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水晶竜が見る夢  作者:
27/29

血溜りの中のワルツ05

少し寄り道で、桜の話を・・・・・・

 タルクリス王国が名実共に女王マリアによって掌握された頃、桜たちは目を見張るほど成長していた。

 しかし此処まで来るのは容易い事ではなかった。

 タマユラは桜改造計画を打ち立て直ぐ桜とアーノルドに今までどのようにして過ごしてきたか聞いた。

 そしたら出るわ、出るわ、ありえない事実。


 その一つを抜粋。

 まず桜は今まで朝起きたら、アーノルドが朝食を用意するまでボーっとして過ごし、朝食が出来たらアーノルドが桜を急かし自分の背中に乗せ湖や川がある場所まで連れて行き顔を洗わせる。

 その時水に落ちそうになる桜から目を離さない、その後ベースキャンプへ戻り、桜が焼けどしないよう荒熱をとった食事を渡す。

 もちろん「焼けどに注意するんだぞ?」との一言は忘れない。

 桜がちゃんと食べるのを確認した後、やっとアーノルドの朝食が始まる。

 そしてタマユラの家を目指し進んできた。

 その後の風呂、おやつの時間、など一冊の本が出来るほどである。

 もちろん題名は「胸のドキドキが止まらない熊と少女の日常・恐怖編」である。


 ここまでの話を聞いていたタマユラは自分を褒めた。

 何を褒めたかって?突っ込まなかった自分ですよ…・・・


 まず、アーノルドに言いたい。

 貴方は何処のオカンですか?そこまで行ったら、もう過保護で済ませれませんよ?

 そして桜、貴方は何処の国の姫です?貴方達の常識を疑います。

 元々熊に子育てが出来るとは思っていなかったが、これは酷い。酷すぎです。

 タマユラは怒る前に自分を頼ってこの森に来たアーノルドをまず褒めた。

 

 「アル、良くぞ私を頼って来ました。そこは評価できます。慣れない子育てを1人でやろうと考えなかった事は、とても評価できますよ。えらいですね~」


 満面の笑みを浮かべアーノルドの頭を優しく撫でてやる。

 馬鹿なアーノルドは「だろ~?」などと得意げになっていたが、感の良い桜はフルフル震えていた。

 タマユラはそんな桜を見ながら「これならば、まだ大丈夫です」と安心した。

 なんたって馬鹿は何をしても馬鹿なのだから。

 そう、目の前のアーノルドのように。

 飴はあげました、次は・・・・・・わかりますよね?

 タマユラは心の中で問いかけ、答えを口にした。

 その答えの中に、先ほど桜とアーノルドの関係性について懸念していた事も混ぜる。

 これからの2人の有り方を正しい方向へと修正するために。


 「ただし、子育てをした事が無いからといって見逃せ無いものが先ほどからチラホラ見受けられるのは何故でしょう?もしかして世間での常識が変わったのですか?それとも私が可笑しいのでしょうか?如何思いますか、アーノルド?それにサクラ」

 「え?」

 「・・・・・・?」


 アーノルドと桜は揃って首を傾げる。

 良いシンクロ率です。

 けれど私は逃がしませんよ。


 「まず、アル。子育てにおいて必要なのは1人で生きていける知識や技術を身に着けることです、親が手取り足取り全てするべきではありません。なのに貴方はどうですか?サクラは産まれたての赤ちゃんではありません。自分で出来る事まで貴方がしてはサクラの為にならない」

 「す、すまん」

 

 アーノルドは無自覚で桜を甘やかしてしまった事を詫びた。

 確かに、桜がボケッとしているからといって、今まで全ての事を桜から取り上げ自分がなんでもやってしまった。

 町の中の子供や森の中の動物たちでさえ、子供の将来を思い勉強させていた事を自分は怠っていた。

 しかもそれを他人から指摘されるまで気づかないとは・・・・・・なんて情けないんだ。

 アーノルドは自分の不甲斐無さを痛感する。


 「そして、次にサクラ。貴方です。まず貴方に言いたい事は、生きたいという希望があるのか、ないのか、と言うことです。アルから聞いた貴方の境遇には同情をします、しかし同情をするからと言ってそれはイコール甘やかすことにはなりません。生きる自覚が無い者に何を教えても意味が無い、そしてアルから聞いた話を私になりに解釈して、貴方には生きる意志が無いように感じられました。私は彼の友人として寄生する事でしか生きようとしない貴方をこのまま彼と共に居させるべきではないと考えています。何か言いたい事はありますか?」

 「おい!」


 タマユラの容赦ない追求に、アーノルドがたまらず声を荒げる。

 しかしタマユラの意思は揺らがない。

 咎めるアーノルドに視線を向けることなく、彼は先ほどから桜の反応を見ていた。

 一見すると桜は何も反応も示していないように見えるが、その瞳はユラユラと揺らいでいた。

 この揺らぎが、アーノルドと引き離される事による、不安だけではない事を願うしかない。


 彼とて桜とアーノルドを引き裂くような事はしたくない、しかし先ほどからこの2人を見ているとお互いに依存しあっているようにしか見えないのである。

 しかもその依存度は危険域まで達している、重度といっても良い。

 アーノルドは桜のことになると周りが見えなくなるし、桜の目にはアーノルドしか見えていない。

 もし彼が誰かに操られ桜に一言「死ね」と言葉にしたならば、桜は迷わずアーノルドの為に命を捨てるだろう。

 何故彼がそう言葉にしたのかなど考えもせず。

 そして術が解けた後、アーノルドは絶望する。

 最悪自ら命を落とすかもしれない・・・・・・そんな未来は、ごめんだ。


 今までアーノルドはお人好しと言われて過ごしていたが、それでもある一定の距離をもって他人と接していたのだ。

 なのに桜に対してはその境界線が無い。

 そして桜も今まで何処に居たのか知らないが、産まれて初めて目にするものを親を信じる雛の如くアーノルドに依存しまくっている。

 これでは駄目なのだ。

 なぜこのような関係になったのかは分からない、しかし気づいたからには気づいたタマユラが責任を持って断ち切らなければならない。

 こんなもの百害あって一利なし。


 「ユタ、言って良い事と悪い事の区別も付かないのか!?」

 「貴方は黙っていてください。先ほど私が言ったことも忘れてしまったのですか?」

 「っだが!」


 アーノルドの自覚が無いのは厄介だ。

 こちらを先に片付けるか・・・・・・とタマユラは体をアーノルドに向けた。


 「では、お聞きします。貴方は今まで孤児などを拾ったことがあったと私は記憶しています。そうですね?」

 「おう、それがどうした」

 「今まで――今までならば、この子供たちを孤児院や近くの村落に預けていたのに、何故今回に限ってそうしなかったのですか?」

 「それは・・・・・・サクラが。そう、サクラが結晶竜だったから――」

 「サクラが結晶竜だと気づいたならば、同じ竜族に保護を求めれば良い。なのに何故わざわざ他種族であり、遠い地に居る私のところまで連れてきたのです?」

 「だって、俺じゃどうしようにも・・・・・・」


 アーノルドは答えに窮地した。


 ――答えられない。


 アーノルドはそんな自分に愕然とした。

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