私の事はほっといてほしい
短めです。
マリクール学園がこんな学園だとは聞いてない!
父も母も平凡な学園だって言ってた。
だが、実際に来てみて解った。
貴族ばっかり。
他の中等科学園でも有名だった商家の子息淑女。
平民って言われる人達も能力テストがランキング上位。
平凡ってなんだっけ?
私の求める平凡って存在しないのか?
私は案内された教室の片隅で頭を抱えた。
「ごきげんよう。貴女、見たことがございませんが何処の令嬢?」
「………アーツ家です」
「爵位は?」
「ありません」
「………そう、私に話しかけないで下さる?」
勿論です。
突然話しかけてきたあの人、公爵家の人だ。
何回か城でひらかれた舞踏会に出てたのを見たことがある。
何故見たことがあるかって?
魔法研究所は城の中にあるからだ!
いや、狩人の本部も城の中だけど………
そのせいで知り合ってしまった人は皆平凡とは無縁の人達ばかり。
たとえば、入学式の時に在校生代表として祝辞を発表していた第三王子のマクロスはたまにお茶をご馳走してくれたお兄ちゃんみたいな人だった。
その横に何時も控えているエルフ、宰相の息子のアークライトも茶飲み友達だった。
『だった』ってのは私があまり城に行かなくなったからだ。
ここ数年会っていない。
会っていて同じ学園だなんて事になったら面倒臭い事この上なしだ。
他にも厄介な事はある。
お互いに存在は知っていると思うが話したことのない騎士団長の息子の零士・ミレルガ・ロジック。
私は存在を知っているから向こうも知っているだろう。
いや~面倒臭い。
「あ、あの!」
「はい」
また、なぜか話しかけられた!
しかも、滅茶苦茶可愛い女の子!
フワフワの金髪は腰の辺りまであって、耳が尖っているからエルフだろう。
瞳の色もゴージャスな金色。
可愛い~!
私は思わず彼女の手を握っていた。
「友達になりましょう!」
「えっ、あ、良いの?」
「勿論です!私は小鳥!」
「私はエンジェリナ」
「天使!マジ天使!エンジェリナ宜しくね」
始めて見たよこんな可愛い女の子!
仲良くする!
ちょっと目立っちゃうけど可愛いは正義だから仲良くする!
「ふふふ、小鳥ちゃんは本当に聞いてた通りの人ね」
「へ?聞いてたって?」
「お兄様から聞いてたの」
一気に頭の中に警報が鳴ったがもう遅い。
「お、お兄様?」
「ええ、アーク兄様」
「………宰相の娘?」
「はい!」
だ、騙された気分だ!
だが、もう後戻りは出来ない。
エンジェリナちゃんが私の腕にしがみついている。
「私、霧子様の大ファンなんです」
「あは~、ありがとうございます~」
「小鳥ちゃんは霧子様の黒髪とディスモン様の紫の瞳をお持ちなんですね!」
「母は兎も角父も知ってるんだ………なんか小鳥と言うよりカラスみたいだよね?」
エンジェリナちゃんは驚いた顔の後ヘニャっと笑った。
「神秘的で美しいですわ!」
お世辞が半端ないよエンジェリナちゃん。
私をよく思っていない人達は私の事をカラスって呼ぶんだよ。
「お前ら全員席につけ。出席をとるぞ~!」
ああ、担任が知り合いだ………
ルッカさん。
私に魔方陣の使い方を教えてくれた人。
………私はどおやら両親にはめられたようだ。
「小鳥・ミロード・アーツ」
「は、はい」
「自己紹介しろよ」
「………私の事は気にしないでください。よろしくお願いします」
「もっとマシな自己紹介無いの?」
「先生、次行ってください」
ルッカさんは暫く黙ると、次の人の名前を呼んだ。
つ、疲れる。
横に座るエンジェリナちゃんのニコニコ笑顔に癒されたのは言うまでもない。
見切り発車のため、ガクブルで続きを書かせていただいています。