対象
佐竹優介とトーリ、レイン、それに幾人かのスタッフが加わり、試写会が行われた。
「さて、どんな写真が撮れているか、楽しみだな。まあ、トーリの美的センスが問われるが、それは期待しないで拝見しようじゃないか。」
優介の物言いに、少しムッとしたトーリを誰も気にすることなく試写会がはじまった。
会議室のスクリーンに、次々と植物園の花々が映し出されていく。その何れもがプロカメラマン顔負けの素晴らしい出来映えの写真ばかりだ。
「なかなかいいじゃないか。」
優介が満足気にうなづいた時、スクリーンに艶やかな唇のアップが映し出された。
「ん⁈ なんだ? 」
その場に居た者すべてが首を傾げた。
「きゃっ!! い、いや〜っ!」
レインが顔を赤らめ叫んだ。
スクリーンに次々とレインの色々な部位が映し出されていた。特に胸元や唇のフォトが多い。
「変態!」
次の瞬間、室内に「ぱしぃ! 」と乾いた音が響く。レインのビンタがトーリの頬にヒットした。
結局、優介は実用化に向けた研究をやめた。人の美に関する認識という漠然としたものに対応するのが難しいのだ。
だが、商品開発チームは、すぐに開発に着手。そして、四年後、障害者施設で「変な帽子」は活躍している。コミニケーションの補助的役割を担っているのだ。
この発明の特許は佐竹発明研究所名義で、優介の名での申請ではないのだ。
この様な個性的な発明を優介は日々している。個性的ゆえに周りの人々を巻き込みながら。
完