥ちゃん、綺麗になったね」

「小鳥ちゃんが居ると華やぐな~」


 おじさん達もニコニコだ。

 その中にあまり見ない顔の人がいた。

 白い長い髪に青みがかった琥珀色の瞳の男の人。

 うわぁ~綺麗な人だ。

 そう思って見ているとその人と目が合った。

 私と目が合うとその人はニコッと笑った。

 笑顔まで可愛い!

 

「お母さんあの人誰?」

「ああ、東雲(しののめ)君?期待の新人」

「へー」


 言われてみれば朝焼けみたいな瞳だ。

 そんな彼が私に近付いてきた。

 

「こんにちは、女性の狩人なんて霧子さんだけだと思ってました」

「ああ、私は狩人じゃないので」

「へ?………じゃあ、何でここに居るの?」

「バイトです」

「ば、バイト?バイトって何するの?」

「何でもしますよ」


 東雲さんは暫く私を見詰めると私の横にスッと並んだ。


「………何です?」

「ムサイおっさん達の側にいるより美人さんの横の方がやる気出るから」

「美人?」


 私が辺りを見渡すと笑われた。


「君のことだよ!」

「私は美人では無いです」

「………そう?俺には凛として綺麗に見えるよ」


 な、なんなんだ!

 聞いてるこっちが恥ずかしい!


「あ、ありがとうございます」

「名前は?」

「小鳥」

「可愛い名前だね!」

「うっさいですよ」

「小鳥……うん、良いね」


 東雲さんは私の顔をのぞきこむとニコニコ言った。


「俺の彼女になる?」


 東雲さんの言葉に私が反応する前に、周りにいたおじさん達が東雲さんの口をふさいで、私から遠ざけると言った。


「小鳥ちゃんがお前なんかと付き合うわけないだろ!」

「お前殺すぞ!」

「小鳥ちゃんに寄るんじゃねぇ!」


 私は慌てておじさん達を止めに行った。


「いやいや、付き合わないから!」

「「「でも!」」」

「私のこと解れば付き合いたいなんて誰も思わないよ!ね!」


 おじさん達は納得していないようだったが、東雲さんを離してくれた。

 

「小鳥は皆のアイドルなんだね!」

「東雲君、小鳥にちょっかい出すと私の旦那に毒殺されちゃうぞ!」


 母は笑いながら東雲さんの背中をバシバシ叩いた。

 無茶苦茶痛そうだ。

 可哀想に。


「何で霧子さんの旦那さんが出てくるの?」

「私の娘だ!似てるだろ?」

「………似てない!旦那さんそんな美人なの?」

「ぶっ殺すぞクソガキ」


 母に喧嘩を売るなんて東雲さん命知らず。


「お母さん、その殺意は魔物の討伐に生かそう!ね!」

「アイツしばく!アイツしばく!アイツしばく!」

「駄目だ。東雲さん逃げてね」

「え?」

「それか、一回お母さんにシバカレ倒すかだね!」

「逃げる」


 東雲さんは顔色を真っ青にさせて逃げた。


「捕まえてぶっ殺す!お前ら、つづけ~」


 母の号令で狩人達が一斉に森に向かって走り出した。

 私も一番最後にゆっくり森に入った。


「小鳥は一番最後?」

「私は東雲さん追いかけないので………って、何でここにいるんですか?」

「皆、殺る気満々だから木の裏に隠れてやり過ごした」

「………頭良いですね東雲さん」


 東雲さんは私について歩いてくれた。

 魔物が出れば東雲さんが率先して狩りに行く。

 魔物の血を浴びる東雲さんはなんだか綺麗で恐い。

 

「うわ~かかっちゃったよ~」

「血まみれですね」

「小鳥ちゃんはかかってない?」

「大丈夫です」


 手で血をぬぐう。

 いや、広がっただけだから。

 私は東雲さんの手を掴んで歩いた。

 たしか、この辺に川があったはずだ。

 



 川に行き着いて顔を洗うように言った。


「え?手を繋いで歩いてくれるんじゃないの?」

「え?面倒臭い」


 私の言葉に東雲さんは苦笑いを浮かべて川の水で顔についた血を洗い流した。

 そして、私の思った通りに川を流れる血の臭いを嗅ぎ付けて川下にいた魔物が登ってくる気配を感じた。


「小鳥は隠れてて」

「東雲さん、私はバイトしに来たんだよ?東雲さんこそ隠れてて」


 私は足場の悪い川原の石や岩をひょいひょいと跳び跳ねるようにして、魔物に向かって走り出した。


「小鳥!」


 東雲さんの声は無視して、三匹居る腐りかかった熊のような魔物の一匹の背後に周りこんだ。

 そして、父が開発した対魔物使用の刃渡り三十センチぐらいの刀を二刀流で振り回し魔物の首をはねた。

 一匹が倒れると、後の二匹が殺気だった。

 私は二匹のうちの一匹に向かって炎の魔法を使って焼き付くし、残りの魔物は氷の魔法で貫いた。


「………つえ~」


 見くびってもらったら困る。

 東雲さんは私を見ながらヘニャっと笑った。


「東雲さん血まみれだから囮ね」

「え?」

「魔物って血に反応するから」


 ちなみに私には血は一滴もついていない。

 ならば、東雲さんは囮にちょうどいい!

 その後、東雲さんを囮に魔物を狩りまくった。

 





 集合時間になって戻ると母は狩りが楽しかったのか、ご機嫌で東雲さんの事は忘れてしまっているみたいだった。

 私も結構な数の魔物を倒したからバイト代を弾んでもらえそうだ。

 東雲さんは私の足元で倒れてゼーハーしている。

 軟弱者だ。


「東雲さん大丈夫?」

「………大丈夫」

「軟弱者」

「違うし、囮って体力使うし」


 周りに居るおじさん達もニヤニヤしている。


「東雲、お前小鳥ちゃんの強さ解ったか?」

「ビビったろ!」


 東雲さんはムクリと上半身を起こすと私にニッコリ笑いかけた。


「小鳥!俺、お前に惚れたから!付き合ってもらえるように良い男になるから覚悟しとけよ」


 ………はじめて男の人に告白されたかも。

 私はとりあえず、魔物の血でカピカピになった東雲さんの頭を撫で撫でしてみた。

 なんだか可愛い気がしたからだ。


「ガキ扱いされた!」


 何故か東雲さんはショックをうけた顔をした。

 可愛いと思ったから撫でたのにムカつくな。

 私はそのまま東雲さんの両方のホッペをつまんで引っ張った。


「いひゃひゃひゃひゃ」

「良い男ですか?頑張ってください」


 私はそれだけ言ってホッペから手を離すと母の所に向かった。

 態度には出さなかったが、冷静になれば自分の行動がかなり恥ずかしかったから、逃げ出したってのは誰にも気が付かれていないと信じてる。


息子が熱出して帰ってきた!

熱が出て直ぐだからインフルチェックがきかなかった。

明日また病院に行かないと………

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