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水晶竜が見る夢  作者:
20/29

慌しい目覚め03

昨日無事書き直しが終わりました。

22日の予定を過ぎてしまい、すみませんでした。

内容が以前の物よりも大幅に変化しておりますので、時間がありましたら今一度読まれることをお勧めします。これからもよろしくお願いします。

 タマユラは冷え切ったお茶を手に席を立つ。

 先ほどから感じる悪寒が気になって、読書が進まない。


 「本当に、なんなのでしょう……」


 以前、これと似たような事があったような気もする。

 しかしそれが何であったかのか思い出せずにいた。

 綺麗に洗ったカップを丁寧に拭き、食器棚に移す。

 カップは綺麗に戸棚に収まった。

 その様を見詰めたまま溜息を一つ。

 

 「私の記憶も、簡単に引き出すことが出来れば良いですが……歳には敵いませんね」


 このままでは気になって何も手が付かない、と考えたタマユラは一度落ち着いて過去を振り返ることにした。

 いつ頃のことだったか、と記憶を探る。

 そして、彼は閃いた。

 そう、この感じは4年前あの時と一緒だ。

 

 「あれは、確か。アルが――……」


 タマユラが丁度思い出したと同時に、その悪寒の大本が家のドアを壊すのではないかと思われるほどの大きな音を響かせながら現れた。


 「よう!元気かユラ?いや~ちょっと聞きたいことがあってな~。どうぜお前も暇だろ?手土産に俺特製ウサギの丸焼き持って来たぜ~」

 「今すぐその危険物を家の外に捨てろ!この学習能力の無い熊!!」


 タマユラが偶然目の前に置いてあった包丁を投げたのは仕方ないことだった。

 彼が思い出したのは、4年前の悪夢の再来の日。

 その日は、いつものメンバーで狩を終え、一段落ついていた時それは起こった。

 いつものメンバーとは、狐、狼、虎、熊の獣人――幼い頃同じ森で育ち今でも交流がる4人組。所謂、幼馴染の集まりの日の事であった。

 彼らは何年かに1度必ず集まる。

 その時それぞれが狩った獲物を持ち寄り、料理上手な狼がその場で捌き夕食の準備をする。

 料理が出来るまで、寝床の準備や持って来た酒の用意をして過ごし、夕食時に彼らは近状や噂話、きな臭い国の話などの情報交換を行うのである。

 もちろん昔話に花を咲かせる事も忘れない。

 そんないつもと変わらない集まりになるはずだった。

 この熊――アーノルドが手土産さえ引っさげてこなければ。

 その日何を思ったのか……いや分かっている、この熊は何も考えていないのだ。

 この能天気な熊は自分で料理した、料理と呼べない物を片手に狙ったかのように我々の前に最後に到着した。

 その時もタマユラは1日中寒気が止まらず、何かがおかしいと感じていたのだ。

 狼や虎に聞いても、彼らは何も感じないと言うから自分も気のせいだと思う事にした。

 しかし寒気は収まらず、むしろドンドン酷くなっていった。

 これは病気かもしれないと感じたタマユラが、今回の集まりを辞退しようとした時にそれは起こった事であった。

 突然の奇襲。

 しかし、気絶などと言う無様な事にはならない、なぜなら残念な事に――本当に残念な事に、自分たちは熊の幼馴染であったから、その対応は慣れたものだったのだ。

 虎が自分の鼻を摘みながら熊の頭部に全力で拳を叩き込み、私が自身の持てる限りの素早さでもって危険物を矢に番え放つ、狼は自身の持ってきた香辛料の中で一番強力な臭い消しを周囲に撒き散らした。

 この間0.8秒。

 すばらしい連係プレーである。

 そしてそこから始まる説教タイム。


 「てめー俺様に何か恨みがあんのか!?俺は心が広いからな、じ~っくり聞いてやるよ!おら、さっさと吐け!!」

 「あなた幼い頃に学習能力という物を何処かに忘れてきたようですね?大丈夫ですよ、私は優しいですからね。今からその脳みそを掻っ捌いて埋め込んで差し上げます」

 「あーあ、僕の貴重な香辛料が全滅だよ。どうしてくれるの?え?弁償してくれるの?ほんと~じゃぁまずその無駄な事しかしない腕から売りさばいて行こうか?」


 説教の範囲を超えているかもしれないが、自分たちにとってはこれも立派な説教なのである。

 ちなみに、発言は虎、狐、狼の順である。

 あれほど親切丁寧に教えを説いたというのに――……

 

 「どうぞいらっしゃいませ。何もご用意できませんが、全身全霊をもって御持て成ししたいと思います。さぁさぁさぁ」


 先ほど包丁を投げた事など億尾にも出さず、タマユラは満面の笑みを浮かべアーノルドを家へ招いた。

 

 ――今度こそ忘れたなどと言わせませんよ?この腐れ熊。


 タマユラの笑顔が怖い。

 アーノルドは包丁を投げられた瞬間、手土産を盾に難を逃れた。

 ウサギの丸焼きの丁度真ん中にオブジェのように刺さった包丁が、少しずつ紫色に変色していく。

 この危険物はアーノルドの気合と比例する。

 それを考えると今回の手土産が如何に気合の入ったものだったかがわかろう。

 タマユラにとったらありがた迷惑の何物でもない。

 アーノルドは自分が持ってきた手土産を悲しそうに眺めた後、遠くに投げ捨てた。


 「今回は大丈夫だと思ったのに……」


 ポツリと呟かれた言葉は、彼にとって幸運にもタマユラの耳に入る事はなかった。


 「さぁ何をぐずぐずしているのです。とっとと中に入りなさい、このノロマ」

 「……酷い」

 「可愛げも無く、しょ気ないでください。それよりもまず風呂です。その臭いを一秒でも早く落として来なさい」


 両肩を落とし、アーノルドはスゴスゴ部屋へ入って行った。

 そしてタマユラの目の前を通過した時、タマユラは本来在ってはならない者を見た。


 そう、まだ少女と呼ぶには幼い子供の姿を見たのだ。

 

 よりにもよって熊の背中に、見た。

 こいつ、とうとう――……


 「待ちなさい、この変態。いつかやるかもしれないと思っていましたが、終にやりましたか……でも大丈夫です、今から親御さんの元に行きましょう。私も一緒に行って差し上げます。こんなどうしようもない熊でも私の幼馴染ですからね、ふふっ骨もきちんと拾ってあげますよ。さぁ変態――おっと、これでは変態の皆さまに申し訳がありませんでしたね。ではこの外道、何か私に言う事はありませんか?」


 タマユラの堪忍袋の緒が切れた。 

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