部活を作ります
「部活にしたらよろしいのじゃなくて?」
エリザちゃんは天才だと思った。
王子に連れられて王子の部屋でお昼を食べている時に皆に聞いたのは、この部屋に難なく入れるようになる理由だった。
エリザちゃんはニッコリ笑顔だった。
「会員制の部活動がこの部屋でおこなわれていると思わせられれば小鳥さんもこの部屋に難なく入れるようになるんではなくて?」
「エリザちゃん天才」
私がエリザちゃんの手を掴んでふると、エリザちゃんも可愛く笑ってくれた。
そこに声をかけてきたのは鬼エルフだった。
「部活動なら担任が必要ですね」
「ルッカ先生が良いよ」
「ああ、魔方陣の上手い先生ですね」
パンを食べていた王子が連絡用の通信魔具で直ぐにルッカ先生を呼び出したのは凄いと思う。
「お呼びですか殿下」
ルッカ先生が入ってくると王子はニコニコしながら椅子をすすめた。
「ルッカ先生は部活の顧問になる気はあるか?」
ルッカ先生は私を見るとニッと笑った。
「小鳥ちゃんの推薦かな?」
「バレた?ルッカ先生は男爵令嬢に最近絡まれてるんでしょ?部活を隠蓑にしない?」
「僕の事よく知ってるね?愛かな?」
何故か鬼エルフが私とルッカ先生の間に立った。
邪魔なんだけど。
「おや、アークラスト君は小鳥ちゃん狙いなのかな?一回殺しておいた方が良いかな?」
ルッカ先生から殺意が立ち上がるのが鬼エルフと王子には解ったみたいで二人が警戒したのが解った。
けど、あれはわざと出した殺意だ。
「ルッカさん、二人で遊ばないの」
「あれ?ばれちゃったかな?でもね、局長が小鳥ちゃんに手を出すやからが居たら殺して良いって言ってたんだよ」
「お父さんはルッカさんがなんかしてきたら殺して良いって言ってたよ」
「………局長は僕の事も信用してないわけね」
ルッカ先生はニッコリ笑った。
「顧問ね。良いよ、可愛い弟子の頼みだからね」
「ありがとうルッカさん」
この部屋に居る人は皆驚いた顔をして固まっていた。
「私に魔方陣を教えてくれた師匠がルッカさんです」
「皆宜しくね!ちなみにこの部屋の防音魔法をかけてるのも僕だよ」
更に驚いた顔を皆がしたのが解った。
「ルッカさんは男爵令嬢を可愛く思ってる?」
「僕の好みのタイプに見える?」
ルッカ先生は気の強そうな女性が好きだからブリブリ媚びてくる男爵令嬢は圏外だろう。
「教師という職業はモテるんだね!研究所に居た時は………無職扱いだからね」
魔法研究所は極秘機関のため、所属が決まると経歴が抹消される。
だから、無職扱いになるのだ。
「貴方は研究所の……」
「城では殿下に会ったこと無かったでしたっけ?小鳥ちゃんと一緒に舞踏会を覗きに行ったりしてたんだけどな~」
私はため息をついて言った。
「姿を消す魔法使ってうろちょろしてたら気付かないって」
「僕、あれ苦手だから結構見つかっちゃうんだよ!あれが一番得意なのはリリック」
「ああ、知ってる」
マクスさんは本当にあの魔法が得意だ。
「研究所の人間が何故教師に?」
鬼エルフが信じられない者を見るような顔で聞いた。
「小鳥ちゃんに虫が付かないように監視してるんだよ」
「………冗談だよね?」
今度は私が信じられない者を見るような顔でルッカ先生を見た。
「半分本当」
「誰の指金よ!」
「研究所のメンバーと局長、狩人の何人か……その他もろもろ」
「お父さんは知らなかったみたいだった!ルッカさんが逃げたって言ってたよ?」
「ああ、局長は最近仲間に加わった」
お父さんに裏切られた気分だ。
お父さんのご飯は暫く作ってやらん。
「まあ、小鳥ちゃんは僕ら皆の可愛い弟子で妹で娘なんだから仕方ないよね?人たらしの自分を恨むしかないね」
それは誉められているのか?
たぶん違うと思う。
「で、何部にするの?」
私達は全員でフリーズした。
考えてなかったからだ。
「決めときなよ皆」
ルッカ先生が苦笑いを浮かべた。
「何をしていることにするか?じゃないかい?」
「お喋り?」
「言語学討論部とかかな?」
「じゃあ、それで」
こうして、私たちの架空の部活『言語学討論部』が発足したのだった。
 




