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男爵令嬢ムカつく

息子の学年………学年閉鎖……

 魔方陣の実技の授業。

 選ばれた数人が前に出て魔方陣を描く。

 その選ばれた数人の中にこの前エリザベートちゃんに熱々ココアをかけた男爵令嬢が居た。

 私の右横にいたエンジェリナちゃんが私の視線の先を見るとゆっくりと言った。


「彼女はアンヌ・イーデル・マイズ。イーデル男爵の養女です」

「エンジェリナちゃん詳しいね」

「ブリブリしてて鼻に付くんですもの」


 聞いちゃいけない事を聞いた。


「あの子、私が怒りたくなるようなことをよくなさるのよ」


 私の左隣に居たエリザベートちゃんが気に入らなそうに呟いた。

 

「関わらないのが一番だよ」


 私の言葉とは裏腹に、彼女が作った炎の魔方陣が暴走してエリザベートちゃんの方に向かって火の粉がふってきた。

 わざとか!

 何故エリザベートちゃんの方にやる!

 私は氷の魔法で一人用のドームをエリザベートちゃんの上に作った。

 

「大丈夫エリザベートちゃん」

「ええ、ミロードさんのお陰で助かりましたわ!ありがとう」


 エリザベートちゃんがお礼を言ってくれて嬉しかった。

 男爵令嬢はエリザベートちゃんが危なかったのにもかかわらず失敗失敗って呟いていて、あれはイライラするな~って思わずにはいられなかった。


「それにしても、この氷の魔法はどうやって作るんですの?」

「え?簡単だよ」

「ミロードさん、魔法のレベルで言えば炎、水、風、土、氷、雷の順番で難易度が上がるんですのよ!」

「知ってるよ?」

「私達はまだ炎の魔法レベルを習っている最中なんですのよ」

「………そ、そうだね」

「それなのに氷の魔法を簡単呼ばわり………」

「………ご、ごめんなさい」


 何故か助けたのに怒られた。

 理不尽だ。

 しかも、良く良く見れば周りの生徒さん達が私を呆然と見ている。

 ………や、やらかした!

 たぶん、暴走したが男爵令嬢の魔法も結構強めだと思うんだけど、皆は私しか見ていない。


「こ、ミロードさん、氷の魔法は後の授業でやってほしいな」

「ルッカ先生。ルッカ先生が先に助ければ良かった話だよね?」

「俺の得意分野は魔方陣」

「簡易魔方陣の紙持ち歩いてるよね?」

「俺の運動神経と君の機動力どっちが早いか解るよね?」

「インドアが」

「それ、悪口だからね。皆も見たように、適正って物があってそれに特化していれば簡単に氷の魔法も使えるようになる!はい、ミロードさんに拍手」


 ルッカ先生が先生らしくまとめている間、男爵令嬢に滅茶苦茶睨まれた。

 ヤバイよ!

 皆の視線が私に集まってからずっと殺意を飛ばして来るんだけど何?


「小鳥ちゃん流石です!私もやってみたい!」

「ミロードさん、さっきの氷の魔法を私にも出来るように教えて下さるわよね?」


 エンジェリナちゃんとエリザベートちゃんに詰め寄られて更に殺意が増した気がした。


「あ、後でね~」


 私がそう言うと、二人は同じように口を尖らせた。

 か、可愛い!

 なんだよ!教えるよ~!

 私がそう言おうとするとドンっと誰かがぶつかってきた。

 男爵令嬢だった。

 何故か舌打ちされた。

 え?私が悪いの?

 エンジェリナちゃんの口元がひくっとした気がした。

 エンジェリナちゃんは笑顔を崩さず品よく言った。

 

「イーデルさん、ぶつかったなら小鳥ちゃんに謝った方が良いですよ」

「え?………私が悪いの?」


 え?貴女がぶつかってきたよね?

 私は一歩も歩いてないよ?


「魔法が出来る人ならぶつかって来ても私が謝らなきゃ駄目なの?」


 はぁ?私が男爵令嬢にぶつかった事になった?


「イーデル・マイズさん、貴女ね!」


 エリザベートちゃんが怒ってくれようとしたのを止めて私は男爵令嬢に頭を下げた。


「私がぶつかってしまったのならごめんなさい」

「気を付けてね」


 男爵令嬢がニッコリ笑った瞬間、笑顔のエンジェリナちゃんから殺意が立ち上がったのが解った。

 私は慌ててエンジェリナちゃんに抱きついた。


「いや~ぶつかっちゃったよ~エンジェリナちゃん慰めて~」


 エンジェリナちゃんは殺意を消し、ゆっくりと私の背中に手を回してヨシヨシしてくれた。

 

「あの子許さない」

「エンジェリナちゃん、大丈夫!庶民は結構こういう対応されることあるからなれてるよ」

「そんなのなれちゃダメ」

 

 ああ、エンジェリナちゃんが可愛い。

 その時は典型的な嫌な貴族にあの男爵令嬢はなったんだって思っていた。






 昼休み。

 売店でパンと飲み物を買っていると、王子と鬼エルフが居るのが見えた。

 買い物を終えて見ると、男爵令嬢が王子に体当たりして転びそうになったのを鬼エルフに助けられていた。

 

「ご、ごめんなさい!私、慌てて」

「大丈夫ですよ。殿下は頑丈ですから」

「………お、王子様!ごめんなさい、本当にごめんなさい!」


 吹っ飛ばされた王子はゆっくりと起き上がると男爵令嬢の頭をポンポンしてあげていた。


「気にするな」

「あ、あの、私はアンヌって言います!」

「覚えておこう」


 おい、王子!なんで覚えとくんだよ。

 しかも、来ないだのエリザベートちゃんに熱々ココアかけたバカ女だって気がついてるのかな?

 それって覚えてないでしょ?

 王子と鬼エルフは男爵令嬢を見送ると優雅にあるきだした。

 私はそれを追いかけて、鬼エルフに飛び蹴りをしようとして避けられた。

 まあ、当たればいいなぐらいだったから避けられても当たり前か?


「何してるんです小鳥」

「鬼エルフに一撃が当たるかな?って試した」

「試さないでください」

「そんなことより、さっきの男爵令嬢なんだけどさ」

「あれ、男爵令嬢なのか?」


 王子よ、覚えとくって言っといてあれ呼ばわりかよ。


「あれは、アンヌ・イーデル・マイズですよ。こないだの女です」

「こないだ?」

「殿下は忘れていてかまいませんよ」


 鬼エルフの言い方がきつい気がする。


「こないだの事をふくめエンジェから、要注意人物だと報告が上がってます」

「ヤバイ女ってことか」


 エンジェリナちゃん、抜かりないな。

 

「ヤバイ女って解ってるなら良いよ」

「心配してくれたんですか?」

「珍しく優しいじゃないか?」


 私を何だと思ってるんだ?


「お菓子くれるお兄ちゃん達が変な女に捕まるのは私だって面白くないんだよ!」


 何故か二人はニヤニヤしながら私の頭を撫で回して髪の毛をぐちゃぐちゃにしてきた。

 嫌がらせだ。


「あ、来ないだのエリザベート嬢はどうだ?」

「どうって?」

「………」


 鬼エルフが横で吹き出している。

 何なんだ?


「エリザベートちゃんは可愛いししっかり者だし、努力家だよ?え?何?」

「殿下はエリザベート嬢がこないだから気になってるんですよ」

「うわ!マジで!エリザベートちゃんに近寄んないで!」

「何でだよ!」


 エリザベートちゃんに目をつけるなんてやるな王子!

 じゃあ、心配しなくても男爵令嬢にどうとかないか?


「あ、王子」

「何だ?」

「さっきの男爵令嬢、エリザベートちゃんに熱々ココアかけた女だからね」

「なに!」


 一応男爵令嬢の印象を悪くできたかな?

 私は少し満足して二人をおいてエンジェリナちゃんとエリザベートちゃんの居る裏庭に急いだのだった。

王子、覚えとくとか言って覚える気無いよな~

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