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水晶竜が見る夢  作者:
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血溜りの中のワルツ07

 執務室に入ったマリアはまっすぐに中央に鎮座する王が座るべき椅子に腰掛け、その座り心地を楽しんだ後、クルリと椅子を回転させ正面に従者のように待機しているロマロへ声を掛ける。


 「で、貴方が持ってきた朗報とは何?」

 「調査団が持ち帰った鱗が100%結晶竜であることが判明しました。また前回は報告時していませんでしたが、鱗の近くに獣の毛が落ちていました。そちらを分析したところ、野生の熊ではなく熊の獣人の毛であることが分かりました。以上のことから結晶竜は熊の獣人と行動を共にしているか、その場で争ったのではないかとの報告が上がっております」

 「……そう、何故今その報告が上がって来たのかしら?」

 「は?」

 「前回の報告で何故獣の毛を採取した事が抜けていたのかしら?」

 「それは……マリア様の耳に入れるまでも無いと考えたのではないでしょうか?」

 「でもそのことを決めるのは調査団ではなく、わたくしだわ。なのに何故なのかしら?」


 マリアは一度止まっていた椅子の回転を開始する。

 くるりくるりと回りながら、顔は楽しそうに、けれど目は残酷なほど冷めていた。


 「おかしいわ~誰がそんな指示を出したのかしら?」


 マリアの独り言は続く。

 ロマロは彼女の質問に答えることなく、彼女の次なる意向を聞いた。


 「調査団の処分は如何いたしましょう」


 そう、それは彼女の意思を蔑ろにした調査団の行く末を、聞いたのだ。


 「ふふっ流石ロマロだわ、そんな貴方が好きよ?調査団の処分なんて決まっているわ……全員の首を刎ねて頂戴、もちろんその家族も忘れちゃ駄目よ?1人だなんて寂しいものね。ふふっ私って優しいわ。彼らは虹色信仰の為に死ねるのだから誉だと言うでしょう。処刑は明日の明朝、王宮前の広場で行いなさい。その場にカテラも連れてきて、狂った玩具に興味は無いのだからアレも処分しましょう」

 「畏まりました」


 残酷な答えが返ってきたとしても彼の表情はひとつも動かない。

 彼はマリアの希望を叶えるために部屋を出て行った。


 「それにしても、熊の獣人、ね。結晶竜は戦いを忌み嫌う傾向が強いわ、その事を考えると……共に行動していると考えたほうがいいわね」


 ロマロの後姿が見えなくなるのを待ち、マリアは先ほどの報告から予測を立てていく。

 大型の獣人は他種族との関わりを嫌う。

 またそれだけでなく種族ごとに特化した特異能力がある。

 厄介だわ、そんな獣と行動を共にしているとなれば獣独自の移動ルートや情報収集手段が向こうに有るということだ。

 それを人族が探るとなれば困難を極めるだろう……

 そこまで考えていたマリアは不意に10年前に隠密部隊に入隊してきた獣人族の男を思い出した。

 あの男の種族は確か……犬だったはず。

 犬は隠密よりも調査団の方が向いていると当時考えていたため、マリアの印象に残っていたのだ。

 

 「隠密部隊、聞こえているわね?今すぐ来なさい」


 マリアの言葉が言い終わるのが先か後かが分からない程の間に、彼女の前には1人の男がかしずいていた。

 その男に特徴という特徴は見当たらない。

 あえて言うとするならば、特徴が無い事こそが特徴であるといえよう。

 夜の闇に溶け込めるような漆黒の黒を全身に纏い、顔には同色の布が巻きつかれており、マリアからはその瞳の色しか確認出来ない。

 またその服は体にピタリと張り付いているため、その者が如何に鍛え抜かれた肉体を持っているかが一目で分かるようになっており、腰には2本の短いナイフが生身のまま差し込まれている。

 目に見える武器はそれしか確認出来ないが、全身の至る所に隠し持っているはずだ。


 「お前の部隊には何匹の獣人がいるのかしら?」


 突如姿を現したというのにマリアは特に驚く事も無く、話しかける。

 この隠密部隊は亡き父の時代より存在していたものである。

 マリアに付けられる事はなかったが、その存在をロマロより聞き及んですぐ洗脳にかかった。

 普段から目に付かないため、次のターゲットとするには最適な存在であった。


 「現在1名所属しております」

 「それの種類は……犬かしら?」

 「その通りでございます。その者が何か粗相を?」


 マリアは目の前にいる者の名も隠密部隊内での位もしらない。

 興味も無いし一々覚えていても、隠密部隊とは彼女にとって道具と一緒なのだ。

 それも知りたい事を呟くだけで勝手に調べてくれる、とても使い勝手の良い道具。

 その道具がたくさんある、と言う認識でしかなく、同じ道具に名前など付けない。

 そんな彼女が、たった1名を覚えていた。

 それが名前ではなく種族であったとしても、驚くべき事だった。

 マリアの正面に座っている男――ガイはまったく態度に出すことは無かったが、内心では驚いていた。

 ちなみにガイは隠密部隊副隊長を勤めている。


 「いえ、違うわ。けれどその者に頼みたい事があるの、すぐに呼んで頂戴」

 「畏まりました」


 ガイはマリアが目視できない速さでその場を離れた。

 その数秒後マリアの前には2人の隠密部隊が傅いていた。

 1人は先ほどの男と同じような背格好で、もう1人は本来人族では持ち得ない獣の耳が頭部から生えている。

 

 「良く来てくれたわ、貴方に特別な任務を言い渡します」


 しかし、彼女にとってはそれが人族だろうが獣人族だろうが関係ない。

 道具が2つに増えただけ。

 

 「今からロマロ王の元へ行き、調査団が持ち帰った熊の獣人を探し出しなさい」

 「畏まりました」


 後は結果を待つだけ。

 隠密部隊の2人は来たときと同様、物音1つ立てずマリアから下された指令を遂行する為に駆け出した。

更新が遅くなりました、ごめんなさい!

現実世界で忙殺されそうです…

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