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悪魔より恐ろしい人

「ミロード、君に決闘を申し込む!」


 何故、こうなったのでしょう?

 目の前には顔を真っ赤にして怒り顔の貴族令息がたっている。

 何処の令息だったか?


「え~と、理由を聞いても?」

「僕の婚約者をたぶらかしただろ!知らないだなんて言わせないぞ!」


 え~と、ファンになってくださっているご令嬢が原因ですか?


「貴方様の婚約者様が私とどうこうなったと思っていると?」

「僕の婚約者は君にワザワザ手製の菓子をプレゼントしていると聞いた!僕はまだもらったことが無いというのに」


 悔しそうな顔をしている令息。

 あ、愛されてますよ!どの人か解らないご令嬢。

 しかも、周りに人が集まりだしてしまった。


「ゴルチェーラ様!お姉様に何をなさっているの?」


 ああ、マドレーヌのご令嬢だ!


「マルマラ、君は僕より女性であるミロードの方が良いのか?」

「………憧れるぐらい良いじゃ無いですの?相手は女性なんですのよ?」


 私は苦笑いを浮かべて言った。


「決闘して気がすむなら私はやっても良いよ」

「お姉様!いけませんわ!………お怪我をされたら私、どうしたら良いか」


 そんな言い方されたら、令息が更に怒っちゃうよ。

 案の定、顔を真っ赤にして私を睨んでいる。




 決闘をすることになり、私はいつも使っている短剣を二本持って構えた。

 目の前には大きな剣を構えた令息。

 ギャラリーがたくさん回りを囲んでいる。

 

「ミロード、覚悟しろ」


 また、負けそうなフラグを立てる。


「何時でもどうぞ」


 令息は勢いよく向かってきた。

 太刀筋が綺麗で重い。

 なかなか強い人だ。

 動きかたは人向き。 

 卒業したら騎士団に入るに違いない。

 私はその重い太刀を二本の短剣で横にそらす。

 令嬢の悲鳴が聞こえている。

 私は苦笑いを浮かべた。


「笑みだと、ずいぶん余裕だな?」

「貴方様の婚約者様が心配しているので早く終わらせましょう」

「ふざけるな!」


 令息は器用に、私の頬に剣をかすめさせた。

 頬を血が伝うのが解る。

 見ている周りの顔色が悪い。

 私は令息の回りを走り一気に間合いをつめると、令息の足をはらい体勢を崩し左手の短剣を投げると彼の髪の毛を掴み首筋に右手の短剣を当てた。


「貴方様はお強いですね。ですが、私が主に倒しているのは魔物なので貴方様に勝ち目など無いのですよ」


 青い顔をしながらも殺気を消さない令息に何だかこっちが負けたような気持ちになるのは何故だ?


「お姉様、ごめんなさい!彼を許して差し上げてください!私には彼が居ないと駄目なのです!」


 マドレーヌの令嬢が慌てたようにそう叫んで令息にしがみついた。


「マルマラ……」

「ゴルチェーラ様」


 ピンクのオーラを出す二人に私はやっぱり苦笑いを浮かべるしかなかった。


「貴方様は私に負けたんですから、マドレーヌのご令嬢を幸せにしてあげてくださいよ。マドレーヌのご令嬢も、私に毒味をさせるのではなく令息様に直接プレゼントしてあげてください」


 私は令息の髪の毛を掴んでいた手を離すと落とした短剣を拾い上げた。

 その瞬間、ふわりと浮き上がる感じがして驚いた。

 何がおきたのか解らずにオロオロする私の目の前には今にも泣きそうな顔をしたマクスさんのアップがあった。

 よくよく見ればマクスさんにお姫様抱っこされている。


「マクスさん?」

「小鳥様は女の子なんですよ!」

「はい」


 マクスさんに怒鳴られた。

 いつもおっとり丁寧で大きな声を出したところなんて見たことがないマクスさんに怒鳴られた。


「直ぐに治します」

「治します?」


 マクスさんは眉間にシワを寄せた。


「顔にキズが残ったらどうするんですか!」


 また、怒鳴られた。

 顔にキズ?

 ああ、頬が切られたんだった。

 マクスさんに怒鳴られたせいで忘れていた。


「自分で治せますよ」

「喋らないで下さい」


 マクスさんを怒られてしまった。

 私は仕方なくマクスさんにお姫様抱っこされたまま人混みを後にした。




 人気のない裏庭のベンチに座らせられ、キズのある頬に治癒魔法をかけてくれるマクスさんの顔はマクスさんがケガをしているのかと疑いたくなるように険しい。

 血が出ているわりにキズは浅いから直ぐに治療は終わった。

 私の顔にキズが残っていないのを確認すると、マクスさんは深く息を吐いた。


「良かった」

「あの、マクスさん、あ、ありがとうございました」

「もう、二度と小鳥様が傷付くのは見たくありません」


 マクスさんの顔はまた泣きそうな顔にかわった。

 ああ、心配かけちゃった。

 私より痛そうな顔だ。

 

「ごめんなさい」


 私が謝るとマクスさんは私のキズの消えた頬に触った。

 もう、大丈夫だって解るようにその手にスリスリと頬を押し付けてみた。

 次の瞬間、マクスさんの顔が近づいた。

 また頬を見るつもりなのかと思った。

 唇が重なった瞬間、漸く思っているのと違う事になったと理解した。

 えっ?私、マクスさんとキスしてる?

 頭が理解できずに固まると、マクスさんは何度か角度をかえてキスをすると言った。


「愛する女性が傷付くのは見たくありません」

「あ、愛する?」

「自分は小鳥様を愛しています」


 あ、愛?愛ってなんだっけ?

 私の頭がパンクしてどうしたら良いかを考えるのを放棄していると、マクスさんは更にキスしてきた。

 ペロリと唇を舐められて私は慌ててマクスさんを突き飛ばした。

 な、なんか、凄いことされた。

 好きすら解らないのに愛とか、解らないことだらけで私は無意識に唇を右手で覆った。


「小鳥様はキスしたことがありますか?」


 私は顔に熱が集まるのを感じながら首を横にふった。


「良かった。これから、自分は小鳥様のはじめてを全ていただきます」

 

 な、何その主張?

 怪盗ですか貴方?


「自分以外が小鳥様に触れるなんて許せない。小鳥様の周りには自分以外に小鳥様に触れたくて仕方がない男が沢山居ます気を付けてください」


 い、いや、居ないよ!

 そんなことしてくるのマクスさんだけだよ!

 私が思っていることが解っているのかいないのか、マクスさんは蕩けそうな笑顔を作ると言った。


「鈍感な所も可愛いですが、自分以外に触らせないで下さい。自分が嫉妬で狂わないように」


 あ、ああ、マクスさんの瞳が吸い込まれそうに綺麗だ。

 そう思った時には右手を無理矢理外され、キスされていた。

 こ、こんな野獣みたいな人を私は何で小動物だと思っていたんだ?

 頭が混乱しているせいか、マクスさんを振り払えない。

 散々貪られ唇が腫れたきがする。

 マクスさんは満足そうに爽やかに笑うと私の頭を撫でた。


「小鳥様を愛しています。自分のものになって下さい」

「………」


 マクスさんの告白に私の頭はパンクした。


「……ま、マクスさん、あの、少し考えさせてください」

「勿論です小鳥様。自分を選んでくれるまで何時までも待ちます。それと」


 マクスさんは私の唇を指でなぞると言った。


「さっきの事は二人だけの秘密で」

「………」

「思い出せないのならもう一度」

「解ってます!誰にも言いません!ってか言えません」


 マクスさんは満足そうに笑った。

 その笑顔を見た私は何故か悪魔よりも恐ろしい者に目をつけられてしまったと思ってしまったのであった。

ああ、マクスさんがヤンデレみたいになっちゃった………

どうした私の頭の中

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