お母さんって呼んで良いですか?
アーク様を裏庭に呼び出したのは王子に相談した次の日だった。
「アーク様ごめんなさい!私にとってアーク様はお母さんなので付き合えません!」
「………ちょっと待ちなさい」
アーク様の口元がヒクヒクしている。
ああ、王子の馬鹿野郎!
正直に言ったらキレられたじゃんよ!
「母親って何です?」
「あ~いや~だって、常識人で口煩くて面倒見が良くて………」
「フラれるにしても酷すぎじゃないですか!」
私は怒りのオーラが駄々漏れのアーク様に言った。
「だって!アーク様って美人だし………嫌いになれないのもお母さんみたいなんだもん」
「………嫌いになれない?」
アーク様は不思議そうに首をかしげた。
「アーク様を恋愛対象にはみれないけど、家族みたいに大好きなんだもん!何かあったらアーク様が一番相談しやすいし、信用できるのもアーク様が一番だよ!けど、アーク様と恋人にのるイメージは一切わかない………ごめんなさい」
アーク様は呆れたように深いため息をついた。
「小鳥はどれだけズルい女なんですか?」
「ズルい女?」
「そんな言い方されたら、母親感覚でもいいから側に居たいと思ってしまうでしょ?」
私は思わず目頭が熱くなった。
アーク様をフルってことは、アーク様が側から居なくなるって事なんだってものすごく感じたからだ。
「アーク様、ごめんなさい」
「何泣きそうな顔してるんです?」
「アーク様と何時もみたいじゃ居られなくなるのは嫌だよ~」
思わず泣いてしまった私をアーク様は優しく抱き締めて頭を撫でてくれた。
「贅沢な望みですね」
「ごめんなさい」
「良いですよ。僕をフッたことを後悔するぐらい甘やかしてあげます」
アーク様は困ったように笑って私を抱き締めたまま頭を撫でてくれた。
暫く頭を撫でられて、漸く落ち着いてアーク様から離れた。
「ありがとうアーク様」
「良いんですよ。小鳥を厳しく叱るのも甘やかすのも母親の務めでしょ?」
「アーク様」
「で?マクス氏と付き合うんですか?」
突然の言葉に私が固まると、アーク様は満面の笑顔で言った。
「お母さんはあんな男許しません」
私は思わず笑ってしまった。
だって、王子が言ってた通りの事を言うからだ。
「でも、小鳥が彼が良いって言うなら反対できませんがね」
苦笑いを浮かべるアーク様に私は言った。
「自分でもマクスさんが好きなのか解らなくて」
「マクス氏の事はまだ悩んでいるんですね」
「へ?」
「僕の事はすぐに結論が出たのに、僕より先に告白したマクス氏の事はまだ悩んでいるんですね」
「それは………」
そうなんだ、アーク様の事は直ぐに答えが出た。
でも、マクスさんのことはいまだに答えが出ない。
キスされたからとかじゃないと思う。
「マクス氏の事は元々大好きだって言っていたでしょ?何処が好きなんですか?」
マクスさんの好きなところ?
「小動物みたいで可愛い、おにぎり食べる姿がキュンとする、魔方陣描くのが綺麗、ちょっとおっちょこちょいなところ?」
「………うわ~やってらんないですね」
何故かアーク様は怖い顔で私を睨んだ。
「顔、怖いよ」
「小鳥は何故マクス氏とのお付き合いに疑問を持っているんです?」
顔の話はスルーされたようだ。
「マクスさんは、その………スキンシップが多くて………」
「キスでもされたんですか?」
私は一気に赤くなった。
だって!仕方がないと思う。
「………聞くんじゃ無かった」
アーク様は私の頭をポンポン叩くと言った。
「殴らなかったんですか?」
「………ビックリして、体が動かなくて………」
「小鳥にしては珍しい」
「だって!マクスさん小動物だと思ってたから!ビックリして………」
マクスさんに秘密だって言われたのに言ってしまった。
「なに不安そうな顔をしているんです?」
「そんな顔してる?」
「してます」
マクスさんとの約束を破ってしまったからか?
「マクス氏が好きですか?」
「へ?」
「いきなりキスされても好きですか?」
アーク様は苦笑いを浮かべた。
「早く答えが出ると良いですね。まあ、母親としては何時までも母親離れなんてしないで側にいてほしいですけどね」
アーク様は苦笑いのまま私の頭を撫でてくれた。
私はかなり酷いことを言っているのにアーク様は私の答えが出るように導いてくれようとしている。
「アーク様」
「はい」
「ありがとう」
「………どういたしまして」
私はアーク様の優しい笑顔に救われたような気がしたのだった。
鬼エルフごめんよ!




