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一章 第20話 村の護衛

 歩きながら三人は語る


「何が騎士だ、じーちゃん刺したくせに!じーちゃんが許しても俺は許さないぞ」


 ディアの怒りはまだ治まらないようだ


「レナが来る前と来た後のどっちが本当の騎士なんだろう?僕には騎士っていうのが何なのかよくわからなくなっちゃった」


 騎士になる、レナに向かって言ったドールは騎士の姿が見えなくなっていた


 レナはそんな二人の様子をおろおろしながら見ていた


「どっちの騎士になるかはお前次第だぜ、ドール」


「うわっ!」


 急にリィンから声をかけられてドールは驚いた。彼は今自分の中で騎士とは何か考えていて後ろに全く気を使っていなかった


「騎士なんかになるな!ドールがあんなやつらになるなんて絶対嫌だ」


「僕もあんな感じにはなりたくはないよ……でも師匠はどっちにもなれるって言ってるじゃないか」


 ディアとドールが珍しく意見を違えている、レナは二人の様子を見てしゅんとしていた




 広場の壇上に登る為の階段に三人は座り、リィンがその前に立っていた


「そういえばドールはレナの騎士になるんだったな」


 リィンは子供達が修行をつけてくれと頼みにきていた頃のことを思い出し話しを切りだした


「はい……そうなんですけど、さっきのをみてしまうと……」


 ドールは迷っていた、騎士の正しい姿が彼には見えない


 あんまり難しい話をしても仕方ないと思うがな……といいリィンは話す


「あれは国王の騎士だ。王のために何かをし何かを成す、そういう類いの連中だ」


 ドールはリィンが何を言いたいのかわからなかった


「だがお前はレナの騎士だ。だからレナのために何をし、何を成せばいいのか考えな」


 リィンはまだわからないだろうがな……と最後につけた足した


 ドールはレナのために……と呟き、ディアはリィンの言いたいことはわかったが納得がいっていなかった




「私はね、皆で一緒に幸せに暮らせればそれだけでいいんだよ?」


 ずっと黙っていたレナがぽつりと呟いた


「ドールが私の騎士で、ディアが私の魔術師で、みんな一緒で楽しい毎日を過ごしてたまにお昼寝とかしちゃったりして……悲しいこととか何もなくて平和で幸せな日が続けば私はそれでいいの」


 レナは空を見ながら告白していく


「別に強くなくてもさ、私達はきっと変わらない。そう思うんだ」




 リィンは黙って聞いていたが、時間がないだろうと考え話すことにした


「レナは歌姫だ、レナを本当に守りたいなら強くならなければならない」


 レナは納得がいってない顔をしてるが、そのままリィンは話す


「レナを守るためには騎士は絶対必要だ。ドールは強くなってレナを守る騎士になれ、魔術師のディアも同じだ。ディア、お前の中で騎士はひどい奴らだという認識があるのはわかる。だが、ドールがあんな連中みたいなやつになると思うか?」


 ディアは葛藤していたがドールは変わらない、それだけは確信できる


「……思わない。」


 ディアはそれだけ口にした


「もしどちらかが間違っている道を進んでると思ったら正してやれ、お前らは幼馴染だろ?」


 ディアとドールが頷いた


「俺がお前らを必ず強くしてやる、剣では誰にも負けないと胸を張って言えるほどな。だから……」




 村長の家から既に馬車が出発していたようで馬車が広場で止まり、騎士と村長が降りてきた


 騎士はレナの前にきて事情を説明する


「国王陛下から歌姫様を召還せよとの命令が出ています。歌姫様を王城までお連れしますのでどうぞ馬車へお乗りください」


 レナは「しょーかん?」と首をかしげている


 騎士は幼い歌姫に砕いて説明する


「歌姫様は馬車に乗って王都へ行くことになりました」




 ディアとドールはその説明でやっと意味がわかり騎士へ抗議する


「なんでレナが行かなきゃいけないんだよ!」


「行く理由がないと思います」


 二人は反論した


 ワイズマンは少しムッとしたがレナの両隣に座っている子供だったため、これ以上心象を悪くしてはマズイと思い丁寧に話した


「理由はあります。王の命令です」




 リィンは黙って見ていた


 何度か同じようなやり取りをし、これ以上は埒があかないなと感じたワイズマンは動いた


「王命なので……失礼します」


 そう言ってワイズマンはレナの手をとった


「やだ!はなして!」


「おい!やめろ!」


「何してるんですか!」


 子供三人が暴れ出す


 後ろに控えていた騎士が動き出したのを横目で確認したリィンは手を少年二人に向けた


「ディア、ドールたすけて!」


 彼女は騎士に連れていかれながらも叫んだが、二人の体は動かなかった


「レナ!クソッ、なんで体が……」


「レナ!騎士様、待ってください!」


二人は叫ぶがどうしても体が動かず……動かない? ディアが理由に気づいた


 彼が視線を手に向けると腕輪の玉が全部光っている


「師匠!なんてことするんですか!重加を早く消してください!レナが連れていかれます!」


 ディアが叫んだことによりドールも何が起こったのか気づく


「師匠!どうしてですか!お願いです。レナを助けてください!」


 ドールは懇願した




 リィンは何も言わず腕を組んで黙って彼らを見ている


 ディアはどうにかして騎士を引きとめなければならないと考え……閃く


「おい!そこのマントのク……」


 クソ野郎と言おうとしたところでリィンが一瞬でディア目の前に現れ腹部を殴り、呼吸困難の状態にした


「かはっ……」


 それを見ていたドールが怒った


「あんた一体何してるんですか!村長でもいいです!レナを助けてください!」


 ドールも体を必死に動かそうとはしているが体は動かず、村長も下を向いていた。村の広場には少年達の声が響いただけだった




 レナはもうどうにもならないと悟った。村長もリィンも動く様子はない、むしろ騎士達に協力している……と


 離れ離れになると思うと自然と彼女の目から涙が溢れてきた



「離して!行きたくない!」


 彼女は暴れて最後の抵抗をしたが騎士の手から逃れることはできなかった



 馬車に入れられる直前に彼女は泣きながら叫ぶ


「ディア!ドール!私、待ってるから!守ってくれるって信じてるから!」




 そして馬車は村から去っていった


「護衛完了だ」


 馬車が去っていった方向を眺めながらリィンがそう呟いた

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