悪夢の息遣い 08
マリアはロマロを使い、自分の父であるグランテ王を殺した。
彼女が最後に残った竜の結晶全てを使って願ったこと……それは、我が軍部最高指令長であり秀才のロマロを魅了することであった。
ロマロの才能は国内外に届いており、平凡な自分ではなく彼こそが王の子であると噂されていたのを彼女は知っていた。
また、自分の頭では彼に追いつくことは出来ないことも。
では如何すれば良いのか。
その答えは簡単だ、結晶の力を使い彼自身を手に入れてしまえばいいのだ。
そして彼女は実行した。
ただそれだけだった。
結晶竜丸々1頭を費やしただけあって、その効果は言うまでもなく最高の結果をたたき出した。
彼女が彼の名を呟き、目の前の邪魔者を殺すよう囁いただけで彼は何の戸惑いも無く実行したのだ。
笑いが止まらない。
「来なさい、ロマロ。私は治療を行わなければならないわ……誰にも知られること無いように手配なさい」
「……かしこまりました、我が主」
ロマロの返事はマリアを十分に満足させた。
今まで無下に扱われていた自分が誰もが羨む人を手に入れたのだ。
マリアの中にロマロへの恋心など無い。
あるのは、醜い独占欲。
国中の女が望み、手に入れたいと願いいてる者――……何より上の姉2人が恋慕しているロマロを、2人の視界にすら入っていなかった自分が手中に収めた事による満足感。
それを知った時の2人の顔を想像するだけで、今から笑いが止まらない。
けれど、これはほんの始まりに過ぎない。
「ふふふっ」
マリアは可愛らしく笑った。
今まで自分に自信が無く、周囲の目から隠れ過ごしていた少女の姿はもういない。
そこにいるのは自信に溢れ、野望に満ちた可愛らしい少女だった。
――だたし、その少女の全身は血塗れであり、手は怪我を負っていない場所が無く骨が剥き出て正しくない方向に曲がっている事を除けば……と一言付くが。
彼女は今日の天候の話でもするかのような気軽さでロマロに話しかける。
「あ、そうだわ。ロマロ、私全ての結晶竜が欲しいの。それも迅速に……出来るわよね?」
「かしこまりました、我が主」
「それとあそこに倒れている汚物の処理もお願い。もう必要ないもの」
「かしこまりました、我が主」
「でも王がいきなり居なくなるのは問題よね?う~ん、如何しましょう……ロマロ、お前が次の王になりなさい。そして王妃にはカテラ姉様を、あいつの絶望に満ちた顔を見るのは最後にするわ。ふふふっ今から楽しくなるわね」
「かしこまりました、我が主……」
返事をするロマロの顔には表情が無い。
ロマロの腕に抱かれて彼女は進む。
楽園と言う名の地獄を作るために、彼女は進む。
その地に救いは無い。
その地を彩るのは、真っ赤な血と絶望の悲鳴。
その真ん中で悪魔は鼻歌を歌いながらワルツを踊る。
結晶竜の見る夢をお読み頂きありがとうございます。
今日で「悪夢の息遣い」編を終了しました。
いや~マリアが良い味だしてます、怖いけど。
教会内+聖母マリア=神?みたいな相乗効果狙ってみたけど、駄目でした。
むしろ、魔王。怖すぎです(笑
明日からは次章に移ります。
本当はマリア続投しようかと思いましたが、やめます。あまりにも暗すぎるので、お待ちかねアーノルドの登場です!!わ~パチパチ!
私が一番君を待っていた!さぁボケとツッコミの舞台へいざ出陣!!




