眠れない夜に安らかな夢を
ぼくはもう、ひとりでだってねむれる。けどたまに、よなかにめがさめたり、ねむれなかったりするときもある。
「・・・おとうさん」
おとうさんのへやをのぞきこむと、ベッドでほんをよんでいたおとうさんがぼくをみた。
「なんだ。眠れないのか」
こくんとうなずくと、まったく、とあきれたかおをしたけど、ほんをとじてぼくをベッドにいれてくれた。ふとんにもぐりこんで、おとうさんのうでをまくらにする。おとうさんはもうけすぞ、とベッドのよこのライトにてをのばした。まあるいライトは、きょうのおつきさまみたいだとおもった。でんきがきえるとおとうさんのかおもみえなくなったけど、くっついてるからとなりにいるってわかる。
「きょう、おつきさま、まんまるだったね」
「うん?あぁ、満月だな」
「ねぇ、なんでおつきさまだけあんなにおおきいのかな?おほしさまはちっちゃいのに」
「・・・なんでって言ってもなぁ・・・」
おとうさんはかんがえるみたいにうぅーんとうなった。
「まあ、そうだな・・・、星の親玉なんじゃないか」
「おやだま?」
「いちばん大きくて強いやつ」
そっか。おつきさまはおやだまなのか。
「じゃあ、なんでときどきいなくなるの?」
「は?」
「おほしさまはいるのに、おつきさまだけいないの」
おとうさんはあぁ、といって、それからまたうぅーんとうなった。
「あれは・・・なぁ、出張にでも行ってるんじゃないか、たぶん」
「しゅっちょう?」
「仕事で遠く行くの。お父さんの仕事場の親玉もよく出掛ける」
おとうさんのしごとばにもおやだまがいるんだ。おとうさんよりつよいのかな。
「どこにいくのかな?」
「さあなぁ・・・」
「おしごとなにするの?」
「えぇ?あー・・・・・・なんだろうなあ・・・。なんか話し合いとか」
「はなしあい?だれと?」
「えー・・・。あー・・・、太陽、とか?」
「おひさま?」
そいえば、ひるまでもおつきさまはみえるんだよってまえにおしえてもらった。ひるまにときどきみえる、しろくてうすいまあるいのはおつきさまなんだよって。
「おつきさまとおひさまって、なかわるくないんだね。いっつもいっしょじゃないけど」
「そうだなぁ、役割分担てやつだ」
「なにおはなしするの?」
「何ってなぁ・・・何だろうな・・・今月の天気とか、日の長さとか?」
「ながさ?」
「夏は遅くまで明るいし、冬はすぐ暗くなるだろ」
そっか。なるほど。ぼくはおとうさんがよくやるみたいに、ふうんとうなずいた。
「おほしさまはおつきさまのこぶんなのかな?」
「かもなぁ」
「おひさまにはこぶんがいないの?」
「・・・おまえは・・・次々とよく考え付くな」
おとうさんはあきれたみたいにいうけど、ふしぎなんだもん。おつきさまにはなかまがいっぱいいるのに、おひさまはおそらにひとりぼっちでさみしくないのかな。そういうと、おとうさんはやっぱりうぅーんといって、かんがえながらこたえてくれた。
「昼間は・・・太陽は、な、ひとりであんだけ明るくできるくらいでっかくてつよいし・・・下には人もいっぱいいるし、な」
「おつきさまよりつよいの?」
「あー・・・そうかもな」
「おつきさまよりつよくて、あかるくて、ひともいっぱいいるからへいきなの?」
「かもなぁ」
「そっか。よるはみんなねちゃうもんね」
なるほど、とうなずいていたら、おとうさんはそうだなといって、ふわあとあくびをした。
「だからおまえももう寝ろ」
おでこにちゅっとキスがふってきた。これは、「とくべつ」。
ねむれないよるの、おまじない。
ふと思いついたネタパート2。やっぱり細かい設定はありません。
答えづらい子どもの「なんでなんで」に付き合うものの、親玉とか出張とか微妙にロマンの足りないお父さん(笑)
お父さんと子どもとか、男性と子どもという組み合わせが好きです。子どもに懐かれてちょっと持て余しぎみだとなお良い。




