鬼エルフの妹は鬼エルフです
私はエリザベートちゃんと友達になりたい。
エリザベートちゃんをお弁当に誘いたい。
私はエリザベートちゃんをお弁当に誘うために話しかけようと決めた。
エンジェリナちゃんに相談したらエンジェリナちゃんが何故か強制的にエリザベートちゃんを捕まえてきた。
えっ?
なんかエリザベートちゃんの顔色が悪いよ。
「え、エンジェリナちゃん……どうやって連れてきたの?」
「家を潰されたくなければついてきなさいってお願いしました」
「そ、それ、脅迫ですよ!」
「えへへ!」
あ、悪いと思ってねぇよ!
鬼エルフの妹もやはり鬼エルフだったようだ。
「な、なんのようですの?エンジェリナ様を使うなんて卑怯じゃなくって!」
「本当にごめんなさい。まさか、脅してくるとは思わず申し訳ない」
私が慌てて頭を下げるとエリザベートちゃんは少し落ち着いたような顔をした。
エンジェリナちゃんがエリザベートちゃんを連れてきてくれたのは校舎の裏にある、日当たりの良い庭園でベンチがいくつもあって休憩できるようになっている所の一番奥。
人気があまりないのは校舎の中庭が人気があるからだ。
「こんな人気の無いところに私を連れ出して何がなさりたいの?」
「い、一緒にお弁当が食べれたらな~って思って」
「なら、普通に誘ったらいかがなの?」
怒ったようにそう言われて、私は理不尽さを感じた。
そこにエンジェリナちゃんがニコニコしながら言った。
「普通に誘ったらエリザベートさんは小鳥ちゃんの申し出を断らなかった?」
「………断りますわ!」
「でしょ!だから、私が連れてきたの!エリザベートさんにとっても小鳥ちゃんと仲良くなるのは悪いことじゃないと思うの」
「何故私が庶民と仲良くなんて!」
「小鳥ちゃんが普通の庶民じゃないからよ」
普通の庶民じゃないって失礼じゃない?
普通の庶民だよ。
「普通の庶民じゃないって、何なんですの?」
「小鳥ちゃんは魔法使いのエリートの娘なんです。だから、爵位は無くても国の上層部の人間は小鳥ちゃんと仲良くなりたいんですよ」
「………親がエリートだからってミロードさんがどう関係するんですの?」
「フフフ、小鳥ちゃんはエリートの血を色濃く受け継ぐ生粋のサラブレッドなんです」
「かいかぶりだよ」
私が言った言葉にエンジェリナちゃんはため息をついた。
「高位魔法使いしか扱えない魔方陣が書けて悪魔すら狩ることの出来る魔法使いを普通エリートの上のマスタークラスと呼ぶのは知ってますか?」
「………へ、へ~」
「小鳥ちゃんは魔方陣は一通り書けて、狩人の部隊にバイトで、派遣されるレベルではなかったでしたっけ?」
あ、ああ、エンジェリナちゃんの笑顔が痛い。
エリザベートちゃんが化け物を見るような目で私を見ている。
「き、気のせいじゃ?」
「狩人の部隊の中でも人一倍魔物を狩るのが小鳥ちゃんですわよね!」
ああ、鬼エルフが目の前に居ます。
「ミロードさんって狩人なんですの?」
「違うよ!」
「そうですよ!魔法研究所と言う特殊基幹の手伝いまでするマルチエリートが小鳥ちゃんです!」
「止めて!変なことエリザベートちゃんに吹き込まないで!エリザベートちゃんに嫌われちゃう」
「嫌ったりしないですよ!エリザベートさんは小鳥ちゃんの味方になるんです!ここまで知って逃げられるわけ無いでしょ?」
あ、ああ~エンジェリナちゃんはやはり鬼エルフの妹。
鬼エルフにしか見えない。
「え、エリザベートちゃん、巻き込んでごめんなさい」
「………」
エリザベートちゃんは何かを悟ったように呟いた。
「解りましたわ。お友達になりましょう」
「あ、あの、ごめんなさい」
「ミロードさん!私は知ってましたのよ!」
な、何をだろ?
「エンジェリナ様がエンジェルスマイルの中に腹黒を隠しているのを。そんなエンジェリナ様が貴女に近寄った」
嫌な事を聞いたよ。
「それがこんな理由とは、とんだ庶民も居たものですわ。お友達になる代わりに私に勉強を教える事を要求しますわ!」
「あ、私も!」
エリザベートちゃんの言葉に便乗してエンジェリナちゃんも手を上げた。
私は深くため息をついて、言った。
「良いよ。私が解る範囲でよければね」
その日から、私に友達が増えたのだった。




